◆義経人名辞典◆

 「少女義経伝」を彩るキャラクター達の人名辞典です。

・年齢と身長はDVD記載のものです。
・年齢は、宇治川の合戦が起こった寿永3年(1184)1月よりもう少し前、寿永2年(1183)秋〜冬頃(史実では京都近辺の国で活動中)を基準とした満年齢と推測しておきます。平家の都落ちは寿永2年7月で、史実では平家が京を支配していた時期から半年も開いてしまうのですが、序章から1章まで半年も何もなしでは可哀想ですので。もちろん、一部のキャラクター(具体的には九羅香嬢)は史実とは全然合っていません(笑)。
・年の表記は旧暦ですので、便宜的に( )内に記してある西暦とは完全には一致しません(平均して1ヶ月ほど年始が遅れます……というか西暦も、1月1日が年始に統一されるのは比較的新しい時代ですが)。また、改元した年には2つの年号が同居する事にも注意が必要です。
・史実における官職は、時期を問わずに著者が調べて分かった範囲で列記しています。ゲーム開始以前や終了後の官位も含んでいますのでご注意を。

 メインキャラクター
 サブキャラクター・源氏関係
 サブキャラクター・平家関係
 サブキャラクター・その他


◇メインキャラクター◇

主人公(武蔵坊弁慶)/しゅじんこう(むさしぼうべんけい)
 /17歳、180cm
 現代世界の東京から、高校の修学旅行で京都に来た高校生。旅館で悪友2人とのゲームに負けた罰として女湯の覗き見をする羽目になり、その瞬間に「天の扉」の力で800年余り昔――平安時代末期の京都(というか、この時代の名前は単なる「京」)に飛ばされてしまう。その際に裸を直視してしまった謎の抜刀美少女(九羅香)に追い回された挙句武器を持った怪しい男2人(教経と廉也)に襲われ、割り込んだ山伏(弁慶)のために窮地を免れるが、死に瀕した山伏から「武蔵坊弁慶」の名を譲られて九羅香=義経のために戦う事になる。性格は人が良いが割と能天気で、事ある毎に思い付く三択はその内心を物語っている……はず。また煩悩もmoo系主人公随一の激しさを持ち、与一の感触や入浴シーンを妄想するわ深夜の紅葉の誘いに身の危険を感じるわと、その度にプレイヤーを大いに楽しませてくれるであろう(爆)。苦手なのは歴史と地理と筆記体。
 戦闘では長身と教経に匹敵する筋力を活かし、弁慶の形見の長刀を振るって戦う。術はやや苦手だが、全体攻撃・回復を満遍なく覚えるバランス型。更に特殊必殺技を発動させるには不可欠な存在であり、ゲーム攻略のキーパーソンとなる。全ての戦略パートに登場するため、必然的にレベルは最も高くなりやすい。
 ……ちなみに、本名を「武蔵坊弁慶」と名付けるのは禁止されていない。
〈史実〉
 本物の「武蔵坊弁慶」の項を参照。

