―ルールセクション3―


魔法

 魔法に関する細則です。日本に限らず東アジアにおいて「魔法」とは良い意味で使われず、「呪法」「術法」などと呼ぶ事がほとんどですが、ルール上は「魔法」と呼びます。


◇魔法ルール◇

 幻想世界の日本における魔法としては神道系の術、陰陽師の術(陰陽道)、道教系の仙術、天竺伝来の仏教系の術、切支丹の術などが存在し、どの系統であっても「マジック完訳版」の記述に基本的に従います。即席呪文は(GMが管理の労を厭わなければ)存在しますが、ルーン魔法(及びそれに類似した物)は特別に設定を作らない限り存在しません。使い魔も、陰陽道を除くほとんどの魔法流派では作り出す手段を持ちません。マナ(気、五蘊)の濃度は「/Magical」では基本的に「並」です。
 GMやプレイヤーが望むなら、当サイトの「魔術師の帝国」に掲載している追加ルールや追加呪文を採用しても構いません。

―神託―

 「マジック完訳版」記載の神託は、以下のように扱われます。
 ・占星:存在はしますが、陰陽師以外でこの術に通じている者はほとんど存在しません。日本の占星は中国から伝わった「国家占星術」であり、政治・宗教的に重要な人物でない限り、個人の事を占うには最大で−10の修正を受けます。
 ・タロット占い:存在しませんが、代わりにウンスンカルタや花札、百人一首の札で占う事が可能です。
 ・水晶占い:存在はしますが、かなり珍しい物です。日本では水晶球自体が珍しい存在ですので、滅多に使い手は存在しないでしょう。
 ・こっくりさん:存在しません。
 ・腸占い(厳密には「臓物占い」):狩猟の慣習の根強い地域の神官達が合法的に修得していますが、重要な行事の際にしか実行しません。僧侶は修得自体が違法です。
 ・モリブデン占い:存在しません。
 ・夢占い:特に中世では一般的なものです。神社や寺院に徹夜で泊まり込んで行うもので、聖域以外で行えば夢を見る確率は1/6に低下します。
 ・火占い:密教僧や修験者が行う事がありますが、神官の間ではあまり盛んではありません。場所によっては違法な事もあります。特殊な草ではなく木片を清めた護摩の束($100)を燃やし、質問に関係する物を燃やす必要はありません。ただし情報の確実性は、「マジック完訳版」の火占いよりやや低くなります。
 ・ルーン占い:存在しません。
 ・数字占い:時折見られます。日本の数字占いでは誕生日を知る必要がありませんが、その分確実性は低めになります。
 ・手相占い:近世にはよく見られるようになりますが、それ以前の時代には一般的ではありません。
 ・筆跡占い:存在しません。
 ・月占い:存在しません。
 ・足跡占い:存在しません。
 ・土占い:印を描くための杖は、銀ではなく神域の樹木から作られます(杖は$50、その場で枝を折ってもいいが、−3の修正を受ける)。通常は神官と陰陽師のみが行います。
 ・空気占い:修験者が主に行いますが、神官や僧侶も時折行います。
 ・水占い:かなり一般的な神託です。
 ・サイコロ占い:聖職者の魔法使いは基本的に行いませんが、俗人の場合は時折行う事があります。
 ・矢占い:存在しません。
 ・植物占い:存在しません。
 ・霊感占い:神官が時折行いますが、正規の神職でない「口寄せ」が携わる方が一般的です。
 ・宝石占い:存在しません。
 ・香占い:通常は僧侶のみが行います。

 以下は、追加する(一部は日本特有の)占いです。
 ・鏡占い:「マジック」の水晶占いに似ていますが、代わりに鏡を使用します。通常は白銅の鏡を使い、質の悪い鏡やガラスの鏡では−1以上、水面では−10の修正を受けます。
  前提:地霊系5種、水霊系5種
 ・亀甲占い:亀の甲羅に穴を開けてから熱した鉄棒を押し当て、甲羅に入ったひびから神託を得ます。本来この占いは共同体全体に関わる事を占うためのものであり、個人的な事を占うと目標値に−5以上の修正を受けます。
  前提:火霊系5種、動物系5種
 ・鹿骨占い:亀甲占いに似ていますが、こちらは鹿の肩甲骨を使います。
  前提:火霊系5種、動物系5種
 ・粥占い:粥の中に藁を差し込み、中に入った穀物の粒の数や形状を見ます。粥に使った穀物に関わらない神託を得ようとすると、−5以上の修正を受けます。
  前提:水霊系5種、植物系5種
 ・釜占い:釜の中でお湯を煮立たせて、その様子から神託を得ます。
  前提:火霊系5種、水霊系5種
 ・カルタ占い:「マジック完訳版」のタロット占いに近いものですが、ウンスンカルタやいろはカルタを使います。
  前提:四大精霊系呪文を各3種ずつ
 ・辻占い:人通りの多い道端で通行人の会話に耳を傾け、その内容から神託を得ます。人通りの少ない場所では−1〜−15の修正を受け、準備時間も修正が−1されるごとに20%ずつ増加します。
  前提:風霊系5種、地霊系5種
 ・詩文占い:対象の詠んだ詩文(和歌や漢詩)から判断材料を得ます。簡単な内容の場合、和歌(31文字)や五言絶句(漢字20文字)なら修正はありませんが、より長い詩文では+1の修正を受け、俳句(17文字)や対聯(漢字10〜14文字)では−5の修正を受けます。複雑な内容から判断するには長い詩文が必要で、そうでなければ−5の修正が追加されます。
  前提:風霊系5種、水霊系5種、〈文学〉12レベル

―魔法の品物―

 日本では古代を除いて装身具を使う事がほとんどないため、装身具型(指輪、腕輪、首飾り、冠……)の魔法の品物は輸入品以外にはまず存在せず、別の形状を取る事になります。宝石もほとんど価値が認められず、代わりに同価格の別の材料や工芸品を用います。


◇信仰に応じた魔法の規制◇

 「/Magical」における、各宗教の特徴と魔法との関わりです。魔法が存在するのが当たり前の世界ですので、あまり細かい所を突っつかないで下さい。
 またこれらの規制は聖職者、またはこれに準じる存在(居士、法学者など)は厳守を求められますが、俗人は信者でも厳守していない場合があります。
 ※「人間」とある場合、基本的には人間レベルの知性と社会適応性を持つ全ての存在に適用されます。「人間を生贄にしてはならない」とある場合、河童やドワーフを生贄にする事も禁止されます。なおこれは純粋に魔法的な問題であり、異民族や異種族との相互蔑視の存在とは無関係です。
 ※一部の宗派では《悪魔召喚》が禁忌とされていませんが、そのような宗派でも「悪魔は完全に邪悪な存在である」という認識は共通しており、普段は使用する事はありませんし、やむをえず使用する場合には細心の注意を払います。

