GURPS Runal-PastTime
Rhiado Continent521

 時代を600年ほど遡った双月暦500年代のリアド大陸、特にグラダス大半島の姿です。まだ近代化は進んでおらず、世界の雰囲気は一般の中世ファンタジーに近くなります。

・文明レベル
 521年現在のルナルの文明レベルは3(医療も3)です。ただし文明圏(ルークス、ネクロス、ザノン、シュラナート中心部)の人間、ドワーフ、ウィザード、〈多足のもの〉といった一部の集団を除くと、武器以外の文明レベルは2となります(「原始的1レベル」を、−40CPの制限内で取得して下さい)。

・貨幣
 この当時には既にムーナ通貨は存在しますが、100ムーナ金貨と1000ムーナ白金貨はまだ存在しませんし、ネクロス諸島を離れるとなかなかお目に掛かれません。シュラナート帝国や大陸本土南部のハルドス騎馬帝国でも通貨を発行していますが、未だに小麦や綿布、金塊や砂金を基準とした物々交換が大都市を離れると一般的です。


シュラナート帝国
 400年代にグラダス全土を統一し、100年の繁栄を誇り、それから僅か数年(カルシファードから撤退した563年より後)で滅亡した国家です。後のグラダスに残されたものは、各地を繋ぐ〈諸公の街道〉、魔性湖の監視塔、各地の遺跡くらいで、歴史や技術(特に武器の魔化技術)は後世に伝わっていません。武勇を尊んだ国であり、市民の鍛錬や奴隷を使った見世物として闘技場での決闘が頻繁に行われました。イメージ的には、古代ローマ帝国……だけではつまらないので、それとビザンツ帝国を足し合わせたような国という事にしておきます。
※以下の設定、特に歴史関係は筆者のオリジナルです。

・帝国の階級

皇帝・帝族
 帝国を支配する元首である皇帝と、それに連なる血族です。皇帝は軍の最高指揮官でもあり、そのため男性しか位には就けません。帝位は一応は世襲制ですが、継承権を争った内乱や近衛兵を掌握した大貴族による簒奪がしばしば発生します。モデルはローマ皇帝ですが、独裁的な共和国における大統領を連想すれば分かりやすいでしょう(汗)。地位レベルは皇帝が7、帝族は4〜6程度になります。

貴族
 地位を世襲し領地を支配する特権と共に、領地と領民を守護して帝国に忠誠を誓う義務を持つ一族の称号です。後のグラダスのような公爵〜男爵の五等級制の爵位はこの時代には存在せず、20余りの由来も様々な称号が与えられます。元は多数を占めていた帝都や周辺諸都市の名門家系は今はその大半が滅びており、現在は官僚や軍人として帝国に仕えた者が受け取った采封を世襲化した家系が中心となっています。地位レベルは3〜6です。

騎士
 本来の意味は「騎兵の武装を自弁できる資産を持つ一族」という意味でしたが、現在は主に富裕階層への優遇を示した称号となっています。その大半は大商人や役人であり、帝国政府に対しても強い発言権を持ちます。地位レベルは1〜2ですが、稀に貴族並の地位を持つ場合もあります。

市民
 シュラナート帝国の市民権を持つ民で、元来は都市に住む特権身分の事でした。帝都に近いサラノス地方中心部では村落でも全ての住民が「市民」ですが、他の地域では市民のほとんどが都市に籍を置いています。裁判の際には帝国の法が適用されるため、各地方の法(とガヤン神殿)に対して治外法権的な立場を取る事もしばしばです。地位レベルは通常0〜1です。

周辺民
 帝国の市民権を持たない民で、多くが各地に散らばる村落に居住しており、一次産業で得た産物と必需品を交換するくらいしか都市との関係はありません。帝国の支配圏に入ったのが遅い地域では、都市の住民の大半が周辺民です。裁判の際には各地の土着の法律が優先され、帝国の法に直接守られる事はありません。地位レベルは市民と同じですが、地域によっては「二等市民」として−5CP分の「社会的弱者」となります。なお、在留外人は基本的に周辺民として扱われます。

