―ガープス・魔法大全あれこれと―


1.魔法使いに大切なこ(後略)

 魔法を使うのに必要なのは、身も蓋もなく言うと「呪文」「集中」「エネルギー」です。それぞれに必要な要素は……、

(1)呪文
 (1-1)呪文技能の基準値となる知力
 (1-2)呪文技能を使用可能にする、または呪文技能の取得の役に立つ「魔法の素質」
 (1-3)使いたい呪文技能(および、その前提条件となる呪文技能や特徴など)
 (1-3')呪文を有効に使うための技能(〈特殊攻撃〉など)
(2)集中
 (2-1)集中に伴う動作に必要な身体部位
 (2-2)集中を許す状況
(3)エネルギー
 (3-1)呪文の必要エネルギー以上のFP、またはパワーストーンや儀礼の助手など

 まあ要するに、参考書のP15にある通り、知力を高くして「魔法の素質」を取って疲労点を高くすればいいのですが、どれくらいが適切なのでしょうか。
 試しに、第3版の100CPに感覚が近そうな、130CPでキャラクターをテンプレート段階(というのはお粗末ですが……)まで試作してみましょう(不利な特徴は、100CPの場合と同じく-50CPまでで)。

魔術師のテンプレート(130CP)
/体力:10
 /ヒットポイント:10
/敏捷力:10
80/知力:14
 /意志力:14
 /知覚力:14
/生命力:10
 9/疲労点:13
荷重基本値:10
基本ダメージ:1D-2/1D
/基本反応速度:5
/基本移動力:5
移動力現在値:?
能動防御:?/?/?
―共通の特徴―
とりあえずなし
―有利な特徴―
35/魔法の素質3レベル
―不利な特徴―
-50/何か適当な、差し障りない不利な特徴
-5/適当な癖
―技能―
まだなし
※未使用CP61

 試作未満ですが、80+9+35=124CPで一般的な難易度「難」の呪文が1CPで15レベル、動作が簡単になりエネルギーも節約できるという事は、意外と余裕ありそうです。
 ――というわけはなく、まっとうな冒険者としては、知力以外の能力値を上げたり副能力値を上げたり有利な特徴を取ったり技能を取ったりする必要がありますし、不利な特徴の制限がより厳しければ、なおさら余裕がありません(上限が-40CPなら未使用CPは51CPしかないので、敏捷力を1点上げる事すら事実上不可能です)。「魔法の素質」の上限が緩い世界では4レベル以上にしたり、ユエルなら「力の授与」を取ったり、あれこれ工夫してCPを工面して下さい。

 というのは、専業魔術師になりたいキャラクターに必要な事。「魔法も使えるキャラクター」なら、もう少し条件が緩くなります。呪文を12レベルで使いたい学者や盗賊なら、知力を13にして「魔法の素質1レベル」を取れば60+15=75CPで済みます。……45CPで済んでいた第3版とは違い、「済みます」で済むレベルではありませんが。射撃呪文も使いたい魔法戦士なら、知力を11にして「魔法の素質3レベル」を取り、最大限の射撃呪文を倒れずに放てるように疲労点を2点上げると20+35+6=61CPになります。どちらにしろ体力や敏捷力も上げていると余裕などという甘っちょろい代物は残りませんので、ぎりぎりまで切り詰めてキャラクターを作ってみましょう。

学者/盗賊のテンプレート(130CP)
/体力:10
 /ヒットポイント:10
40/敏捷力:12
60/知力:13
 /意志力:13
 /知覚力:13
10/生命力:11
 /疲労点:11
荷重基本値:10
基本ダメージ:1D-2/1D
/基本反応速度:5.75
/基本移動力:5
移動力現在値:?
能動防御:?/?/?
―共通の特徴―
とりあえずなし
―有利な特徴―
15/魔法の素質1レベル
15/何か適当な、大きく有利な特徴
5/何か適当な、ちょっとした有利な特徴
―不利な特徴―
-50/何か適当な、差し障りない不利な特徴
-5/適当な癖
―技能―
まだなし
※未使用CP40

魔法戦士のテンプレート(130CP)
10/体力:11
 4/ヒットポイント:13
60/敏捷力:13
20/知力:11
 /意志力:11
 /知覚力:11
10/生命力:11
 6/疲労点:13
荷重基本値:10
基本ダメージ:1D-1/1D+1
/基本反応速度:6
/基本移動力:6
移動力現在値:?
能動防御:?/?/?
―共通の特徴―
とりあえずなし
―有利な特徴―
35/魔法の素質3レベル
10/痛みに強い
―不利な特徴―
-50/何か適当な、差し障りない不利な特徴
-5/適当な癖
―技能―
まだなし
※未使用CP30


