∴汎用キャラクターによる「ディスガイア」プレイ日記∴

 
 

 第一話 魔界のプリンス(担当:クラッチ)
 第二話 天使見習いフロン登場(担当:クリスティーン)
 第三話 小さな優しさ(担当:アンドレ)
 第四話 天使のプレゼント(担当:リベルテ)
 第五話 エトナの秘密(担当:キャロル)
 第六話 ラハールの挑戦状(担当:コニータ)
 第七話 魔王さまという仕事(担当:アンタイオス)
 第八話 リインカネーション(担当:フィズ)
 第九話 地球勇者キャプテン・ゴードン(担当:リプリー)
 第十話 天使と悪魔と人間と(担当:クリスティーン)
 第十一話 勇者の心、魔王の心(担当:アンドレ)
 第十二話 WAR OF THE MAKAI前編(担当:リベルテ)
 第十三話 WAR OF THE MAKAI後編(担当:キャロル)
 最終話 戦いの果てに…(担当:コニータ)
 クライマックス〜エンディング(担当:リプリー)
 おまけデータ


 


第一話 魔界のプリンス(担当:クラッチ)

 どもッス。おいらはエトナ様に雇われているプリニー隊のクラッチッス。プリニー隊から選抜された戦闘メンバー仲間のホークとバイエル共々、青い三連星と呼んでほしいッスよ。
(他の連中が雑魚未満なだけでしょーが。それよりとっとと話を進めなさい。(エトナ))
 せっかちッスねエトナ様。えー――エトナ様は2年前に亡くなられた魔王クリチェフスコイ様の息子ラハール様を傀儡にするために、ラハール様の仲間になったッス。
(端折り過ぎ。やり直せ。(エトナ))
 は、はいッス。ラハール様は2年以上前、魔王様が亡くなられる前からず〜〜〜〜っと昼寝していたッスけど、そこをエトナ様が刀や鉄球や機関銃やドリルで殺し……じゃなくて起こして、よーやくラハール様は魔界のあちこちで悪魔達が群雄割拠して、自分の事が忘れ去られている事を知ったッス。そこでラハール様は悪魔達を叩きのめし自分が魔王になると(1レベルのくせに)宣言するんスけど、そんなラハール様を傀儡にするべく、エトナ様はラハール様の仲間になったッスよ。
(……ちょっぴりマシだけど、余計な事を殿下に聞かれるよーな発言しないでよね。(エトナ))
 すいませんッス。ちなみにエトナ様は元から魔王城で働いていたから不審人物じゃないッスし、オトナ向けの出来事は当然ありませんのであしからずッス。
(ヲイ(汗)。しかし確かに昔から、あの野心が爛々と溢れる目と貧相な体には覚えがあったな。(ラハール))
(どーいう識別してんのよこのガキ(怒)。(エトナ))
 ここまではエトナ様に聞いた話。その間、現地集合で待ちぼうけを食らったおいら達はそのまま気持ち良く眠っていたッス。まあよーするに、おかげでエトナ様に「かもーん」なんて呼ばれてもすぐに出られなかったわけで。そこでさっそくおいらは華麗に回転して優雅さを、ホークはいきなりこけてドジっ子属性を、バイエルは敵にあっかんべーをして豪胆さをアピールしたッスけど、エトナ様のお気に召さず殴られたり撃たれたりと散々な有様。しくしく。

 そこでチュートリアルを受けたッスけど、細かい点は省略。魔王城に帰って魔界病院で回復していたら、ゾンビのゾンちゃんさん(「ちゃん」まで入れて名前ッスよ)が、バイアスという新参悪魔が勢力を伸ばし、城まで建てていると教えてくれたんで、時空の案内人さんの手でバイアス城に送ってもらったッス。
 だけど総勢5人、うち3人がプリニーというバランスの悪いグループでは、これから先が辛くなるのは目に見えているッスから、まずは門を護っている悪魔と戦ってちまちまレベルアップ。溜まったマナで、ラハール様は僧侶のクリスティーンさんと女戦士のキャロルさん、エトナ様は男戦士のアンドレさん、クリスティーンさんは赤魔法使いのリベルテさんを議会で弟子にしたッス。オーソドックスで面白味がないッスね。
(この様式美が分からんとは無粋な奴め。戦士・僧侶・魔法使いの3点セットは魔王の下僕として定番ではないか。(ラハール))
(……殿下、それは魔王じゃなくて勇者の定番です。(エトナ))

 気を取り直して城の中に入ると、そこはなかなか品のいい、落ち着いた内装の部屋が広がっていたッス。さっそく高価そうな壺をくすねようとするエトナ様に対して、ラハール様が言うには「魔王の後継者らしく全てを奪い尽くしてやる」との事。ここですかさずおいら達がおだてると調子に乗る辺り、1313歳とは思えないッスよねー。

 こーして戦闘と略奪を繰り返しながら城の一番奥、「抱擁の間」まで来ると、そこに響くのはこの城の主らしき気障っぽい高笑い。現れたのはまあそれなりに見た目のいい美形の悪魔だったッスけど、現れる時に自分で「しゅたっ!」なんて擬音を入れる辺り、微妙にアホっぽいのも確かだったッス。親切にも自分から名乗る気障悪魔の名前はバイアス。魔王の座を狙う悪魔連中をちぎっては投げちぎっては投げ……てはいないにせよ、大勢倒している奴ッス。まあ実力は分かるッスけど、「美と強さをこよなく愛するビューティー男爵」なんて自分から名乗って恥ずかしくないんスか?
 ちなみにバイアスはしっかりラハール様の事は知っているよーで、ラハール様が自分の実力を見抜いて襲撃してきたんじゃないかと言うッスけど、ラハール様は「偶然来ただけだ」と断言。……まあ確かに、バイアスが何者かなんて前情報もろくに集めてなかったッスからねー。しかもラハール様はバイアスに「中ボス」なんてひどい命名をする始末。
 プライドをぐちゃぐちゃにされた中ボスが怒り狂いながら戦いを挑んでくるッスけど、手前にジオエフェクトで6倍強化&2回攻撃の魔法使いとアーチャーを用意している辺り、ただの馬鹿っぽい悪魔じゃないみたいッス。ここでジオエフェクトを見落としていたら壊滅ものだったッスけど、ラハール様をエトナ様が投げて「一文字スラッシュ」でシンボルを全部壊したおかげでふつーに戦えるようになったッスよ。しかしその後も、リベルテさんが敵の男戦士に池を渡ってこられて重傷を負ったり、ホークが中ボスにどつかれて戦闘不能になったり、中ボスの経験値とマナはエトナ様が総取りしたりと、何だか波乱万丈の展開だったッスー。
 ちなみに中ボスは、「手加減していた」とか言い訳を残しておさらばしたッスよ。やっぱりそのうち、パワーアップして復讐なんて事もあるんスかねぇ。
(……しかし中ボスって、微妙にコンセプトが殿下と被ってるのよね。殿下、あーいう親戚がいた覚えってあります?(エトナ))
(……覚えは無いぞ。いや、もしいても知らぬふりをするがそれ以前の問題で……。(ラハール))


第二話 天使見習いフロン登場(担当:クリスティーン)

 わたくしはラハール殿下の弟子で、女僧侶のクリスティーンと申します。わたくし達僧侶は争いを好まない者が多いため、魔界に平和をもたらしたクリチェフスコイ陛下の治世は心から歓迎できるものでしたが、自己中心的過ぎる今の殿下では、たとえ王位を継承できてもどんな事になるのやら。
 なお、殿下はバイアス城から略奪したヘルを全額お小遣いに回してしまい、軍資金は全然増えていません(汗)。

 愚痴はこれくらいにして続きの話にしましょう。わたくしが夜中に起きて、謁見の間の近くの廊下を歩いていると、謁見の間の中で忍者ごっこをしている天使の女の子がいました。ちなみに天使とはこの魔界に近い次元にある異世界「天界」の種族で、人型悪魔の耳の先端を丸めて、背中に白い鳥の翼が付いたような姿をしています。天界とは長年交流がないので生天使につい興奮し、思わず写真まで撮っちゃうわたくしだったりしました。
(そこまでしといて何で放置するかなアンタは。(エトナ))
 それから部屋に戻って――寝ようとしたその時、殿下の寝室から女の子の悲鳴が聞こえました。「殿下もついに大人の階段を!?」と期待して、キャロルさん達を連れて寝室に駆け付けると、そこには怒り心頭の殿下とめんどくさそうなエトナさん、そして半分は寝ぼけ眼・半分は泥酔状態のプリニー隊が。天使の女の子はあの後一人漫才をしているところを殿下に見付かって、自分が殿下の寝込みを襲っていた事を白状したのだとか。
(……誤解されそうな発言するな貴様。(ラハール))
 ……おほん。そしてわたくし達も暗殺者(?)を探すのですが、捜査はろくに進みません。目撃者も一応はいましたけど、捕まえるなんて殊勝な事をしているわけもなく、魔王城の唯一の出口でもある時空ゲートの案内人のジャンヌさんに尋ねると、「誰にも見付からない場所に案内してほしい」と頼まれ、「凍てつく大河」に転送したといいます。
(その時点で「誰にも見付からない場所」じゃないんだけど、そんな所に転送するなんて遭難させて殺す気かっつーの。(エトナ))

 そこでわたくし達も「凍てつく大河」に向かって暗殺者捕縛というより遭難者救助(事によっては遺体回収?)を開始し、「冷たい息」という所で天使の女の子を発見。しかし女の子はわたくし達に動転したのか、身を護るためにゾンビを召喚……って天使がそーいう事をしていいんでしょうか。
 結局、ゾンビを倒した時には要救助者に逃げられていました。わたくし達はここで追跡を一時中断して、経験値とマナ稼ぎのために「冷たい息」で延々とゾンビを倒し続けます。「冷たい息」はゾンビで文字通り死屍累々の有様ですが、腐敗しないので臭わないのが有難いところです。……どこからゾンビが湧いているかは、とりあえずお気になさらずに。

 その後、キャロルさんがアーチャーのコニータさんを弟子にしたところで追跡を再開し、「白い死神」で天使の子に追い着きました。あまりの寒さに露出度の高いキャロルさんとかアンドレさんとかは全身鳥肌なのに、殿下やエトナさんは平気な顔。……いやだからその、馬鹿は風邪引かないとかいう迷信を持ち出すつもりはありませんのでっ(あたふた)。
(虫も殺さないような顔をしてよく言うな……。僧侶といえど立派な悪魔という事か?(ラハール))
 し、しかしわたくし達全員が天然ペースに乗せられているうちに、天使の子は大天使から貰ったアイテムを発動させて、なんとドラゴン相手に戦う事に。もちろんドラゴン1体だけでなく、グレムリンやらインプやら天使の子――フロンさんも一緒です。
 まずは殿下だけがベースパネルから出てインプをおびき寄せると、殿下を囲んだインプの約半分が同士討ちで虫の息になり、総員出撃で弱った敵を撃退。殿下にはわたくしからエクストラゲインしたエスポワールで毒を消していただき、ドラゴンを倒しに向かいます。ドラゴンの飛び蹴りも間合い(真っ直ぐ3ヘクス)さえ読めば安全なのですが、通常攻撃も怖いので総力コンボで仕留めました。
 ちなみにフロンさんは、殿下を杖で殴って反撃1発で吹っ飛ぶ有様。一体何のために参戦したのでしょう。

 ようやくフロンさんを追い詰めると――相手が相手なので、微妙にこちらが犯罪者っぽいですが――、陛下が亡くなられたという事を全然知らなかった様子。エトナさんは「天界に魔界の情報がぜんぜん伝わっていない」と言うのですけど、それは魔界でもお互い様ですので特に驚く事ではないでしょう。しかし大天使がそんな事も知らずに、暗殺相手を名指しで「魔王クリチェフスコイ」と指定するなんて事があるのでしょうか?
 陛下の死、そして殿下の素性を知ったフロンさんは、殿下が父親を失った事に自分まで涙を流します。殿下は「悲しくなんかない」と言われますけど、本心から言われているようにはとても感じられません。……一応この感想は殿下には内緒ですよ?
 必死に愛を否定する殿下に、フロンさんは「悪魔が本当に愛を知らないのか。もしそうなら貴方を暗殺する」と宣言しました。当然、負けず嫌いな殿下は乗せられて、しばらく同棲……ではなく同居する事を許します。とりあえず右も左も分からないでは困りますので、しばらくはわたくしが世話をする事になりました。
(……非常に今更だが、天使言語を使っていたあいつが何でオレさま達と意思疎通できたのだ?(ラハール))
 ……同時通訳同時通訳っ!(汗)


第三話 小さな優しさ(担当:アンドレ)

 俺は男戦士のアンドレ。エトナさんの弟子の斧使いだ。エトナさんが「ご主人様と呼べ」と要求する幻聴がある辺り、近頃は疲れているに違いない。
(幻聴じゃねーわよ!(エトナ))
(というかエトナさん、凄くダメダメな趣味ですね。(フロン))
 と、これが、風変わりというか頭に花が咲いてるというか、きっと天界でも浮いていただろーなと思える天使の女の子、フロンさんだ。大天使とかゆー奴にそそのかされてクリチェフスコイ陛下を暗殺しに来たという犯罪者だが、大雑把な魔王城の連中は何も気にせずに一緒に暮らしている。……いっそラハール様暗殺して帰ってくれればよいものを。

 とまあ数日ごたごたしているうちに、プリニー隊の給料日がやってきた。エトナさんは中ボスの城でラハール様が「エトナの家来はオレさまの家来だ」と断言したのをしっかり覚えていて、給料まで全額負担させるつもりらしい。ラハール様が考えたのは、よそから略奪という悪魔お決まりの手段。しかもそいつが魔王の座を狙っていれば敵を潰せて一石二鳥……なんだが、そこまでラハール様が考えているのかは疑問だ。
 しかし時空の案内人のジャンヌさんによると、金持ちの悪魔の城行きの時空ゲートはバリアがあって開かないというんで、コニータが装備していたコモングラス(レジェンド)のアイテム界に突入。きちんと10階までクリアして戻り、ラハール様に装備させてバリアを解除した。これで心置きなく城へ突入――せずに、門前でひたすら経験値とマナ稼ぎ。リベルテが青魔法使いのリプリーを弟子にしたところで、改めてぎらぎらと金色に輝く「成金城」に乗り込んだ。

 成金城の中には、なぜか魔王城からくすねたと思しき代物があちこちにあったんで、気兼ねなく奪い返す事に決定。俺達やプリニー隊が総出で魔王城に転送していく中、エトナさんがでーんと飾ってあった魔王様の肖像画を「これ欲しい」と言い出して、ラハール様は二つ返事でやっちまう。確かにあの肖像画は魔界で最高の絵師の力作だが、昔から城にいたっていうエトナさんの事だから法事にでも使うのかねぇ。
 肖像画をきっかけにフロンさんは魔王様についてエトナさんと話をするんだが、魔王様の死因を聞いて、一瞬思考が停止していたみたいだ。確かに「暗黒饅頭を喉に詰まらせた」という割には、魔界病院も検視に出たって奴がいないし、いくら怠慢な魔界警察でも調査くらいはすると思うぞ。
 そこで一旦魔王城に時空ゲートで帰ってから、リプリーが緑魔法使いのエセルを弟子にして、エトナさんもストライダーのラッセルを弟子にしたせいで、成金城の前でしばらく格闘家の屍を積み重ねる事になっちまった。しかしこの城、何でこんなに格闘家だらけなんだか。

 そして、「デラックス広間」なる壮絶に趣味の悪い部屋に入る……前に扉の隙間からこっそり覗くと、この城の主らしい魔界貴族が、ヘルを数えながらぐふぐふと豚みたいな笑いを上げていやがった。一応単なる金の亡者じゃなくて、軍資金にして魔王の座を狙っているようだが、俺としては魔法剣士や夜魔族のフィギュアの方が――、
(アンドレさん、あまりヲタクが過ぎると不治の病と認定しちゃいますよ?(フロン))
 何でだ(汗)。そこでラハール様を盾に、もとい先頭に踏み入ると、魔界貴族――ゼニスキーは一瞬思い出せない様子だった(笑)。一応は脳裏に引っ掛かっていたらしいが、2年以上もほっとかれた辺り、そう切実に考えてなどいなかったのは間違いない。「喉に刺さった魚の骨と同レベルか」とラハール様は不満みたいだけど、あれって本当に痛いんだぞ。なおゼニスキーは魔王様の元家来で、城を出て行くときにあれこれと盗み出して行ったようだ。
 とにかく腹を立てたラハール様は、盗品だけじゃなく、全財産まで頂くと宣言。ゼニスキーも「力ずくで奪ってみるゼニ」と売り言葉に買い言葉。一応この時フロンさんは何か考え事をしていたようだけど、心を読む能力なんかないから分かるわけねーだろオイ(汗)。

 ようやく戦闘開始だが、ゼニスキーと2人の師範代を護るように壁になっている男格闘家、クラス名「肉の壁」は、文字通り反撃以外は一切行動しない壁役らしい。という事は射撃なら殺り放題という事だが、格闘家としてのプライドはどこ行ったんだか。
 まあ、それが分かれば実質的な敵は凄く少ないわけだな。まずはラハール様が2歩前に出て待機して、奥の師範代をおびき寄せると、なぜか隣接するだけで攻撃しないんで、そのまま獄炎ナックルで肉の壁を叩きのめして前進。ゼニスキーには攻撃の機会を1度しか与えずコンボで仕留めて、後はちまちまと肉の壁をいぢめて経験値稼ぎ。

 とゆー事でめでたく、俺達はゼニスキーの身ぐるみを剥げるようになり、この期に及んで「金がないと生きていけない」と泣き言をぬかすゼニスキーに、開き直ったラハール様は「この場で葬ってやろう」という優しい事を言い出した。とはいえ天使である以上、こんな楽しいシーンすら見かねたフロンさんはラハール様を暗殺しようとするが、そこでラハール様を掴んで離さないのはうまそうな瓜坊……じゃなくて魔界貴族の子供。頑として手を放そうとしない瓜坊に「何故だ」と言うラハール様に、フロンさんは「それが愛です」だと。しかもうるさがるラハール様に、フロンさんは「愛から目を背けているだけだ」って厳しい事を言うんだなこれが。そこでいきなりラハール様は回想シーンに入ったみたいだが、心を(以下略)。
 ともあれラハール様は、「こいつらはほっといて、金目の物を死なん程度にありったけ奪って帰るぞ」と宣言して帰っちまった。その後フロンさんは何やら独り言を言うんだが、ワガママだの自分勝手だの世界が自分中心に回っているだの優しさがとても小さいだのさんざんラハール様の悪口を言ってたあたり、意外と腹黒系キャラだったりして。
(……あー、最後のは本人としては悪口と微妙に違うよーだが……。(ラハール))


第四話 天使のプレゼント(担当:リベルテ)

 はーいっ。私は赤魔法使いのリベルテ。女僧侶のクリスティーンさんの弟子で、つまりはラハール殿下の孫弟子にあたります。ちなみに緑魔法使いのエセルは私の孫弟子だから、殿下にとっては玄孫弟子?