奴隷
 元々リアドでは奴隷の存在を認めない国が主流なのですが、シュラナートは例外的に奴隷制度を公認しています。世襲奴隷、刑罰奴隷、債務奴隷の3種類が存在し、世襲奴隷を除くと一代限りの存在です。世襲奴隷も主人が解放する事が可能ですが、公的な認可を得ないと市民になる事はできず周辺民として扱われます。元々奴隷の役割は世襲奴隷なら屋内作業、刑罰奴隷や債務奴隷なら鉱山労働が中心だったのですが、支配領域拡大の際に抵抗した異民族を奴隷にしたために奴隷の数が激増し、帝都の周辺には大規模な奴隷農場が広がり、かつては市民の鍛錬を見せる場であった剣闘士競技も奴隷の戦いが中心になりました。しかし統一後は奴隷の過酷な扱いに(主にアルリアナ神殿から)批判を受けるようになり、丸抱えの奴隷に仕事をさせる非効率性も指摘され、近年では奴隷を解放して小作を行わせる所が多くなっています。現在の奴隷の供給源は、世襲奴隷の自然増と他の地域からの奴隷の輸入、そして帝国に服属していない蛮族からの奴隷狩りです。地位レベルは−2〜−1が普通で、宮廷の奴隷には地位レベル4〜5に達する者もいます。また、「価値ある財産」として−10CP分の「社会的弱者」となります。

蛮族
 シュラナート帝国の支配と無関係か、せいぜい支配を間接的にしか受けていない人々です。大半がガイノス大湿地とエスタニア高地に居住していますが、それ以外の地域にも僅かに存在します。帝国直轄地との特産品の取引や出稼ぎで潤っている部族は帝国にも友好的ですが、一方的に居住地を奪われたり奴隷狩りの標的にされる部族は帝国の市民や周辺民を襲撃・殺害する事が頻繁です。蛮族の大半は「原始的1レベル」を持っており、技術面での文明レベルは2しかありませんし、魔法技術も高度なものは持ち合わせていません。地位レベルは通常は0、最大で2〜4程度になりますが、帝国と親しくない部族の蛮族は「二等市民」として−5CP分の「社会的弱者」となります。

・神殿での位階
 帝国内では身分に応じて、信仰する神や位階が制限される事があります。

・皇帝・帝族
 男性はガヤン、女性はガヤンかサリカの信者に限定され、位階も入信者以上に限定されます。
・貴族
 青の月信者になる事が好まれます。赤の月信者になる事に法律的規制はないのですが、タマット以外(特に奴隷制を否定するアルリアナ)はあまり好まれません。
・騎士・市民・周辺民
 基本的に自由ですが、一部の貴族所領では特定の神(主にシャストアやアルリアナ)の信者を排斥する事がしばしばあります。
・奴隷
 生まれついての奴隷は主人と同じ信仰の平信者にしかなれず、入信者になるには奴隷から解放される必要があります。刑罰や債務により奴隷とされた場合は位階は取り上げられませんが、自由の身になるまで位階を上げる事は禁止されています。
・蛮族
 帝国の法に従っていないので、特に規制されるいわれはありません。

・帝国の神殿
 シュラナート帝国も人間の国家である事に変わりはなく、双子の月の神殿が存在します。力の強弱や特殊な面について、ここで簡単に触れておきましょう。

・ガヤン神殿…強権的な国家であるため、しばしば司法や警察に関して口を挟まれます(有力者の場合、最高司祭位を悪用して皇帝が裁決結果その物を平気で覆す事もあります)。そのため信者が多いにもかかわらず、神殿の力は強いとは言えません。余談ながら、この時代には高司祭の戒律違反に対する処罰として全ての神殿で処刑が存在し(文庫版当時のルールを援用)、大きな神殿には必ず断頭台が存在しました。
・サリカ神殿…一般人の心のよりどころであるという点では後世と変わりません。識字率は村落ではまだ低いですが、医療の方ではペローマの医術が普及していない分看護の役割が多くなっています。
・ペローマ神殿…学問も技術も発展途上にある上に、武勇を尊ぶ国では非常に影が薄い存在です。ごく少ない信者はほとんどが大都市の神殿に固まり、細々と研究を続けています。この時代の技術の最先進地帯はルークスとネクロスで、多くのペローマ信者が留学を夢見ています。
・ジェスタ神殿…帝国の植民都市では市民皆兵制度を採っているため、サリカ以上に多くの信者を集めています。社会的な身分の管理もジェスタ神殿で行っており、奴隷制に反対する人々からは嫌悪されています。
・シャストア神殿…娯楽としての演劇はあまり一般的ではなく、信者も滅多に見られません。しかしペノーナ(ペノン)地方では、語り部として比較的高いステータスを得ています。
・アルリアナ神殿…帝国政府と対立する事が最も多い神殿で、そのほとんどが奴隷に関する問題です。かなり多くの貴族領地で信仰が禁止されていますが、他の神の信者を装った隠れ信者はあちこちに存在します。
・タマット神殿…戦神として多くの兵士や剣闘士に信仰されており、大抵の街に存在する闘技場もタマット神殿が管理しています。裏タマットは後の時代とさほど変わりありません。
・リャノ神殿…水運も盛んではなく、音楽もペノーナ地方を除いてあまり好まれないため、水利や料理関係が中心となります。