源九羅香(義経)/みなもとのくらか(よしつね)
 /17歳、148cm
 (半ば自業自得に)壊滅寸前だった清和源氏本流の生き残りで、鎌倉に本拠を持つ源頼朝の腹違いの妹。そして源氏特殊部隊の指揮官。京に構えていた隠れ家で主人公と衝撃的(笑)な出会いを果たし、本物の弁慶の死の衝撃を乗り越えて主人公を仲間として認めていく。幼い頃は鞍馬で、後は奥州で育ったため、普通の武士の常識には囚われない非常識さ良さを持つ。性格は生真面目で活発、人を惹きつける魅力に富んでいるが、家族の愛情に飢えているのが弱点(頼朝とは成人するまで会った事もなく、向こうが存在を知っていたかも怪しい。政治手腕は尊敬しているが、ほとんどは手紙のやり取りだけ)。普段は男装しているが、態度や行動はプライベートとほとんど変わらない。小柄で身軽とはいえ、やはり体が小さいので膂力に恵まれず弓矢は苦手。
 戦闘能力は全体的に高いが、全体攻撃術を覚えるのが遅過ぎる。戦略パートでは侵攻を主に行い、金属性の敵相手か特殊必殺技の使用でもない限り戦闘は避けたい。イベント戦闘では太刀を振るって活躍できるし、終盤では術の効果にも期待してよい。
 DVD掲載の設定画では、すれんだーな体格が暴露されている(爆)。紅葉も与一も似たようなものだが。
〈史実〉
(a)平治元(1159)-文治5(1189)。左衛門少尉・検非違使、従五位下伊予守。男性であるという点を除いてほとんどそのままだが、側近に文官や坂東の武士を欠いていたためか頼朝からの不興を察する事ができず、壇ノ浦の後には次第に頼朝と敵対していき、結果として平泉で殺害される事になる。余談だが、逃亡の最中に本人の了承なしに実名が「義行」「義顕」と変えられている。やはり小柄で、その上に出っ歯だったらしい(汗)。
(b)近江源氏の一員、源(山本)義経(生没年不明)。六波羅平氏に対して反旗を翻すが敗北、鎌倉に下り頼朝と近江源氏との連携を行い、後に義仲の軍勢に加わり京に入ったらしい。九郎判官とは一切関係ないし、ゲーム内の九羅香とも全く関係ない。なお、近江源氏だが宇多源氏ではなく清和源氏だとか。

佐藤紅葉(継信)/さとうもみじ(つぐのぶ)
 /17歳、146cm
 陸奥の武士の家の娘で、九羅香の幼馴染として野山を駆け回って育ち(……の割には胸に病を抱えているため身体が弱いが)、その縁で九羅香の副官として戦場に身を投ずる。慈悲深い性格で、苦しむ民を救うために戦の終結を心から望んでいる(本人も、炊き出しや風水学による井戸掘りで支援している)。言動は控え目で誠実、プライベートではお淑やかな感も与え、しかも料理も上手という、濃いキャラクター達のまとめ役。一応は義経と同じく男装しているはずだが、その格好のまま孤児達に「お姉ちゃん」と呼ばれているのは問題があるのではないだろうか。
 戦闘能力は低く、鉾の威力にはあまり頼れない。全体攻撃を覚える後半にはそこそこ使えるようになるが、あからさまに言うならばお荷物とも言える(待て)。ただし、戦闘奥義の全体完全回復効果は重宝する。
 湯当たり姿が可愛い(笑)。
〈史実〉
 ?-元暦2(1185)。「嗣信」「次信」とも記す場合がある。摂関家領信夫荘の荘司の一族で、その関係上奥州藤原氏に仕えていた。言うまでもなく男性で、屋島で戦死する。『平家物語』には「教経に射殺された」とある。

静御前/しずかごぜん
 /18歳、157cm
 京で評判の高い白拍子で今様の歌い手。清盛がいた頃の平家に出入りしていたが、どういう経緯があったのか義経部隊の一員となった。のんびりおっとりの「悠久」シリーズのセリーヌタイプで、細かい事を気にしない大雑把な性格。言動はどこまでが本気なのか定かではないが、知識が豊富なのは確か。母は外国から密航してきた人物であり、血筋では異国人だが環境的には京生まれの京育ちという複雑な経緯を持つため、その事をしばしば思い悩んでいる。
 扇を使った護身術の威力は低いが、術は仲間内では最強クラス。MPも高く、気前良く全体攻撃をばら撒く事が可能。
 廉也によると、彼女も義経四天王の1人らしい。ちなみに伝説上の義経四天王は様々な組み合わせがあり、しかも全てに共通する人物は存在しない(汗)。
〈史実〉
 生没年不明。義経の側室(正室ではない。正室は河越家の女子。他にも複数の女性と関係)であり、畿内で捕縛されて鎌倉に連行された際に義経の男児が生まれるが、子供は即座に処刑されている。