 さて、成金城から「ほぼ」全財産のみならずゼニスキーさんまでお持ち帰りした私達。ゼニスキーさんは意外と能力が低いので雑用係に決定しますが、肝心の財産は成金の悲しさ、贋作や安物だらけで売り払っても手間賃で損するのがせいぜいで、プリニー隊の給料にほぼ全額が消えてしまいます(汗)。盗品はちゃんと取り返してきましたが、元が魔王城の資産なので分け前の類はありませんでした。
 そんなある晩――クリスティーンさんと同じパターンだけど――、また不審人物を廊下で発見したの。三白眼どころか黒目がどこか分からない目にもみ上げと髭が繋がった髪という見るからに悪人面で、ゼニスキー氏顔負けの筋肉質の巨漢だけど、白い翼が背中に付いているあたり、どうやら天使のコスプレをしている人……じゃなくて天使2号……というかあんなの天使として認めるなんてやだし。
(えー、それは天使長のブルカノ様です。天界暦の月に一度は「おのれ悪魔め!」「きゃー悪魔よ!」なんて言われる事で有名ですね。(フロン))
 ……厳然たる現実に向き合って話を続けると、この不法侵入天使がレディーの部屋を覗き込んで、「邪悪な気に満ちておる」とか「汚らわしい」とかぬかした上に、『魔界植物図鑑』の「受粉の仕組み」のページを読んで妖しく悶えまくるのは、はっきり言って目や耳に対する拷問でした。
(……それを延々と見続けていた貴様、もしかしてマゾか?(ラハール))
 い、一応は後で逐一殿下に伝えるつもりで……(恥)。
 そのままごつい天使は、フロンさんの「すやすや」という寝息を聞き付けて部屋に侵入。フロンさんに何か仕掛けるかと思いきや、ペンダントだけをくすねて帰ってしまい、拍子抜けした私はそのまま自分の部屋へ一直線。この時何とかしてれば話が違っていたみたいですね、てへ。

 という事で、ペンダントを盗まれたフロンさんは、
(1)大天使に貰ったペンダントがないと、天使見習いの自分は魔界で力を吸い取られて死んでしまう。
(2)だから一緒にペンダントを探してほしい。
 と言います。「悪魔なら正々堂々と奪うはず」という事で私達は容疑者から外されているとはいえ、いきなりそんな事を言われても殿下は乗り気になるわけありません。「いいもの」とやらをあげると言われても、びみょーに詐欺っぽいのが気に入らないのか余計かたくなになる殿下。
 まあ、「そんな事を言うなら二度と手に入らない」と畳み掛けられてなーんとなく気になるのか、殿下は「暇潰しに付き合う」という事で私達を連れて出発です。不法侵入者は他に目撃者もいましたが、ゴースさんは私と同じ行動を取っていましたし、ゾンちゃんさんは脳が溶けているのか相手が天使だという事も分からない様子。最後の手段として時空ゲートに行くと、ジャンヌさんのいない間に勝手に「燃え盛る都」行きのゲートが開かれていたんだとか。

 「燃え盛る都」でさっそく上級天使の羽を発見する私達だけど、「経験値+100%」のジオパネルを目にして、フロンさんの体調も構わず(汗)延々とレベル上げ開始。エセルは星魔法使いのスフレを、ラッセルくんは盗賊のアンタイオスを加えて、とうとう人型の人数が戦闘の定員をオーバー(汗)。
(ちなみにランダムネームには、「アッシュ」「スカーレット」「アレクサンダー」「サロメ」「ゼノン」があったりするんだけど、詳しくは他作品参照。(エトナ))
 思う存分育成をしてからよーやく奥へ進んで、フロンさんが汗もかけばトイレにも行くとか、大天使が花と詩をこよなく愛しているとか、エトナさんが殿下を全然尊敬していないとかいうちょっとしたエピソードを挟んでいきました。
(って違うだろ! 特に何なんだ最後のは!(ラハール))
(プリニーさんのうちのどなたかから頂いた薬のおかげで暑くなかったんですけど……。ちなみにどーやって使ったかは乙女の秘密です。(フロン))
 結局上級天使は見付かりませんでしたが、炎の谷底の絶景地点「迷える溶岩」で、遥か上で下品な叫び声が響いた数分後、ペンダントを手に取り大仰なポーズで神様に感謝する某男爵を確認。私としてはその場でメガクールするべきだと思いましたが、その前に殿下がツッコミを入れてしまい、不意討ちで抹殺するのは失敗してしまいました。
 そこで某男爵は殿下を勝手にライバル呼ばわりするものの、ちゃんと名乗りを上げる事すらできず、フロンさんにまで中ボス呼ばわりされてへそを曲げたのか、「わたくしが拾ったからわたくしの物」と開き直ってペンダントを返そうとしません。さすがにエトナさんも呆れて、「殿下と同じくらい自分勝手」と言ってのけました。フロンさんによるとペンダントは邪な者に天罰を与えるとのこと……なのに某男爵は平気……って、拾い物をくすねるその根性は明白に邪悪なんじゃありませんか?
(お黙りなさいフロイライン、あれは天からの贈り物で……ってなに勝手に名前を書き換えているんですかー!!(バイアス中ボス))
 (無視)ともあれ某男爵は殿下に「ただの中ボスと侮ると後悔する」と笑いますが、エトナさんの言う通り、自分で認めた時点で何か負けているような気が明白にします。そこで茶々を入れられた某男爵はすっかり怒り狂い、「肉体を極限まで鍛え上げ編み出した必殺技」を携えて襲い掛かりました。

 度重なるビューティー波でコニータさんとリプリーちゃんが戦闘不能になったものの、集中攻撃の結果、ビューティー男爵はエトナさんの槍の前に血の華を咲かせてノックダウン。どこから取り出したのか、包帯とギプスと松葉杖姿になっても名乗ろうとして段差で転び、残念ながら(汗)ペンダントだけが溶岩の谷へ――、
 すかさず殿下が飛び込み、溶岩の中から拾い上げました。……手が焼けるように痛いのは、溶岩の熱のせいではないんですよね殿下?
 邪だと判定されて安堵したような殿下に、ちょっぴり寂しげなフロンさん。すかさずいいものをよこせーと言う殿下ですが、フロンさんに「胸に手を当てて下さい」と言われて、つい私も胸に手を添え感じたのは、キャロルさんやコニータさんよりはちょっぴりましな、でもグラマーには程遠い膨らみ。
 ……ではなく、「ラハールさんは自分では否定するけど、危険を冒してまでペンダントを見付けてくれた優しさがあります。それが『いいもの』です」という事。うーん、なかなかひねりが利いてて面白い娘よねフロンさんって。
 まあ殿下は悶え苦しむほど恥ずかしがっていたみたいですけど、その反応ってまんざらじゃないって事ですか? ふふ〜ん。
(貴様ぁぁぁ〜〜!!(ラハール))

 ……けほっ。獄炎ナックルで制裁するなんて、私が青魔法使いだったら死んでるところですよぉ。
 話は戻りますけど、殿下が先に帰ってから「これで天界と魔界の関係を良くする事ができるかも♪」と言うフロンさんに、エトナさんは「そんな都合のいい考えをしないよーにね」と釘を刺しました。エトナさんが「悪魔は後ろから親の首を絞めるような奴ばっかり」という魔界の慣用句を使うと、フロンさんは真顔で「エトナさんもするんですか?」と問います。なお、エトナさんの返事は「どうかな?」だそうで。
 なお、私が親の首を絞めたかどーかは乙女の秘密です。


第五話 エトナの秘密(担当:キャロル)

 はろはろ。あたしは女戦士のキャロルです。ラハール殿下の弟子でアーチャーのコニータの師匠。殿下は弟子に対してはそんな横暴じゃないけど、あたしが弟子を取って「よりペタンコに励め」と言われた時には、危うく竜巻破裏剣しちゃうところでした。
 というかリベルテ、前回の「キャロルさんやコニータさんよりはちょっぴりましな」ってどーいう意味よ(怒)。

 話は本題に移りますが、フロンさんのペンダントを回収して、みんなで触りまくってみた数日後、郵便の整理をしていたあたしが「出番がなくても決して忘れるでないぞ」と天使言語で書いてある匿名の手紙を火にくべる用事で大廊下まで行くと、すっかり仲良しっぽいエトナとフロンちゃんがきゃいきゃい話し合ってました。女の子女の子した話にあんまり興味の無いあたしはそのまま通り過ぎかけるけど、その2人の足元になぜか写真が落ちていて、気付いた2人が手に取るといきなり笑い出して……。どうやらラハール殿下の写真みたいだけど何なんだろう? と思っていると、そこに殿下が来て写真を手に取ったの。
 そこでいきなり絶叫を上げ、アホ毛もマフラーも逆立つ殿下。「そういう趣味がちょっと意外」な写真、殿下にとっては超恥ずかしい写真の裏にある、果たし状というよりか脅迫状そのものの文面は、「超恥ずかしい写真を魔界全土にばら撒かれたくなければヨーツンヘイムまで来い」という内容でした。
 明白極まる脅迫しかも罠付きですが、威信が地の果てまで落ちるのは嫌な殿下はあたし達を連れてヨーツンヘイムに行き、超恥ずかしい写真ごと地獄の業火で焼き尽くす模様。当然超恥ずかしい写真を盗み見したいところでしたが、実行したリプリーちゃんが笑い過ぎて悶絶しているところにきついお仕置きを食らったのでやめときましょう(汗)。

 「あんな姿を見られたら人生は終わりだ」とか呻く殿下と共にヨーツンヘイムに降り立つと、脅迫犯の手下らしい、小悪魔のパックの群れが待ち構えていました。まさかあーいう見掛けで高レベルなのかと思いきや、いきなり「幸せな人生」「世界平和」「みんな友達」「女は行動力」と叫び始め、いきなり悶え苦しむ殿下。殿下は明るくて前向きな台詞が苦手だとエトナが明かし――フロンちゃんの「永遠の愛(はーと)」で殿下は超極大精神ダメージを受けてしまいます。
(伏せ字にしろ伏せ字にーーッ!!(ラハール))
 口にしなくてもダメなんですか? まあそーして殿下が苦しむところにエンプーサとワーキャット(あたしやコニータ達の宿敵?)の群れが現れ、どこがいいのか殿下にべたべたと迫っていきました。あたしも怒るより先にどぎまぎしちゃったけど、殿下にとってはさっきの言葉責めより苦痛だったみたいです。殿下はナイスバディの女性が大の苦手で、ついでに「お前達のようなペタンコは大丈夫」だと口走るもので、当然エトナやフロンちゃんやあたしやその他大勢がパーティ内アタックした結果、殿下のステータスが激減しました――なんて事はないけど、いきなり殿下が足手まといになって襲撃者を倒すのに苦労したのは事実です。

 なおも脅迫犯を(一部の男どもはムチムチを)追って行くと、ヴァンパイアがお約束通り高い所に待ち構えていました。いかにも雪焼けで体に悪そうな所にいたヴァンパイアの名前はマデラス。クリチェフスコイ陛下の元家臣でした。いつぞやのゼニスキーとは違って殿下の事はちゃんと覚えていたんだけど、殿下がまず持ち出した話題が魔王様の暗黒まんじゅうを盗み食いして追放されたという事なのはヒドイでしょう。でもあの「暗黒まんじゅう疑獄」は、リーベになりたてだったあたしですら覚えているほど、テレビのワイドショーや新聞の三面記事を彩った話でしたよ。
(……こーやって改めて聞いても、やっぱりどーしよーもない人ですねぇ。(フロン))
 殿下は鼻で笑い、「盗み食いで追放されたしょうもないやつに何ができる」と言うのに、殿下の弱点を知り尽くしていると自信満々のマデラス。弱点とは当然(※塗り潰され判読不能)なんだけど、実はその情報はみーんなエトナの垂れ込みだと判明。実はエトナは記憶を奪われ、それをたてに脅迫されていたの。でも記憶を奪われたんじゃ、それをたてに脅迫しても、脅しに屈するに値するかどうか本人分からないんじゃないかしら。
(「大事っぽいなー」という事は、“なぜか”覚えてたんだけどね。(エトナ))
 そしてマデラスは殿下やあたし達を、この場で事情を知っているエトナもろとも抹殺しようと、後をムチムチ軍団に任せてワープしてしまいます。……あの弱虫め(ちっ)。
(でも一応、オレさまの闘争本能を掻き立ててくれた事には感謝せんとな。おかげであの時は、ムチムチ相手でも普通に戦えたんだぞ。(ラハール))
 二度ネタは受けないという事でしょうか。しかも辺りがみんな「無敵」なのに1箇所だけ「無敵」じゃない所があって、そこにぽいぽい投げ込んで1人ずつ倒しちゃえましたし。

 そして、「氷の女王」でマデラスを追い詰めたのはいいけど、またエンプーサが誘惑、だけじゃなく、「希望の光(はーと)」「清らかな心(はーと)」なんて言葉責めまでコンボを掛けて、もはや殿下は闘争本能でも対抗できずに萌え死に、いや悶え死に寸前。
 そこに割って入るのは、なんとお馴染みの中ボスさん。さすがにマデラスも驚いたのか、「名を名乗れ」「貴様の名などどうでもよい」……って、言ってる事矛盾してるよそれ。なんでも中ボスさんは、約1名のおかげでめっちゃ苦戦しているあたし達――というかその約1名に「ライバルとして忠告」に来たようです。
 中ボスさん曰く、「心の眼を開き、外見や口先だけの言葉に惑わされるな」という事ですが、フロンちゃん曰く「ラハールさんにはハードルが高すぎる」という事で、「眼を閉じて耳栓しなさい」に変更。殿下は「これでオレさまに死角はない!」って……前後左右上下、オールラウンドで死角しかないんじゃ?(汗)
 そこでエトナから聞いたのは、
(1)2年前、マデラスに脅迫されてエトナは殿下を毒殺しようとした。ちなみにそーいう事は、耳栓をしていても殿下は聞こえる。
(2)結局殿下は寝続けるけど、脅迫されて殿下を殺すのが嫌でほっといた。
(3)脅迫されているふりを続けて、一番効果的な時にマデラスに報復する計画を練る。ついでにマデラスが雇ったプリニー隊も買収しておく。
(4)超恥ずかしい写真でけしかけた殿下を餌にしてマデラスを引きずり出し、思う存分いたぶってやる。
 という事です。
(……近頃の魔王城って、パクりが流行してるのか?(ラハール))
 失敬な。ともあれ最後の策も潰えたマデラスは否応なくあたし達とガチンコ勝負に突入。全面死角だらけの殿下が触角で周囲を感知しているのか(笑)大活躍して下さったおかげもあってあたし達が手下を一掃した後、マデラスは殿下の獄炎ナックルと(中略)とリベルテちゃんのメガファイアでぐちゃぐちゃにされました。

 こうしてあたし達が戦闘不能のムチムチ軍団の顔に落書きをしている傍らで、香ばしく焼けたマデラスは叫びながら命乞いをして、殿下の超恥ずかしい写真とエトナの記憶とその他諸々(?)を差し出す羽目になりました。あまりの恐怖にマデラスはエトナの下僕になっちゃうけど、体温低そうだからベンチウォーマーとしては役に立たないでしょうね。
(ガイドブックによると、ゼニスキー共々同族の最下級ランクと同レベルの実力らしいからな。というかこいつら、ホントにオヤジの家来だったのか?(ラハール))
 さすがに今回一番の被害者だった殿下は、自分の普段の行動はさておき、とんでもない奴だとエトナに腹を立てるけど、「そういう所は嫌いではないぞ」とも言うの。……別にクリスティーンさんが喜ぶような事じゃなくてですね(笑)、常に野心に溢れて頂点を目指す姿に感銘を受けたみたいで、腹心としてこき使ってやる宣言をします。もちろんエトナもまんざらじゃないようで、いちおー「後ろからグサァァッ!!!!」する機会だけは窺っておくみたい。その時はやっぱり例の超恥ずかしい写真を使うんだろうなぁ。
(いや、ネガまで殿下に没収されたから改めてシャッターチャンス狙うし。(エトナ))
 …………これをフロンちゃんは、「悪魔なりの愛情表現」だと思っているみたいです。けど悪魔だとこういうのは、え〜、連帯感とか仲間意識とか敬意とか言うんで、愛とかいうのはちょっとピンと来ないかな。そもそも悪魔言語だと、「愛」って単語は古語にしかないしねー。
(んまっ! 天使言語だとあんな愛やそんな愛を区別する単語がいっぱいあるのに、その表現の豊潤な繊細さが分かってもらえないんですか!?(フロン))
 分からなくていーです(汗)。

 こーしてあたし達は、中ボスさんを置いてけぼりにして魔王城への帰り道に就きました。
 ……ところでアンドレにラッセルにアンタイオス、鼻押さえたり股押さえたりしてたのは一体何だったのかなー?(怒)


第六話 ラハールの挑戦状(担当:コニータ)

 私はアーチャーのコニータ。キャロルちゃんの弟子でラハール殿下の孫弟子にあたります。ラハール殿下は弟子に対して乱暴では(中略)どーいう意味なんですか。
(中略しすぎだ馬鹿者!(ラハール))

 さてラハール殿下は、恥ずかしい写真事件、じゃなくてマデラス事件からしばらくは、さすがに気疲れしたのか、エトナさんを思いやってか、マデラスさんをこき使うのが楽しくてしょうがないのか(汗)、休みの日々が続きました。マデラスさんはエトナさんだけじゃなくて私やキャロルちゃんの胸を見ても怯えるんですけど……その理由は認めたくないです私(泣)。

 そして毒蛇の月呪いの日、朝から緊急呼び出しを受けて、眠気をこらえながら謁見の間に集合します。
 するといつも通り自信満々の殿下が玉座に座っていて(ただし、足が床に届いていません)、達筆ですら隠しきれないほど嘘臭く仰々しい手紙を見せてくれました。まあ美辞麗句を取り除けば、「魔王になりたい奴は、毒蛇の月呪いの日にデスソースを目指して進むのを邪魔して魔王の権利書を手に入れろ」という明白に喧嘩を売った文章なんですけど、プリニー隊が魔界中に既にばら撒いていて、もう止めようがありません。
 もちろん(?)エトナさんも参加したいと言い出しますが、ラハール殿下は「権利書なんぞあるわけなかろう」と一蹴。マデラスのよーに魔王の座を狙う連中を一掃するために、こんな手紙で罠を仕掛けてみたそうですが、一応ちゃんと付き合って全滅させる気満々な辺り、殿下も親切ですよねー。
(…………親切とかじゃなくて、真正面から叩き潰さないと自分の負けを承知しない人が悪魔には多いからじゃないでしょーか?(フロン))
 と、ここで朝礼――じゃなくて謁見終わりですが、どーも妙な感じがするので辺りを見回すと、マンティさんやドラッチさん達が見当たりません(動けないロンギヌスさんはそのままでしたけど)。時空ゲートのジャンヌさんによると、ラハール殿下を待ち伏せしにブレアの森に向かったそうで。……なんでクリチェフスコイ陛下の側近だった皆さんが、ありもしない権利書の話に引っ掛かるんですか?

