悠久書店・偽通信販売第二部 その5〜その7(担当:ヘキサ&ローラ・ニューフィールド)



その5、トーヤ先生の白衣と眼鏡

ローラ:「さて、今日も好調な偽通信販売第二部、第5回の商品は――」
ヘキサ:「おっ、何だ何だ?」
ローラ:「ディアーナ・レイニーさんの提供でお送りします!」

がちゃっ。

ディアーナ:「はぁ〜い、ヘキサく〜ん♪」
ヘキサ:「出たな、黒い殺人医師!」
ディアーナ:「……ちょっとちょっと。どーゆー意味かな、ヘキサくん?」
ヘキサ:「だから、ディアーナは医者としての腕前が殺人的で――」
ディアーナ:「お注射しちゃうぞ?
ヘキサ:「ああっ、何でもない何でもないっ!」
ローラ:「ヘキサはほっといて商品見せてよ、ディアーナちゃん」
ディアーナ:「……はいはい。そんなにせかさないで、ローラちゃん」

ごそごそごそ。

ローラ:「…………?」
ヘキサ:「…………何だこりゃ」
ディアーナ:「じゃ〜ん! トーヤ先生とお揃いの白衣と眼鏡!」
ヘキサ:「要はトーヤのコスプレグッズじゃねーか」
ディアーナ:「身も蓋もない事言わないで下さ〜い!」
ローラ:「で、希望価格は?」
ディアーナ:「私の手縫いですから、そうですね……500ゴールド、ってとこで」
ヘキサ:「そんな値段で誰が白衣なんぞ買うかっ!」
ディアーナ:「この前発売されたハメット・ヴァロリー著『ねこみみ人工生命体の作り方』、どーしても欲しいんです〜」
ヘキサ:「小遣い稼ぎかよ〜。だからって……なあ」
ローラ:「ねえねえ、ヘキサ」
ヘキサ:「ん?」
ローラ:「さっきディアーナちゃんにヘキサが言ってたでしょ、クラウド先生のコスプレグッズって。そこであたしにいい考えがあるんだけど」
ヘキサ:「いい考え?」
ローラ:「うん。クラウド先生のファンって結構多いから、その人達を対象に売り込めば――」
ヘキサ:「う〜ん。確かに店主の妹辺りには売れるかもしれないな(笑)」
ディアーナ:「やったあ!」
ローラ:「ではそういう事で――トーヤ・クラウド医師の白衣(レプリカ)を1着500ゴールドで販売致します。先着5名様には特別に、クラウド医師愛用の眼鏡と同じ製品を特別にプレゼント!」
ディアーナ:「私、ディアーナ・レイニーの手作りでお送り致しておりまーす!」

ばたん!

トーヤ:「ディアーナっ!」
ローラ:「あ、クラウド先生」
ディアーナ:「……はっ。せ、先生っ! なぜここに……そうですよねっ! 弟子の奮闘ぶりをご自分の目で確認するために、わざわざここまで来て下さったんですよね!」
ヘキサ:「……ここまで善意に解釈できるなんて、なんつーおめでたい思考回路なんだか」
トーヤ:「……同感だ。ディアーナ!」
ディアーナ:「はい?」
トーヤ:「……せっかく裁縫が得意ならと思って繕い物を頼んでおいたら、俺の白衣にひよこさんのアップリケを付けるなんて、お前、一体何考えて生きてるんだ?」
ディアーナ:「え? だって、先生無愛想だし、病院も殺風景だから、患者さんに和んでもらおうかな〜、と……」
トーヤ:「それを見て爆笑した患者の縫合跡が開いて、生死の境をさ迷ったんだがな」
ディアーナ:「え〜と……(冷や汗)」
ヘキサ:「……患者の腹にアップリケ縫い付けなかっただけ幸せだと思うべきだぜ、トーヤ」
トーヤ:「当たり前だっ! ああ、医療学校の同窓会で今年も馬鹿にされる……」
ディアーナ:「その程度でめげてはいけませんよ、先生っ!」
トーヤ:「……めげたくなるのは俺だあああああっ!(絶叫)」
ローラ:「…………」
ヘキサ:「どーする、この師弟?」
ローラ:「ほっとこ。ではこれで今日は解散!」
ヘキサ:「お疲れーっ!」

トーヤ:「まったく……。もう一度、お前はカエルの解剖からやり直しだっ!」
ディアーナ:「ひ〜んっ!」



その6、ランディの義手

ローラ:「偽通信販売第二部・第6回だよー♪ みんな、元気ぃ?」
ヘキサ:「夜明け前からハイテンションだな、この娘……」
ローラ:「と、ゆー事で! 今回お届けする商品は――え〜と――ここじゃなくて――ここでもなくて――」
ヘキサ:「……忘れたんだろ、寝ぼけてて」
ローラ:「えへっ☆」
ヘキサ:「おいおいおいおいおいっっっっ!!」

さわっ……。

ヘキサ:「な、何だ?」
ローラ:「この緊張感……まさかローレンシュタインで暗殺者になったシーラちゃん?」
ヘキサ:「……何でシーラが出てくるんだよ、おいっ!」

がちゃっ。

ランディ:「……久し振りだな、第三部隊の連中」
ヘキサ:「ラ、ランディっ!?」
ローラ:「きゃあああっ! 変質者っ!」
ランディ:「……第2回の二番煎じはよすんだな、小娘」
ローラ:「う〜……」
ヘキサ:「そんな事よりよ、どーしてエンフィールドからいなくなったあんたがここにいるんだよ?」
ランディ:「黙れ、第三部隊隊長の付属物」
ヘキサ:「だ、誰が付属物――」