那須与一/なすのよいち
 /16歳、155cm
 下野の武士である那須氏の11番目の子供で、女の子だが病や戦で死んだ兄達の代わりに家と領地を護るために出陣、義経部隊に配属される。常に冷静な武人で浮いた所のない性格をしており、口数も少なく近寄り辛いが、動植物には普段の警戒も和らぐ。弓の達人だが、なぜか眼鏡がないと狙いを付けられなくなる。煩悩には厳しく、感知すると即座に射撃する事もあるので要注意。九羅香と紅葉には、平泉に武者修行に行った時に面識があった。
 戦闘では弓矢で与えるダメージが高いが、雑魚相手には全体攻撃術が効果的。戦闘奥義も威力が高いのでお勧め。
〈史実〉
 生没年不明。那須郡の大半を占める皇室領那須荘の荘官の子供。当然ながら男性で、実名は「宗隆」から「資隆」になる。鎌倉の御家人であるため、義経とは傘下の軍で戦った他には直接的な関わりを持っていない。確かな資料には活動が見えないが、『平家物語』では屋島で扇に続いて老人まで射殺した鬼畜武士として悪名を馳せている(をい)。なお男子を持たず、那須家は兄の子孫が継承している。

伊勢玲奈/いせれいな
 /14歳、138cm
 伊勢の忍の頭領の娘で、臨時雇いの忍者の仕事とフリーの時の盗賊稼業をこなしていたが、九羅香に出会い仲間に加わった。小柄で子供っぽく見え感情表現も子供だが体術は得意で、長身の主人公を軽々と投げ飛ばす。密かに女の子っぽい小物も好きで、猫も「忍ねこ」として仕込むくらいなので好きなのだろう。
 戦闘では体術を使い、短刀や手裏剣を適宜併用している。行動数が多いが破壊力は今ひとつ見劣りするのが残念な上に、ボスとして頻繁に登場する廉也や教経の攻撃に弱いため、いきなり戦闘不能にならないように注意が必要。
 なお、料理経験は一族に伝わる保存食くらいしかなかったという。てゆーかそれは料理とは呼ばん。
〈史実〉
 生没年不明。実名は「義盛」(もしくは「能盛」)で、忍者ではないが伊勢のそこそこの名家の出とも伝えられる(伊勢平氏の分家である伊勢氏とは関係ない)。壇ノ浦で平宗盛を生け捕りにするが、鎌倉に護送する途中で頼朝の姉妹の婿の藤原(一条)能保の配下の後藤基清と諍いを起こし、頼朝の心証を多大に害する。義経が西国に落ちる際に別れ、以後の消息は不明。伊勢で頼朝に反旗を翻し討たれるとも伝わるが、伊勢平氏の反乱と混同されている節もある。


◇サブキャラクター・源氏関係◇

武蔵坊弁慶(先代)/むさしぼうべんけい(せんだい)

 山伏。かつて五条大橋(場所は現在の松原橋に相当)で願掛けに通行人の刀を奪い、その時に九羅香に敗れて主従の誓いを立てる。その後は平家の関係者を度々襲撃していたのだが、京に戻ってきた九羅香の下に馳せ参じようとしたその晩、主人公を救おうとして廉也の斧を背中に受けて致命傷を負い、自らの名と長刀を主人公に託して落命する。その後も魂は主人公を守護していたらしく、観月=清盛は主人公を守護する山伏の姿を看破する事となる。
〈史実〉
 ?-文治5(1189)。元は比叡山の武蔵坊に居住していたと伝わる。やはり詳しい事はほとんど分からないが実在した事は確かで、義経に最後まで従い平泉で戦死したらしい。

源頼朝/みなもとのよりとも

 九羅香(義経)の兄で鎌倉源氏の棟梁。源氏でありながら配下の大半は平氏(北条、三浦、梶原、千葉、上総、畠山、江戸など)で、源氏とはかえって衝突している例が多い。典型的な政治家タイプの人物であり先を読む事に優れているが、統率を乱す行為には容赦しない。ちなみに正室(藤原氏熱田大宮司家)から生まれた子供であり、他の女性から生まれた範頼や九羅香とは成人前には面識はない。ゲーム内では鎌倉にしかいないため、手紙のやり取りしかしていない。九羅香が女の子だと知っている数少ない人物。
〈史実〉
 久安3(1147)-建久10(1199)。従五位下右兵衛佐、従二位権大納言・右近衛大将・征夷大将軍。平治の乱で伊豆に流されていたが、以仁王の令旨を受けて挙兵、後に六波羅平氏や奥州藤原氏を滅ぼす。鎌倉幕府の初代将軍だが、幕府自体の力は現在の学会では昔ほど高く評価されていない。また腹違いの弟(範頼、阿野全成、義経)や叔父(志田義広、新宮行家)が抹殺されたため、近親の一族は鎌倉時代初期に根絶状態となっている。……同腹の弟(希義)や姉妹(一条能保夫人)だけには優しいが。