*神道
 「/Magical」では、神社の系統により、得意な系統や規制は少しずつ違います。魔法研究の中心地は特にありませんが、朝廷の神祇官が魔法の管理を行っています。

・神道共通規制
 必然的に穢れに触れるため、《死人使い》が使用を、《悪霊召喚》《疫病》《悪魔召喚》が修得・使用を禁止されます(《死人奪取》は構いませんが、戦闘後すぐに機能停止させなくてはいけません)。人間を生贄にする事も禁止です。
 自然な年齢経過を妨げてはなりません。そのため《精神捕獲》《老化》《若さ奪取》《肉体交換》が修得・使用を禁止されます。《若返り》は不自然な老化を治癒するためにのみ認められます。
 「気」(マナ)は世界その物の力の顕れです。そのため《魔力除去》が修得・使用を禁止されます。
 穢れが生じる行為であるため、陸棲哺乳類に対する《調理》が禁止されます。ただし狩猟と関係の深い神社では、野生動物に限り許容されます。
 同じ理由により、陸棲哺乳類を生贄にする事は禁止されます。ただし狩猟と関係の深い神社では、野生動物に限り許容されます。

*仏教
 「/Magical」では、密教系を除き、あまり魔法を重視していません。特に上座仏教や禅宗では、「世界への執着を強める」として、出家した僧侶が僧伽で魔法を使用する事自体歓迎していません。魔法の研究は各地の本山で行っていますが、日本では平安時代以降は延暦寺と高野山が抜きん出た水準を誇っており、禅系や浄土系の宗派は一歩譲る形です。

・宗派別適用規則
 南都六宗…仏教共通規制、大乗仏教共通規制
 天台宗…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、密教限定規制、浄土教限定規制
 真言宗、日蓮宗…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、密教限定規制
 浄土宗、浄土真宗、時宗、融通念仏宗…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、浄土教限定規制
 臨済宗、曹洞宗、黄檗宗…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、禅宗限定規制
 中国仏教(唐まで)…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、密教限定規制(一部の宗派)、浄土教限定規制(一部の宗派)、禅宗限定規制(一部の宗派)
 中国仏教(五代から)…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、浄土教限定規制、禅宗限定規制
 朝鮮仏教、ベトナム仏教…同時代の中国仏教に準じる
 チベット仏教…仏教共通規制、大乗仏教共通規制、密教限定規制
 上座仏教…仏教共通規制、上座仏教共通規制

・仏教共通規制
 生類を無闇に殺める事は戒められます。そのため純然たる戦闘用呪文は全修得数の半分を超えてはなりません。人間や動物の生贄も厳禁されます。
 輪廻を妨げてはなりません。そのため《死人使い》が使用を、《死人奪取》《精神捕獲》《老化》《若さ奪取》《肉体交換》が修得・使用を禁止されます。《若返り》は不自然な老化を治癒するためにのみ認められます。
 邪な存在から利益を得るのは外道(自分のものでない力を得る事)の第一です。そのため《悪霊召喚》《疫病》《悪魔召喚》《悪夢》が修得・使用を禁止されます。
 虚栄や虚言は世界への正常な認識を妨げます。そのため《説得》《偽記憶》《ささやき》《集団ささやき》が修得・使用を禁止されます。

・上座仏教共通規制
※これらの規制のほぼ全ては、僧伽で修行する僧侶にのみ適用されます。
 実生活に役立つような呪文は、極力修得が避けられます。呪文により日常から精神的に世界と関わる事は、世界への執着を強めて解脱を妨げるからです。
 物質的存在への執着を遠ざけるため、《応急修理》及びそれを前提とする物体操作系呪文が修得・使用を禁止されます。
 他者の妄念に煩わされると悟りから遠くなります。そのため《読心》及びそれを前提とする情報伝達系呪文が修得・使用を禁止されます。
 他者に妄念を与える事は自らが妄念を抱く事と近いと見なされます。そのため《恐怖》及びそれを前提とする精神操作系呪文が修得・使用を禁止されます。
 輪廻の過程を速やかに完了させるため、《霊媒》《復活》が修得・使用を禁止されます。

・大乗仏教共通規制
 実生活に役立つような呪文は、衆生への奉仕のために修得が推奨されます。危険の多い地域では、護身用の範囲に限り戦闘用呪文も忌避される事はありません。
 生きるための最低限の物を除き、殺生はできる限り控えなければなりません。そのため《腕萎え》《死の手》《体力奪取》《生命力奪取》が修得・使用を禁止されます。植物や無生物にも成仏を認める宗派では、同じ理由により《枯死》も修得・使用を禁止されます。
 肉食は忌避されます。そのため僧侶は動物性食料に対する《調理》が禁止されます。ただしこの規定は、肉食を許容する一部の教団では無視されます。
 俗人の肉食(特に獣以外)まで咎める事はあまりありませんが、やはり生命を無駄にする事は良くない事なので、動物性食料に対する《腐敗》《毒化》が使用を禁止されます。植物や無生物にも成仏を認める宗派では、植物性食料も使用禁止対象に含まれ、結果として《毒化》は修得も禁止されます。
 他者に呪いを与える事は戒められます。そのため極度に仏教に反した相手に対してでもない限り、《呪い》を掛けたり《祈願》で傷付けたりする事は禁止されます。
 ※死亡後即座に輪廻するとはあまり考えないため、上座仏教とは違い、《霊媒》《復活》は規制を受けていません。

・密教限定規制
 上位の僧侶には、仏教共通規制及び大乗仏教共通規制の全てが適用されません。危険な呪文も含めて通暁する事が解脱に不可欠な要素と見なされる事も多いためですが、普通は修得するだけで使用する事はありません。

・浄土教限定規制
 五蘊(マナ)は世界の存在全てが平等に享受するべき物です。そのため《魔力除去》が修得・使用を禁止されます。
 死者の成仏を妨げてはなりません。そのため《霊媒》は、死んでから49日以内の、もしくは50年以上経過した霊に対する使用を禁止されます(というか不可能です)。

・禅宗限定規制
 寺院での生活において、魔法を使用する事はできるだけ避けなくてはなりません。生活の全てが修行であり、魔法で過程を飛ばす事は修行の機会を失うに等しいからです。
 他者の妄念に煩わされると悟りから遠くなります。そのため《読心》及びそれを前提とする情報伝達系呪文が修得・使用を禁止されます。
 他者に妄念を与える事は自らが妄念を抱く事と近いと見なされます。そのため《恐怖》及びそれを前提とする精神操作系呪文が修得・使用を禁止されます。
 死者の成仏を妨げてはなりません。そのため《霊媒》は、死んでから49日以内の、もしくは50年以上経過した霊に対する使用を禁止されます(というか不可能です)。

