―ルナル・セッション/特殊セッション2―

 ルナル世界を変わった切り口で遊ぶための特殊セッション用の設定です。なおプレイ上の便宜は机上でしか考慮していません(汗)。

学園セッション
別次元への探索行
パラレル・ルナル
海の神秘


#学園セッション#(難易度:易〜並)

*パーティ構成
 100CPで4〜5人ほど。推奨種族は人間。それ以外の種族はドワーフと人間ウィザード、それもGMが認めた場合のみ。年齢は基本的に15〜17歳限定。位階は入信者か神官だけ。

*特殊ルール
 PCはまだ成長期なので、初期値+1点まではCPの差額そのままで能力値を上昇させられます。
 舞台が中等教育機関である場合、PCの知力は最低でも10必要です。

*シナリオ展開
 PC達は、同じ年に中等教育機関に入学・進学した知り合い同士です(まあサリカ神殿の教導所でも構わないのですが、それでは戦闘能力が無いですので)。入学した先は、大きく分けて以下のようになります。
 ・ペローマ神殿の教導所
  トリースとファイニアによく見られる施設ですが、他の国でも学問に熱心な地域ならあって差支えません。入った理由も考えなくてよいので楽です(おい)。
 ・人里離れた修道神殿
  俗塵を逃れた清浄な環境で、資質を高めるためか素行に問題があり幽閉するのか悪い虫が付かないようにするためだけか、まあともかく理由だけは考えて下さい。特定の神の神殿では様々な信仰のPCを集めにくいので、恐らくはサリカ神殿か合同神殿でしょう。
 ・私塾
  カルシファードでよく見られますが、他の地域でも存在しないわけではありません(多分)。ただし他の地域の場合、「何でわざわざ私塾に入ったのか」という理由を考える必要があるでしょう。
 ストーリーは、季節を区切り春夏秋冬を追跡してもよし、てきとーに日々を流していってもよし、お好きなようにPCに青春を謳歌させて下さい。プレイを重ねすぎて時間軸がおかしくなった場合は、古代の遺産なりマッドな魔術師なり封印された〈悪魔〉騎士なりがサ○エさん空間を作っているのだと強引に決め付け、最終回で原因を取り除いて通常の時空間に復帰させれば……(笑)。