源範頼/みなもとののりより

 鎌倉源氏の軍団の指揮官で九羅香の腹違いの兄、頼朝の腹違いの弟。凡庸な性質であり、戦でもストーリーの都合上大軍を思い通りに扱いきれておらず、勝利の手柄を常に義経部隊に奪われている。人がいいらしいが、単に同情だけで何もしないというのは単に「気が弱い」と言うのである(きっぱり)。
〈史実〉
 生没年不明。三河守。遠江で生まれたが平治の乱後の追及を逃れ、公の記録では叔父の志田義広との戦いで初登場。義経と共に京や西国に下り、壇ノ浦の後は九州に留まり戦後処理に当たる。曾我兄弟の仇討(建久4(1193))の際に頼朝暗殺未遂との噂が立つ中、北条政子に対して「兄がいなくても私がいさえすれば安心だ」とプロポーズ語弊を招くような失言を行い、伊豆に追放されてその後は消息不明(曽我兄弟事件の裏で発生したクーデターにより粛清されたという見解も強い)。子孫は吉見氏を名乗るが、鎌倉時代を通して危険視されており、範頼の玄孫である吉見義世が反逆の汚名を被って粛清された事もある。

梶原景時/かじわらかげとき

 桓武平氏鎌倉流の武士で、範頼に付き従う軍監。坂東では珍しく文才があるために頼朝に重用されたが、かなり陰険で自己中心的な性格なので周囲には(上官の範頼にも)好かれていない。特に義経(九羅香)を嫌っておりその仕打ちは橋田作品のドラマの姑さながらだが、戦に関しては「殴り付けて脅す」「恩賞で煽動する」以外の手段を持たないカス以下。しかも服装センスは敦盛の次くらいに狂っている(笑)。主人公曰く「告げ口野郎」、範頼曰く「かかし同然」などの異名で親しまれていない。
〈史実〉
 ?-正治2(1200)。鎌倉の侍所所司。範頼ではなく義経の軍監であった(範頼の軍監は土肥実平)。京に出ていた経験があるためか一般の武士とは違い文筆に長じており、息子の景季共々文才で知られたが、その弁により多くの御家人を失脚させたために他の武士達に大いに憎まれる。頼朝の死後、2代将軍の源頼家に対して御家人の結城朝光を「讒言」して、逆に有力な御家人達により鎌倉を追放。京に上る途中駿河で襲撃・殺害され、梶原家は以後衰退する。ちなみに妻が頼家の乳母の1人となっており、実朝の乳母を出している北条家による頼家追い落としの犠牲とされたとする見解も強い。

源義朝/みなもとのよしとも

 九羅香の父。九羅香が物心付く前に清盛との政争に敗れて殺害されている。九羅香が戦に身を投じたのも、本来は父の敵討ちのはずだった……らしい。
〈史実〉
 保安4(1123)-永暦元?(1160?)。従五位下下野守・左馬頭、従四位下播磨守。若い頃から鎌倉を拠点としながら京でも活動する。保元の乱で父の為義や弟達が処刑や流刑にされ、清盛に大きく水を開けられた勢力を挽回しようと藤原信頼と共に平治の乱を起こして敗北、逃亡中に殺害される。

北条/ほうじょう

 鎌倉の有力御家人その1。与一EDで名前だけが登場。
〈史実〉
 北条時政(保延4(1138)-建保3(1215))。従五位下遠江守、鎌倉の政所別当。伊豆の桓武平氏の一族(の恐らくは分家)で、頼朝の正室である政子の父。頼朝の挙兵に初期から従い、甲斐源氏との同盟締結や朝廷との交渉など、軍事面より政治面で主に活動する。比企家の乳母を持つ頼家を排して北条家の乳母を持つ実朝の擁立に暗躍するが、後に子の政子・義時との政争に敗れて引退に追い込まれる。子孫は本家当主(得宗)を中心として、摂家や皇族の将軍を迎えては成長すると京に追放し、北条家の分家や有力御家人を粛清して幕府を支配するが、元弘3年(1333)の鎌倉幕府滅亡の際に一族のほとんどが滅び、生き残りも南北朝時代を最後に姿を消す。後北条氏は室町幕府政所執事を世襲した伊勢家(伊勢平氏)の分家出身の伊勢氏綱が改名したもので、この北条氏と直接の関係はない。