*儒教
 「/Magical」では、孔子が商の士族の血を強く引いて魔法に長けていた事もあり、哲学のみならず魔法技術(特に祭祀に関わるもの)も豊富に伝えています。「大秦」の曲阜には儒教の総本山があり、「大秦」「大越」の双方から多くの魔法研究者が集っています。13世紀の「大秦」から「大越」への侵攻を妨げるために行われた大魔術による「神州の陸沈」の際に曲阜は大陸に食い込んだ海に浮かぶ島に変化しており、その際に地震と津波で大きな被害を受けました。

・儒教共通規制
 死者を辱めてはなりません。そのため《死人使い》が使用を、《死人奪取》《悪霊召喚》が修得・使用を禁止されます。人間を生贄にする事も禁止です。
 「帝」や「天」に逆らう宇宙秩序の紊乱者である悪魔を世界に呼び込んではなりません。そのため《疫病》《悪魔召喚》が修得・使用を禁止されます。《異次元召喚》も修得や使用に厳しい制限を受けます。
 自然な寿命を損ねてはなりません。そのため《精神捕獲》《老化》《若さ奪取》《肉体交換》が修得・使用を禁止されます(神道とは違い、《若返り》は公然と認められます)。
 虚言は他者との信義を損なう悪行です。そのため《偽記憶》《ささやき》《集団ささやき》が修得・使用を禁止されます。
 父母から授かった肉体を傷付けてはなりません。そのため《顔変え》《体変え》が修得・使用を禁止されます(《接合》《再生》があるので、傷を整形するにはそれで十分です)。
 祭祀に用いる供物を、食料系呪文で調理してはいけません。調理の手順そのものも祭祀の一環だからです。
 祭祀儀礼に使う動物を除き、生贄は禁止されます。

*道教
 「/Magical」の儒教が民間信仰にも手を伸ばしているため、「大秦」では盛んではありません(特に北部の牧畜民にとっては、道教の影響は無いも同然です)。主な勢力圏は「大越」の国内です。

・道教共通規制
 自然な寿命を損ねてはなりません。そのため《精神捕獲》《老化》《若さ奪取》《肉体交換》が修得・使用を禁止されます。
 冥界に属するべき死者を呼び込み、地上の「気」を乱してはなりません。そのため《死人使い》が使用に上位者からの許可が要求され、《疫病》《悪霊召喚》が修得・使用を禁止されます(《死人奪取》は構いませんが、戦闘後すぐに機能停止させなくてはいけません)。
 世界の「気」の流れを妨げてはなりません。そのため《魔力除去》が修得・使用を禁止されます。
 自由闊達な精神を妨げてはなりません。そのため《自白》《精神探査》《奴隷》《命令》《大命》が修得・使用を禁止されます。

*ヒンドゥー教
 「/Magical」でも、南蛮(東南アジア)や天竺(インド)から日本に交易者や漂流者、稀には僧侶が渡って来る事があるでしょう。神が力を振るう世界において、イスラム教(「/Magical」ではイスラム宗)が伝来しても「/Historical」ほど押されず、バリ島やロンボク島以外にも各地で根強い力を持つかもしれません。もちろんその事は、ヒンドゥー教伝来以前からの土着宗教にも言える事なのですが。

・ヒンドゥー教共通規制
 死は穢れの最たるものです。そのため《死人使い》《死人奪取》《老化》《若さ奪取》《疫病》《悪霊召喚》は、死と関わりの深い神(シヴァ、カーリーなど)の信徒でない限り修得・使用(《死人使い》は使用のみ)を禁じられます。
 輪廻を妨げないために、《精神捕獲》《肉体交換》は修得・使用を禁じられます。《霊媒》《復活》は死んでから1年以上経過した霊に対する使用を禁止されます。
 ブラフマン(バラモン)に限り、実生活に役立つような呪文は、極力修得が避けられます。呪文により日常から精神的に世界と関わる事は、世界への執着を強めて転生と解脱を妨げるからです。
 ブラフマンに限り、物質的存在への執着を遠ざけるため、《応急修理》及びそれを前提とする物体操作系呪文が修得・使用を禁止されます。
 虚栄や虚言は世界への正常な認識を妨げます。そのため《説得》《偽記憶》《ささやき》《集団ささやき》が修得・使用を禁止されます。
 食事は穢れを忌み嫌うものです。そのため《腐敗》は使用を、《毒化》は修得・使用を禁止されます。その他の食料系呪文も、基本的に最上ヴァルナであり料理人となる事が多いブラフマン以外には修得・使用が禁止されます。
 何らかの食料禁忌(獣肉禁止〜肉・魚・卵・根菜禁止まで様々)を取っている場合、禁止された食料に対して、《保存食》《食料浄化》《調理》《発酵》《ごちそう》が禁止されます。《食料探知》は禁止された食料を自動的に除外します。
 牛に対しては、全ての食料系呪文が禁止されます。ただし牛乳やその加工製品は禁止されていませんし、水牛は牛には含まれないので食料系呪文の対象となります。
 祭祀に用いる《聖火》《聖水》は、ブラフマン以外には修得・使用が禁止されます。
 ※ヴァルナに関わる規制の全ては、インド本土以外の民族では適用されません。

*上帝教
 「/Historical」におけるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つに相当する宗教ですが、神の実在する「/Magical」においては「別の宗教」ではなく「同一宗教内の分派」と見なされて、それぞれユダヤ宗、キリスト宗、イスラム宗と呼ばれています。互いに仲が悪いのは「/Magical」でも一緒で、他の宗派の信徒を二等市民扱いするか見付け次第投獄するかのどちらかが普通です。もっとも知識層(大半のPC含む)は他の宗派とも折り合いが可能ですし、豊かで安定した地域なら(互いに無視し合いながら)共存する事も不可能ではありません。特に強力な魔術師が聖職者・俗人問わず数多いユダヤ宗の場合、畏怖される事によりキリスト宗やイスラム宗からの迫害を防いでいます。日本の周辺ではキリスト宗(主にヨーロッパ人)とイスラム宗(主に中国人やマレー人)が見られますが、もし禁止されなくてもキリスト宗の信者はほとんど増えず、信者は「二等市民」扱いを受けます。
 ちなみに「/Historical」とは違い、「(上帝教の)神」は「上帝」と呼び、上位の「天使」はしばしば「神」と呼ばれます。