・人名
 大半の地域で「個人名」だけ、もしくは「個人名+父称(「〜の息子/娘」)」だけですが、西寄りのサラノスやペノーナといった地方では「個人名+氏族の姓+家系の名字」という形を取ります。ただし氏族の姓まで持つのは貴族の全てと騎士の大半くらいで、世襲奴隷に至っては姓も名字も名乗る事ができません。
 名前の響きは、主に古代ローマ風の物になります。他の地方の土着の名前はその限りではありませんが、騎士や貴族になるとサラノス風の名前を付けられます。

・異種族の社会
 この時代のグラダスや大陸本土では、人間と異種族の交流は一般的ではありません。その数少ない例外のドワーフも、大半は自分達の半地底都市に固まって住み、一部の職人が人間の都市の一角で工房を構えるのみです(しかも大抵は、年を取ると店を弟子に譲って故郷に帰ります)。ウィザードも人里離れた場所で魔術の修行をするか、魔化工房に閉じこもって魔法の武器を作るかのどちらかです。ミュルーンは伝令として働いていますが、伝令ギルドは大陸本土で発祥したばかりでグラダスには大都市にしかありません。


*帝国直轄地

サラノス内海沿岸他(現トリース、ファイニア南西部)
 この地域の北東部が、シュラナート帝国の発祥の地です。都市国家シュラナート共和国を起源として402年に防衛のために成立した軍事同盟が巨大化して周辺の諸国を併呑して行く中で、将軍エウゲニオス(後のトリースとスティニアではユージン、ファイニアではエウヘニオ、ソイルではオイゲン、オータネスではユージェーヌ)が435年に元老院から〈最高司令官にして市民の第一人者〉とされて帝政を開始します。それ以来現在でも政治や軍事の中心となっていますが、経済の中心はオルサノス(オータン)湖の周辺に移動しています。
 この地方の北はサラノス、南はペノーナと呼ばれ、どちらも点在するエルファの森以外に樹木は少なく、緩い起伏を持つ草原が続いています(植林が始まったのはトリース森王国の建国初期です)。北では畑が多く農耕が盛んですが、幾分水に乏しい南では農耕を兼ねた小規模な遊牧民が多くなっています。サラノスでは大規模な農場が今でも多いため、奴隷や小作人の割合が他の地方よりかなり高くなっています。

※地名の( )内は、1095年現在(一部は過渡期含む)のグラダスでの呼称です。521年当時にも帝都から離れた地方では1095年現在と似た呼び方をしていますが、ここではシュラナート公用語による名称で統一しています。
※紹介は1095年現在も存在する街を中心とし、帝国崩壊時に消滅した街は基本的に紹介から省いています。

カピトル・シュラナータ
 後のトリース北部に存在する、シュラナート帝国の帝都です。人口は20万を数え、4つの闘技場、7つの戦車競技場、数十ヶ所に及ぶ浴場、丘に林立する元老院貴族の館、豪壮を極めた10の帝宮……が存在します。帝国で最も多くの貴族と奴隷が集中する都市ですが、長年開発が相次いだせいで分かりやすい構造の都市とは言えません。〈豪奢なる都〉として称える者も多いですが、帝国の圧制により被害を受けた者達は〈虚飾の市場〉〈邪なる娼館〉〈×××な××××〉(書き記せない罵詈雑言)として蔑んでいます。
 帝国瓦解時にその場所は失われ、1095年現在ではオータネスとの国境近くの植林地の中に埋もれてしまっています。

一千一の塚の平原
 帝都の近くに存在する草原で、シュラナートの皇帝や貴族、都市国家時代の統領や都市貴族、それより昔の王だか貴族だか族長だかを埋葬した墳墓が、緩やかな起伏を描いた緑の大地に点在しています。507年にペローマ大神殿で調査をしたところ、総数は759に及ぶそうです。しかも中には崩れた(もしくは崩された)墳墓、新しい墳墓の下敷きになった墳墓、古い墳墓を暴いてから再利用した墳墓も少なからずあり、近年設けられた墳墓も加えると墳墓の数は日夜上昇を続けています。
 グラダスでは根強い厚葬の慣習があり、シュラナートでも貴族の墳墓には相当量の財宝を副葬します。のみならず墓の番人としてワイトを作り出すのが帝族や大貴族の古い慣わしですが、馴染みの無い蛮族や外国人、アンデッドを憎悪するドワーフ達は、口には出さなくても快く思っていません(それでも剣闘士奴隷を強制的に殺してワイトにしていた頃に比べれば、少しはマシになったのでしょうが)。おかげで盗掘事件は跡を絶たず、二次災害的にワイトが蔓延して死傷者を出した例も一度や二度では済みません。この厚葬の慣習は、後の混乱期〜二十三国時代にシュラナート時代の墳墓の盗掘が横行した事と、神殿の刷新運動によりルークスの薄葬の慣習が導入された事で終止符を打ちます。