安達/あだち
※ゲーム内表記は「足達」。

 鎌倉の有力御家人その2。与一EDで名前だけが登場。
〈史実〉
 安達盛長(保延元(1135)-正治2(1200))。三河守護。頼朝の乳母(比企尼)の娘婿で親族にも京の関係者が多く、頼朝に古くから仕えて信任される。子孫は秋田城介を世襲する幕府の重臣となるが、泰盛が霜月騒動(弘安8(1285))で執権北条貞時の内管領平頼綱により倒され一時衰退、残りの一族も鎌倉幕府と運命を共にする。『吾妻鏡』の執筆にも、安達家と金沢家(北条家の分家)が深く関わるとする説が強い。

足利/あしかが

 鎌倉の有力御家人その3。与一EDで名前だけが登場。
〈史実〉
 足利義兼(?-正治元(1199))。従四位下上総介。源義家の四男である義国の嫡流の子孫で下野の足利郡に拠点(皇室領足利荘)を持ち、父の源義康は保元の乱で義朝と別口で兵を率いて戦っている。足利荘と簗田御厨(伊勢神宮領)を巡って対立する藤姓足利氏(藤原秀郷の子孫)を打倒するために坂東の源氏としては珍しく早期に頼朝の味方に立ったために鎌倉幕府では厚遇され、子孫は三河と上総の守護となるが、霜月騒動で家時が自害、その孫の高氏(後に後醍醐天皇から一字拝領を受けて尊氏)は鎌倉幕府に反旗を翻して六波羅と鎌倉を攻撃する事となる。室町時代の将軍家でもあるが、分家である関東公方系の子孫が喜連川家=足利元子爵家である。余談ながら義兼は、母は頼朝の母の実家である熱田大宮司家の一族で、正室も頼朝の正室(北条政子)の妹。全くの余談ながら従兄弟の新田義兼と姓および名前が同じなので、混同しないように要注意。


◇サブキャラクター・平家関係◇

平知盛/たいらのとももり
 /33歳、167cm
 六波羅平氏(俗に言う「平家」)の重鎮で、今は亡き平清盛の四男にして権大納言。棟梁は次男である兄の宗盛なのだが、実質的にこちらが指揮権を握っている(しかし対立してはいないらしい。というか宗盛はゲーム内に登場しないのだが)。知将であると同時に自らも弓矢(ただし和風の弓ではなく中国風の弩)を手に取る武人であり、平家の再興のために本来の温和な心を包み隠して非情に徹し、自らも手駒の1つとして計略を立てる。静とは古い知り合いで、対立する立場に立った現状を……どう思っているかは当人達にしか分からない。術も武器攻撃も得意で、奥義「夢幻連弾」による全体攻撃も繰り出す。
〈史実〉
 仁平2(1152)-元暦2(1185)。従二位権大納言であるのみならず、元の武蔵知行国主(国司の任命権を渡された上位責任者)でもある。源平の合戦の初期には以仁王や山本義経、源行家を討伐したが、壇ノ浦で安徳天皇と共に入水する。なお頼朝より5歳年下で義経より7歳年上。

平教経/たいらののりつね
 /24歳、178cm
 清盛の甥、知盛の従兄弟で、豪快にして怪力無双、巨大な金砕棒から奥義「怒号爆撃砕」を放つ(破壊力では)平家最強の武将。強い敵との戦いを求める……もとい、強い敵との戦いしか求めない、良く言えば求道的、悪く言えば「アレ」な男であり、自分に匹敵する膂力を持つ主人公に対して教経的好敵手認定を行う事となる。こーいう男でもなぜか朝廷では能登守。
〈史実〉
 生没年不明。能登守。一ノ谷で戦死とも、壇ノ浦で入水とも伝えるが、前者は誤報とも考えられている。剛勇の士で、文学では義経の宿敵とされている。