 そしてブレアの森では……、
 ……森一面を埋め尽くす悪魔の群れがありました。27体もいるともう立錐の余地もないくらい、芋を洗うような鮨詰め状態です。ふるって参加しすぎ。
 もちろんフロンちゃんの言葉通り、「大は小を兼ねる」という事で全滅させました。数が多いのに強いヒトがいなかったお陰で楽勝でしたが、もー二度とこんなめんどくさい戦闘はしたくありません。

 次に待ち構えていたのは、魔法剣士(古代剣士カラー)が1人。たった1人で待ち構えているだけあって、友達いない只者でないオーラをばりばりに放っています。
 その名も“悪魔殺しの”サルディア。剣で葬った悪魔は2000を超える――とか超えないとか。剣を振るえば大地は真っ二つに割れる――かもしれない。そーいう訳の分からない話をされて「体に聞いてやる!!」といきり立つ殿下に、エトナさんは「その台詞、ちょっとエロいです」って……(赤面)。
 ……でも装備を全部アンタイオスくんに剥がせて倒す辺り、エッチなのは変わらないよーな気も。しかもサルディアって魔法剣士だから当然胸も大きいし(以下略)。

 3番目に待ち構えていたのは、プリニー隊、のうち戦闘メンバー3体を除く大勢。「せっかくの機会だし」参加してみたというテキトーさが紛れもなくプリニー達ですけど、エトナさん曰く「殿下は、このあたしが犯るんだから!」と――、
(「殺る」よそこは!(エトナ))
 ……あれ?(恥) えええええ、ええっと――プリニー隊曰く「正面から勝てないのは百も承知の上ッス」で、秘策を携えて登場したってゆーんだけど、その秘策とは――「野球」。
 どこからか審判の「プレイボール!」という声と観客のざわめきが聞こえる中、無表情のラハール殿下はエトナさんに「犯――」もとい「殺れ」と命令を下し、オーバーローズVSプリニーズの試合が始まりました。
  1回表:投手と捕手を倒し、ベース周辺を征圧。
  1回裏:一塁手と一塁側内野手がアンタイオスくんとスフレちゃんを「プリニー連射」で痛め付ける。
  2回表:一塁手と一塁側内野手をキャロルちゃんが、三塁側内野手をラハール殿下が、三塁手をリベルテさんが倒して内野を制圧。
  2回裏:3匹も生き残っているのに、なぜか動きなし。
  3回表:二塁手を私が、三塁側外野手をアンタイオスくんが、一塁側外野手をラハール殿下が倒す。
 以上、3回コールド勝ちでした。テレビ番組も潰れないですから、人間界のプロ野球もこれくらいスカっと行ってほしいですね。

 次は巨大な脚――しか見えない悪魔――が現れ、「別次元の魔界の魔王」と名乗ります。以前にこの魔界を狙ってクリチェフスコイ陛下に負けたリベンジという事で、なんでもこいつは数多の魔王を倒して「大魔王」になる事を目指しているそーです。でもラハール殿下とエトナさんに「一部しか見えてない」「でか過ぎ」と言われ、私達に近いサイズ10体に分身。
 フロンちゃんの「10人に分身すれば愛情パワーも10分の1のはず」との心細い発言に促された私達だけど、レベル75の竜神族10体にはかなうわけもなくもちろん全滅。そもそも最初から愛情が0なら、10分の1してもやっぱり0ってわけで。トドメを刺されそうになるところに「待てぃっ!!」と響くのは、「暫」に登場する市川団十郎みたいな声。
 声の主は予想通りというか何というか、魔王城のマンティさん、ドラッチさん、ゴレックさん、ガーゴさん、ゴースさん、ゾンちゃんさんの5人(2匹と3体?)でした。ガーゴさん曰く「こんなこともあろうかと密かに待ち伏せしていた」そーですが、私には権利書が嘘っぱちだという事も含めて何から何まで承知の上で、陰からこっそり見守っていたとしか思えません。まあゴレックさん辺りはかなり本気だったみたいとはいえ、この人達のレベルなら確かに「罠は掛かって踏み潰す」ですよねぇ。
 ドラッチさんはハートマークまで付けてなだめてくれますが、ラハール殿下は一層怒るわ、別次元の魔王10体は無視されてコーラスで腹を立てるわで、やかましくてしょうがありません。結局私達がのんびり観戦しているうちに別次元の魔王10体は呆気なく全滅して、マンティさん達はお気楽に帰ってしまいました。
 なお、ベースパネルの外で観戦していたラハール殿下が巻き添えを食らって戦闘不能になっています(汗)。

 唖然としているうちに超強敵を粉砕されて、勝利の実感が全然湧かない私達でしたが、気を取り直してなおも進むと、崖の上から「待っていたぞ、悪魔どもめ!!」と声を掛けられます。全身を派手な赤・青・黄色のスーツに包んだ男達の名前は、虹色戦隊ニジレンジャー。「頼むからまともな敵を出してくれ」とラハール殿下が呻くのに、フロンちゃんは「かっこいい!」と叫び、エトナさん達に決めポーズを強要します(誰も従いませんけど)。
 でもフロンちゃんが言うには、「ニジレンジャーなのに全然虹色じゃないのはなぜ?」。さすがに禁句だったのか赤いのが怒って、「ヒーローは孤独だから友達が少ない」と叫ぶんだけど、女の子に怒鳴るなんてサイテーですよね。ちなみにエトナさん、「友達が少ないのは別の理由でしょ」のくだりの所、「少ない」は「いない」の間違いだと思います。
 そこで更に、殿下に「ヒーローがなぜ魔王の座を狙う?」と聞かれて、「友達がほしい→魔王になれば友達いっぱい→真のニジレンジャーを完成する事も夢でなくなる」という……そこまでしないと友達できないほどヤな性格なんですかあなた方って。
(というかアタシ、この3人がどうやって仲間になれたのかが不思議なんだけど。(エトナ))
 そこで3人は変身……しかけたところをエトナさんに銃で撃たれて、ポーズを取ったままブルーとイエローは呆気なく倒されます。レッドが言う事には「ブルーとイエローが撃たれて変身できない」って、仲間の命よりそんな事が心配なわけ。そもそも最初から変身して出てくればいーものを。
(オレさまも変身については同意見だったが、某天使が見るよーな番組では、あの姿で既に変身しているのではなかったのか?(ラハール))
(近頃のヒーローというのは、二段階変身や合体巨大化も当たり前ですから!(フロン))
 ヒーロー談義はさておき、ニジレッドはエトナさん相手に「貴様は悪魔か!?」「うん」という阿呆っぽい会話をした上に、「はじめから変身して出てくればよいではないか」「敵の前で変身してこそ正義のヒーローなんです」と某殿下と某天使に茶々を入れられる始末。これで逃げるかと思いきや、奥の手として「金で雇った悪魔に助太刀を頼もう」などとヒーローとしては外道な発言を(汗)。さすがの殿下も呆れて「ヒーローが悪魔に頼ってよいのか?」というのに、「正義はどんな手を使っても負けてはならないのだ!」と開き直り、そのうえに虫の息のブルーとイエローを勝手に死んだ事にする始末。
 私はこんなのと覚悟決めたくありませんが戦わないわけにもいかず、全面「ワープ」で苦戦したけど勝利を収めました。もちろん、ニジレッド本人には苦戦なんて全然してません。

 さて偽ヒーローの屍をぐりぐり踏みにじり(注:生きてます)、次はとうとうデスソース……の前に、ファフニールの屍を山積みにして経験値とマナを稼ぎ、魔法剣士のシェリーさん、侍のフィズちゃん(私の弟子)、忍者のハヤテさんを仲間に加えてますが。
 改めて――デスソースに足を踏み入れると、「あいや、待たれぇぇぇええええい!!」という時代劇みたいな制止が飛びました。そこに現れたのは中ボスさん。永遠のライバル(自称)である自分との決着を付けずに魔王は名乗らせないとゆーのですが、今日こそ真の力を見せるために重さ100トンの男性用下着をはいて鍛えた足腰から超絶猛スピードを繰り出してくるそーなので、お礼にいつも通り倒して経験値を頂く事に決定。周りを囲むパックは1ターンキル。二手に分かれて池を回り込もうとしたらガーゴイルは手薄な右手に殺到するもんでリプリーちゃんがギガクールで殲滅。中ボスは必殺技を見せる間もなく、クリスティーンさんを殴っただけで多勢に無勢のまま殿下に斬り倒され、腹痛を言い訳に逃げちゃいました。

 これでめでたく正式に魔王になり、「魔王だ魔王だ魔王だ」と喜ぶ殿下を前に、納得が行かないエトナさんと「まーいいじゃないですか」と能天気なフロンさん。でもフロンさんは魔王の即位を助けちゃった事に気付き、今頃になって「あ」「どどどどどうしましょう!?」「大天使様に知れたら天使見習いをクビにされてしまうかもしれませーん!」とパニックを起こします。エトナさんは「悪魔に転職しちゃえば?」なんて言っていましたけど、僧侶ならまだしも夜魔族になれば胸が大きくなりそーなので、私は天使のままでいてほしいですねぇ(汗)。


第七話 魔王さまという仕事(担当:アンタイオス)

 おーきに。わてはラハール様の腹心であるエトナ様の孫弟子にあたる盗賊のアンタイオスちゅうもんや。よろしゅう頼みおす。
 今回ホンマはわての師匠のラッセルさんが担当するとこやけど、ストライダーは訛りがきつおすさかい、担当をわてに押し付けはったんや。
(一応言っておくが、お前も十分訛りきついぞ。ちなみに今回のタイトルは、『ラ・ピュセル』第一話「悪魔ばらいという仕事」を踏まえたものだろう。(ラハール))

 正式に魔王になって以来、ラハール様は四六時中高笑いを上げてはる。魔界で一番偉くなったから嬉しいっつー事やけど、そないしても声が涸れんてトコが、さすがはクリチェフスコイ陛下のお子さんやなぁ。
 さすがにフロンさんもラハール様に「魔王になってから高笑い以外何もしてない」と言われはるが、
(1)高笑いは魔王の重要な役目。
(2)初仕事に相応しい大事件がない。
 とゆー事で笑っとるんやと。そこでラハール様は初仕事の案をひねり出しはるがな――「人間界に胡椒の雨を降らせる」って、そんなに胡椒買うのに何億ヘル掛かると思っとるんかこのスカタン。「ガキに面白いゲームを与えて眠れぬようにする」いうのも、それを開発するのは誰やねん。18禁ゲームにして別の社会問題にするで。
 と、つい口が悪うなる中、エトナ様が連れ込んだのは、アラミスっちゅう男のガキや。こいつはエトナ様の舎弟のよーやが、悪魔の標準を超えて口が悪うて、「ガキ」だの「ペチャパイ天使」だの喧嘩売り放題。わても「エセ関西人」と呼ばれよったが、意味分からん以上悪口として機能せぇへんな?
 そいでエトナ様は、「アラミスのペットが行方不明になったから探してくれ」と言われはった。とーぜんラハール様は嫌と仰せはるが、エトナ様も引かず、初仕事は「ペット捜索」に決定。ふつーの魔王は力や計略で手下をこき使うもんやと思うとったが、まあ所詮殿下はレベル30台、わてらがタコ殴りすれば何とでもなるさかいな(実行はせぇへんけど)。

 側近さん達は相変わらずラハール様を話の種に遊んでおったが、ゾンちゃんさんから「火竜の息吹」でゾンビが大発生という話を聞き、時空ゲートでひょいと跳ぶと、もうそこにはゾンビがわんさと湧いとった。何でもこいつら、アラミスのペットやとゆー事で、しばいて回収するっつー大雑把な作戦を始めたどすが……。
 いつまで入口辺りで経験値&マナ稼ぎ続けとるねん。ただでさえここいら暑いのに、腐臭が満ちて満ちて鼻が捻れるわ。
(ジオエフェクトで経験値+100%、マナ+50%されるんだから仕方ないでしょ。倒した端からヨーツンヘイムに運んでるんだし、あんまり文句言うとぶっ倒すわよ?(エトナ))
 と言うとる本人が一番風呂に時間取っとったがな。

 ま、そないしとるうちに重い腰を上げて奥へ進みながら、亡き陛下とエトナ様の出会いとか、ラハール様やキャロルはんが買うたエスパーソードの「エスパー」って何やねん! とか、アラミスがゾンビの分解・合体をやっとるとか、エトナ様も子供の頃同じ遊びをやっとったとか話しとるうちに、最後のゾンビ、アラミス言うとこの最高傑作を見付けたけどな、そいつは、
・魔界空手の達人の拳
・魔界最速記録を作った男の足
・天才魔術師マホガニーの脳味噌
・闘神ヘボクレスのボディー
・馬の――アレ(汗)
 を使うとった。なぜか馬の(ピー)にはラハール殿下がやけに反応して…………(滝汗)。
 まあそーゆー事で、わてはゾンビのパーツの一部を報酬代わりにかっぱらう事になったんや(泣)。しかも馬の(略)は、装備品扱いのパーツの中に入っとる(号泣)。
 他のゾンビを全滅させてから、わてらはゾンビを身ぐるみ剥ぐのに挑戦したんやが、馬の(略)を盗むのに、成功率60%台のとこを3回もしくじって4回目で成功。マホガニーの頭脳は2回目、ヘボクレスボディは1回目で取れたっつーのに、どないしてここまで屈辱モノの行為をせなあかんねん。しくしく。

 これでゾンビ捕獲も終了。野良ゾンビが紛れとるよーやけど、逃げ出した奴でもあらへんし、採集材料にもなりよるで、ここで帰っても大丈夫だがね。殿下はアラミスに「ありがとう」と言われ、照れてみえるのか「礼がしたいのなら、体で払ってもらおうか」と一部の女子が喜びそうな失言されたなも(笑)。
 これで殿下の初仕事も終わり、エトナ様採点では、魔王としては「一応合格点」そーだら。
(……関西弁のはずが尾張弁や三河弁になってるぞ。貴様は一体どこの出身だ?(ラハール))
(ちなみに、今回倒したゾンビ(屍族)の総数は459体でした。「焦熱の風」を30回ステージクリアして420体倒してますから、正味53体ってとこですけど。(フロン))


第八話 リインカネーション(担当:フィズ)

 拙者はフィズ。聖域の守護者にして、魔界標準語でそっけなく「ブシロード」と表現される信仰の担い手である「侍」じゃ。ちなみに男の侍は故郷を護るか別魔界に出稼ぎに行っておるから、ゲーム中には姿を見せんぞ(笑)。

 拙者の趣味は「月見」じゃが、数ある世界には様々な月が存在する事は言うまでもない。この世界の普通の月は――まあ微妙な、えもいわれぬ彩(いろどり)をしておるが、稀に血潮の如く赤い月が現れる事がある。魔法剣士のシェリー女史なら理屈が分かると思うが、拙者のような一介の武人には、「罪人の穢れを清める」という言い伝えと、赤い月が出ると魔王城のプリニーが姿を消すという事しか分からんでござるよ。
(世界の裏側から侵魔が現れるとか、自由と混沌を司る神様達が住んでいるとか、紅い目の侍っぽい亡霊が現れるとかいう現象はないんですか?(フロン))
(……それは別のゲームよフロンちゃん。ちなみに『ナイトウィザード』『ガープス・ルナル/ユエル』『悠久幻想曲』。(エトナ))

 とゆー訳で赤い月を肴に酒を飲み交わした翌朝、プリニーが何匹か消えたとの報告がエトナ殿から入り、平常心の足りぬラハールへ……殿下は立腹なされた。
(なぜ、なぜ!! オレさまが即位しても殿下扱いなのだ!!!?(ラハール))
 エトナ殿からの通達で、殿下がお父上に匹敵するお方になられるまで、陛下と呼ぶのは差し控えたいという事になっており申す(笑)。エトナ殿は殿下の待遇が悪い(20時間労働・休日なし)からだと言われるのじゃが、あとの4時間はエトナ殿が働かせておるのではあるまいな?
(いや、あたしの出してる条件は「労働時間:エトナが働かせたいだけ」だし。(エトナ))
 …………そこで「だから夜逃げされるんですよ」とフロン殿が洩らすのを殿下は聞きとがめ追求しようとされるが、そこに赤いプリニー殿が割って入ったのじゃ。赤プリニー殿曰く「心配しなくても大丈夫」との事じゃが、意固地な殿下は「家来に逃げられては面子に関わる」と言い切られ、プリニー探しに出発された。
 なお、アンタイオス殿がアラミス殿のゾンビから盗んだ装備品をどうするか一同で話し合った結果、マホガニーの頭脳はクリスティーン師に、ヘボクレスボディはエトナ殿に、馬の猛りはたってのご希望通りラハール殿下に分配いたした。
(希望などしとらんわ!! そんな馬鹿な事言うなら貴様に装備させ――、(ラハール))

 殿下を殺戮して差し上げたところでプリニー達の行方じゃが、魔王城は普通の出入り口がないため、時空の案内人に尋ねれば9割方終了といってもよい。ガーゴ殿から魔力の杖を頂いたり、ゾンちゃん殿から「月渡しの平原に行け」と直球ひんとを頂いたりもしたところで、ジャンヌ殿は「月渡しの平原」へ我らを送り出して下さった。
 月渡しの平原は、「凍てつく大河」や「ヨーツンヘイム」と比べるとあまり寒くはなかった。風が全くないせいもあるが、よく見ると全体的に雪が少なく、足元も氷ではなく白い石材が多いようじゃった。所々にある人工物と思しき柱を見るとなぜか、我ら一族に遺された数少ない聖域のいくつかを連想させてくれる。恐らくは太古に遡る遺跡なのじゃろう。
 調査したがるシェリー殿をなだめつつ先へと進む我らじゃが、その日のフロン殿は、「ラハールさんは横暴です」といつになく怒っておった。まるで母君みたい、と言ったら拙者が怒られるかもしれんが、ようやく愛に目覚めてきたのに……と思っていた矢先ゆえじゃろうな。
 そこで殿下の母上、つまり王妃様の事をエトナ殿から伺うのじゃが、母上は悪魔ではなく人間(魔界に魔女修行に来たところ一目惚れされた)なもので、「悪魔にも優しさはある」と、愛とか優しさとかを幼い殿下に教えようとしておったそうじゃ。しかし母上は病気の殿下を救うために命を捨ててしまい、それからあの通り性格が捻じ曲がってしまったという。
 これが人間なら時がある程度流してくれるものを、記憶が薄れず執念深い我ら悪魔には、痛みはいつまでも痛みとして残ってしまうのじゃろうか?