・上帝教共通規制
 悪魔や悪霊と関わってはなりません。そのため《悪霊召喚》《疫病》《悪魔召喚》《悪夢》が修得・使用を禁止されます。
 上帝とその傘下(天使や聖人)以外の上位存在に依存する事は慎まなければなりません。そのため、他の神などに関わる世界からの《異次元召喚》は修得・使用を禁止されます。
 上帝より受けた生命を弄んではなりません。そのため《死人使い》が使用を、《死人奪取》《精神捕獲》《老化》《若さ奪取》《肉体交換》が修得・使用を禁止されます。《若返り》は不自然な老化を治癒するためにのみ認められます。
 同朋に呪いを与える事は戒められます。そのため同じ宗派(狭い意味で。カトリック、イスマーイール派、カルヴァン派、正教古儀派の○○セクトなど)の相手に《呪い》を掛けたり《祈願》で傷付けたりする事は禁止されます。
 人間を生贄にする事は禁止されます。

・ユダヤ宗限定規制
 上帝に属する時間を掻き乱してはなりません。そのため《神託》《霊魂召喚》が修得・使用を禁止されます。
 生命や信条を守るための行使を除き、上帝に祝福された安息日(金曜日の日没から土曜日の日没まで)には呪文の集中と維持が禁止されます。ただしユダヤ宗の信徒は、魔化や儀式呪文を安息日に中断しても、次の日からは通常通りに魔化や儀式呪文を続けられます。
 上帝の創造を仮初めにも真似てはなりません。そのため《動物作成》《従者作成》《戦士作成》が修得・使用を禁止されます。ただし例外として、「素質2+《幻覚破壊》」を前提として《作成物破壊》を修得する事が可能です。
 マナは上帝からの預かり物であり、人間が阻害してはなりません。そのため《魔力除去》が修得・使用を禁止されます。
 聖書とトーラーで許された食料(術者が食料として認識できる物のみ。以下同じ)に対して、《腐敗》《毒化》が禁止されます。
 同様に禁止された食料に対して、《保存食》《食料浄化》《調理》《発酵》《ごちそう》が禁止されます。《食料探知》は禁止された食料を自動的に除外します。

・キリスト宗限定規制
 上帝に属する時間を掻き乱してはなりません。そのため《神託》《霊魂召喚》が修得・使用を禁止されます。
 ヨーロッパの「異教」(上帝教の系列に属さない宗教の総称。特にアイルランドやスカンジナビア、リトアニアに多い)の信徒が頻繁に用いるため、《変身》《他者変身》《植物変身》が修得・使用を禁止されます。
 人間に姿形が似た存在を作り出す事が忌まれます。そのため《従者作成》《戦士作成》《ゴーレム》が修得・使用を禁止されます。人間型の彫像に《動像》を掛ける事も禁止です。
 全ての食料に対して、《腐敗》《毒化》が禁止されます。
 東方教会とカトリック教会では、金曜日と謝肉祭〜復活祭間の四旬節の間は陸棲動物の肉を《調理》する事が禁止されます。
 人間だけではなく、全ての動物を生贄にする事が禁止されます。ただしカトリックでは、聖人の遺骸は聖遺物と見なし、呪文の(消費されない)媒体とする事が可能です。

・イスラム宗限定規制
 上帝の創造を仮初めにも真似てはなりません。そのため《動物作成》《従者作成》《戦士作成》が修得・使用を禁止されます(特に厳格な宗派では、《物体作成》や幻覚系まで禁止します)。ただし例外として、「素質2+《幻覚破壊》」を前提として《作成物破壊》を修得する事が可能です。
 上と同じ理由により、《植物作成》が修得・使用を禁止されます。ただし、植物を生物と見なさない一部の学派・宗派では禁止されません。
 知識系呪文により断食月の開始を測定する事が禁止されます。断食月の開始は必ず目で確認しなくてはなりません。
 飲酒が戒められます。そのため《水を酒》《蒸留》が大半の学派・宗派で修得・使用を禁止されます。極端な所では《酩酊》まで禁止します。
 他に食べ物がある限り、断食月に《断食》を使用する事が禁止されます。《断食》は1日間持続するので、日の出ている間も断食をした事にならないからです。
 コーランで許された食料に対して、《腐敗》《毒化》が禁止されます。
 同様に禁止された食料に対して、《保存食》《食料浄化》《調理》《発酵》《ごちそう》が禁止されます。《食料探知》は禁止された食料を自動的に除外します。

*異教
 「/Magical」のヨーロッパ周縁部ではキリスト宗が完全には浸透せず、「異教」と総称される信仰が存続しています。主なものは4つで、アイルランドのドルイド教エール派、スカンジナビアのアース教とヴァン教、リトアニアのリトアニア国教です。いずれも死霊系呪文の大半の修得または使用を禁止し、ドルイド教とヴァン教で共通して《枯死》を禁止する以外には、あまり厳しい呪文制限は存在しません。


鳥獣と妖怪

 日本の動物やモンスターのデータです。当然ながら妖怪は「/Magical」にしか存在しませんが、鳥獣のデータは「/Historical」でも使えます。


鳥獣

 「ベーシック完訳版」P180〜184のサイドバーのうち、以下の生物が存在します。
・ツキノワグマ(本州、四国、九州)
・ヒグマ(北海道、データはハイイログマの物を使用)
・猫
・鹿
・犬
・鷹
・馬
・マムシ(ガラガラヘビ(小型、体力5、HP7、毒のダメージ1D点)のデータを使用)
・ハブ(沖縄の一部の島、データはマムシと同様だが、毒の抵抗ペナルティ−6、毒のダメージ1D+3点)
・狼
・猪(大型)

・日本猿
 体力6〜8、敏捷力14、知力5〜6、生命力12/8、速度7、受動防御0、防護点0
 噛み付き(切り/1D-2)
 本州、四国、九州に生息する猿で、しばしば人に飼われて馬の番や芸を行います。10匹に1匹ほど知力6の個体が存在し、そうした個体は〈動物使役〉に−1の修正を与えます。

・ムササビ
 体力5、敏捷力14、知力4、生命力11/6、速度4(空中10)、受動防御0、防護点0
 噛み付き(切り/1D-2)
 暗視
 リスに似た体長40cmほどの動物で、胴体の脇にある皮膜で滑空します。山奥に住み夜中に活動するため滅多に人目に触れませんが、明かりに体当たりする習性があるため夜道では注意が必要です。より小さな仲間であるモモンガの場合は、体力3、HP4程度になります。
 滑空している間は最大速度の半分以上で動き続ける必要があり、上昇するには〈飛行〉で気流に乗らないといけません。上昇の最大速度は1秒に1mです(「百鬼」P75参照)。