ディウロポリス(デューラー)
 騎士階級出身のペローマ高司祭ディウルス・クルトゥス(デュールス・クルツ)が、私財を投じて505年から建設した小さな街です。ディウルスの館を兼ねたペローマ神殿には天体観測用の高い塔が立っており、眺めを妨害しないように街から2メイル離れたウルスク軍営より高い建物を禁止しています。そのため大半の建物は、平屋建てで地下室を備えています。

サラノス(サレイン)
 北西のサラノス内海の港町で、大陸本土への玄関口です。この時代には大陸周回航路が確立しておらず、外洋にはクールヘンレントの海賊が出没して船を襲うので、グラダスと大陸本土を行き来する場合はほとんどがこちらを経由していました。後にゼラン王国の王都となりますが、トリース建国後は内陸部のデューラーに政治の中心が移っています。

マドルソス(マドート)
 北部のガイノス大湿地に面した街で、北の大湿地や南の沼沢地の民族を支配する総督府が存在します。後にはゼラン王国が大湿地の蛮族に備えた軍事拠点となりますが、ファイニア建国時にセムレーン家の手から奪われています。

ポルタ・グラソス(クラートポート→クラース)
 グラソス(クラート)川の河口付近に発達した港町で、ペノーナ(ペノン)地方でも有数の街です。数度に渡りクールヘンレントの海賊に襲われましたが、それらは全て撃退しています。しかしシュラナートのガレー船は航続能力に欠け、外洋ではクールヘンレントの海賊に沈められる事もしばしばです。

サラノス(セレン)内海
 グラダスの北西に面する広大な内海ですが、ゼラン建国以前のこの地域では交易も活発化していません。この内海の名称は近代語の「セレン内海」の他にも、「ゼラン王国」「セラーノ地方」「サレイン」の元となっています。

 
オルサノス湖周辺(現オータネス)
 シュラナート共和国/帝国が拡大を始めた初期に併呑された、グラダス大半島の中心部です。戦乱によりかなり荒れ果てていましたが、統一以降は前にも増して繁栄するようになりました。しかしこの地域は虐殺されたり奴隷にされた住民も多かったため、原住者の子孫と入植者の子孫の間には今でも根深い隔意が横たわっています。

エギル(エギーユ→エグ)
 諸公の街道からやや離れてはいますが、セイル川の河口を扼するオルサノス湖北岸の要衝です。後に王城ができる中州はこの頃は小さな島で、やや北寄りに中程度の規模の街がありました。二十三国時代には廃墟となりますが、三国時代にリュイ家(2代目女王の息子=3代目女王の兄の子孫)が領主となり再建に乗り出して埋立地を築きます。

ヘイズ・ノヴァ(ヌーヴヘイズ→ノーフェイ)
 西岸最大の街であったヘイズが滅ぼされ住民が奴隷とされた後に、入植都市として作られた街です。元の住民が聖所としていた丘をあえて場所に選び、帝都の周辺から植民者を集めました。この時に丘の上の輝く遺跡を破壊しようとしましたが、関係者が相次いで変死したため沙汰止みになっています。現在は交易の拠点となっていますが、周辺の奴隷農場や森の中で元住民達が報復計画を練っているという噂があります。

カロルス・ペトルス(シャルペー)
 一応は南岸最大の街ですが、蛮族と壁の向こうの〈悪魔〉に備えた軍営以外には大した物はありません。エスタニアへの陸路の入口です。

タライス・オルサノス(タリス)
 この時代は特に変哲のない、漁業と農業を営む小さな街です。しかし街の規模は、コルシスよりやや大きくなっています(二十三国時代に戦災を受けて、それ以降追い抜かれてしまいましたが)。

コルシス(コースシー)
 湖の中に浮かぶ小さな街です。この頃はゼナ川を下る航路が開発されていないため、まだ陸に接する場所まで広がっていません。この当時の市街地は、後にゴブリンとの戦いで水没する場所にあたります。