・サンプルキャンペーン試案:某市某地区ペローマ神殿上級教導所の1キアンペン(年)
 ・入学・進学・大騒動!〜双月暦1096年14巡り目の輪の月の日〜
  PC達は上級教導所に入学、もしくは進学して、教導所の校長や各教科の先生、そして担任の先生を紹介され、気の合う合わないはさておき、クラスメイトや上級生とも出会います。ガープスに不慣れなプレイヤーがいる場合は、さっそくPCにテストと称して技能判定や模擬戦をさせてみて下さい。
 ・ある教導所の平凡でない一日〜双月暦1096年17巡り目の青の月の日〜
  今日も今日とてPC達は教導所に通いますが、なぜか今日は朝からトラブルが連続します。混乱を極めた状況の末に、なぜか上級生の不良グループと乱闘するはめに……。
 ・謎の転校生現る〜双月暦1096年20巡り目の赤の月の日〜
  タイトル通りのひねりもない話ですが、その正体は(1)婚約相手を探す貴族の子供、(2)魔法で変身しているPCの保護者、(3)教導所の秘宝を狙う怪盗、(4)対抗する探偵、(5)学生(PC?)を狙う暗殺者、(6)トロールの取替え子、さあどれでしょう(待て)。
 ・はじめての勤労奉仕(アルバイト)〜双月暦1096年24巡り目の彷徨いの月の日〜
  欲しい物のあるPCは、夏至の祭を控えて賑わう街でアルバイト(誰もアルバイトに興味がなければ無償の勤労奉仕)を行います。……その後の展開はアルバイトの内容次第です(逃げるなこら)。
 ・たのしい林間学校〜双月暦1096年26巡り目の輪の月の日〜
  暑さが強まるある日、クラス一同は植林地へ林間学校に向かいます。そこではエルファ部族との境界争いが深刻さを増しており、しかもゲルーシャまで潜んでいたのでした。
 ・真夏の夜の悪夢〜双月暦1096年30巡り目の緑の月の日〜
  ルナルの学校にも、やはり七不思議は標準オプションでしょう(断言)。七不思議を体験するためにPCは夜の教導所に立ち入りますが、七不思議は全て実在の存在だったのです! PCは七不思議を鎮めるために、戦ったり謎解きしたりする事になります。
 ・来賓さんいらっしゃい〜双月暦1096年37巡り目の銀の月の日〜
  教導所の文化祭に、なんと来賓が訪れます。世話係に選ばれたPCは来賓の命を狙う暗殺者を退けながら、自分達のクラスや部活動の発表も成功させなくてはなりません。
 ・敵は徒党(チーマー)〜双月暦1096年41巡り目の安息日〜
  隣の地区を拠点とする徒党の不良連中が、教導所の生徒達に暴力や嫌がらせを向けてきます。徒党は魔法の品や用心棒でPC達をも苦しめますが、実は徒党の裏で手を引く意外な人物がいて……。
 ・先生、恋をする〜双月暦1096年45巡り目の赤の月の日〜
  PCの担任である先生が、ある人物に恋をしてしまいます(若い独身の先生なら普通の展開ですが、老教師の老いらくの恋や妻子持ち先生の不倫とかなら……)。PC達は恋を支援するなり妨害するなりして、……その結果はいかに?
 ・年の始めの演武会〜双月暦1097年年始の第1日〜
  年始はルナルでもおめでたいもの。各神殿での祭りや伝統劇〈創世〉第1幕が賑やかに行われる頃、教導所の運動場では腕試しの演武会が盛大に行われます。PCも学生部門に参加する中、PCの知り合いも参加している成人部門に大番狂わせが続出。ガヤン神殿の審判やタマット神殿の賭け屋の協力を受けながら原因探しに奔走する事になります。
 ・魔術師の暗闘〜双月暦1097年5巡り目の安息日〜
  不老不死の完全な秘法を巡るウィザード達の知られざる暗闘。PCの1人が夜中に目撃して以来周囲に怪事件が相次ぎ、とうとう教導所の生徒までさらわれだします。PCや先生達は犯人を突き止めて隠れ家のウィザードを倒しますが、その時数名(保護者? 担任の先生? はたまたPCの親友や恋人?)は秘法を狙うソーサラーに連れ去られてしまいます。
 ・教導所最大の危機〜双月暦1097年9巡り目の輪の月の日〜
  姿をくらましていたソーサラーが教導所に現れて、そこにいた全員も生贄として不老不死を実現させようと儀式を始めました。PC達は討伐隊に参加して地下から突入し、ソーサラーの配下が大人達と戦っている間に囚われた人々を救出する使命を受けます。しかしそこにはクラスメイトの1人が立ちはだかり、ソーサラーの師匠にして〈悪魔〉教団の首領という真の姿を見せる事になります。


#別次元への探索行#(難易度:並〜至難)

*パーティ構成
 100CP以上でCP総計はGMが決定、人数は不問。種族は黒の月でもない限りよほど不都合でなければ許可してよい。

*特殊ルール
 特にルール全般にわたるものは存在しませんが、ガイド役や依頼者として、双子の月の使い(の下っ端)を用いる事ができます。

双子の月の使い(20CP)
「カリスマ2レベル」(10CP)
「感情察知」(15CP)
 双子の月の使いは、知力にかかわらず基準値は最低でも11あります。
「後援者/八大神の一柱(ときどき)」(25CP)
「義務感/双子の月」(-10CP)
「使命/八大神の一柱(ときどき)」(-10CP)
「秘密/双子の月の使いである」(-10CP)
「共鳴」(0CP)
 「知力+魔法の素質」判定に成功すれば、他の月の使いを見抜く事ができます。もちろん、他の月の使いから見抜かれる可能性もあります。外法使いと同じく、他の月の使いに見抜かれないように抵抗する事はできますが、よほどの理由がない限り主人である神から見咎められることでしょう。

 双子の月の八大神のいずれかから、ルナルの地上へ遣わされた従者です。力はやや強い人間程度しかなく、超常的な力というのは、自らを媒体とした神(もしくはもっと上位の従者)の介入を適切な場合に行える程度です。身体構造は普通の人間と変わりなく、中には人間の母体に宿って生まれる者もおり、そのような場合は自分が神の使いである事に気付いていない事もありえます。
 取れる特徴は主人の教えに反しない限り自由ですが、それに加えてスーパーヒーローや異種族のための特徴も自由に取れます。