妖怪

・精霊
 「マジック完訳版」のデータを参照して下さい。「魔術師の帝国」の強化データを使っても構いません。日本では「御霊(みたま)」「精霊(しょうりょう)」などと呼びます。

・悪魔
 「マジック完訳版」と同様ですが、文化圏によって名称が異なります。例えば日本の場合、神官は「禍津神」、僧侶は「悪鬼」などと呼びます。

・アンデッド
 「マジック完訳版」と同様ですが、マミーは基本的に存在しません(ごくごく稀に自然ミイラが存在しますが、売買されている事はないでしょう)。火葬が普及してからも土葬が廃れる事はなく、墓荒らしをすればゾンビやスケルトンの材料には事欠きません。特に中世の古い時期には、墓を荒らさなくても遺棄死体を手に入れる事は可能です。もっともアンデッドは「穢れ」の源と見なされるので、作成自体が犯罪視されるのが普通です。人型のアンデッドは、日本では総称して「死人(しびと)」と呼びます。

・ゴーレム
 「マジック完訳版」と同様ですが、あまり使われる事はありません。日本では「傀儡(くぐつ)」と呼ばれます。

・鬼
 身長2〜2.5mに及ぶ巨人の一種です。皮膚は赤か青が普通で体毛が多く、目は大きく金色、頭には1本から2本の角があります。山奥に数人から数十人(稀に数百人)の集団を作り、狩猟と採集で暮らしています。乱暴で酒好きで頭の悪い者が多いですが、個体差が激しく一概には言えません。しかし人間と積極的に関わるのは山賊集団に多いため、一般の人間からは「人食い」と見なされて恐れられています。善良な鬼は人目を避ける事が多く、慎重に選んだごく一部の人間としか接触しようとしません。鬼は鍛冶、狩猟、戦に関わりのある神祇(ただし八幡神を除く)を崇め、それ以外の神仏を信仰する事はあまりありません。鬼はしばしば人間と混血し、混血の鬼は角を除いて人とあまり変わりのない外見になります。
 戦闘では射撃武器の使用は好まず、至近距離まで忍び寄って不意討ちする事を好みます。大半は棍棒を振り回すのがせいぜいですが、一部の鬼の部族には呪い師を兼ねた鍛冶師が存在し、金属の武器や鎧を同族に供給しています。

 (一般の鬼)
 体力18、敏捷力12、知力9、生命力14/19、速度6/6、受動防御1、防護点2(皮膚+毛皮(ライト・レザー))、よけ6、受け6(両手斧・メイス)・8(格闘)
 パンチ(12、叩き/1D+1)、棍棒(必要体力13、ダメージ-1のモール扱い)(12、叩き/3D+3)
 暗視
 〈忍び12〉
 八幡神の聖域では全ての判定に−4、鳩恐怖症(重度)

 (武士)
 体力20、敏捷力14、知力9、生命力14/19、速度7/7、受動防御2、防護点3(皮膚+ヘビー・レザー)、よけ8、受け8(両手斧・メイス)・11(刀)・11(空手)
 パンチ(15、叩き/2D)、キック(13、叩き/2D+2)、鉞(グレート・アックス扱い)(15、切り/3D+5)または刀(15、切り/3D+4、刺し/2D+1)
 暗視、我慢強さ、戦闘即応、意志の強さ1レベル
 〈忍び14〉
 八幡神の聖域では全ての判定に−4、鳩恐怖症(重度)

 (斥候)
 体力16、敏捷力14、知力13、生命力13/18、速度7/7、受動防御2、防護点3(皮膚+ヘビー・レザー)、よけ7、受け7(短剣)・9(格闘)
 パンチ(14、叩き/1D)、キック(12、叩き/1D+2)、脇差(14、切り/2D+2、刺し/1D+1)
 暗視、魔法の素質1レベル
 〈忍び14〉、呪文5〜10種を12レベル
 八幡神の聖域では全ての判定に−4、鳩恐怖症(重度)

 (呪い師)
 体力15/20、敏捷力12、知力14、生命力12/17、速度6/6、受動防御2、防護点3(皮膚+ヘビー・レザー)、よけ6、受け8(刀)・8(格闘)
 パンチ(12、叩き/1D)、上質の刀(12、切り/2D+4、刺し/1D+4)、射撃呪文(12、様々)
 暗視、魔法の素質3レベル、意志の強さ1レベル
 〈忍び14〉〈武器屋15〜20〉、呪文20〜40種を15レベル
 八幡神の聖域では全ての判定に−4、鳩恐怖症(重度)

 (頭領)
 体力20、敏捷力15、知力13、生命力15/25、速度7/6、受動防御3、防護点5(皮膚+スケイル・アーマー)、よけ7、受け11(刀)・11(空手)
 パンチ(16、叩き/2D)、キック(14、叩き/2D+2)、上質の刀(16、切り/3D+5、刺し/2D+2)
 暗視、我慢強さ、戦闘即応、魔法の素質1レベル、意志の強さ1レベル
 〈忍び15〉、呪文10〜20種を12レベル
 八幡神の聖域では全ての判定に−4、鳩恐怖症(重度)

・両面宿儺
 飛騨の山に生息する鬼の一種で、身長は4m、頭を2つ、腕を4つ、足を4つ持っており、2人の人間の背中を合わせたような姿をしています。常に1人で行動し、下界に現れる事は滅多になく、その実態は謎に包まれています。飛騨の人々からは、「悪い神を滅ぼした」「神武天皇の即位を祝福した」と伝えられ神聖視されています。
 両面宿儺は武器を使いませんが、徒手格闘術を使いこなし、頑強な手は武器を「受け」ても傷付く事はありません。
 体力30、敏捷力16、知力15、生命力16/48、速度8/8、受動防御3、防護点4(皮膚+霊気)、よけ9、受け13(空手、4回可能)
 パンチ(18、叩き/3D+1、長さ格闘〜2)、キック(16、叩き/3D+3、長さ格闘〜2)
 闇視、我慢強さ、戦闘即応、魔法の素質3レベル、毒無効、病気耐性、情報伝達系と精神操作系呪文への抵抗に+5
 1ターンに2回の攻撃、または1回の攻撃と1秒分の呪文集中が可能。攻撃で集中を乱すには頭を狙う必要がある
 〈柔道18〉〈身体感覚14〉、呪文20種以上を16レベル