オクト・デウス・トルディス(ル・デュー)
 ケレッソス山地の奥にあり、〈八大神の降り立たれ給う所〉と呼ばれる小さな街で、神官や高司祭達が修行を行う神殿が林立しています。神殿都市であるために帝国政府に対する治外法権が確立しており、またシュラナート帝国で唯一奴隷制度が完全禁止されている(外部から連れて立ち入ると即座に解放される)地域でもあります。制度を悪用して老齢や病気の奴隷を捨てる奴隷主が跡を絶たないため、懲罰を行うためのアルリアナ神官戦士団が密かに存在するという噂が(悪徳奴隷主が変死する度に)囁かれます。
 後にトルドット女王国の王都ル・デューとなりましたが、ファイニアとスティニアの軍により炎上、オータネス建国後数十年を経てサリカとアルリアナの聖堂だけが再建されます。

オルサノス(オータン)湖
 グラダスの中心にある湖です。その更に中央にある魔性湖の壁には、グラダス統一直後から帝国の援助により作られた見張り塔が立ち並んでいます。

ケレッソス(ケレスト)山地
 グラダス北部に大きく立ちはだかる山地で、奥地には大規模な魔術師団が存在します。この魔術師団は帝国との関係を拒否しており、稀に修行中のウィザードが山から下りてくるくらいしか下界との関係はありません。

 
東部テラニア平原他(現ソイル)
 背の高い草が茂った草原と、思い出したようにそびえる山地がどこまでも続く広大な地方で、土地の質が良いために他の地方より多くの部族が定着しています。一部の植民都市で新たな開墾を行っていますが、開発が本格化してグラダスの穀倉となるのはソイル選帝国が成立して以降の話です。この地方の東側は海ですが、クールヘンレントの海賊を恐れてほとんど人が住んでいません。時折海賊が上陸し、小さな村を切り開いて定住したり内陸まで略奪に出たりする事があります。

ピーロス(ピール)
 この時代にも既に魔術師が大勢住む場所ですが、魔化の受注が中心産業になるのは後の二十三国時代の話です。冒険者が魔化を依頼する事の多い武器に関しては、帝国内の主要都市の魔術師団の方が安く素早く魔化をしてもらえます。

カルベリアポリス(カーベルデルク)
 テラニアの中心的な都市で、古いジェスタ神殿の門前町として栄えています。
 この街に限らずテラニアでは、帝都のあるサラノスの影響が都市部でもほとんど及んでおらず、土着の名門が他の地方より強い勢力を持っています。

シルヴァバルブス(ベルベンバルト)
 テラニア最大のベルントス部族(族長家が後のウォーランゲル家)の根拠地です。当然ながら、ベルントス(ベルント)山にはまだ彫像は存在していません。

タライス・テラニス(タースシャス)
 オルサノス湖東岸のタライス・オルサノスと同名の、平原東部の平凡な農業都市です。近年フェリアとの交流が始まり、絹や蜂蜜の取引で以前より豊かになっています。

アルトス・グラシアス(ベルンクース)
 テラニアでは比較的人口が希薄な南部において、ごく近年に開かれた入植都市です。〈諸公の街道〉の分岐点ですが、この地方を旅する旅人はあまり多くありません。

レクシオールム(カーニヒスデルク)
 〈王の街〉と呼ばれる、平原最南端近くの小さな街です。「王」とは一体何を指すのか、もはやこの当時にも分からなくなっています。

バドッカ
 後の自由商業都市も、この時代はシュラナートの辺境の街道と航路沿いの中継地点に過ぎませんでした。この頃は口地区にほとんどの住民が住んでおり、頭は自給用の菜園になっています。住民のほとんどは交易や漁業、もしくは宿屋の経営に従事しています。

ゼニス(ゼナ)川
 オルサノス湖から東に流れ、レクシオールムとバドッカの中間辺りで海に注ぎ込む川です。盟約締結後に工事を行うまでは航行に適した川でありませんでしたが、小船でバドッカまで赴いて大型船に積み替えています。流域付近にはこの時代、エスタニア高地からの蛮族や黒の月種族の襲撃に備えた軍事開拓都市が点在しており、遺跡と化した後にバドッカの休日冒険者が頻々と足を踏み入れる事になります。


*グラダスの辺境

ガイノス大湿地(現ファイニアの大半)
 グラダスの北西に広がる広大な湿地帯で、塩気を含んでいるため塩と湿気に強い草木が辛うじて生えているだけです。この地域にはタマットを崇める民族が住んでおり、主に漁業で生計を立てています。後のファイニアほどではありませんが、時折傭兵として出稼ぎに出る事もあります。
 この地域は帝国の直轄地ではなく、マドルソスの総督府の管轄下として部族毎に自治を行っています。直轄地にいられなくなった貴族や逃亡奴隷や犯罪者がこの地域に潜伏する事があり、しばしば総督府と部族の間で問題になります。