2.魔法有用活用法

 ぶっちゃけて言えば、呪文というのは「凄い技能」です。……まあ、実用的にするにはたくさん呪文を取らないといけないのですが、戦士も盗賊的な技能や運動関係の技能を取らないと、戦闘以外で役立たずになるので、その点を考えれば一緒でしょうええきっと。
 ですので、戦士でも片手剣使い、槍使い、弓使いなどがいるように、魔術師も何か秀でた得意技を持ちましょう。とはいえ一芸だけではなく、片手剣を使っていても遠くの敵を攻撃するために弓をたしなんだり、矢を射ちにくい近接距離に対処するために〈空手〉を取ったりするように、治癒術師でも戦闘呪文を学んだり、精神操作が得意技でも通用しない相手と戦う時のために移動系呪文を習得したりが必要です。
 いちおー、「魔法でしかできない事」の代表例を次に挙げておきます。

《持続光》
 「暗視」や「闇視」ができない限り、暗い場所では動きが制限されてしまいます。特に人里離れた野外や、前近代の照明が少ない世界ではなおさらです。仲間全員が「魔法の素質」を0レベルでも持っていれば、敵より有利になるために《魔法の持続光》を取るという手もあります(まあそんな事してると、敵NPCが《魔法の閃光》でも発明しかねませんが)。

《大治癒》
 医療のTLが低ければもちろん、TLが高くなっても緊急医療においての重要性が減じる事はありません。ただし超能力だの妖術だのが存在する世界を除く。


3.魔法永久機関を作るには

 永久機関の定義から外れているのは百も承知ですが、とりあえず。
 ルール上、魔化で自動的に作動し続けるアイテムは作れても、魔化を施した物体が劣化・磨耗するのを完全に防ぐのは無理ですので(物質がダメージを受けると即座に修復するような魔化があれば別ですが)、物体の耐久性を度外視して考えてみましょう。

《踊る物体》
 体力15は荷重基本値23、1英馬力(745.7W)が体力25(荷重基本値63、荷引き馬の体力)とすると、約272.2Wになります。魔化して半永久的に回り続ける歯車や車輪(軸受けの破損に注意)から動力を伝達すれば、あまり大きくない装置を動かす動力源には十分です――汎用性を考えないのなら、動かす物体に直接魔化するのが手っ取り早いですが。技術系呪文が存在しない世界においては、最も現実的な選択肢です。

《ゴーレム》
 クレイ・ゴーレムを、機械を動かす動力源とします。基本でも《踊る物体》と同じ体力15が保証できますので安上がりですが、ゴーレムを配置するためのスペースが必要なのが難点でしょう。《踊る物体》とは違い、命令の変更によりプログラムし直す事も可能です。

《死人使い》
 ……人間のゾンビやスケルトンを使ってもいいですが(をい)、荷引き馬のスケルトンならもう少し効率的です。外道とののしられる覚悟があればですが。

《動力賦与》+《充電》
 魔化(a)に《充電》1点を付け加え、「常動型」にします。標準的な世界の換算式では、
  1エネルギー/秒=360kW(=482.5英馬力)
 です。360kWを荷重基本値に換算すると、
  360kW=荷重基本値30414.375754324795494166554914866…=体力1743.9717817190963796619929047589…
 にあたります。魔術師でないと使えませんが、エネルギーの上限と複数の呪文を維持する技能レベル修正の範囲内で、複数の装置を起動させっぱなしにできます。……ただし、

   これらのアイテムは目標に接触していなければなりません。 (『呪文大全』における説明文より)

 が「維持中もずっと魔化アイテムが触れ続けないといけない」という意味なら、このアイテムは1つの装置にしか使えません(この場合、アイテムを触れさせたり離したりすれば、動力を入れたり消したりできます)。「使用者が魔化アイテムを触れさせ続けないといけない」のなら、このアイテムは根拠から崩壊します(笑)。
 魔化(b)の場合、最低エネルギーで12.5tの装置を魔化できるため、よほど大きな物を動かすのでなければ(そしてその装置を頻繁に使うなら)、こちらが安上がりと思われます。

《出力上昇》
 持続時間10分、つまりエネルギー消費は10分毎しかないため、どちらかといえば損です。《動力賦与》を使いましょう。


4.魔法世界の諸相

 魔法と世界観の考察にしようとした残骸です。多元世界物のネタにしかなりません。

「火霊系や天候系が極端に発達し、治癒系や防御・警戒系が存在しない世界――兵士の生還率は第一次大戦並みに低くなる」
「魔術師が情報伝達系魔法と精神操作系魔法で一般人を支配している世界」
「《食料作成》が普及した結果、通常の食糧生産が行われなくなった世界」
「死霊系魔法がごく一般的に使われ、労働力のほとんどがアンデッドである世界」
「戦争で大量に使われた《疫病》が住民のほとんどを死滅させた世界」
「大災害で荒廃した現実世界を放棄して、住民がアストラル界に移住した世界」
「召喚した異世界の生物に征服された世界」
「様々な次元系呪文を用いて、資源や労働力を異世界から略取している世界」
「同じTL8の魔法世界――精霊系魔法による熱、蒸気、電気を動力としているTL8(6+2)と、石器時代レベルの技術と奇跡同然の魔法が同居するTL8(1+7)」


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