・手長・足長
 関東の海沿いに生息する巨人で、手長は身長2mで長さ2.5〜3mの腕を持ち、足長は身長4〜5mでその半分以上を脚が占めます。それぞれ1人ずつが揃って生活し、手長を足長が肩車して水中の魚や貝を取っています。
 手長も足長も大人しい性質ですが、縄張りを侵されると攻撃してくる事もあります。特殊能力は無くても、遠くまで届くパンチとキックはそれだけで十分な脅威です。もしパートナーが殺されたなら、もう1人は何が何でも仇を取ろうとします。

 (手長)
 体力15(腕は30)、敏捷力14、知力11、生命力14、速度4/4、受動防御1、防護点2(皮膚+毛皮(ライト・レザー))、よけ5、受け10(格闘)
 パンチ(14、叩き/3D-1、長さ1〜3)、石(14、叩き/3D-1)
 我慢強さ、戦闘即応

 (足長)
 体力15(脚は30)、敏捷力14、知力11、生命力14、速度8/8、受動防御1、防護点2(皮膚+毛皮(ライト・レザー))、よけ9、受け7(素手)
 キック(14、叩き/3D+1、長さ1〜3)
 我慢強さ、戦闘即応、肩車(手長を肩車しても、手長の体重が荷重に加わらない)

・ダイダラボッチ
 関東平野を取り囲む山に生息する巨人です。身長は最低でも20m、最大で1000m以上に達するとの伝説もあります。ほとんど食物を摂取する事はなく、気を吸って滋養にしているようです。幸いにも平和的で暢気な種族ですが、もし怒らせたら一撃で伸されてしまうでしょう。下のデータは最小クラスのものですが、必要にならない事を祈ります。
 体力150、敏捷力11、知力15、生命力20/400、速度40、受動防御1、防護点8(皮膚)、よけ−、受け−
 パンチ(11、叩き/16D-2、長さ格闘〜10、地上の目標には使わない)、キック(9、叩き/16D、長さ1〜10)、鍬(11、叩き/18D、長さ6〜20)
 我慢強さ
 ダイダラボッチを目標とした近接攻撃の目標値に+10、地上からでは脚しか攻撃できない

・天狗
 背の高い人間ほどの大きさと姿で、肌は赤みが強く、鼻は高く尖り、背中に鳥のような羽を持つ種族です。本州から九州の高山地帯に生息し、単独からせいぜい十数人の小集団で縄張りを持ちます。強い法力を持ちながら悟れない僧侶が「天狗道」に堕ちた存在だと言われ、天狗の子供や女性を見た者がいない事からこの説は支持を受けています。性格は高慢な者が多く、人間にも敵対的な者が多いですが、武術や魔法の腕を示せば一転して友好的になる事もよくあります。場合によってはこれと見込んだ人間を縄張りに連れ帰り(この行為を「神隠し」と呼びます)、武術や魔法を伝授する事もあるくらいです。天狗は密教の仏や山岳の神祇を崇めます。
 戦闘では接近戦より弓矢や魔法を好み、しかも単純に攻めるよりは精神操作系、作成系、動物系などでの搦め手を好みます。場所が野外なら、できるだけ空を飛ぼうとします。
 体力11、敏捷力13、知力14、生命力11、速度6/5(空中10)、受動防御2、防護点2(ヘビー・レザー)、よけ5、受け9(杖)
 杖(14、叩き/1D+3)、コンポジットボウ(14、刺し/1D+2)、射撃呪文(14、様々)
 魔法の素質3レベル
 呪文20〜40種を15レベル

・河童
 水辺に住む人間に似た生物で、主に西日本の川や沼に生息しています。体は緑色でざんばら髪を除いて体毛はなく、頭に皿があり、全身がぬめる粘液で保護されています。数十人ほどの村に住んでおり、水草を育てたり魚を取ったりして生計を立てていますが、時折悪戯者が人里近くまで現れ、家畜を盗んだり人間に相撲を挑んだりします。河童は怪力の持ち主であり、普通の人間ではとてもかないませんが、頭の皿から水がこぼれると途端に力を失います。河童の好物はキュウリですが、他にも全般に生臭い物を好み、調理した物は絶対に食べません。邪悪な河童は人や家畜を殺し、肛門から内臓を抉り出して食らいます。
 河童はしばしば霊薬の作り方を心得ており、『治癒』『再生』『水中呼吸』などの塗薬を所持している事があります。人間が手に入れる事もできるでしょうが、河童は金銭を使わないため、普通は現物で代価を支払う事になります。

 (一般の河童)
 体力12、敏捷力12、知力9、生命力11、速度3/3(水中5)、受動防御2、防護点2(粘液)、よけ5、受け6(相撲)・6(槍)
 パンチ(12、叩き/1D-3)、ヤス(ジャベリン扱い)(12、刺し/1D)
 〈相撲12〉
 頭の皿から水をこぼすと、体力は半減(端数切捨て)、敏捷力及びそれらを基準とする全ての判定に−5
 体が乾燥すると受動防御0、防護点0になり、半日ごとに1点ダメージ
 (《水破壊》で河童を乾かす事は可能だが、河童は生命力で抵抗が可能)

 (力士)
 体力16、敏捷力13、知力9、生命力12、速度4/4(水中6)、受動防御2、防護点2(粘液)、よけ7、受け11(格闘)・8(槍)
 パンチ(15、叩き/1D)、ヤス(ジャベリン扱い)(14、刺し/1D+2)
 我慢強さ、戦闘即応
 〈相撲15〉
 頭の皿から水をこぼすと、体力は半減(端数切捨て)、敏捷力及びそれらを基準とする全ての判定に−5
 体が乾燥すると受動防御0、防護点0になり、半日ごとに1点ダメージ
 (《水破壊》で河童を乾かす事は可能だが、河童は生命力で抵抗が可能)

 (妖術使い)
 体力12、敏捷力12、知力14、生命力11、速度3/3(水中5)、受動防御2、防護点2(粘液)、よけ5、受け8(格闘)・6(槍)
 パンチ(15、叩き/1D-2)、ヤス(ジャベリン扱い)(14、刺し/1D)
 魔法の素質3レベル、動物共感
 〈相撲14〉、呪文15〜30種を、水霊系、動物系、肉体操作系を中心に15レベル
 頭の皿から水をこぼすと、体力は半減(端数切捨て)、敏捷力及びそれらを基準とする全ての判定に−5
 体が乾燥すると受動防御0、防護点0になり、半日ごとに1点ダメージ
 (《水破壊》で河童を乾かす事は可能だが、河童は生命力で抵抗が可能)