ペルソス(ペレート)
 ガイノス大湿地とケレッソス山地との境界付近にある鉱山都市です。大湿地の民が使う金属製品は大半がここから供給されるため、大湿地でもここだけは直轄地とされています。

 
エスタニア高地(現スティニア)
 グラダス最大の山岳地帯です。比較的標高の低い谷間には帝国の支配が及んでいますが、点在する高原地帯には未だに支配に服さない部族が多数存在します。低地の部族間にも遺恨や対立は数多く、頻繁に武力衝突が起こっています。

フォルム・エスタニア(モムグリム)
 エスタニア最大の盆地に広がる植民都市で、街の中心部にある闘技場(後の野外劇場)を中心として段々畑が広がっています。エスタニアにおける帝国総督府もこの街にあります。

ムルミロス(ムルマイル)
 南西部に存在する遺跡上の都市で、その奇観ゆえに、辺境であるにもかかわらず帝国全土に名前が知れ渡っています。

バルドルス(ハルドゥル)
 高原地帯のどこかにあると噂される謎の街です。実は異能者〈黄金の姫〉を女王と崇める部族の中心地で、秘密を守るために滅多に下界と関わる事はありません。

イエニカ(ジェヌクア)
 バドッカからやや南にある、帝国に帰順している部族の街です。帝国軍の小さな陣営がありますが、ここの駐屯部隊が奴隷狩りに携わっているという芳しくない噂があります。

 
サムリス(ザムーラ)
 ペノーナ地方の南に浮かぶ密林の島です。この当時は島内は部族毎に分かれており、ザムーラの街を中心とした1つの国になるのはもう少し後の時代になります。


*半島の外

カルス・ファルトゥス(カルシファード)
 この時代のカルス・ファルトゥス(シュラナート公用語で〈遠き異郷〉、ネクロス語訛りでカルシファード)は、〈遥か人〉が部族毎に割拠しています。その中でも有名な部族は、〈遥か人〉の都であるコウルイを統治するスイゲン部族、南部最大の勢力で外国と交易を行っているツチスケ部族などです。他にも多くの部族が存在しますが、挙げているときりがありません。この頃はエルファも数多く住んでいましたし、オレアノイやボックも普通に見る事ができました。ビジュラも定住生活を送り、ドワーフも人間達と対等に付き合っています。
 外部との繋がりは、ツチスケ部族などによる交易を除いてはほとんど存在しません。しかし鎖国している訳ではないので、行く事自体は不可能ではありません。シュラナートの貴族や軍の中には、版図拡大と奴隷の獲得を求めてカルス・ファルトゥス遠征を目論んでいる者もいます(PCが歴史の筋を改変していなければ、563年に撤退するようなスケジュールで攻め込んでいるはずです)。

ハルドス騎馬帝国
 後にゼクスと呼ばれる大平原の北端、ナーレンス川下流の遊牧民ハルドス部族と同名の帝都を中心として、南は大平原、東はサラノス内海、北はバウル湖南岸、西はサイスの森に接するまでの領域を版図とする、この当時の大陸中央部最大の国家です。機動力の高い騎馬軍団と反抗的な相手に対する見せしめ的な殲滅を武器として、370年頃に建国してから瞬く間に周辺を定住民・遊牧民問わず支配下に入れました。数十年に渡り北方の王国と戦火を交え512年に滅ぼしましたが、ザノンを中心とした北部の諸侯に反撃を受けて旧王国領の南部を併呑するに留まり、その際に中枢となるハルドス部族の兵力に致命的な打撃を受けたため、政情は不安定化の一途を辿っています。特に帝国南方(後のゼクス)の遊牧民や彷徨いの月の種族が、散発的に帝国の徴税吏や兵士を襲撃・略奪しています。南方の遊牧民は定住拠点を持たない(街さえ平気で移動する)純然たる遊牧民ですので、今回ばかりは殲滅作戦も通用しないようです。現在のカガン(ゼクス語の「ハーン」の語源)であるマガリズ・ネマノーク・ハルドスは517年に先代カガンが死亡してから対立カガンとして擁立された親族達と戦いを続けており、その一方でザノンへの再征を計画していますが……。