 平原のほぼ中央、ようやく辿り着いたのは奇怪な模様を刻み込んだ巨大な祭壇。その下に拙者達が足を踏み入れると、一際大きく輝く赤い月に向かい、次々と飛び立つ白い光が見えたのじゃ。赤いプリニー殿によると、それは罪を償い終えて転生するプリニーの魂じゃという。慌ててクラッチ殿達を探したが、こちらはどうやら罪の清算を終えておらぬようで、当人達には悪いが安堵させてもろうた。にもかかわらず「そんな勝手は許さん!!」といつにも増して我儘な殿下じゃが、その前に邪霊族どもが立ち塞がりおった。いきり立って全然話を聞かぬ殿下は「あいつらはオレさまの家来なのだ!」と言い張って、転生を妨害させようと拙者達にも命令。師弟の契約を結んだがために抵抗できぬ事実を、初めて呪わしく感じたのじゃ。
 敵は悪魔随一の魔法使い種族じゃから、こちらから積極的に攻めに出て、大将と思しき奴を速やかに討ち取ってみせたのじゃ。……拙者は出番なかったでござるがな(汗)。

 邪霊族のほとんどはそのまま消えてしもうたが、大将は打撃が大して応えておらんようで、「何故仕事の邪魔する?」と言うのじゃ。赤いプリニー殿によるとこやつは本当に死神で、プリニーの魂を赤い月まで送り届けるために来ておったそうなのじゃ。「愛情があるなら旅立ちを祝福できるはずっす」という言葉に殿下が同意するのを聞いて、赤いプリニー殿はこれで安心して赤い月へ行けるというのじゃが、フロン殿が赤いプリニー殿にどんな罪を犯したのか問うと、「息子の命を救うために自分の命を捨てた」というのじゃ。その時に悲しんだ息子の事を考えて、黙って見守り黙って行こうとしておったようじゃが――ここまで言うて正体が分からぬほど、目が節穴ではあるまいな?
 しかしフロン殿とエトナ殿に「殿下の事をよろしく頼む」とは……ももももしや、これが伝説の「母親公認の間柄」ッ!?
(違う!(エトナ)/違います!(フロン))
 そうでござるか(ぐすん)。話は戻るでござるが、人間の美しい女性(にょしょう)がうっすらと、一瞬だけ透けて現れ、白い光の塊となったその時、プリニーの皮は務めを終えて、しぼんだ紙風船の如く地に伏した。続けて他のプリニーも光の塊になり、それら魂を導いて死神殿は天へ昇って行ったのじゃ。
 ちなみにクラッチ殿達はまだまだ転生できないようじゃが……不躾ですまぬが、貴殿らはいかなる罪を犯されたのじゃ?
「連続暴行殺人、しかも幼女限定ッス」
「自爆テロッスよ」
「おいらは外患誘致ッス。未遂に終わって死刑にされたッスけど」
 …………貴殿ら、多分永劫に転生できんでござるな。


第九話 地球勇者キャプテン・ゴードン(担当:リプリー)

 え〜〜、まず何を書けばよいものやら。魔王城の任務記録を付ける理由は分かるのですが、なぜそれを会話調にする必要があるのか判然としないで……。
 ……私ですか? 私は青魔法使いのリプリー。リベルテ師匠にクール系魔法をエクストラゲインするために師弟となったんですけど、おかげでラハール殿下は、クリスティーンさんがいつギガヒールとギガクールを間違えるか冷や汗ものだとか。

 この前の赤い月の夜の転生でプリニーがいくらか減りましたけど、ほぼ同じ数が追加されたので相変わらず騒がしい魔王城。私達戦闘メンバーも、戦闘のない時には人手不足を補うために何らかの仕事をしていますが、休みを取って「星の墓場」に遊びに行くと、そこで空間の歪みを発見。のんびりリフレッシュして魔王城に戻ってから通りすがりのプリニー隊を捕まえて殿下へ報告に向かわせます。
(報告遅らせるな貴様! オレさまの休憩時間と睡眠時間以外は至急で連絡しろ!(ラハール))
 (無視)そして私達は、「円盤型の乗り物」「灰色の子供」「喋る蛸」よりもっと面白いものを期待しながら、要救護者の存在を心配するフロンさんにせきたてられて出発です。うーん、さすがは元要救護者(笑)。

 というわけで、「星の墓場」です。ここは次元的にあやふやな空間で、異世界からの漂流物がそこらじゅうに漂っています。漂流物漁りをしていると思しき悪魔の連中を追い払いながら侵入者を探していると出会ったのは、なんと人間の女性(ムチムチの美人)とゴーレムみたいなもの。恐らく侵入者の一員なのでしょうけど、女性はここが魔界だという自覚がないのか、殿下を見て人間の子供と勘違い。
 でも腕を喰いちぎったり脳味噌をすすったりお尻に受信機を埋め込んだりなんて私達はしませんよーだ(汗)。しかも殿下が「そのムチムチした体を近付けるな」と言うのをどう曲解したものやら、「思春期なのね」だの「お姉さんが教えてあげるわ(はーと)」(って何を!?)だの性教育を始める始末。あの時は本気で「頭弱いぞこの女」と思ってしまってすみませんでしたジェニファーさん。
(地球でもよくそう言われるんだけど、この服装のせいなのかしら……。ゴードンも「目のやり場に困るから太腿が一番安全」なんて言うし……。(ジェニファー))
 見ていると面白いので私達は放っていましたけど、見かねたフロンさんが説明に入ります。女性は「かわいいボーイ」と呼んだのが魔王だと知って驚き、って言うか、司令部とかいう所から出鱈目を吹き込まれていたらしく、「魔王が地球侵略」って何ですかそれ。
 で、女性から魔王を退治しに来た「キャプテン・ゴードン」なる人がいると聞き、ここで女性とゴーレム、じゃなくてロボット(ジェニファーさんとサーズデイ)の自己紹介を聞けます。キャプテン・ゴードンが地球勇者だという事を聞いた殿下は、勇者と戦うという魔王の使命感がうずいて「ぜひ会ってやらねば」とゴードン捜索に本格的に乗り出しました。
 いやー、それにしても亡き王妃様から人間の言語を習っていて助かりましたよ。
(それは古代言語だからわたしとサーズデイしか分からないんだけど……。後で出てくるゴードンとの会話もサーズデイが全部通訳してるし……。(ジェニファー))

 ところでジェニファーさんは「魔王が地球侵略を企んでいる」と聞いていたようですが、まぁはっきり言いますと、ジェニファーさんがいた「地球」は悪魔にとって何の魅力もない、人口が過剰で環境汚染が蔓延した、ついでに言うと魔力が枯渇した世界に過ぎないんで、侵略なんて考える悪魔はいるわけありません。一応王妃様の故郷だけど、魔法使いを火炙りにしてハアハア悶える変態が大勢いるよーな世界には未練もなかったみたいです。
(イツノハナシデスカ ソレ。(サーズデイ))
 ところでジェニファーさん、「ラハールちゃんの目はまっすぐ前を見ている」って、斜視じゃなければ普通の事じゃないですか?
(そうじゃないわ。自分の理想を強く持って、それに逆らわず生きているっていう、比喩的な表現よ。(ジェニファー))
 殿下は真正面以外は見ていないんでしょうけど。で、大戦争に繋がってしまうのだけは避けたいとフロンさんは意見しますけど、エトナさんは「その方が面白そう」などと言い出します。ですけど昔の、弓があるのにわざわざ剣で立ち向かうアホな人間と一緒にしてると、思わぬ痛手を食らいますからね。

 途中まではあても無く探していた私達ですが、見付けたゴードンの物らしき靴跡を辿って歩いているうち、サーズデイが「せいめいはんのう」を確認。「HAHAHAHAー!!」という笑いと共に現れ、「私はここだ」と無意味に高い所に立つのは、お兄さんとおじさんの中間をやや越えた、顎が割れた濃い顔の、引き締まった筋肉が逞しい人間の男。顔の彫りが浅く、頑丈な手足の割に体が華奢な平均的人型悪魔からすると、やっぱり異種族だなーと感じます。装備は手に持つ光線銃と、ぴっちりした趣味の悪い服、それに背中に背負った謎の金属容器。
 そんなゴードンの姿に、殿下が殿下なりに持っていた勇者のイメージが崩壊したようですが、それでもフロンさんは「カッコいいです!」と感動した模様。ゴードンはというと、やはり殿下を単なる子供だと勘違いし、名乗られても信用せずに「HAHAHAHA!」と高笑い。実際に攻撃を受けるとやっと魔王と認め――るだけならまだしも、「地球侵略の野望を打ち砕いてみせる」と言ってのけ、口を挟んだフロンさんを悪党呼ばわり。さすがのフロンさんも「こんな失礼な人は勇者でも正義のヒーローでもないからさっさとやっつけちゃいましょう」とキレてしまいます……もはや天使の発言ではないですよ。
 そこで殿下は、「オレさまを倒せたなら地球侵略はしない(って、最初からするつもりは無かったでしょーに)。オレさまが勝てば魔界に残り家来になれ」という、よーするに詐欺っぽい取引を持ち掛け、意地になったゴードンは「わたしとサーズデイだけで充分だ」と言いますが――前世の記憶で何やら叫んでいるホークさん、レベルが低すぎますからとりあえず向こうで死んでて下さい――、

 サーズデイは、ギガ級魔法5連発でレッドゾーンに食い込んだ所でラッセルさんがトドメ刺し。
 ゴードンは、まずアンタイオスさんが光線銃・さむらいを盗み、筋肉ドリームを盗み、パワージャケットも盗み、みんなでコンボを加えて倒してしまいます。
 ……やっぱり勇者は剣を持って、僧侶や魔法使いと一緒に戦わないとダメですよねー。

 こうして、地球の魔手から魔界は護られました。今更「人間に危害を加えてしまいました」って、魔界に完璧染まりきってしまいましたねフロンさん。というか今回は私達をけしかけただけだから――悪魔を煽動して人間に危害を加えさせるのは、自分で直接危害を加えるより重罪なんじゃない?
(ぐはぁっ!! どうしましょどうしましょ、責任とってくれますか!? ってわたしは一体何を口走ってー!!!?(フロン))


第十話 天使と悪魔と人間と(担当:クリスティーン)

 再びこのわたくし、クリスティーンが執筆いたします。キャプテン・ゴードンは「わたしに任せたまえHAHAHAHAHAHAHAHAー!!」と言ってはくれましたけど、任せるとおかしなノリになりそうなので、丁重に断りを入れておきました。

 前回キャプテン・ゴードン一行を仲間に加えたわたくし達は、また魔王城でのんびり過ごしていました。
 とはいえ戦闘するような仕事もなく、キャプテン・ゴードンはラハール殿下のしもべとして雑用に追われていますが、洗濯も掃除も料理も完璧にこなすその技は、まさに地球勇者の侮れなさの証! ……かもしれません多分ええ恐らくはきっと。しかしジェニファーさんとサーズデイはエトナさんやフロンさんと一緒に、今日は日曜だからゲヘナの海へピクニック、明日はいけにえ横丁へショッピング。すっかりお客さん待遇です。
 もちろん置いて行かれた殿下、キャプテン・ゴードン、それに私達も、殿下の「女どもだけピクニックでランラン♪など絶対に許さん!」という事でお供をしました。殿下は「領地視察」、キャプテン・ゴードンは「警護」と言い張りますが、ジャンヌさんには明白に目的を見抜かれています(笑)。

 溶岩の川が流れ、要所要所の自然岩のアーチが点在する島を結ぶゲヘナの海。そんな中、エキサイティングなハイキングを軽いノリで楽しむキャプテン・ゴードン。隙のない身ごなしは賞賛に値しますけど、その周囲、半径5m以内には誰一人として近寄りません(笑)。やはり殿下も伝統的な勇者像にこだわりがあるのか、「威厳もへったくれもないただのアホではないか」と言いますが、フロンさんの伝統的なヒーロー像は、普段は地味だったり情けなかったりして世を忍ぶものだそうです。
 しかし敵対的な地元の悪魔があちこちにいるのに、こんな所でピクニックとは、本当に何を考えているのでしょう皆さんは。
(アタシ達3人と1体だけなら、土地勘のあるアタシと高感度センサーがあるサーズデイとで安全なルートを辿れたんだけど、はっきり言ってあんたら人数多すぎ。(エトナ))
 ……すみません。という事で、星の墓場の「ヴァルギプスIV」で経験値稼ぎをしてから先へと進んで行きました。ちなみに殿下、エトナさん、フロンさんが1313歳、1470歳、1509歳だから「外見で判断するな」と言われる殿下に、ジェニファーさんは「それなら体が気にならないわね?」と返し技。どうやらジェニファーさんは殿下に気が無いようで残念です。
(カップリングノ ツクリスギデス。ハナシヲモトニ モドシテクダサイ。(サーズデイ))
 失敬しました。まあこんな辺りでお弁当をフロンさんが出そうとしたその時、いきなりバイアスが現れ、お弁当をかっぱらいます。
(誰だそれ?(ラハール))
 殿下が「中ボス」と呼んでいる上級悪魔、自称ビューティー男爵ですよ。なんでも男やもめ(という事は元既婚者?)のバイアスにとって、手作り弁当は砂漠で出会ったオアシスに等しいのだとか。さすがにフロンさんに堂々と泣かれてしまっては心が傷付くみたいですけど、情けなくて同情の余地はほとんどないでしょう。しかしバイアスに臆する神経などという繊細なものは無く、地球勇者のお手並みを拝見するのも兼ねると称してお弁当を持ったまま逃げてしまいました。しかし全員のお弁当を一度にかっさらうとは、筋力も相当のものですね(笑)。

 さてわたくし達は、サーズデイがお弁当の「ニホヒ」を探知できるほどの高性能を発揮したのをきっかけに、ジェニファーさんについて色々と、主にキャプテン・ゴードンから話を聞きます。5歳でサーズデイを開発したとか、10歳で各ジャンルの博士号を取ったとか、プロセルピナ事件もフジヤマ消失事件もジェニファーさんの知識と推理があって解決できたとか。エトナさんは「あんたはいらないんじゃ?」と言いますけど、知識と推理だけでは解決できない場合、キャプテン・ゴードンの使い減りしない丈夫さが事件解決の鍵となったでしょう。
(……言われている事は分かるが、少し率直過ぎはしないかねシスター?(汗)(ゴードン))
 こうしてようやくバイアスを追い詰めますが、地球人(わたくしは地球以外の人間を見た事はありませんが)に華麗な戦いを見せようと、バイアスがポーズを付けて発光します。すると、対抗してキャプテン・ゴードン達は2人と1体で名乗りを上げてまばゆく発光――って、どーいう理屈で光っているのでしょう?
(気にしたら負けだ。そこでフロンまでオレさま達に強要してポーズを取らせるが、フロンだけが情けない音を立ててちょっぴり光っておしまい。しかもフロンに怒られるし、オレさまとしては超恥ずかしい写真の次の次くらいに恥ずかしかったぞ。(ラハール))
 お気の毒に。そして今回はバイアス以下敵全員が積極的に攻撃してくるので全力で迎撃。他の全員を倒したところでバイアスを囲み、武器から順に装備を全て剥ぎ取った上で、キャロルさんがばっさり斬り倒しました。
 ちなみにお弁当は既にバイアスが食べた後。「引き分けですね」とバイアスは言いますけど、どこがどうやって引き分けなのか、魔界言語150〜250字で提出してほしいものです。
 しかしあの高温の中を長時間持ち歩いたお弁当全員分を食べて、お腹を壊したりしていなければいいのですけど(汗)。

 お弁当を食べられてしまい、空きっ腹を抱えて時空ゲート待機場所に向かうわたくし達。何と言うか、勝負に勝って試合に負けた気分でした。そこでキャプテン・ゴードンはバーニーズのテリヤキピッツァが懐かしいとか言いながら堂々と地球へ帰ろうとしますが、宇宙船が壊れたのにどーやって帰るつもりなのでしょう。
 という事にようやく気付き、地球の事が心配で悶絶するキャプテン・ゴードンに、フロンさんは「魔界勇者に改名したらどうですか?」と案を出します。当人はやや渋っているようですが、賛成がわたくし達19人+ジェニファーさん+サーズデイで21票。反対がキャプテン・ゴードンの1票。殿下直々にキャプテン・ゴードンは魔界勇者に任命されました。
(…………ナチュラルにゼニスキーさんとマデラスさんの存在を忘れているのは、悪魔としてもどーかと思いますが。(フロン))


第十一話 勇者の心、魔王の心(担当:アンドレ)

 久し振りだな。斧使いの男戦士のアンドレだ。今の俺達はエトナさんの――、
(ちょっとあんた! 『あたしをご主人様と呼べ』と何度も何度も言ってるでしょうが!!(エトナ))
 ――指示の下、魔王城の防護強化計画に乗り出した。とはいっても具体案はまだ何もないわけだが、エトナさんの計画では『メガ呪い砲』『プラズマ魔法陣』『愛マニア・フロン』の3つを配備したいとのこと。どれもこれも無茶っぽい計画だが、特にこちらの指揮官が最大ダメージ受けそうな計画其之参は何なんだよ。
(…………あのー、それって自爆装置の一種でしょうか?(汗)(フロン))