平敦盛/たいらのあつもり
 /15歳、165cm
 清盛の甥、知盛の従兄弟……という事は教経の従兄弟でもある平家の武将で笛の名手。武器は長巻(長い柄を持つ刀型の武器)だが、それよりも術を得意とし、奥義「妖華土蜘蛛」も追加効果がいやらしい。元は温厚な性格だったらしいのだが、ゲーム時点では一変して卑劣な性格になっており、一ノ谷で死んで妖魔として復活した後は明らかに邪悪な存在と成り果てる事になる。
〈史実〉
 嘉応元(1169)-寿永3(1184)。従五位下無官。一ノ谷で熊谷直実に討ち取られたと伝わるが、復活はしない(笑)。文学上のイメージは純粋な若武者であり、ゲーム内の敦盛とは全然似ていない。

廉也/れんや
 /16歳、160cm
 観月の従者である少年で、戦で身内を亡くしてから平家の下で観月と共に育ってきた。観月に対しては忠誠を捧げており、そのために平家に従っている。背丈は主人公より頭一つは低い(つまり当時の平均身長程度)が、膂力と俊敏さにより斧と奥義「滅死斧撃(めっしふげき)」を軽々と使いこなす。金髪と緑の瞳を持つためどー見ても日本人には思えないが、あまり追求しないのが大人の態度というものだろう(待て)。
〈史実〉
 存在しない。

平観月/たいらのみつき
 /14歳、140cm
 清盛の孫である盲目の少女(「悠久」シリーズのアリサは重度の弱視だが、こちらは完全に見えない)。生まれてすぐに行われた処置により視力を失った代償として、非常に並外れた霊力を備えている。幼い外見とは裏腹に平家再興の要としての自分の置かれた立場を理解しているものの、やはり窮屈なのかお忍びで町中へと出歩く癖があるが、あの格好で出歩いてはかえって目立つのではなかろうか(汗)。なお歌と「人寄せの術」が上手。
〈史実〉
 存在しない。ただし珍説の1つである「安徳天皇女性説」と関わりがあると、項目著者は勝手に推測している。

平清盛/たいらのきよもり
 既に死んでいたはずの六波羅平氏の棟梁。魂が観月の肉体に宿っておりそれを操って顕現するが、人格は妖魔として復活したために歪んでしまい、知盛や静が知っていた当時の面影は全く残っていない。当然ながら目的も平家の復興などではなく、帝が所持していた三種の神機を用いて破壊を行う事。一言で言うならばロリコンだが(こら)、幼女の肉体である事が災いして術はともかく物理攻撃には弱いので、通常攻撃と攻撃奥義で集中攻撃するのが有効。攻撃は術中心で、奥義「外法・魂喰らい」も凶悪極まる吸収攻撃。なぜか鉤爪のような軌跡が伴う物理攻撃も用いる。
〈史実〉
 元永元(1118)-治承5(1181)。従一位太政大臣。長子だが側室から生まれたために本来は嫡子ではないが、嫡子の家盛が早逝し、白河法皇の落胤であると噂されるほどの栄達により一族の中心となる。保元の乱や平治の乱に勝利して朝廷の最有力者となり、安徳天皇の外祖父ともなるが、ゲーム開始時点(寿永2年(1183)頃)では既に死んでいる。当人の子孫は事実上壊滅するが、正室から生まれた弟・頼盛の一族は鎌倉時代中頃まで存続する。


◇サブキャラクター・その他◇

長野先生/ながのせんせい

 主人公のクラスの担任。乱暴な性格だが黙っていれば美人。

鎌田/かまた

 同級生その1。眼鏡を着用。

鈴木/すずき

 同級生その2。眼鏡を着用していない(おい)。

巴御前/ともえごぜん

 源(木曽)義仲のお妾さんで、当人も武勇で名高い。そのノリは異様に軽く、容姿と武術にかけては自信過剰気味なほどだが、金属性が災いして主人公と九羅香の前には常に敗れ去る運命にある(笑)。宇治川で敗北した後に京の各所で出会い、終盤には妖魔相手に共闘する事にもなる。術よりも武器(恐らくは長刀)の方が得意。主人公曰く、長野先生に何となく似ているとの事。
〈史実〉
 生没年不明。義仲を引き取り育てた中原兼遠の娘。戦死する直前の義仲により逃がされ、その後は不明。