ザノン伯領
 バウル湖の北東に面した都市、ザノスを都とする、516年に建国したばかりの新興国家です(557年に王国となりますが、それまでの君主は「伯爵」です)。元はより南に存在した王国の属領だったのですが、その王国がハルドスに512年に滅ぼされたのを契機として、北方の小さな諸領が王家の傍流にしてガヤンの神官戦士でもあるザノン女伯アリシエイル・ザノスを中心として反ハルドス連合軍を結成しました。両親が王都で戦死したばかりで経験も浅かったアリシエイルでしたが優秀な家臣や協力者に支えられ、514年のキーンブルグ包囲戦でハルドス宰相カラルペック自ら率いる包囲軍を殲滅する事に成功します。この時に女伯自ら両手用ソードブレイカー〈自由の護り手〉を振るって宰相を倒したと噂されますが、その真偽は定かでありません。その後アリシエイルはザノス周辺の諸領の盟主の座に就きますが、後に亡くなるまで終生称号は「伯爵」のままでした。521年現在でもザノンとハルドスの対立関係は揺るがず、キーンブルグには精鋭部隊とハンのドワーフの援軍が駐屯し続けています。

ペテルギュア同盟
 港湾都市ペテルを中心とする小国で、この時代は海上交易より陸上の隊商交易が盛んです(大陸中央部の運河網が整備されるのは、もっと後の時代の話です)。かつてはクールヘンレントの海賊に支配されていましたが、490年頃に反乱を起こして当時の領主を放逐し、それ以来共和制の国となっています。ペテルの領主家であるペテルギュア家が中心勢力として、強大な海軍を育成して海賊に立ち向かわせていますが、同盟の盟主は軍事指揮者とは別に、貴族達の中から1年交代で選出されています。

ハン王国
 エデラ山地から移住したドワーフが、ありとあらゆる金属資源と石炭に富んだ緩やかな山岳地帯から黒の月種族を駆逐して470年頃に建国した新しい国です(〈悪魔〉戦争時代にも同名の国がありましたが、それとの系譜関係は不明です)。この時代のリアド大陸では人間とドワーフが後ほど深く関わって生活してはいませんでしたが、ハンは人間の入植者も受け入れて共存共栄を目指しています(さすがに地底や高層建築には住み辛いようで、周囲の地上の村に住んでいる者が多いようですが)。現在の女王マラベナは513年にザノン女伯と同盟を結び、それ以来友好関係を持ち続けています(この関係が崩れるのは、ザノン王国が2度目の拡張主義に走り始める900年過ぎからです)。

北西諸国群
 バウル湖の北西から西大洋やエデラ山地にかけて、大小の国、独立都市、孤立した村落、遊牧民の集団などが点在しています。〈悪魔〉戦争直後は繁栄していた地域ですが大陸中央部やグラダス、紫の群島への人間の拡散と発展に取り残されたような形となり、後にはトルアドネス帝国が開発に乗り出すまでほとんど空白地と化してしまいます。

タウナン公国
 巡礼路の起点であるタウナン港の周辺を領土とする都市国家です。元はルークスの領土でしたが、490年頃にクールヘンレントの海賊が勝手に占拠して独立国を名乗りました。聖域王国は公国の領主エリクゾフや有力者に対して519年に死刑宣告を下しており、実際に数年後にタウナン港は聖域王国の元に復帰します。

ルークス聖域王国
 聖域王国は、国土の沿岸を襲う海賊に悩まされています。昔は遠慮してルークスの領内からだけは略奪しなかったのが、巫王への畏敬がクールヘンレントの貴族から薄れるにつれ、人口が少なく防備が薄い割には高度な技術や魔法が普及しているルークスを平気で襲撃するようになってしまいました。しかし前代や即位したての当代の巫王、そして八聖師は、それまでの慰撫策を撤回して強硬策に乗り出し、沿岸を占拠しているクールヘンレント人を力ずくで追放しています。この時代に巡礼となる旅人はごく限られていますが、その分旅先では暖かくもてなされます。

ネクロス諸島
 〈悪魔〉戦争以来、ネクロスには無数の都市国家や部族国家が存在してきましたが、この時代になって巨大国家が誕生しています。その国家は固有の名前を持たない〈帝国〉とのみ名乗り、西の島から南北ネクロスの海峡〈魔龍の爪跡〉の周辺までを併呑し、次は諸島の南や北を後回しにして大陸本土を狙っていると噂されています。この〈帝国〉は魔法兵器を搭載した軍船を多数備えており、海上ではまさしく無敵を誇っています。その他の国々はできる限りの軍備強化に努める一方で、自国内の白の月や銀の月の遺跡から、起死回生の手段となるような兵器を国の命運を賭けて探索し続けています。