 ゴードンは相変わらず、地球へ戻る手段を探している。なんでも地球防衛軍の救援に期待しているとの事だが、ジェニファーさんはどうも地球防衛軍が助けてくれるとは考えていないようだ。まあ、そーホイホイと行き来できるなら、俺達も地球を荒らし放題なのに。
(やめんかこの悪魔めー!(ゴードン))
 そこにエトナさんが持ってきたのは、ラハール様宛て挑戦状。文面は確かに地球勇者からのもんだが、「やっと居場所をつきとめたぞ」なんてゴードンが書くわけないのが謎だ。地球勇者というのは同時に何人もいるものではないらしいが、正体が何であれ倒して家来にゲットするのが目的というラハール様を先頭に、俺達は「死者の森」へと出発した。

 死者の森に足を踏み入れ、少し進んだところで、ジェニファーが「挑戦状はカーチスの仕業なんじゃ」と言った。カーチスというのは、ゴードンやジェニファーの仕事を汚い手で横取りして勝手に地球勇者を名乗っている奴だという。それでも地球の危機を救ってはいるそうだが、こーいう「目的のために手段を選ばない」奴が、誘惑するのにちょうどいいカモなんだよな。
 ……ちなみにこの入口付近は「経験値+100%」されるんで、俺達が敵の屍を積み上げて経験値を稼ぎまくっていた事だけは白状しておこう。

 そして先へ進むと、鎧姿の人間のじーさんが現れて、いきなり「魔王よ覚悟ー!」とゴードンに斬り掛かってきた! しかし卵みたいな奴(名前忘れた。とゆーか覚えてない)がゴードンを庇い、ゴードンは開きにされずに済んだ。こいつが果たし状の主っぽいが、じーさんはゴードンが地球勇者と聞いて(にもかかわらず謝りもしねぇ)、ついでにラハール様に負けて魔界勇者にされた事まで聞いてしまい、「地球勇者も質が落ちたものだ」とほざいてうじうじ泣き出してしまう。さすがにゴードンも怒り出すが、何者かとじーさんに聞くと、なんと初代地球勇者ドン・ホアキンだと詐称して、一方的に消えちまった。通り魔みたいな奴め。
(数百年前に魔王を倒しに魔界へ行ったきりになって、そのまま行き倒れた間抜け勇者の霊魂だって推測付いていたんだけどねぇ。(エトナ))
 ちなみにゴードンによると、魔王を倒すのは勇者の使命だとか。感動しまくるのはいーんだがアレでは永劫に勝てないと意見が(ゴードンも含め)一致しかけていた時、フロンさんが「負けてあげれば天国へ行くはず」と戯けた事をぬかしやがる。そんなふざけた意見を拒否するラハール様を「心が狭い」と褒めるのは何でか分からんが――、
(褒めてません。(フロン))
 ――阿呆天使にラハール様は「勇者と戦うのが魔王の使命である以上、この問題に口出しするな!!」と言い聞かせた。そして更にじーさんを追おうとすると、物陰に大勢の悪魔が待ち伏せしていて、とりあえず弱点属性持たないラハール様達だけで先行すると、ドクロの魔法2発でゴードンが戦闘不能直前(それでも耐え切ったが)。その先にもジオエフェクトで強化されまくった悪魔の群れ(遠距離から魔法使い達が全滅させたが)。やっとの事でじーさんを見付けると、「待っていたぞい魔王よ!!」…………って、待たせたのはどこの誰か分かってんのかこの徘徊性霊魂。しかし勇者と戦えるせいかラハール様はいつになく元気で、じーさんの挑戦に快く応えた。うーん、これぞ男の死に様ってやつだな。
(オレ様まで勝手に殺すな、殺戮の饗宴に花びら舞い散らすのが相当の愚か者。(ラハール))
 ……フロンさんは「本気で戦うんですか」と相変わらずいきり立ってたんだが、エトナさんは「殿下に任せましょ」と遮った。じーさんは「友達」を呼び出し……ってゾンビかい。このゾンビ達はじーさんの生前の仲間達が怨念で動いている、というわけでなく、じーさんが魔界で生活しているうちに仲良くなった連中だそーだ。
 しかし――ほぼ全面「超敵強化6倍」ってどーいう事だ初代地球勇者。そちらがそーいう汚い手段を採るなら、こちらも汚く戦ってやるのが戦士のやり方だ。
 まずは、右手のジオシンボル方面に一歩ずつ歩いていくラハール様の背後にクリスティーンさんとリベルテ達魔法使いが従い、ひたすら魔法でラハール様を強化していった。途中のスケアクロウは魔法で吹き飛ばし、ラハール様がジオシンボルを「飛天無双斬」で壊してから俺やキャロルが出撃。「勇者ギャラクシー」(赤い光の玉が降り注いで「ぽこっ」と可愛い音を立てる技。大した威力はない)とゾンビ砲でリプリーが倒されたり、毒でラッセルが瀕死になったりする中、ゴードンがパンチでじーさんにトドメを刺した(いや、最初から死んでるが)。
 ちなみに俺は、投げ役で前線に出遅れたため、出番はキャロルやゴードンが倒し損ねた敵を始末するだけ(汗)。どちくしょう。

 見事ラハール様が勝利を収めたのに、フロンさんは相変わらず、「どうして負けてあげなかったんですか」とラハール様をなじり出す。しかし一応ベースパネルで戦闘待機していたし、負けて「あげる」という発想自体、自分の存在意義を懸けて戦う相手に無茶苦茶失礼な態度じゃないか?
 そこで「あなたは最低の――」と口走るフロンさんに、じーさんが「いいんじゃよ」となだめるように話し掛けた。つまり、
(1)勇者には勇者の生き様、死に様がある。
(2)じーさんは既に死んでいて、魂だけの存在として魔界をさまよい続けていた。
(3)最後の最後に地球勇者として戦う事ができ、勝てなくても後悔はなく晴れ晴れとした気分。
(4)↑なのは、ラハール様が本気で戦ってくれたから。おかげで思い残す事はない。
 という事だ。
(……久し振りのパターンだな。もー何も言う気はないが、あくまでもオレさまは魔王としての使命を果たしただけだから勘違いするなよ。(ラハール))
(……なるほど。これが大天使様が言われていた『ツンデレ』とゆーモノなんですね。(フロン))
 ……背後の殴打音と無意味に深まる大天使の謎はさておき、その背後ではとーとー卵みたいな奴が動かなくなっていた。役に立てたか問う奴の言葉にゴードンは男泣きして、「もちろんだとも!」と叫んだが、声がでかくてやかま――ふぐぁっ!?
(デリカシーの欠片もないわねこのヒト(嘆息)。そしてとうとうサーズデイは機能を停止してしまったの。(ジェニファー))
(ただ悲痛に叫ぶしかできなかったわたしとジェニファーに、ご老体が「良き仲間を持った」と声を掛けて下さった。「そんな仲間がいたら違った生き方ができたかもしれん」とも呟いておられたのが気に掛かるが……。(ゴードン))
(じーさんが剣を捧げて力を込めると、サーズデイの故障がすっかり直っていたのよ。もちろん記憶回路もダメージなし。……でもこれって、確認なしでいきなりゴードンを攻撃したじーさんが与えたダメージなんだけど?(エトナ))
(まあいいじゃないですか。そしておじいさんはゴードンさん達に(そしてわたしの勝手な想像ではわたし達にも)「仲間を思いやる心を忘れないように」と言葉を残されて、白い光の球体(月渡しの平原で見た、無念や罪を浄化し終えた魂です)になって天へと昇り、ゴードンさんが敬礼で見送る中、天使にも悪魔にも手の届かない所へ去ってしまいました。(フロン))
(……しかしあのジジイ、死ぬ前にオヤジが見付けてやれば、無念など遺さずにおれただろうにな。(ラハール))
(かもですね。でもラハールさんに『最低の』の後にどんな言葉が繋がる予定だったのか責められた上に、みんなも興味津々だったのはヒド過ぎますよぉ。(フロン))
(コタエヲケイサンシタラ フロンサンニナグラレテメモリーヲフキトバサレマシタ。(サーズデイ))
(ああもう。そのせいで極悪天使だとか悪魔よりタチが悪いとかラハールさんやエトナさんに言われるし、クリスティーンさんには『堕天しないよう身を慎んで下さい』と忠告されるし、キャロルさんには『さっすがフロンさん、思い切りがいいー!』とからかわれるし、リベルテさんには『天使と悪魔はきっと心が通じ合えると思います』なんて皮肉言われるしー!!(フロン))
(……ちなみに、一番しつこく絡んできたのは誰?(ジェニファー))
 俺。フロンさんの堕天使バージョンのフィギュアも想像で作ったし。
(いきなり起きないで下さい&なんてものを作ってるんですか&次回まで眠ってて下さーーい!!(フロン))


第十二話 WAR OF THE MAKAI前編(担当:リベルテ)

 はろーえぶりにゃん。
 ……いきなり引きそうな挨拶でごめんなさい。私はラハール殿下の孫弟子で赤魔法使いのリベルテ。前に担当した時からずっと成長して、エクストラゲインも含めてオメガ系3種類を使いこなせるようになりました。次なる目標は、ラハール殿下など足元にも及ばないほどのパーティ内最強戦力です。
(くっくっく……。弟子の分際でそこまで野心を持つとは、オレさまの教育の賜物のようだな?(ラハール))
 いや、その論で行くと殿下の直弟子のクリスティーンさんが超野心家になっちゃいますし……。

 ストーリーの流れと何の関係もなく前触れもなしに起きた初代勇者事件からしばらく後に、大きな地震が発生しました。魔界では地震は滅多に起きないが、地震が起こった時には必ず何か大きな出来事があるといいます。ちなみに人為性地震は亡き陛下が喜んだり悲しんだりする度に発生していましたが、ここでは考慮の対象外というコトでご勘弁を(笑)。
 そこに、また星の墓場に遊びに出ていたリプリーちゃんからプリニー隊経由で「星の墓場に空間の歪み発生。歪みから巨大物体が多数出現(数は計測中)」との通報が入ります。地球防衛軍の救出だと喜ぶゴードンさんに、ジェニファーさんは「救出にこんな目立つ手段はとらない」とツッコみます。数で押し捲る作戦を執る唯一の目的は――制圧もしくは殲滅。これから思う存分侵略者を殺したりおもちゃにしたりできると考えると、思わず心が弾みました。
(弾まないで下さーいっ! 何なんですか、その虫の脚を引きちぎる子供のような残酷さはっ!?(フロン))

 星の墓場は星の墓場でも、歪みの発生地域はゴードンさん達がやって来た位置からはかなり離れた場所。その「星の墓場-II」に行くと、そこには人間界の対異世界環境防護服、人間の言語で言う「宇宙服」を着た人間が大勢、銃を構えて待ち構えていま――って、ゴードンさん達は着なくて大丈夫なんですか?
(デザインは違うが、わたしが着ているのも宇宙服だ。ヘルメットを下ろしているのは、スペースシップの墜落直前に取った大気組成のデータから不要だと判断したからだな。あの時の防衛軍兵士がヘルメットを着用していたのは、悪魔が毒ガス兵器や生物兵器を使用するのを恐れたからだろう。(ゴードン))
 さてこの人間達、ゴードンさんを助けにきたには様子がおかしく、顔も分からない兜を被って無言のまま。ゴードンさんが自信たっぷりに胸を張って呼び掛けても、こーほーこーほーと呼吸音を耳障りに響かせるだけでした。必死に呼び掛けるゴードンさんに殿下は「実は嫌われているのではないか?」と言いますけど、確かにゴードンさんは言動が暑苦しいしオーバーアクションだし(笑)。フロンさんには哀れまれ、エトナさんには相手が無反応な事を指摘され、ジェニファーさんに「魔界への通り道を開くために利用された」と言われ、ゴードンさんの理性は崩壊の瀬戸際に。「危険を冒して助けに来てくれた」と言い張るゴードンさんに、裏事情でもあるのかジェニファーさんは「わたしには分かる」だけで、とーとープッツン来てしまったゴードンさんは「もういいお前なんか助手でもなんでもない」と絶交するという暴挙を演じてしまいます。「どんな事があっても地球の民を信じる!」と言い切るゴードンさんですが、肝心の地球の民には「お前を抹殺する」と、速攻で裏切られてしまいました。はっはっはのはー♪

 ここでゴードンさんを見捨てたかった私達ですけど、人間を殺すと戦う機会を逃したくないというアンドレさんや、ここで見捨てるのは可哀想だろうというクリスティーンさん、味方を裏切るような輩を生かしてはおけないというキャロルさんの意見を尊重し戦う事に。まずゴードンさんをわざとあえて敵の攻撃範囲内に出しておびき寄せると、頑丈なので2〜3発撃たれた程度では平気で、かえって反撃ついでに眠り屋付きの銃で眠らせてしまいます。眠った人間は(武器があまり効かないので)私達の魔法で倒して、ゴードンさんを前に出して撃たせ、反撃で眠らせ、また倒して……と進み、一番後ろの司令官はアンドレさんにつられて前進したところでシルバースーツを剥ぎ取り、ゴードンさんにトドメを刺させました。
 敵に散々撃たれ、自分で司令官にトドメを刺したくせに、「地球防衛軍がなぜわたしを攻撃するんだ」と言うゴードンさん。そこにサーズデイに「通信」とやらが入り、偉そうな服の割に中身はいまいちぱっとしない、鼻髭が不似合いな禿げた人間の幻像が現れ、その人物、カーター総司令とやらはゴードンさんにいきなり「まだ生きていたのかね」と言います。やはりおっさんの目的はジェニファーさんの推測通りで、「これで魔界は我々人類のものだ!」なんてベタベタな悪役台詞を吐きやがりました。よーやく自分が利用されていた事に気付くゴードンさんは顔を覆いたくなるほど間抜けですが、魔王と戦って死んだと誤報されるそうなので、とっとと魔界に帰化して魔界勇者になっちゃえばどーですか?
 なお殿下が言われるには、「なかなか見所のあるやつがいるものだな」との事。しかし私としては、怪人数体と怪しい女幹部も欲しいところですね。

 すっかり悪者にされたゴードンさんですが、とりあえずスルーしてあげて、地球防衛軍を駆除すべく前進する私達。そこにいきなり「待たせたな!」と声が飛び、定番通り高い所に現れ……足から火を吹いて空を飛ぶ人間(?)・カーチスが登場。カーターの手下っぽいこの人間、オールバックはどこぞの超能力者を思い出しちゃいそうですが、長い鼻でどこぞのサイボーグを思い出しちゃうのはマズい気も(笑)。ライバルの登場に燃え上がるフロンさんはさておき、カーチスは殿下に負けたゴードンさんを不甲斐ないと糾弾。殿下も同意しちゃいます。しかしゴードンさんは、今までになく魂が熱く燃え上がっている――なぜなら倒さなくてはならない敵が現れたからだと言い返しました(そーいえば前回、ゴードンさんやジェニファーさんがあれこれカーチスの事を話していましたね)。するとカーチスは証明しろとばかりに怪人、いや、兵士を呼び出し、「オレは地球勇者キャプテン・ゴードンを待っている。こんな奴らに負けんじゃねぇぞ」と言い残し、空の彼方に消えました。つまり勝てなければ、ゴードンさんは地球勇者失格というコトで……背後で恨みがましく睨まないで下さいお願いしますゴードン様。
 なおこの辺りは霊素の流れがおかしいのか、足場の下には有害なジオエフェクトが転がっている事が多く、さっきの「味方ダメージ20%」に続いて、上は「沈黙」、下は「味方ダメージ100%」、な〜んだ? なんてつい言っちゃいそーでしたが、下で特殊技を使い、それから上に投げてもらえば即死する心配がないと判明し、魔法で銃使いを倒しながらジオシンボルに到達。赤の「沈黙」を下に投げてから壊し、中央の石柱を盾にしながら右往左往する斧使いを屠ってあげました。

 次にお待ちかねは、上は「無敵/味方ダメージ20%」、下は「敵強化50%」。とーぜん敵は全員下へ投げて、上からの攻撃で倒したんだけど、その直前にフロンさんがいきなり寒気を感じ、なんでも「とても邪悪な気配を感じた」そーです。カーターやカーチスではなく、もっと人間離れした歪んだものだというんだけど、殿下ったら「オレさまより邪悪な気配を放つやつがいるとは信じがたい」なんて茶化すんだからもう。
 ……あとですね、ここでクリスティーンさんがやっちゃいました。ギガヒールと間違えてギガクール(汗)。目標は全員「無敵」の上で、誰もダメージ受けてないけど。

 いい加減鼻を探し回るのも飽きた頃、今回の件について、ジェニファーさんが何もかも自分のせいだって言うの。でも、何なのか聞ける前に殿下がカーチスの気配(というか鼻?)に気付きライバル登場。「完全に気配を消したオレに気付くとはさすが〜」とか言ってるけど、物陰から鼻だけが出ていたなんて事はないよねー? しかもそこでカーチスは殿下に「貴様にも興味が湧いてきた」って……ッ!?(赤面)
(貴様の妄想の内容はさておき、完璧間違ってる事くらいオレさまにも分かるわ!!(ラハール))
 冗談ですよ冗談〜。実際には殿下が「ならばどうする?」と言われ、応えてカーチスは「拳と拳! 技と技で語り合うまでよ!」……って、クールな人かと思いきや、どこの番長さんですかそれは。