源義仲/みなもとのよしなか

 巴御前の夫で、信濃の木曽を本拠地とする源氏の一族。九羅香や頼朝の従兄弟にあたるのだが、勢力争いで父親を九羅香達の兄に殺されているため、互いの関係は最悪である。ゲーム内では弁慶の視界に入る間も無く、早々に紅葉に討ち取られてしまう。
〈史実〉
 久寿元(1154)-寿永3(1184)。伊予守・征東大将軍(「征夷大将軍」とされていたが、近年の研究によりそうでない事が判明)。父・義賢は北武蔵を本拠としていたが、鎌倉を本拠とする兄の義朝の長男・義平の手に掛かり殺害されている。信濃や北陸の軍勢を率いて一時期は京を占拠していたが鎌倉の軍勢に破れ、近江まで逃げたところで射殺される。

藤原秀衡/ふじわらのひでひら

 藤原氏の一族である、平泉の奥州藤原氏の三代目当主。九羅香がかつて世話になった人物で、紅葉にとっての主人でもある。ゲーム内では実際に登場する事はない。
〈史実〉
 ?-文治3(1187)。従五位上陸奥守・鎮守府将軍(と恐らくは陸奥・出羽押領使)。平家からの懐柔の結果本来は京の貴族しかなれない陸奥守となるが、源平の合戦を通して介入を回避し続けた(義経を送り出したのが介入と言えるかもしれないが)。奥羽全土に勢力を広げて多賀城(陸奥国府)への影響力を強めるも、死後に起こる鎌倉との戦争により奥羽は鎌倉幕府の勢力圏に組み込まれる事になる。

紅葉の妹

 紅葉が故郷に残している妹。現実の歴史では佐藤忠信に相当するが、特に男装はしていないらしい。
〈史実〉
 ?-文治2(1186)。兄の継信と共に義経に仕える。義経と頼朝が敵対した後に、京で鎌倉方の武士に襲撃されて自害する。

鈴/すず

 京の孤児その1。紅葉の援助を受けて廃寺に暮らしている。紅葉や静と仲良しだが、迷子になって鬼門に捕われてしまう事に(まあ結局は助かるのですが)。紅葉EDでは紅葉の養女となる。

竹松/たけまつ

 京の孤児その2。境遇は鈴とほぼ同じ。

磯ノ禅師/いそのぜんじ

 静の育ての母。舞の師匠でもある。
〈史実〉
 生没年不明。静御前の実の母で、鎌倉に連行された際に付き添っている。

法皇/ほうおう

 当時の皇室の家長であり、京の政界の第一人者でもある後白河法皇。数代前の帝が隠した神機(神器ではなく)の秘密を知る人物でもあり、神機の情報を知盛達に洩らすのとついでに相手の知識の度合まで測ろうとする油断のならない人物でもある。今様好き。
〈史実〉
 大治2(1127)-建久3(1192)。御名は雅仁、法名は行真。保元の乱で崇徳上皇派を放逐して朝廷の実験を握り、源平の合戦に至るまで朝廷を主導し続け、没後にようやく頼朝は征夷大将軍となる事ができた。やはり喉を嗄らしても歌い続けるほどの今様好きで、著作である『梁塵秘抄』を残している。