ぺし。

ヘキサ:「うぎゃっ!」
ローラ:「ヘキサ、大丈夫?」
ヘキサ:「こ、こいつ……右手が生身じゃねえ……パワーが不自然すぎる……」
ローラ:「……おじさん、右手が義手だったの?」
ランディ:「……上司が上司なら部下も部下だ。不必要な詮索してなにが楽しいんだか」
ヘキサ:「うがー! こいつ、虫が好かねえ!」
ランディ:「ふん、うるさい虫だ……」
ヘキサ:「……っ!!」
ローラ:「まあまあ、ヘキサ。せっかく今回の商品が決まったんだからさ」
ヘキサ:「……へ?」
ランディ:「……商品?」
ローラ:「そ。おじさんの核兵器搭載で銃器類が総計八十七個搭載されてて対宇宙人用迎撃システムがあって原子力で動いてる右手用義手」
ランディ:「無茶苦茶ぬかすなああああっ!」
ヘキサ:「じゃあ、十徳ナイフみたいにフォークやスプーン、栓抜きやねじ回しが付いてるのか?」
ローラ:「あっ、いいな♪ あたしも1本もらっちゃおっと♪」
ランディ:「付いてないっつーとるだろーが、小娘! ……こら、俺の義手を引っ張るな!」
ローラ:「という事で、元騎士団長にしてリカルドおじさまの宿命のライバル、ランディ・ウェストウッドの動力内蔵高性能義手、価格は要相談でお届け致します! お問い合わせはエンフィールド市、セントラルロット・ルクス通り――」
ランディ:「待たんかああああっ!!」



その7、マジックモンスター

ヘキサ:「では、悠久書店・偽通信販売第二部第7回っ!」
ローラ:「今日の商品は、みんなに人気のマジック・モンスターですっ! 相方は護身獣使いのショタ殺し魔術師、リオ・バクスター君!」
ヘキサ:「すっげー語弊のある言い方だぞ、それ……」
リオ:「こんにちは、ローラちゃん、ヘキサくん!」
由羅:「あら〜、来てくれたの? おねーさん嬉しいわ! しっぽでふさふさしてあ・げ・る♪」

ばきっ。

由羅:「きゅうううう……」
ヘキサ:「話をややこしくするんじゃないっ! 店主が困るだろーがっ!」
リオ:「……大丈夫かな、由羅さん」
ローラ:「それよりもさ、ローラお姉ちゃんにマジックモンスターの話をしてくれる?」
リオ:「う……うん」
ヘキサ:「(……ローラの奴、よっぽどリオにお姉ちゃんって呼ばせたいんだな)」
リオ:「これが、マジックモンスターの元なんだよ」

リオが懐から、卵のような物を取り出す。

ローラ:「……卵?」
ヘキサ:「もっと独創的なボケ方はないのかよ、おい」
ローラ:「う、うるさいわねっ!」
リオ:「でね、これに持ち主の魔法力を込めると――」

ぽんっ。

モンスター:「わおおおおおん!」
リオ:「という具合に、それぞれ違ったモンスターになるんだ」
ローラ:「わぁ〜っ! 面白そう! ねえねえリオ、やってみてもいい?」
リオ:「いいよ。ほら。ローラお姉ちゃんの分も持ってきたから」
ローラ:「ありがと、リオ! さ、お姉ちゃんと一緒に遊びましょ!」
リオ:「うん!」
ヘキサ:「仕事忘れてやがる……。まあいいや、オレが説明しよ。――このマジックモンスターは人間やエルフ、ライシアンを最優先で守るようにプログラムされているので、お子様に危害を加える事はありません。また、一定時間が経過すれば元の卵に戻りますので、再利用も可能。何回遊んでも飽きないこのマジックモンスター、通常価格で1個50ゴールドのところを特別価格、4個セットで180ゴールド! お問い合わせはセントラルロット・ルクス通り――」
マリア:「え〜い☆ アニメイト・オブジェクト!」
ヘキサ:「…………へ?」

しゃぎゃああああああっ!

リオ:「うわあああっ!」
ローラ:「きゃあああああっ!」
マリア:「いやああん! おっきくなりすぎた〜っ!」
ヘキサ:「おいおいおいおいっ! 何だ何だ何だ何だっ?」
ローラ:「マリアちゃんが『あたしならもっと大きなモンスター作ってみせる』って、変な呪文を卵に掛けて……」
マリア:「変な呪文なんかじゃないわよ! 異世界から魔獣の精神体を召喚して憑依させただけなんだからねっ!」
ヘキサ:「おお――――いっ!! 禁忌の呪詛クラスの危険な魔法じゃねえか、それっ!」
ピート:「や、やっぱ魔法の触媒、水晶の代わりに氷砂糖使ったのがまずかったかな、マリア」
マリア:「ぶ〜☆ ピート、あんたなんて事したのよっ!」
ヘキサ:「ディザスター(大災害)コンビの仕業かよ……。もー駄目だぜ、ローラにリオ。逃げて第五部隊に任せるしかない」
リオ:「む、無責任すぎるよぉ……」
マリア:「大丈夫! リオのビーティとマリアのリスで合体攻撃すれば!」
リオ:「できないってば! 無茶言わないで、マリアお姉ちゃん!」
ピート:「男だろ、リオ! 根性さえあれば何とかなる!」
ローラ:「無茶言わないでよ、ピートくん!」
ヘキサ:「という事で、あんまり妙な魔法を掛けると暴走するから、魔法の使える子供のいる家では扱いに気を付けるよーにな。じゃ」
モンスター:「ぎゅるおおおん!」
4人:「うわああああああっっ! 何とかしてーっっ!」



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