悠久書店・偽通信販売 特別編(担当:エル・ルイス&マリア・ショート)



特別編、かち割りと山ぶどう

エル:「さて、今回は……」
マリア:「さくら亭の特別提供でお送りするワイド版、ゲストは――シーラ・シェフィールド&パティ・ソールです!」
シーラ:「エルさん、マリアちゃん、招待してくれてありがとうね」
パティ:「で、あたし達は何をすればいいの?」
マリア:「え〜と、いつもやってる事でいいから。例えばエルをピアノ線で縛り上げてかかと落としするとか、エルの首筋に噛み付いて血をすするとか」
シーラ:「……マリアちゃん」
パティ:「……勝手に他人をバケモノにしないでよ」
マリア:「え、違うの? 巷でそーゆー噂が流れてるらしいけど」
シーラ&パティ:「違うッ!」
エル:「……店主の仕業だな、全部」

<店主のコメント>
はい、そうです(^^;)


エル:「さ、本番行くぞ」
マリア:「まず、本日の目玉その1。グラシオコロシアム特製のかち割りです!」
パティ:「シーラが知らなかった、あれよね」
シーラ:「うん……」
マリア:「マリアも知らなかったけど」
シーラ:「でも、あの人もパティちゃんも好きだっていうから飲んでみたけど、柑橘系の清涼感溢れる酸味が口蓋の内部に充満して、ほんとに最高だったわ」
エル&パティ:「…………?」
マリア:「な、何だかよく分かんないけど、シェフィールド家の令嬢も賞賛するクールな味覚が、この缶の中に――」

ぱかっ。

シーラ:「あれ?」
マリア:「水しか入ってないじゃないの、エル!」
エル:「……だから、それは飲む前に冷蔵庫に入れて凍らせるんだよ」
パティ:「氷も溶ければタダの水。当たり前だけどね」
マリア:「ふんだ! マリア、こっちの缶を魔法で冷やして飲むもん!」
エル:「おい、待て――」
マリア:「水よ凍れッ!」

ぼんっ!(缶が爆発)

マリア:「…………」
パティ:「あ〜あ、びしょびしょ……」
エル:「マリア、お前も魔術師だったら物理法則の基本くらい覚えとけよ」
マリア:「……物理法則の基本?」
エル:「普通、物質は温度が高いほど膨張して体積が増加し、逆に温度が低いほど収縮して体積が減少する。しかし水は面白い事に、摂氏4度を下回ると、温度が低くなると体積がなぜか増加する。氷が水に浮かんだり、湖が表面から凍ったり、全てはこの法則が鍵となって――」
マリア:「ああああっ! 店主が妹に勉強教える時みたいなまどろっこしいのはいや――――っ!」
シーラ:「次の商品を紹介してくれる、マリアちゃん?」
マリア:「……うん。覚えてなさい、エルっ!」
エル:「何もやってないだろっ!」

《注意》
凍結した時の破裂では爆発はしませんよね、ちょっと。
ですので、ここの表現はオーバーだったかもしれません(汗)。


マリア:「そして……本日の目玉その2はこちらです!」
シーラ:「あ、山ぶどう!」
パティ:「そういえば、シーラって山ぶどうの事も知らなかったのよね」
シーラ:「パティちゃんは前から知ってたの?」
パティ:「さくら亭の食材採集で、街の外に出掛ける事は結構あるから……」
エル:「アタシも薬草採集で、街の外に出掛ける事は結構あるけど」
マリア:「マリアも魔法の実験で、街の外に出掛ける事は以下同文だよ☆」
シーラ:「お仕事やお勉強で忙しいんだろうけど……いいなあ……」
パティ:「虫に刺されたり木の枝で引っ掻いたり、結構大変なんだけどね」
シーラ:「あ、ごめんなさい」
エル:「……それにしても意外だな、マリアがアウトドア派だったなんて」
パティ:「雷鳴山の急斜面を疾走しながら魔法合戦してる、あれの事?」(「悠久幻想曲」オープニングムービー参照)
シーラ:「ええ、多分……」
マリア:「エルとおんなじ趣味なんてなんだかやだーっ!」
エル:「お互い様だっ!」
シーラ:「いやよいやよも好きのうち、って本当だったのね(^^)」
パティ:「明らかに違うよーに見えるんだけど(^^;)」

そして、1時間後――

マリア:「あー、おいしかった☆」
シーラ:「私、もうお腹いっぱい……」
パティ:「この2つ、さくら亭の新メニューに採用してみようかな?」
エル:「さて、凍らせるだけでお召し上がりになれるグラシオコロシアム特製・天然水で製造のかち割りと、エンフィールドの自然の恵みがたっぷりのちょっぴり甘酸っぱい山ぶどう、お値段はセットで――」
マリア:「エルぅ……」
エル:「どうした、マリア?」
マリア:「商品……食べちゃった……」

……………………。

エル:「全部……食ったのか?」
シーラ:「多分……」
パティ:「みたいね……」
マリア:「ええ――――ッ!?」
エル:「お前が注意しないのが悪いんだろがっ! 商品と試供品は区別できるように分けておけって何回も言っただろ!」
マリア:「だって、あんなにたくさんあったのを全部食べちゃうなんて……そうよ、エルがぱくぱくぱくぱく食べちゃったのが悪いんじゃない!」
エル:「何でだよっ!」
パティ:「待ちなさいよあんた達っ!
エル&マリア:(ぴたっ)
パティ:「もう、2人とも血の気が多いんだから……自分の事は言えないけど」
エル:「ああ……アタシが悪かった」
マリア:「ごめん、パティ……」
パティ:「落ち着いて見てごらんなさいよ。ぶどうの皮を見れば、誰が一番食べたのか分かるでしょ?」
エル:「そう言われて見てみると……あれ?」
マリア:「シーラの前の食べ滓が、一番多いような……」
パティ:「……シーラ」
シーラ:「パティちゃん?」
パティ:「あんた、何房食べたの……?」
シーラ:「え〜と……(^^;)」
エル&マリア:「……シーラ」
シーラ:「と、ゆー事で! 次回は『兎と鴨のクランベリーソース和えさくら亭風』です!」
3人:「待てえええっ!



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