 今度はカーチス共々兵士がこちらに寄ってきてくれるんで、私達は迎撃して雑魚は全滅。ゴードンさんに撃たれて眠った副官はパラダイムと筋肉ドリームを剥いでから倒し、カーチスからはヒーローマントを剥いで(アンタイオスさんお疲れ様ー)から総力コンボ。私がオメガウィンドでキルマークを獲得しました!
 なのにカーチスは余裕で立ち上がり、コンボの残りのリプリーちゃんとエセルちゃんのオメガウィンドから抜け出し、「やるな」なんてほくそ笑むの。「なぜ本気を出さぬ?」と言う殿下に対して、「びっぷ」に怪我をさせるわけにはいかないというんだけど……??
(「very important person」=「重要人物」ノコトデス。(サーズデイ))
 どうもご丁寧に。ここでなぜかフロンさんに「わたしに一目惚れしたとか?」などとギャグを先取りされるんですが、もちろんそーいう事ではなく、いきなり出現した超巨大物体こと「宇宙船艦ガルガンチュワ」その他諸々、宇宙大艦隊200万(公式発表)による総攻撃を開始する前にジェニファーさんを拉致監禁するという意味でした。しかも宇宙大艦隊にはジェニファーさんの義理の父=カーターがいるというのです。カーターは幼い頃からジェニファーさんを可愛がっていたんだけど、大切にしてくれているのではなくこれがホントの養女(幼女)愛好――ああっキャロルさんマンイーターで斬るのはよして私の血はAB型ー!!
 ……はあはあ。才能を利用するためだったという事です。そこでどーしようもなく投げやりになったジェニファーさんにゴードンさんは自分と共に戦うんだ! と言うんだけど、傍らでエトナさんに茶化されては台無しです。
 この辺で話がぐだぐだになってきたのを感じたか、カーチスは「決着を付け、ジェニファーを返してほしくばカルガンチュワに来い」と言い残して飛んで行きました。後にゴードンさんの悲痛な絶叫を響かせながら。
 ところで今回倒した人間達、瀕死のままほっといたんですけどその後どーなったんでしょ。
(いちおー魔界病院でHP1まで治してから、地下牢に放り込んで食事もさせてるわよ。何割かは死体も見付からなかったけど……まさか例のアレが骨も残さず……。(エトナ))
 れ、例のアレって何なんですかエトナさんーー!?!?(滝汗)


第十三話 WAR OF THE MAKAI後編(担当:キャロル)

 またもやお久し振りのキャロルです♪ あたしも着実に成長して今ではレベルも50オーバー、剣で「飛天無双斬」も使えちゃったりするんですよ。
 近頃他のみんなも含め、奇妙な夢を頻繁に見ます。コニータとかにとっては心が安らぐような、あたしとかには微妙に嫌な神々しい雰囲気の場所で、偉そうな天使と声だけの人物が意味深な会話を交わす夢。星の墓場-IIから帰った後、ちょっと仮眠した時の夢で、声が「今回の事は人間だけの仕業とは思えない。誰かが裏で糸を引いているに違いない」と言っていたのは何なんでしょう。夢だから別にいーですけど(笑)。

 宇宙大艦隊の総攻撃に応戦するために、あたし達はとりあえず魔王城に戻り、休憩や仮眠や会議に入ります。その間にも宇宙大艦隊は魔界全土を無差別攻撃中……というか多分、目標を差別できるだけのデータを持っていないだけで、所詮人間の兵器では、悪魔にとってはあまりダメージになっていません。
 とはいえ立場上放置はできないのが、この魔界の王であるあたしの師匠ラハール殿下。人間が魔界を手に入れたがる理由はさっぱり理解できませんが、頭上から爆撃が降り注ぐのはちょっぴり痛いし、何よりほっといては殿下の人気が急転落です。しかしゴードンさんがサーズデイのなびげーしょんしすてむ……案内機構を時空ゲートと同調させて、ガルガンチュワに移動できるようになりました。この案内機構設定はゴードンさんが行ったのではなく、ジェニファーさんがあらかじめ設定していたそうで。せめて義理の父であるカーターを信じたくて何も言わなかったのだろうとゴードンさんは考えているよーですけど、パートナーならそれくらい明かしておきましょーってば。
 ともあれいつまでもだべっていては話が片付かないので、殿下に喧嘩を売った戯け者どもに思い知らせるため、そして愚かしい人間どもの悪を暴くため、そして魔界の全てをこの手で護るために出撃しましたっ!
(ぐはぁっ!? 弟子のくせにオレさまを殺すつもりか貴様ーっ!?(ラハール))

 謁見を終えた頃には、さすがに人間達も無駄だと感じたのか魔王城への攻撃は止まって、城内は耳が痛くなるほどの静寂に包まれて――いませんでした。マンティさんは呑気に構えてるし、ドラッチさんはエトナ共々壊れ気味だし、施設は通常営業だし。
 準備を整えたあたし達が集まったのは時空ゲートの前。乗り物に時空ゲートを繋げるのは非常に難しかったというジャンヌさんの誘導でガルガンチュワに転送されますが、さすがに「総司令船室」なんてピンポイントな所には行けず、まず入れるのは甲板α-IIIポイント。全力解放した殿下が周りの邪魔な戦艦を片っ端から叩き落してくれたので、いきなり取り囲まれるような事もなく安全に出現できました。手加減したのを優しいだの愛だの言われる殿下ですが、「魔界を人間どもの死体で汚すのがイヤだっただけだ!」と本人主張しております。
(通信端末の記録によると、ちゃんと逃げられるようにしたせいで、救助した連中にまでパニックが伝染したそうよ。(エトナ))
(……微妙に愛じゃないっぽいよーな気も沸々としてきたのは、私の勘違いなんでしょーか?(フロン))
 殿下と合流後、どこが入口か探していると、頭上30デシメートル(1dm=0.1m)ほど上を謎の光線が通過。発射元を見ると、ラッセルが召喚するダークキャノンをやたら大きくしたような物体が甲板に据え付けてありました。なんでもあの光線は、地球防衛軍大宇宙艦隊が誇るアストロ粒子砲から放たれたもので、直撃したら悪魔や天使でもタダでは済まないとの事。ぱっと見たところアストロ粒子砲(2門)はLv100、少し小さなメガ粒子砲(4門)ですらLv50なので、おとなしく人タワーを放り投げ、入口っぽい光っている所へ移動。艦内に時空ゲートを接続する事に成功しました。

 一旦お城に戻って再度時空ゲートで突入すると、壁画も調度品もない貧相極まる廊下の奥の方から聞こえるのは、ジェニファーさんのものらしき「きゃー」という悲鳴。あたしは罠かなーとか、手遅れだったら気まずいかなーとか思いましたが、廊下の先に現れたのは、こーほーこーほー言って現れた「うちゅうふく」姿の武装した人間……じゃないモノ。サーズデイによると「せいたいはんのう」が「0.00000…」なんだけど、その僅かな分はまさか、生物兵器の「せいたいはんのう」だったりしませんか!?
(いや、自分の本拠で生物兵器を使う愚か者はいるまい。空中の雑菌や、至近にいたわたしやキミ達の生体反応によるノイズだったのだろう。(ゴードン))
(天才科学者でもあるカーチスさんが作った強化サイボーグ人間だっていうんですけど、普通サイボーグって生体部分と機械部分が混在しているんじゃ?(フロン))
(……フロンちゃん、アニメ見過ぎ。ちなみに機械100%の奴は厳密には「アンドロイド」。(エトナ))
 えー、その強化なんとかは、カーチスが正義のためと称して人の道に外れた実験を行った成果なんだそーで。そこでゴードンさんは、ジェニファーさんまで改造されていると思い焦りを露わにします。約3名が即興で描き上げた巨大ロボット風ジェニファーに「妙な想像を膨らますんじゃない!」とツッコミ入れてくれますが、襲い掛かってくるサイボーグの前に話は中断。殿下がおびき寄せたところを範囲攻撃で叩き、見え辛い所にいた奴にコニータちゃんが撃ち殺されそうになりますが、アンタイオスがゴールドスーツを剥ぎ取ってから集中攻撃でぐちゃぐちゃにしちゃいました。
 ところでこいつら、魔界で使っているのと同じ種類の武具を使っているんですけど、どこから仕入れてきたんでしょーね殿下?
(どこかの別魔界から兵器の物々交換で仕入れてきたのか? ローゼンクイーン商会は人間が始めた店だから、地球に支店がある可能性もあるが……。(ラハール))

 サイボーグという魔物だった兵士を倒し、蘇らないようにクリスティーンさんにお経を読んでもらい、リベルテちゃんに焼却処分してもらったあたし達は(注:そこまでする必要ないです)、感知装置をゴードンさんとサーズデイが片端から無効化しながら通路を移動します。悪魔達からの反撃に応戦するのに忙しいのか、人間もサイボーグも現れません。
 そこにハゲ茶瓶、もといカーターから通信が入り、他人様の世界を侵略したのは、「子供作りすぎ」「頭を使わない犯罪多すぎ」「汚しすぎ」「食べすぎ」という戯けた理由で人間が滅亡寸前で(人間界ってたくさんあるんだけど?)、とりあえず人減らしするにも別世界への移民にはお金が足りず(テキトーに殺して間引いちゃダメ?)、魔界を乗っ取れば手間が省けるという理由でやったんだというんだけど……それくらいなら人間を生贄や奴隷として魔界によこしてくれれば大抵の願いはかなえられますよね? 多すぎるならそれくらいいーでしょ?
(ダメですー! というかキャロルさんまでそんな鬼畜な考え方するんですか!?(フロン))
 いや、ハゲ茶瓶の言い種が厚かましかったからつい(汗)。殿下の評価はもちろん「自分の尻は自分で拭け」。ハゲ茶瓶は「悪魔めが!」と呻くんだけど、これって某ニジレッドと同じ台詞だしー。ゴードンさんも「わたしも怒っています!」とかっこいい事を言っておいて……「ジェニファー返せ!! このハゲチャビーン!!」はないでしょう(呆)。ハゲ茶瓶は「地球の未来のため全力でキミ達を叩き潰そう!」と捨て台詞を残して通信は終わり、またサイボーグ兵が現れました。さっそく「飛天無双斬」で斬ると……今度はサイボーグだけじゃなく人間もいました。まあどっちでも別にいーので斬ったり刺したり撃ったり焼いたり刻んだり剥いだりしちゃいますが。
(どっちでも良くはないのだが、カーターに煽動されて敵対した我が同胞を殺さないでくれた事には感謝する。……トドメ刺すのがめんどくさいという理由であっても。(ゴードン))

 人間とサイボーグの混成部隊を倒し、サーズデイがダウンロードした艦内地図を頼りに進んで行くあたし達の前、十字路にカーチスが待ち構えていました。カーチスは宇宙大艦隊の攻撃をくぐり抜けたゴードンを賞賛してからいきなり、奥さんと娘さんと「人間としての心と身体」を失ってから5年たつだとか余計なモノローグを口走ります。「攻撃しちゃいましょうか?」とエトナが言い、フロンちゃんがちゃんと聞かなきゃダメだと(趣味全開で)言ったところで本人が「続けてもいいか?」と断りを入れ(笑)――、
 ――昔のカーチスは世界宇宙科学研究所のエリート所員で(自分で「エリート」なんて称して恥ずかしくないんでしょーか)、地球を救うという使命に萌、じゃなくて燃えていたそうです。しかし5年前に宇宙開発反対者が研究所に仕掛けた攻撃によりカーチスは身体の7割を失い、奥さんと娘さんは爆風と共に……飛んだ?
(亡くなられたのだ。人間はキミ達悪魔のように丈夫ではないし、魔界のような魔法の救命医療など望めないからな。(ゴードン))
 犯人はゴードンさんに捕まえられたけど、カーチスは奥さんと娘さんを失った悲しみ、ゴードンがなんで事前に阻止してくれなかったんだという八つ当たり、無力な自分に対する憤り、地球を救うという使命に逆らう宇宙開発反対者に対する報復その他で、自分をサイボーグにして地球勇者になってやると誓ったんだそうで。
(カーチスは「どんな手段を使ってもより多くの人々を救うのが本当の地球勇者ではないのか」と言い、わたしを倒して唯一の地球勇者になる事が自分に残された唯一の道だと思い込んでいたが、「魔界侵略で多くの犠牲を伴う事が本当に地球人類のためなのか」「犠牲になる者の気持ちはよく知っているのではないのか」「奥さんと娘さんがどう思うか考えてみろ」と諭し、地球の民と友の過ちを正すため、地球勇者魂を友に叩き込む事を決意したのだ。(ゴードン))
(口で何と言おうとも、よーするにタダのどつき合いではないか。(ラハール))
 そこにカーチスのいる方を除く三方から兵士が駆け付け、あたし達は十字路で包囲されてしまいます。しかも兵士はジオエフェクトを解析しているらしく、自分達の背後に「敵強化50%」のジオシンボルを据え付ける始末。そこで殿下、ゴードンさん、(あたしが投げた)アンドレが剣の兵士をシンボルに投げ付けて壊し、それから銃の兵士を全滅させます。剣の兵士も魔法主体で(1人が装備していたレアのゴールドスーツを剥ぐのにちょっぴり手間取りつつも)あっさり倒し、接近してくるカーチスは、ゴールドスーツを剥いでから斧で斬られ銃で撃たれオメガウィンド3発で戦闘不能。
 よーやく地に伏した――でも地面は遥か下――カーチスはゴードンさんの地球勇者魂が熱く伝わってきたっていうんだけど、ゴードンさんは少しも手を出してなかったですよね? そこで「殺してくれ」というカーチスに、殿下とエトナは「分かった」と悪魔的反応をしちゃうんだけど、人間の作法だと「自分の非を認め反省している」という意味らしく、ゴードンさんは「友としてわたしを助けてくれ」と言うんですよね。「オレさまの家来にしてやってもいいぞ」という殿下のツンデレ的アプローチにも「悪くないかもしれねぇな」と脈のある反応を示します。
 でもへとへとのカーチスは、「ジェニファーに気を付けろ」と言い残して倒れてしまいました。そこでまた約3名は妙な想像を展開しちゃいますが、そんな大きなモノは艦内で自由に戦えませんってばぁ。というか期待に胸を膨らませても、どーせシェリーさんやフィズさんを除くあたし達のほとんどの胸は(以下略)。

 「総司令室」というのは、やたらと広く照明を落とした空間に、無数の映像の映った板と地球言語の文字がぎっちり並んだ鍵盤が座席ごとに並んだ所。壁と天井に魔界の夜空が映る中にはカーター以外の人間は誰もおらず、部屋の主は一際高い所の玉座のような椅子に座っていました。ゴードンさんが「ジェニファーを返せ」と叫ぶとなぜかカーターは「いいだろう」とジェニファーさんを出しますが、妙に無口で「洗脳済み」「替え玉」なんて想像が頭をよぎります。「これのどこが改造なんですか!」と焦点のずれた怒りをぶつけるフロンちゃんにカーターは、「よくぞ改造した事に気が付いたな!」って……確かに改造したなんて誰も明言していないし、悲鳴を聞いたゴードンの「改造されているかもしれん」発言が大元だったしねー。
 ジェニファーさんには「まいんどこんとろーる装置」、つまり付けた相手をなすがままに操れる養女愛好にもってこいの――じゃなくて、親切にもカーターがそんな説明をしてくれました。ゴードンを倒せと命令されたジェニファーさんに対し、ゴードンさんは「かよわい女性に負けるわけがなかろう」……なはずもなく、レベルが高いのに呆気なくのされてしまいます(汗)。まあいきなり射殺するわけにもいかないんだろーけど、そこでまた親切に説明してくれるカーターによると、ジェニファーさんはカンフーとかいう武術の達人だとか。ゴードンさんは取り押さえられない、船ごと吹き飛ばそうと言い出す殿下は問題外、船を欲しがるフロンちゃんはもっと問題外(なのに殿下はそれで納得)。まさしく八方ふさがり打つ手なしの状態でした。
 ですが――。
 「情けないぞ」と言い、足から火を吹き現れたのはカーチス。自分の最後の戦いだと主張して前に立つカーチスに、カーターは先に始末してしまえと洗脳ジェニファーをけしかけます。そこでカーチスが独白するのは、友と呼んでくれたゴードンさんに感動した心。本当はゴードンさんに憧れていて、そして科学者になった事。なのに何で道を違えてしまったかの後悔。最後になってやっと気付き、奥さんと娘さんのためにも真の正義のために戦う決意。正義云々は悪魔にはよく分からないけど、筋を貫くその意志はあたしにとってもよく分かります。
(でも地球で言う「天国」って、やっぱり天界の事なんでしょうか? それとももっと別の場所?(フロン))
 地球最先端の科学技術と古代から人間が磨き上げた格闘の技で、拮抗した力で渡り合うカーチスと洗脳ジェニファー。しかしカーターは恥知らずにも、「マインドコントロール装置に仕掛けた爆弾でジェニファーもろともお前たちを爆破してやる!」と、悪魔も呆れるほどの卑劣な手段に訴えました。しかし装置はカーチスの手で弱点を破壊され――たけどカーチスは致命傷を負い、爆発のまばゆい光が荒れ狂う中、「本物の地球勇者になれるかな?」と言うカーチスに、ゴードンさんは涙声で「なれるとも!!」と、そして今の姿こそ地球勇者そのものだと言葉を返します。

 あたし達が視界を取り戻したその時見たのは――教えてくれた事は忘れないと言い残して逝ったカーチスの、生身3割機械7割の骸を固く抱き締めながら、礼を言うのは自分の方だと言うゴードンさん。感じやすいあたしやコニータちゃんだけでなく、普段冷静なリベルテちゃんも涙をにじませ、ひねくれ者で異種族嫌いのアンドレも殺意を込めた瞳でカーターを睨んでいました。カーチスの魂は骸を離れ、殿下が死神に請願した通りに奥さんと娘さんの魂の元へ導かれるように、総司令室の天井スクリーンを突き抜け、空の彼方へと消えていきます。
 「許さんぞカーター!」と目を見開くゴードンさんに怖気付いたカーターは「ひー」と情けない叫びを上げるんだけど、そこで意識を取り戻したジェニファーさんが立ち上がり、カーター処刑ショーの開幕はしばしお預け。カーチスの使命を受け継ぐべく、「もうキミはわたしの助手ではない。同じ地球勇者として共に戦おう!!」とゴードンさんが宣言するんだけど、まあ確かに武術はゴードンより強いから(笑)。カーターは「これまで育ててやった恩を忘れたか!」とか叫ぶけど、仕込んだ爆弾で自爆させようとした相手に何の恩があるのやらねー。
 とうとうカーターは「最後の手段だ!」と称して、謎の人型生物を召喚。フロンちゃんによるとその生物は天使兵だそうで――というかあたし達はあれほど偏見持ってるくせに天使が何なのかろくに知らないし――、殿下とエトナの判断によると、カーターを操っていた何者か(多分、天界の上級天使)が支援をよこしたとの事。