・アマンジャク(天邪鬼)
 茶色く干からびた姿をした小柄(身長1〜1.2m)な鬼で、南蛮人や紅毛人の間で「ゴブリン」の名で知られる生物と類縁関係が指摘されています。性質は邪悪で、しばしば幻覚・作成系呪文や精神操作系呪文で人に(往々にして命に関わる)悪戯を仕掛けたり盗みを働いたりします。特に東日本のアマンジャクは残虐な者が多く、女性や子供、老人を殺してから皮を剥ぎ、それをわざわざ着て変装し入れ替わる事もあります(西日本のアマンジャクは、幻覚魔法での変装を好みます)。
 アマンジャクが直接戦闘する事はまずなく、間接的な呪文で敵を遮ってから全力で逃げ出します。
 体力9/14、敏捷力14、知力14、生命力9、速度5/5、受動防御1、防護点1(ライト・レザー、または人間の皮!)、よけ5、受け6(ナイフ)
 小刀(大型ナイフ扱い)(14、刺し/1D-2、切り/1D-3)
 魔法の素質1レベル、限定素質3レベル(幻覚・作成系と精神操作系)
 〈変装16〉〈演技14〉〈身体感覚14〉、呪文15〜30種を、幻覚・作成系や精神操作系を中心に13〜15レベル

・大蛇(オロチ)
 パイソンと同じほどの大きさに達する蛇で、人里離れた山奥の水辺を好んで単独から数匹で生息します。しばしば山の神の聖所を守っている事もあり、ごく稀に大蛇自身が神の化身という事すらありえます。そのような大蛇は通常のデータに加え、少なくとも13以上の知力と呪文行使能力を備えています。もちろん神が強力になるほど、化身の大蛇も特に魔法的な面での強さを増して行きます。
 体力12〜24、敏捷力13、知力9、生命力15/15〜30、速度4(水中6)、受動防御2、防護点2(鱗)、よけ6
 牙(13、刺し/1D+1〜2D+3、まれに毒(生命力−4判定に失敗すると麻痺、ファンブルすると更に2Dダメージ))、組み付き(「ベーシック」P183参照)
 我慢強さ
 煙草が嫌い(ヤニを浴びて生命力−4判定に失敗すると敏捷力−4と1Dダメージ、成功しても敏捷力−2と1点ダメージ)

・大百足
 大蛇と同じほどの大きさの百足で、やはり山奥や草深い野原に住んでいます。大蛇同様に神の化身である場合もあります。大蛇と大百足は非常に仲が悪く、互いにライバル関係にあります。
 体力12〜24、敏捷力13、知力9、生命力14/14〜28、速度6、受動防御3、防護点4(殻)、よけ6
 牙(13、切り/1D+1〜2D+3、毒(生命力−4判定に失敗すると1D+1ダメージ、ファンブルすると3Dダメージ))
 我慢強さ
 人の唾を掛けた武器には受動防御と防護点が無効

・付喪神
 古くなった道具に心が宿り、自分で動く能力を得た妖怪です。元の形や素材により能力値や攻撃手段は千差万別です。

・化生
 何らかの魔法的な理由で人並みの知能を得た動物や植物で、獣の場合は経立(ふったち)と、植物なら木霊(こだま)とも呼ばれます。
 体力とHPは最大で1.5倍、敏捷力と生命力は最大で+2されます。知力は普通の化生なら8ですが、猫や鴉や狐の化生は10以上にも達します。植物の化生は人間の姿を取る事が多く、本体から分離して別の場所まで移動する事もできます(分身の能力値は人間並みになります)。もちろん、年を経れば経るほど強力になっていきます。
 経立の一部は表皮に特殊な魔力を帯びており、魔法の掛かっていない攻撃には防護点が4点追加されます。

・雷獣
 齧歯類に似た中くらいの犬ほどの大きさの獣で、体には常に電気を帯びています。《高速飛行》の能力を生まれつき持っており、普段は空を飛んで虫や小鳥を食べているらしく、地上で姿を見られる事はまずありません。稀に暴風や乱気流で地上に墜落し、捕獲すれば高く売れるのですが、慣れない環境に動転して放電を繰り返した挙句、村や町を焼いてしまう事すらあります。
 体力8、敏捷力16、知力7、生命力12/10、速度7(空中30)、受動防御1、防護点1(毛皮)、よけ9
 牙(16、切り/1D-1)、電光(16、叩き/1D〜3D、0〜2点疲労)
 我慢強さ、戦闘即応、柔軟、電気を帯びる(攻撃には常に《電撃武器》の効果を帯びているとみなす。雷獣に触れて生命力+2判定に失敗すると朦朧状態になる)、電気のダメージは無効


ファンタジーの種族

 西洋風ファンタジーの種族を移植した場合の設定です。これらの種族は説明しない限り言語を人間と共有しており、「種族語」は基本的に存在しません。

・天津彦(あまつひこ)
 …母語:日本語(標準)、ウィルタ語かニヴフ語(レプンクル)
 南蛮人や紅毛人が「エルフ」と、天竺人が「ヤクシャ」と、「大秦」人や「大越」人が「天仙」と呼ぶ種族と同一の存在です。「空のエルフ」「地のエルフ」「海のエルフ」と称される3つの人種に分かれており、日本には主に褐色や青の髪と白い肌を持つ「海のエルフ」が居住しています。「地のエルフ」は渡来人の末裔として西日本の各地に、海から来た事により紛らわしくも「レプンクル(海の民)」と呼ばれる「空のエルフ」は北アジアから北海道の北部・東部に移住していますが、どちらも数は多くありません。邪悪な地底種族である「暗黒エルフ」は、幸いな事に日本には定住していませんが、天竺の「ラークシャサ」や「大秦」「大越」の「邪仙」という呼び名により、その恐ろしさはよく知られています。
 天津彦は主に沿岸地帯に居住し、漁業や交易で暮らしていますが、一部は都市や山岳地帯まで移住しています(開けた所は種族的に性に合わないようで、平野部にはほとんど見掛けません)。黒髪の「地のエルフ」は都市に暮らす事が多く、高い技術を持つ職人を多く出しています。どの天津彦も信仰心が強く、神道や浄土系宗派(山岳地帯では真言宗や修験も)の熱心な信徒となっています。レプンクルはニヴフやツングース系民族と同じ神を信仰しており、遠縁の北欧エルフやウラル・エルフと同じ世界樹信仰も持っています。
 天津彦は神話上では、高天原の住民として登場し、神々の降臨と共に中津国へ移住したとされています。実際に天津彦は大和朝廷の初期から物部や海士部を始めとする多くの氏族として参画しており、貴族の間にも血混じり(ハーフエルフ)を多く生み出していました。説話にも頻繁に登場し、久米の仙人や夏山繁樹・大宅世継も天津彦として登場しています。
 古代に繁栄した天津彦ですが、人間と兵主部(ドワーフ)が中心となり成立した鎌倉幕府では、京都下りの官僚を除いて冷遇されます。この天津彦への蔑視傾向は南北朝の騒乱の元ともなっており、血混じりどころか完全な天津彦まで多くいた持明院統に対し、異種族混在の前金朝「大秦」に圧迫されていた趙朝「大越」の儒学にかぶれた人間中心主義者・後醍醐天皇による天津彦への弾圧に発展します。そのため南北朝の内乱では天津彦のほとんどが北朝に属し、南朝は水上戦力をほとんど人間に頼らざるを得なくなったのみならず、優秀な職人まで北朝支持に回られ、その衰亡を生んだと伝えられます。それ以降天津彦への弾圧はほぼ無くなり、異国では滅多に見られないほど人間社会に混じって暮らしています。日本の人間の間で一般的な、油脂を好まない食生活や木と柱を中心とする建築には、天津彦との強い共通性が存在しているとされます。