公卿/くぎょう

 源頼家の子供で実朝を殺害した人物……ではなく(それは公暁)、後白河法皇の言葉を取り次ぐ人物。四位の参議か三位以上なので、間違いなく九羅香より官位が高い。

帝/みかど

 ゲーム内で指すのは、急遽即位した後鳥羽天皇ではなく、六波羅平氏に擁されて西へ下った安徳天皇。ゲーム内では壇ノ浦で船がちらりと登場するだけで、実際にお目に掛かる事は不可能。
〈史実〉
(a)安徳天皇。治承2(1178)-元暦2(1185)。御名は言仁(ときひと)。清盛の外孫であり、壇ノ浦で入水する。特に業績はなし(汗)。
(b)後鳥羽天皇。治承4(1180)-延応元(1239)。御名は尊成(たかひら)。兄の安徳天皇が都落ちしたために急遽即位する。上皇となってからは北面・西面の武士、西国の守護、在京御家人などに影響を広げ、源氏将軍亡き後の鎌倉幕府と北条家を打倒しようと挙兵するが敗北、所領を没収され(大半は他の皇族に還付されるが)隠岐に流される。『新古今和歌集』選出の主宰でもあるが、他にも宮中で刀を打たせたり皇室の菊紋使用の端緒となったりと話題が多い。

盗賊/とうぞく

 治安の混乱に乗じて、各地で平家よろしく陣地取りをしている連中(笑)。義仲軍もこの部類に含まれる(おい!)。装備は貧相で、粗末な鎧と竹槍だけ(厳密に言うと史実では、この当時にはまだ槍は存在していないのだが)。戦略パートで倒した際の鳴き声(?)・「うきぃ――っ!!」も印象深い。

源氏兵/げんじへい

 盗賊と全く同じ姿をした兵士。「源氏といっても末端は盗賊と同レベルの連中。所詮は下賎な東夷どもよ」という関西系スタッフの主張が反映しているものと推測され(以下削除)。
〈史実〉
 領主やその家臣である騎馬弓兵と、各々の弓兵に随伴する数名ずつの歩兵。歩兵は雑務を主に担当するが、源氏は歩兵にも弓を持たせ、矢数で敵を圧倒したと伝わっている。

平家兵/へいけへい

 源氏兵とは対照的に、赤い鎧と弓矢を標準装備した兵士。雑魚だが戦闘中の台詞も豊富で、中には必殺技持ちもいるので要注意。平家の領地には必ずいるので、ゲーム内登場数は最も多いはず。戦略パートで倒した時の叫び声「あ゛あ゛ぁ゛――っ!!」に無念さが滲み出ている。
〈史実〉
 源氏兵と同じ。やはり攻撃はほとんど弓矢で行い、刀で斬り合う事は滅多にない。

妖魔/ようま

 術者が作り上げた「鬼門」から出現する人型の怪物。元は帝に仕える術者が使役していたのだが、平家お抱えの術者が相当数いるらしく、ほとんどのマップで即席の鬼門からわらわらと出現して(もしくは出現を阻止されて)いる。外見に黒子タイプと仮面タイプの2種類があるが、後者がやや強いくらいで特に大きな違いはない。叫び声は「くえ――っ!!」。

神機/じんき

 代々の帝が所持していた、凶悪なまでの力を持つ究極の可変式術兵器。剣・鏡・勾玉の3つで構成されていたが、本来は定まった外見はなく、清盛の使用時には黒いオーラのような形状を取る。不完全な覚醒状態でも京の半ばを崩壊させるほどの力を恐れた数代前の帝の手により、封印を掛けた上で内裏の宝物庫、京近辺の巨大な鬼門の下、比叡山の3ヶ所に隠されていた。公式サイトの記述によると「神の時代の遺物」であり、これに手を付けようとしている平家の動きを危惧して朝廷が九羅香の源氏特殊部隊を手引きしたそうで(でも鞍馬山に陣を構えても走った程度では京にたどり着けないので、九羅香達はどー見ても本隊と別行動を取ってたよーな……)。
〈史実〉
 神機ではなく神器。構成内容は同じだが、内裏にある剣は熱田神宮、鏡は伊勢神宮の神宝の分身として扱われる。平家が都落ちの際に持ち出して、剣は壇ノ浦の合戦で紛失し、内裏にあった別の剣が代わりとなる。勾玉は封印された箱から出された事がなく、本当に勾玉なのかも定かでない(笑)。

弁慶(馬)/べんけい(うま)

 九羅香EDで、九羅香が平泉に帰ってから飼っている白馬。初代から通算すると三代目となる。


※参考資料:主に『国史大辞典』(個人で購入できる代物ではないので、大き目の図書館の参考図書コーナーを探してみて下さい)。ただし近年の研究も多分に反映。


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