 とはいえ天使兵はオメガ級魔法の連発の前に呆気なく敗れ去り、カーターは科学技術により転送されて逃げてしまいます。その後はゴードンさんが放送でカーターの発言を暴露、それでも抵抗する人間はあたし達が制圧しましたが、小型宇宙船で自分だけ逃げ出したカーターの行方を知る事はできませんでした。
 あー、今回はネタ一杯で長かったですね。
(散々盛り上げておきながら、最後でメタ的発言で落としてどーする貴様っ!?(ラハール))


最終話 戦いの果てに…(担当:コニータ)

 魔界を侵略していた地球防衛軍宇宙大艦隊は、カーター総司令が逃げた事であっさり崩壊しました。人間の宇宙船の一部はワープで逃げましたが、残りの大半はラハール殿下に撃沈されたり、あちこちの悪魔に撃沈されたり、パニックを起こして同士討ちを演じたり、ワープの失敗で異次元に消えたりと、まあ自業自得の最期を遂げています。降伏した兵士は――どうなったんですかラハール殿下?
(制圧したガルガンチュワに収容して、地球の科学技術を魔界に提供させるつもりだ。一部は星の墓場-IIに逃げ込んでいるから、戦いたければいつでも行ってこい。(ラハール))
 ……私は行きません(汗)。ちなみにカーチスさんの亡骸は荼毘に付してから魔王城に納骨しましたが、天使は塵一つ残していませんでした。

 そんな戦後処理の傍ら、フロンさんは天界に戻る決意を固めていました。人間の侵略の裏に天使がいるとすると、天使達の指導者である大天使が悪い人かもしれないのに、「大天使と戦う事になろうとも、大天使を信じているから天界に戻る」と言うフロンさんに、ラハール殿下は「大天使の面を拝んでやる良い機会だから一緒に行く」と。もちろん私達も、殿下とフロンさんを護るため/魔界侵略の黒幕に報復するため/3つの世界に平和をもたらすため/天界を見てみたいから/天使と戦ってみたくて/ただ何となく、ご一緒させて頂きます。
(理由バラバラじゃない、アンタら。(エトナ))
(悪魔としては不純な奴も若干いるが、欲望に忠実なのはさすがオレさまの家来どもだな。(ラハール))
 そして私達はゴースさんから餞別に音叉魔神剣を貰い、エトナさんがどこかで拾ったテスタメント共々ラハール殿下に持たせ、魔界と天界を繋ぐ門へ旅立ちました。……どーせ戦闘する毎に戻ってきますけど。

 天界の門は、魔界とは思えないほどの美しい青空の下、大樹を背負う形で据え付けられていました。天界の言い伝えでは何代か前の大天使が魔界との交流を絶つために造らせたというくらいなので、天使なら開けたり閉めたりできるようで……って、前にリベルテさんが見たごっつい天使もこれを使ったんだろーなぁ。
 門が開くとそこは天界。澄み切った大気の中を無数の陸地が浮かんでいる光景はいかにも異世界って感じでした。そこに待っていたのは天使兵や大天使や髭おぢさんではなく、なぜかお弁当を奪って以来久し振りになる中ボスさん。「わたくし以外の悪魔がこの門をくぐるのは数千年ぶり」だそうで、単なるコメディリリーフかと思いきや、一気に重要人物の色合いを濃くしてきました。ゴードンさんやジェニファーさんは「実は天使なんじゃ?」と言いますけど、さっきの言葉が正しければ「わたくし」は悪魔に含まれますよねぇ。
 中ボスさんは相も変わらず通りすがりのビューティー男爵だと主張しますが、なのに「あなた達の成長ぶりを確かめに来たのです」と、過酷な戦いを最後まで戦い抜けるのか見極めるためと称して私達に戦いを挑みます。――真面目な話を滔々とされて動揺の隠せない私達に(笑)。

 まあちょっぴりは過酷でしたとはいえ、ストリゴイの火属性魔法でリプリーさんが倒されたりといったアクシデントを抜きにすると、思ったよりは楽に勝利できました。もちろん中ボスさんも、黒騎士のヨロイを剥いでから倒させて頂いたんですが、その後中ボスさんはなぜか私達のチームワークを褒め称え、悪魔、天使、人間といった種族間の偏見の問題を滔々と語り、心を一つにして試練を乗り越えるよう励まします。「お前は何者なのだ?」と問うラハール殿下に「通りすがりのビューティー男爵」と言い張るのはちょっとアレですし、ゴードンさんに「ライバルとして励ました」だの、ジェニファーさんに「ライバル同士の友情ってなんて素敵なの」だの言われるラハール殿下はちょっぴり気の毒です。

 ここでちょっぴり先に進むのはお休みして、フロンさんの弟子・女僧侶のマグダレーナさんと孫弟子・虹魔法使い〜銀河魔法使いのエルフリーデさんを育てたり、私達のレベルを思う存分上げたり、ノインテートが装備しているデビルクロー&黒騎士のヨロイを剥いでお金を稼いだりします。中ボスさん、「経験値+100%」エリアを残してくれて有難うございました。
(……ワタクシの名前を覚えないとは悪いお子様ですけど、ドリルヘアーに免じて勘弁してあげましょうセニョリータ。(中ボス))
 ドリルってなんですかドリルってー! それに本当のドリルは円錐形じゃなくて先の尖った鉛筆型でー!(汗)

 ドリルはさておき、吸血鬼相手に経験値稼ぎをした私達は、いーかげん天界の奥に探検に出る事にしました(まあ、いつでも時空ゲートでお城に帰れますが)。緑の豊かな大地を踏み締め歩いていると、いきなりワープで天使兵が出現。もちろん喜びの再会というわけはなく、フロンさんが何を言っても「却下」の一本槍で、天使長のブルカノの命令で反逆者を排除すると言い張ります。動揺するフロンさんにラハール殿下は「泣きを入れるくらいならはじめから来るな」と暴言しますが、暴言とはいえ確かにそーなので、フロンさんも迷いを捨て、頭の固い天使兵相手に戦う事に。「ありがとう」と言われ、「余計な世話を焼かせるな」と返すラハール殿下……照れ隠しなのかはたまた本心なのか気になるトコです。
 敵は天使兵第三部隊(第一部隊と第二部隊はどこにいるのでしょう?)。辺り一帯全部が「ワープ」なので、まずはラハール殿下だけ出して様子見したら、ベースパネルの上まで「ワープ」に含まれていたんで、ラハール殿下は天使兵と一緒にバラバラに転移。覚悟を決めて主力が近場の天使兵を壊滅させます。次の転移でエセルちゃんが天使兵2人の側に出ちゃいますが、幸いにも魔法攻撃で殲滅できました。ホント、ワープの発生が味方ターン直前で命拾いしましたよ。

 こうして天使兵の襲撃を退けた私達。本当はこっそり情報収集したかったのに敵対者扱いになった上に、第三部隊はいくら(アンドレさんや忍者のハヤテさんが)拷問しても情報を吐かなかったので、フロンさんだけを頼りに大天使の居場所を目指して歩いていきます。……名所巡りも食べ歩きもしてみたかったのに(ぼそり)。
 するといきなり、白い翼にむさくるしい髭面と筋肉質の巨体が全く似合わない天使? が出現。エトナさんもすっごく認めたくないとはいえ、いつぞやのリベルテさんのよーに真実を受け入れなくてはならないのが果てしなく苦痛でしたが、なぜかラハール殿下は全く動じず、「天使にしておくにはもったいないほどの悪党面だな」と感想をのたまいます。髭天使はフロンさんを「悪魔を率いて天界を攻撃」と強引に決め付け、全員処刑などとまるで頭の悪い暴君のような事をぬかしやがります。しかもゴードンさんを指して「頭の悪い地球勇者」って、ゴードンさんは魔界勇者なのに称号間違えたりしないで下さい(違)。
 ラハール殿下が喧嘩を買おうとしたその時、フロンさんが代わりに前に出て、普段からは想像できないほど冷たく、そして悲しい表情を浮かべて言うには、髭天使は自分だけが正しいと決め付け、ちゃんとした善悪の判断もできない哀れな人だと。で、心の中に悪があるのではないかと咎められ、髭天使は威厳もへったくれもなく後ずさってしまいました。
 みんなでフロンさんを褒め称える中、錯乱した髭天使は自分が正しいんだとひねた悪餓鬼のように主張し、召喚した天使兵に私達を皆殺しにしろと命令して逃げてしまいます。
 そこでまた天使と戦いになるのですけど――敵の中にアーチャーや魔法剣士までいるのを見てびっくり。元は魔界と天界は1つの世界だったとパドルのセブリア(女長)から聞いた事はあったとはいえ、まさかここで同族に出会うなんて……。
(ちなみに天使兵を弟子として作るためにレベル上げなきゃいけないのは、開祖が堕天使だっていう女僧侶と、ここで出てきたアーチャーと魔法剣士よ。(エトナ))
 まあここのアーチャーは天界のパドル(多分)の大樹から生まれてるんで気兼ねする意味もあまりないし、いずれにせよ敵なら倒すのが、アーチャーに限らず戦士の習い。最後に残った天使兵と魔法剣士は、ゴードンさんの銃で眠らされ、アンタイオスくんに高そうな装備を剥がれてから倒されました。……って、近頃の戦い方はエッチっぽいなぁ。

 ここまでの騒ぎになっているのに、大天使は全然現れません。髭天使のやっている事を黙認しているのか、幽閉されたりして黙認せざるを得ないのか、もしくはわざと泳がせて潰し合い、もしくは髭天使を失脚させるための証拠固め、もしくは――なんて余計な事ばかり私が考えているのに、フロンさんは敬愛する大天使を信じ抜くというんです。そこで出会った天使兵もいましたけど、「進入禁止」迷路は先行したラハール殿下にシンボルを壊していただき突破。天使のリーダーに風車斬りされてリベルテさんがあっさり倒されたり、リーダーをアンタイオスさんが身ぐるみ剥いだりといった展開がありながら何とかクリアーです。

 と、ここで大天使の居場所に近付いてきたので、暗黒議会でお店関係以外の議決を初めて実行。「プリニー界」というはぐれプリニーの世界に殴り込みを掛けました。
 プリニー界は私達の魔界やフロンさん達の天界から逃げ出したプリニーの世界。中には魔王や大天使に反逆して追放されたツワモノもいるとか。でも出会うプリニーはみんな翼が悪魔バージョンなので、魔界逃亡組が圧倒的に多い模様です(ぢーっ)。
(そこでどうしてオレさまを見るんだ! 責任追及したいならエトナにしろ!(ラハール))
 この世界は意外と小さく、3回戦うだけで制覇完了。一番奥にはプリニー神という金色のプリニーがいたので、装備を剥ぎながらこちらの装備を充実させてもらいました。

 そうこうしてやっと髭天使を発見しますが、「悪が待ち構えている時には必ず罠がある」というゴードンさんの警告通り、髭天使は天使の禁忌であるはずの悪魔召喚にまで手を出して、こんな事もあろうかと契約していた5体の魔神を呼び出します。「心行くまで殺しあうがよいわ」などと悪魔そのものの台詞を吐いた髭天使は消えてしまい(加勢すれば有利なはずなんですけど)、じりじりと詰め寄る魔神5体の前にすっかり弱気の私達ですが、その時背後から不敵な声が。
 「誰だ!?」とラハール殿下が叫び、「あそこです!」とフロンさんが指差す先には――眼光鋭い緑のプリニー。なんとプリニーの正体はお亡くなりになったカーチスさんで、生前の罪が重過ぎて、贖罪のためにここにやって来たとのこと(つまり殿下の要求は無視ですか死神さん)。その姿がいかに、ラハール殿下やゴードンさんが笑い、リベルテちゃんが吹き出してクリスティーンさんの肘鉄を食らうほどチャーミングとはいえ、ゴードンさんの弱気を吹き飛ばす程度の意味はあったみたいです。でも「友情パワー」なるものは無いと思いますフロンさん。
 魔神達との戦いは、ミルメコレオのビームを諸共に喰らいながらノインテートとラハール殿下が殴り合うところから始まり、私達の範囲攻撃の連発でミルメコレオ以外は反撃もできずに死亡。ゴードンさんが遠くに投げ飛ばしたおかげでミルメコレオは前衛にしか攻撃できなくなり、次のターンでラッセルさんにあえなく射殺されました。
(結局、オレを全然使っていないがな。(カーチス))

 そして大天使がいるという、大天使の神殿(そのままの名前ですけど)にやって来ました。上位の天使と護衛しか入れないという事は、天使長なら堂々と入場可能なので、あの髭天使もいる可能性が高いでしょう。
 そうしたら入口にいきなり大天使の護衛、その名もガーディアン天使(英語にしただけじゃないですかそれ)がいました。なんでも彼、だか彼女だか知りませんが、通常攻撃無効の特殊バリアを張っているので、誰にも手出しする事ができないとか。そこでさっそくバリアを破るために攻撃を始める皆さんですけど、裏口から回り込むとかいう考えはなかったんですか?
(裏口を探す時間がもったいないし、どんな凶悪な罠があるか分かったものではない。表門なら普段から人通りがある上に、ガーディアン天使どもがいる以上、余計な罠が付いている事はないと踏んだのでな。(ラハール))
(ちなみに建築素材は魔法強化されているので、壁や床や天井を壊して突入というのも多分無理だったと思いますし、そんな事したら天界中が大騒ぎだったでしょう。(フロン))
 そーでしたか。話は戻りますけど、バリアを破壊するために攻撃を開始する皆さん。ラハール殿下とエトナさんの連携も、地球勇者究極フォーメーション「スペース・トライアングル」も、真・地球(中略)「プラズマ・カルテット」もバリアを貫通できませんでした。
 しかし、「みんなの心を一つにするんです」というフロンさんのアイデアが元となり、みんなの愛と友情を一つにして「ギャラクシー・オメガ・スター」を放つと、護衛天使は地面(……床は石畳なのになぜ?)ごと宇宙に飛ばされ、謎のおじさんが両手から放つ謎の光線を浴び、バリアは呆気なく粉砕されました。フロンさんが余計に付け加えた単語を巡り一悶着ありましたけど、その間待ち続けていた護衛天使って、もしやフロンさんと同レベルでお約束を尊重するタイプだったんじゃないでしょーか。
 ちなみに戦闘では一度に戦わなくていいように遠くに投げて、高く売れる武器を盗んでから1人ずつ倒してしまいました。

 無事神殿に潜入した私達は、「断罪の広間」で無意味にでかい後ろ姿を確認。即座に射殺しようとする私やラッセルさんを制止したフロンさんが声を掛けると、髭天使は「侮ってはいたが認めなくてはなるまいな、お前達の実力を」などといきなり寝言をほざきやがります。主にエトナさんの手で話は脱線転覆しかけますが、目的とやらを聞いてほしい髭天使が話を無理矢理引き戻し――なんでも髭天使には崇高な目的とやらがあるそーですが、自分から臆面も無くそー言う事が崇高だったためしがありませんよね。やはり「全世界の唯一絶対の支配者になる」などという、顔から出直したら? といわんばかりの恥ずかしい子供じみた我儘でした。エトナさんに「自分の欲望満たすためのくだらない目的じゃん」と言われますけど、「絶対的な指導者による支配が必要なのだ」と強弁します。なお、「狡猾な悪魔」や「愚かな人間」には強圧的な手段でないとダメなんだそーで、だとしたら「狡猾で愚かな髭天使」はどーなるんでしょーねー。
(うむ。天使長とかいいながら、頭の中は心のねじけた餓鬼大将並だな。(ゴードン))
 ですね。フロンさんは何とか説得しようとしめすけど、「やつらの残酷さを、心の醜さをわたしは知ってしまったのだ!」と口走る髭天使には、もはや理性の欠片も残っていません。やっぱり、リベルテさんが植物図鑑のカバーの中に裸の男の子同士が絡み合う漫画や小説を仕込んでいたから、髭天使が理性を破壊されてしまったのでしょう。
(やっ、やめて下さいリベルテさんっ! こんな所でオメガファイアされるとわたしまで――きゃーっ!?(フロン))
(……真面目に考えるなら、交流が絶えるより昔の魔界との戦争で残虐行為を働かれ、精神的外傷を受けたのだろう。もちろん下らん行為の言い訳にはなるまいがな。(ラハール))
 ま、まあエトナさんは何を言っても無駄だと見切り、ラハール殿下も「こういう奴には体に分からせてやるのが一番だ」とリベルテさん辺りが喜びそうな発言を(汗)。髭天使は「お前達や大天使を殺して神になる」などと肝心のプロセス抜けまくりの与太を言い出して、血に餓えた某男戦士や某赤魔法使いや某(以下略)を煽り立ててしまいました。

 さて肝心の髭天使・ブルカノですが、私達から見てほぼ真上、魔法も届かないほどの高い場所に陣取り、下から左回りに上がって行く大階段の要所に天使兵を並べていました。しかしここまでバラバラに手勢を並べるとは、はっきりいって戦術の素人さん。さっそくラハール殿下や魔法使いをベースパネルから投げ飛ばし、下の広間の下級天使を1ターンで殲滅です。階段を駆け上がったり投げられたりしながらもう1つ上の広間も制圧し、狭い階段で待ち構えているところに降りてくる上級天使を殲滅。髭天使はまずジオセイバーを盗み、筋肉ドリームを盗み、天界のヨロイを盗み、ホーリーオーブを盗んでから、斧1発とオメガクール2発でクリスティーンさんがとどめを刺します。……僧侶としては問題がありそうな行為ですけど。

 身ぐるみ剥がれてズタボロにされ、無駄に大きな図体で通行の邪魔になった髭天使。しかし相変わらずフロンさんの言葉に貸す耳も無く、「かくなる上はお前達と大天使を戦わせて共倒れにさせてやるわ!」などと小悪党の本性を露呈する始末。そのままワープで逃げてしまう姿を見て、「普通の悪党なら涙を流して改心するはず」と言うゴードンさんですけど、ラハール殿下は「奴には奴の信念がある」と言います。とはいえそんな歪んだ信念を放置するわけにもいかず、フロンさんを「気持ちを思い切りぶつけてやれ」と励ますラハール殿下ですけど……プリニーカーチスさん、傍から見てどー感じましたか?
(完璧に喧嘩番長だな。暑苦しくてやってられないぜ。(カーチス))
(……貴方とゴードンやラハールちゃんも、傍から見ればああだったのよ?(ジェニファー))
 そして心の準備も万端で、大天使の部屋「神の祭壇」に突入する私達。その光の先には――以下次号(笑)。


クライマックス〜エンディング(担当:リプリー)