・兵主部(ひょうすべ)
 …母語:日本語(標準)
 南蛮人や紅毛人が「ドワーフ」と、天竺人が「ダーサ」と、「大秦」人や「大越」人が「矮人」と呼ぶ種族と同一の存在です。「丘ドワーフ」「山ドワーフ」が最もよく知られている人種で、日本にはどちらも、北海道と沖縄以外に居住しています。兵主部の主な居住地は山で、鉱業と狩猟を主な生業としています(代表的な例が吉野の国栖やイヒカ、南九州の熊襲、奥羽の金(こん)姓の部族です)。例外的に関東では、朝廷により畿内から送り出された部族が平原に定着しており、武蔵七党を始めとする武士団の源になりました。兵主部は天目一箇神と八幡神を主に崇めていますが、仏教は一般的に人気がなく、特に天津彦がよく信仰する浄土系宗派は全く信仰されていません(密教系寺院でも、阿弥陀如来をわざわざ抜かしています)。「/Magical」の日本でも珍しい論理優先の種族である兵主部は、古代中国の墨子学派に近い哲学を持っており、西方の同族とは違い実用一辺倒の品物を得意とします。伊勢の兵主部である村正の刀が水に流れる葉を断ち切ったのに対し、相模の天津彦の正宗の刀は葉を自然とよけさせた話は、この2つの種族の違いを示すものとして人間の間でも有名です。
 兵主部は人間や天津彦の神話にほとんど登場しませんが、種族内の伝承によると、古代中国の禹王により西方から招かれたとされています。中国では後に墨子学派の基盤となり、2代目鉅子である禽滑釐などを出しましたが、「大秦」の始皇帝の中原統一により激しい弾圧を受けて散り散りになりました。その多くは攣提氏の支配する北方や「大越」に落ち延びましたが、その際に一部の部族が船で日本まで逃げ延びたそうです。その後も「大秦」が乱れる度に多くの部族が亡命し、日本を含む周辺各国に定着しています。
 古代の兵主部は、在来系の一族も、渡来系の一族も、政治では中心的な存在ではありませんでした。しかし鎌倉幕府では人間と並ぶ中心的な種族となり、承久の乱で天津彦の勢力を圧倒した兵主部は武士の気風に大きな影響を与えます。しかし一気に勢力を拡大した多くの武士氏族は激しい内紛により散り散りになり、南北朝時代には南朝と北朝の間で多くの氏族が滅び、室町時代には天津彦の復活と共に九州や関東で優勢を保つのみとなります。その間も大半の兵主部の部族は人間社会に深入りせずに過ごしていましたが、渡来系の一族は例外なく、日本に渡来した際に部族の長が天皇と朝廷に誓った忠誠ゆえに、南北朝の合戦で双方に加勢して大きな傷を背負っています。もっとも滅亡にまで至ったのはほとんどが主君の氏族であり、一般の兵主部は様々な職人として活動し続ける事になります。

・少彦(すくなひこ)
 …母語:日本語(標準)、アイヌ語(コロボックル)
 南蛮人や紅毛人が「ハーフリング」と、「大秦」人や「大越」人が「侏儒(しゅじゅ)」と呼ぶ種族と同一の存在です。日本の少彦には2種類が存在し、南洋の彼方の常世の国(恐らくはミクロネシア)から渡来したと伝えられる狭い意味での少彦が本州に、「蕗の葉の下の人」コロボックルが北海道に居住しています。どちらも西洋のハーフリングのように、時には定住、時には移動を氏族単位で繰り返しており、政治に積極的に関与した事はほとんどありません。少彦はその名の由来となった少彦名神の他に、蛭子神(夷神)、ミシャクジ神(社宮神)、荒履脛神のようなメジャーでない神(失礼)を崇める事が多く、仏教でも人間とは違い地蔵菩薩を最重要視しています。コロボックルの信仰は、滅多に姿を見せないので定かでありません。

・黄泉鬼(よもつおに)
 …母語:日本語(標準)、アイヌ語(北海道)
 南蛮人や紅毛人が「オーク」と、「大秦」人や「大越」人が「猪鬼(ちょき)」と呼ぶ種族と同一の存在です(天竺では、後述するマーラーの一種とされています)。日本では主に山岳地帯に居住しており、なぜか火山を好んでいます(北海道にも居住しており、端的に「ウェンアイヌ(悪い人)」と呼ばれています)。全国の山にある「〜〜地獄」は、黄泉鬼の主神である全てを焼き尽くす火の神・火迦具槌神の聖地とされ、「浄土〜〜」に集う人間や天津彦とはしばしば戦いが起こります。

・小鬼(こおに)
 …母語:日本語(標準)
 南蛮人や紅毛人が「ゴブリン」や「シー」と、天竺人が「マーラー」と、「大秦」人や「大越」人が「悪鬼」と呼ぶ様々な種族と同一の存在です。日本でも小鬼には性悪な者が多く、古代や中世には頻々と人間に悪さを仕掛けていました。ただし稀にはあまり悪くない小鬼もいますが、やはり行動が人間の倫理で把握できないので、いくら友好的でも油断はできません。特に日本で「土蜘蛛」と呼ばれる一族は人間や天津彦に悪意を抱いており、草創期の朝廷により狩り出されてほとんど絶滅していますが、室町時代頃まで出没が確認されています。

・海御子(あまみこ)
 …母語:日本語(標準)
 「大秦」人や「大越」人が「竜人」と呼ぶ種族です。西洋の「リザードマン」と似てはいますが、より竜に近い姿をしています。地水火風の元素の力を備えており、その力を紡ぎ出して放つ事も可能です(ルール上は妖術として扱います)。日本では本州以南の各地、特に沖縄一帯に居住していますが、他の種族から離れた場所(山奥や孤島など)を好んでいます。


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