クールヘンレント
 200〜400年代に渡って斧とスパイク付きの盾を携えてありとあらゆる海を荒らし回ったクールヘンレントの海賊も、ここ50年ほどは衰退傾向にあります。かつての大陸諸国の弱体な海軍では太刀打ちできなかった海賊ですが、最近では大船団を擁するシュラナートやペテルギュア、〈帝国〉、ルークスの海軍に捕捉されると大抵は逃げ切れずに火矢や射撃呪文を射掛けられて海底に沈められてしまいます。クールヘンレント人の中には、元略奪先に定住して新たな侵略者を攻撃する側に回る者も多くなっています。


*言語

 キャラクターは母語を1つ持ち、交易語(後述)を「知力」レベルで使用できます。ただしドワーフの場合、この時代は周辺の人間の言語を「母語」扱いにはできません。

ザノン語、ペテルギュア語、ルークス聖域王国語、クールヘンレント語、ザムーラ語、その他の諸種族語
 1095年当時と同様に存在します。

シュラナート公用語(精神/並)
 シュラナート帝国の公用語で、帝都周辺の言語であるサラノ語を基礎としてルークス聖域王国語の高等語彙を大量に取り入れました。帝国の拡張期には他言語の弾圧(書物の焚書や知識層の虐殺など)をかなり強固に行いましたが、521年現在でも田舎では在来言語が優勢です。そのためシュラナート出身のキャラクターは、〈シュラナート公用語〉と在地の言語を両方とも「母語」として扱います。ただし在地の言語は文字として書き記す事はほとんどなく、そのせいで識字率が向上した二十三国時代以降にほとんど忘れ去られてしまいます。
 なおこの言語は、帝国滅亡後数十年を経て〈グラダス語〉と呼ばれるようになります。

サラノ語(旧セラーノ語)(精神/並)
 シュラナートの帝都やサラノス内海沿岸で使用する言語で、シュラナート公用語に対する俗語と見なされています。

ペノーナ語(旧ペノン語)(精神/並)
 南西部の草原地帯ペノーナで使用する言語で、エルファ語やハルドス語(後述)に似た単語や文法が多く存在します。互いに−5してサラノ語と通用できます。

オルサノ語(旧オータン語)(精神/並)
 オルサノス湖の沿岸で用いる言語です。帝国のごく初期に征服されたため最も激しく弾圧を受け、都市ではほとんど死語になりかけています。

ケレッソス語(旧ケレスト語)(精神/並)
 ケレッソス山地周辺のトルディスなどで使用する言語で、オルサノ語の近縁にあたり相互に−2修正で通用します。

テラニア語(旧ソイル語)(精神/並)
 東部平原で使う言語で、ブラネス山脈やクールヘンレントの言語に少し似ています。

ガイノス語(旧ファイニア語)(精神/並)
 北西のガイノス大湿地の民が使用する言語です。

低地エスタニア語(旧スティニア低地語)(精神/並)
 エスタニアの低地地方(フォルム、ムルミロスなど)で、地元の民族が使用する言語です。移民やその子孫はシュラナート公用語を使います。

高地エスタニア諸語(旧スティニア高地諸語)(精神/並〜難)
 エスタニアの山奥の、後の少数民族に繋がる様々な民族が使用する言語です。互いの類縁関係はあったりなかったり様々です。

その他のグラダスの言語(精神/並〜難)
 沼人やタラール族など1095年現在にも存在する少数民族の他にも、この時代のグラダスには様々な少数民族が存在しました。GMはそのような民族の言語も設定できます。

〈遥か人〉語(精神/難)
 カルス・ファルトゥス(カルシファード)の〈遥か人〉の言語です。部族毎に大きな差がありますが、筆談ならちゃんと通じます。

ハルドス語(精神/並)
 ハルドス騎馬帝国の中心をなすハルドス部族や、その近縁の部族の言語です。支配下にある民族はそれぞれの言語を持ちますが、知識層は概ねハルドス語を理解可能です。未来のゼクス共和国語やクルブネ語に影響を与えました。

ネクロス語(精神/並)
 〈紫の諸島語〉と同一の物です。未来より訛りの差は大きいものの、意思疎通に齟齬を生じるほどではありません。

交易語(精神/易)
 ネクロス語を簡略化した交易用言語で、後の大陸共通語です。


*武器・防具

 1095年に使われている武器や防具は、521年においてもそのほとんどが使用可能です。ただし、以下の武器・防具は使用できません。

  スタン・ボール、ウォーター・シューター、アサッシンズ・ナイフ、クッキング・ブレイド、クッキング・シールド、ホイールロックピストル
  ショートソードブレイカー、打突用ソードブレイカー


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