 さて、話の締めはこの私、青魔法使いのリプリーがお送りいたします。
 コニータの話が長過ぎたので、できるだけシンプルかつクリアーにしつつもエンターテインメントを重視してなおかつドキュメンテーション路線で行きましょう。
(……テキトーに単語並べただけだろう貴様。(ラハール))

 ――広さ以外は他の部屋とそう変わり映えしない、白い石の柱と石畳の大広間。正面の一段高い所には、ほのかに光を放って浮かんでいる高貴そうな天使がいました。この天使がフロンさん憧れの大天使ラミントンのようで、結構素敵な男性とはいえこの場で口説くよーな場の雰囲気をぶち壊しにする者もいるはずはなく……と思いきやいました髭天使が。
(キミの前の担当もそうだけど、ブルカノを名前で呼んでくれないかな? 罰を受けているうえに、名前まで無視されたら彼が可哀想だからね。(ラミントン))
 別に可哀想とは思いませんけど、その素敵な笑顔には逆らえませんよぉ(照)。さて私達を反逆者呼ばわりするブルカノですが、ラハール殿下は「出任せを言うな」と黙らせます。大天使に「キミは悪魔なのか」と問われ、堂々と魔王の名乗りを上げる殿下。どーやら大天使、クリチェフスコイ陛下と面識があったらしく、――いやその前にフロンさんの話を。

 フロンさんは大天使に、地球防衛軍の魔界侵略に天使が関わっていた事を告げ、その真実を大天使に対して求めます。ついさっき「大天使を始末して〜」と言っていた舌の根が乾かないくせにブルカノは必死に悪魔のせいにしようとしますが、フロンさんは「好戦的でも無意味に人を傷付けたりしない」と私達をフォローしてくれます。「どちらかといえば善人ではないし、身勝手で口が悪くてひねくれ者」と評されたところでラハール殿下は突っ込もうとしますが、そのままスルーされて「ちゃんと愛や優しさがある」と続けられました。なんでも大天使はフロンさんに「絶対的な悪など存在しない」「悪魔にも愛がある」と言っていたそうで、いわばフロンさんの魔界滞在は留学期間を兼ねていたみたいです(悪い影響受け過ぎですけど)。そしてフロンさんは、「偏見に目を曇らせた天界の住人が間違っているのではないか」と言いました。……まあ悪魔にも、天使に根強い偏見を持っているのが多いし。
 ともあれ大天使も同意して、偏見に取り付かれたせいでブルカノが行動を起こしてしまった(と書くと軽いけど、悪魔や人間や天使がどれだけ犠牲になってしまった事やら)のだろう。偏見を取り除けなかった自分の責任でもある――と言います。ヒトの悪い事に大天使はブルカノが何をやらかしていたか「友人」を通して全部分かっていたそうで、呻いて一目散に逃げるブルカノを一撃で毒々しい花に変えてしまいました。そして仲間の天使を傷付けた罰をフロンさんにも与えるというんで、殿下を初めとしてブーイング殺到。でもそれを抑え、仲間を庇うフロンさんは、最期に――「最後」じゃなくて? と動揺しているうちに……、

 フロンさんからペンダント(邪悪な者が触れると熱を発するペンダント)を渡された殿下が、熱さを感じないのに驚く姿。
 きびすを返し、光に包まれて、そこにあるのは百合のような清楚な青白い花。ただ淡々と、「存在は罪と共に消えた」と語る大天使。
 このあまりに無情な仕打ちに、私達は怒りと呼ぶのも生易しい、憤懣、怨嗟、いやむしろ絶対的な憎悪を覚えた事は確実です。
 悠然と、「いい天気かい?」と言うのと同じように「憎いかい?」と言う無表情の大天使に対し、殿下は血のような怒りを湛えた瞳を見開き、「殺してやる!!」と絶叫。
 「殺してやる」「殺してやる」「殺してやる」。甘美な酒のように、心の空洞にエコーしていく衝動。
 風で引きちぎりたい。氷で砕きたい。殺してから死体と魂をずたずたに引き裂いてやりたい。ありったけの昏い感情に堰き立てられ、私は杖を、仲間達もそれぞれの武器を、ただ大天使を殺すために手に取りました。その結末も理解せずに。
(……結末知ってるくせに、よくもまあここまで盛り上がれるもんよねー。(エトナ))
 よけーな茶々を入れないで下さいってば。

 戦闘の場は、まるで墓地のように墓標が並ぶ荒涼とした岩山。見上げる先にいる大天使に先んじて、私達は山肌を駆け上がり、配下の天使兵に攻撃を浴びせていきました。大天使から雷獣の牙を盗んで天使を全滅させたところで、ワープした大天使に攻撃を受けますが、武器を盗んでいたので幸いにも致命傷には程遠く、テスタメント、天界のヨロイ、オリハルコンの盾と順に剥いで行き、エトナさんが槍でぐっさり貫くと、そのままスローモーションで、大天使は倒れていきました。
 あの状況で冷静に装備を剥ぎ取ったアンタイオスさんと、治癒魔法を掛け続けてくれたクリスティーンさん。2人の冷静な目が無ければ、きっと勝つ事はできなかったでしょう。

 戦いを終えて異次元ゾーンから帰還すると……倒れ伏した大天使、剣を握り締め立ち尽くす殿下、そして百合のような清楚な青白い花。ついでに茶色の毒々しい花。殺戮衝動から何とか解放された私達は、杖に付いた霜、自然発火しかけのドレス、力を籠め過ぎて歪んだ斧の柄などを見て、自分が何をしたかようやく気が付きます。天使兵は岩山に取り残されたのか姿は見えませんでしたが、あれだけの攻撃を受けながら血も流していない大天使に殿下は近付き――、
 ――剣を収めて一言「やめた」と呟きます。大天使を殺したところでフロンさんが帰ってくるわけではないというだけでなく、フロンさんがいたら止めていただろうという理由で。そして頬を伝うのは、一筋の熱い涙。殿下はエトナさんに「後の事は頼んだぞ」と言い、自分の命を捨ててフロンさんを救おうとするんです。
 そこに「お待ちなさい!!」と乱入するのは中ボスさん。この期に及んで「邪魔をするな」とすげない殿下に、「あなたもようやく母さんの気持ちが分かったようですね」と謎めいた話をするのです。中ボスさんに「よくごらんなさい」と促され、フロンさんの花を見ると……、

 光と共に現れたのは、なんとフロンさん! リボンが赤い触角状だったり服のデザインが変わっていたり瞳が赤かったり牙があったり悪魔の翼と尻尾があったりしますけど、紛れもなくフロンさん……あまり「紛れもなく」ではありませんが。どうやら罰として立派な堕天使になってしまったようで、でも胸のサイズは変わっておらず一安心ですが、夜魔族っぽいパーツの取り合わせからは決して油断できないでしょう。
(あー、せっかくの仲間の生還に一体何を考えていたのかねキミは?(汗)(ゴードン))
 女の子にとって大事なコトです(断言)。まあ胸の話題は置いといて、中ボスさんの言うところには、フロンさんは天界にとっても魔界にとっても大切な人なのだとか。なんでも、
(1)大天使はある人と共に、大昔に分断された天界と魔界のよりを戻そうとしていた。
(2)そのためにフロンさんを送り込み、ラハール殿下と会うように仕向け、2人を2つの世界を繋ぐ鍵にしようとした。
(3)具体的な内容はお子様にはまだ早い。
 という辺りで。
(わたくしの感動的な発言を、いきなり成人向けの内容にするんじゃありませーん!!(中ボス))
 その「ある人」とはまさかクリチェフスコイ陛下かと思いを廻らす私達をよそに、殿下と中ボスさんは「お前は何者だ!?」「ただの通りすがりのビューティー男爵ですよ」というどこかで聞いたようなやり取りをしますが、そこに気高さを感じる、どこか波長に覚えのある魂が降りてきて、人間のすごい綺麗な女の人の姿になりました。そのお姿は紛れもなく、私に人間言語を教えてくれた王妃様、つまり殿下の母君。そのお方が中ボスさんに寄り添うのを見て、私達はここまでの戦い――魔界戦記の真実と、親の偉大なる愛を知る事になるのです。
(要約すると、「親馬鹿と超愛マニアの織り成す大迷惑」って感じ?(エトナ))
 中ボス、いや、陛下は「立派な魔王になるのですよ」と殿下に言葉を残し、王妃様と共に天へと上って行きます。殿下はどこまでも高く澄んだ天界の空を見上げながら言うには、「言われなくてもなってやるさ」、そして「オヤジより、もっともっと立派な魔王にな!」と。
 さあ、ここまで中ボスさんの正体に気付かなかった人は手を挙げて下さいー。…………皆さんニブ過ぎ。

 そんな片隅では茶色の花が、いつまでもいつまでも風にそよいでました(笑)。

 

 こうして魔界に帰還した私達は、魔王城の皆さんにお土産をせがまれ、もう一度天界に買い物旅行に出掛ける羽目になるわけですが、その辺の詳細は省略。
 その後――、

 地球防衛軍の侵略を打ち破り、大天使を殴り倒した殿下は、親の七光りに頼らず、実力で魔界全土の悪魔から魔王の座を認められました(意地でも認めようとしない奴は、ファンになった悪魔達にどつかれ意見変更を余儀なくされた模様ですが)。即位式には魔界中の有力者が集まり、私達もあれこれとお手伝い。
 即位式の当日、殿下は重々しい黄金の王冠を被り、玉座に腰を下ろしていました。戦いと出会いを経てちょっぴり立派になった殿下でしたが、感想を求められた私達は異口同音に「王冠似合わない」と断言し……速攻で逃走。もちろん当分、陛下の称号はお預けです。

 フロンさんは、悪魔に愛を伝えるべく、魔王城にラブ&ピース教室を開きました。通りすがりの悪魔を手当たり次第に勧誘する強引な手法はなぜか問題にはなっておらず、マデラスさんや(薔薇を添えて袋詰めで送られてきた)カーターや(茶色の花から元に戻された)ブルカノまで生徒になっています。相手はほとんどが悪魔なので素直に聞くわけありませんが、そこは堕天使、頻繁に身体で言う事を聞かせている模様です。
(……何度も言われてますけど、その表現ってやっぱりエッチです。(フロン))

 エトナさんは魔王城の大使として、書記官になったアラミスくんを連れて天界に行きました。とはいえそんなにする事もなく、文化交流として天使の美少年と魔界の話をするのが日課のようで、天界プリニーの扱いにも慣れずホームシック気味のエトナさんは、そのうち女僧侶や魔法剣士やアーチャーの大使と交代する事になるでしょう。

 人間界は、ジェニファーさんから聞くところでは、カーターは失踪したものの、手を組んでいた連中が地球防衛軍に深く浸透していた模様で、ゴードンさんもサーズデイもそんな連中の陰謀を打ち砕きながら、山積みのいろんな問題を改善するために活動しているようです。魔界から帰還したゴードンさんの冒険を元に「WAR OF THE MAKAI2」なる映画が作成されたという事で、その映像ソフトを貰いましたが、「オレさまの活躍はどうした!?」と随分殿下は不満なようでした。

 カーチスさんは贖罪のため、別の魔界へと旅立ちました。きっと今日も明日も明後日も、どこかの世界で正義のために戦う緑色のプリニーがいる事でしょう。

 こうして魔界と天界の和解を成し遂げ、三界に平穏を取り戻した私達。戦いにもちょっぴり疲れ、しばらくは休みを欲しい気分です。
 今のところの女性陣の楽しみは、フロンさんが王妃としてラハール殿下と結婚するのはいつかという事ですが……その前に私達もロマンス欲しいなぁ(笑)。
(そんな余計な妄想が働く暇がないように、別魔界の魔王でも討伐してみるか? 大天使相手に溜まった殺戮衝動が少しは発散できるかもしれんぞ。(ラハール))
 ……その前に試練の洞窟にでも通わせてください。えーん(涙)。


>おまけデータ

◆パーティメンバー:1周目クリア時(下線は主な使用キャラクター)

ラハール(LV85)┬クリスティーン(僧侶(女)/LV82)┬リベルテ(赤魔法使い/LV81)─リプリー(青魔法使い/LV81)┐
          │                   └シェリー(魔法剣士/LV46)                    │
          │ ┌─────────────────────────────────────┘
          │ └エセル(緑魔法使い/LV79)─スフレ(星魔法使い/LV62)
          └キャロル(戦士(女)/LV81)─コニータ(アーチャー/LV80)─フィズ(ローニン/LV46)
エトナ(LV81)┬アンドレ(戦士(男)/LV81)─ハヤテ(下忍/LV42)
        └ラッセル(レンジャー/LV79)─アンタイオス(コソドロ/LV81)
   
フロン(LV36)─マグダレーナ(賢者(女)/LV62)─エルフリーデ(銀河魔法使い/LV43)
ゴードン(LV80)

ジェニファー、サーズデイ、カーチス(全て初期レベルで放置)

クラッチ(プリニー隊/LV16)
ホーク(プリニー隊/LV16)
バイエル(プリニー隊/LV16)
油取り紙(ノインテート/LV70)

(一軍メンバーの能力値・装備)

 ラハール:魔王の息子
  LV85/HP3690/SP551/ATK1805/DEF1159/HIT710/INT600/SPD715/RES684/WM=剣14
  装備:魔神剣、黒騎士のヨロイ(R)、筋肉ワールド(R)、テスタメント
 エトナ:魔王の家来
  LV81/HP2499/SP588/ATK1555/DEF918/HIT673/INT596/SPD740/RES693/WM=槍11
  装備:勇者の槍、黒騎士のヨロイ、筋肉ドリーム、テスタメント
 キャロル:戦士
  LV81/HP2419/SP370/ATK1897/DEF949/HIT669/INT446/SPD670/RES552/WM=剣12
  装備:クサナギソード、黒騎士のヨロイ(R)、筋肉ドリーム、テスタメント
 アンドレ:戦士
  LV81/HP2013/SP195/ATK2139/DEF699/HIT451/INT305/SPD469/RES345/WM=斧13
  装備:皆殺しの斧、黒騎士のヨロイ、パラダイム、筋肉ドリーム(R)
 ゴードン:地球勇者
  LV80/HP2509/SP480/ATK701/DEF834/HIT1917/INT459/SPD756/RES389/WM=銃11
  装備:光線銃・ふじやま、黒騎士のヨロイ(R)、はやぶさのくつ、テスタメント
 コニータ:アーチャー
  LV80/HP1274/SP347/ATK1077/DEF529/HIT1631/INT415/SPD562/RES338/WM=弓12
  装備:ヨイチアロー、黒騎士のヨロイ(R)、はやぶさのくつ、フォアサイト
 アンタイオス:コソドロ
  LV81/HP1150/SP149/ATK270/DEF259/HIT1473/INT283/SPD360/RES137/WM=銃5
  装備:光線銃・ふじやま、黒騎士のヨロイ、筋肉ドリーム、ノクトビジョン
 クリスティーン:僧侶
  LV82/HP1609/SP1259/ATK585/DEF670/HIT544/INT1817/SPD688/RES1224/WM=杖15
  装備:竜神の杖、プラチナスーツ、テスタメント、カオスオーブ(R)
 リベルテ:赤魔法使い
  LV81/HP1083/SP1251/ATK440/DEF455/HIT579/INT1938/SPD622/RES1403/WM=杖16
  装備:竜神の杖、天界のヨロイ、テスタメント、ホーリーオーブ(R)
 リプリー:青魔法使い
  LV81/HP1057/SP1163/ATK348/DEF364/HIT507/INT1869/SPD565/RES1148/WM=杖14
  装備:大賢者の杖、プラチナスーツ、テスタメント、ホーリーオーブ

 ラハールとキャロルの2人を最前線に入れ、他の戦士系キャラクターは集中攻撃や雑魚排除に使います。一見前線偏重っぽいですが、「1」では魔法ダメージを受け付けにくい敵が混じっているので魔法偏重では少々不安が残りますし、与える魔法ダメージが属性に準拠しないため1人で多属性の魔法を使いやすいので、これくらいの割合でいいのではないかと思います。途中参加の固有キャラクター達は、反撃砲台として役立つゴードン以外は全然使用していません(笑)。
 なお、鎧は基本的に最終話での盗品(再度笑)。

◆魔王城の住人

マンティ(マンティコア、Lv368)
ドラッチ(ニーズヘッグ、Lv321)
ゴレック(ゴーレム、Lv382)
ガーゴ(ガーゴイル、Lv395)
ゴース(ゴースト、Lv337)

ロベルト(戦士、Lv74、防具屋・よろず屋)
ジル(アーチャー、Lv83、武器屋)
ジャンヌ(僧侶、Lv86、時空の案内人)
キニーネ(赤魔法使い、Lv76、アイテム界案内人)
ゾンちゃん(ゾンビ、Lv333)
マール(ローニン、Lv96、魔界病院受付)
プレネール(プレネール、Lv82、暗黒議会受付)
フィオナ(魔法戦士、Lv75)

〈豆知識〉
 ・連携攻撃では、連携したキャラクターの武器の熟練度は上がらない。倒した敵の経験値は山分けだが、マナは連携したキャラクターには入らない。
  (「2」では、武器熟練度も上がるしマナも山分けする)
 ・他のキャラクターに持ち上げられている弟子からも、師匠は魔法をエクストラゲインできる。
 ・敵の中には稀に、魔法ダメージをあまり受け付けないユニットが混じっている。外見や能力値では判別できないので要注意。
 ・ダークキャノンはオートマチック式。○ボタンを押し続けるだけで連射が可能。

〈エトナの秘密部屋日記〉
※玉座の後ろとお店のカウンターの髑髏のスイッチを押してから、広間の隅(ゴースとガーゴの間の角)を調べると見られる。1話ごとに新しいものを見続ければ、最終話で初めて入る際にテスタメントを1つ貰える。
1.あたしの記憶
2.一抹の罪悪感
3.天界からの訪問者
4.魔王さまの肖像
5.迷いと決意
6.魔王さまの面影
7.永遠の忠誠
8.憎しみ
9.母の愛
10.よみがえる記憶
11.魔王さまとの約束
12.奪われた記憶
13.裏切りの代償

〈被害報告が入った宇宙大艦隊の艦隊一覧〉
 ・第126艦隊(全滅、総員退避)
 ・第412艦隊(旗艦オリュンポス撃沈、ジャクソン中将以下全員逃走)
 ・第782艦隊(戦闘不能)
 ・第15艦隊(緊急応援要請)
 ・第981艦隊(緊急応援要請)


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