*シナリオ展開
 PCは何らかの事情によって、異次元を冒険する事になります。

・ウィザード
 魔術の専門家であるウィザードは、想像できる限りのあらゆる呪文を開発や復活させている可能性があります。ピールの元副議長ナーランジャは時空間を扱った呪文の数少ない専門家なので発端作りに良さそうにも思えますが、〈四姉妹〉政権が支配していたスティニアに危険物品を横流しした前科持ちであるため、風紀委員の処罰を考えると及び腰にならざるを得ません。この場合は単なる依頼ではなく、監視を嫌って儀式魔法で異次元に逃亡したナーランジャを追うなり、暴走して消え去った保管庫に巻き込まれたケルナー(笑)の救出に向かうなり、工夫を加えた方がいいでしょう。もちろん他の前科持ちでないウィザードならそうそう制約されないため、実験の依頼をしてもそう不自然ではなくなります。問答無用にPCだけを放り込むと反発されるでしょうから、「異次元に足を踏み入れる依頼主の護衛」という形にして、既に1回は問題もなくルナルに戻っている事にすれば安全でしょう。

・銀の月の種族
 翼人の仕える風の元素神は、虚空を渡るエネルギーを司ります。小神の中には次元を渡る存在〈虹色の泡〉もあり、銀の月には時空間転移を攻撃/防御手段とする〈外よりのもの〉もいるため、翼人が魔法で虚空の彼方への通廊を開いてもさほど不思議ではありません。翼人は人間と比較的近い倫理を持つため、巻き込み型から護衛型まで幅広い展開に使用できます。他の銀の月種族も元素界と結び付きを持つためある程度はこのネタに使えますが、意思疎通がし辛いため大抵は強引タイプになるかもしれません。

・遺跡
 白の月や銀の月の時代の遺跡なら、訳の分からない作用で暴走させても全く問題ありません(待て)。もちろん暴走と見せ掛け、PCや同行しているNPCを抹殺しようと企む張本人がいてもいいでしょう。

・異次元からの召喚
 《異次元召喚》の呪文がある世界なら、ルナルの魔法的存在位置と特質を知る事で、ルナルの存在を召喚する事もできるでしょう。もっとも召喚者に防備をさせておかないと、怒り狂うPC達にひどい目に遭わされて、事態がより混迷するかもしれません。召喚した本人にしか送還を行えない世界なら特に。

・月よりの使者
 双子の月の神々は、代理人として使いを地上に遣わす事があります(ガヤンの使いの「門の意思」や、シャストアの使いの「夢の守護者」がリプレイに出ています)。そのような使いが、地上の人間やドワーフ、またはそれ以外の種族に協力を頼む事があるでしょう。ソーサラーの撒き散らした業病の特効薬を浮遊大陸の藍色の平原から採取したペローマ神官の話や、夢の中で石の摩天楼の街からゾンビを浄化したナーチャ高司祭の話が、シャストア高司祭の書き残した日記の中に見られます。……内容の詳細は、脚色されていると思しいので信用なりませんが。

・自発的
 200CP程度のキャラクターなら、自前の呪文で異次元の扉を開けるかもしれません(ルールさえ伴えば)。そうしたキャラクターを作って、次元踏破の旅と洒落込みましょう。もちろん火の世界に《防熱》なしでは一発アウトでしょうし、機関銃の一斉掃射で《矢返し》使い以外の仲間全員と攻撃者が一度にミンチにされる危険もありますが。

*ルナルを取り巻く世界
 ルナルの近辺には多くの異次元世界が存在します。中には人が住めないどころか生存すらできない世界や、神ですら到達できない世界もあったりします。

―星々の深淵―

 ルナルの大地と大海が虚空に浮かんでいる世界です。神話では、この宇宙のほとんどは異質な存在に占められており、〈源初の創造神〉と共感しうる存在は全く認められなかったとされています。〈源初の創造神〉であっても完全な全知全能ではありませんので、虚空のいずこかにルナルの民にも理解しうる大地が存在するかもしれませんが。
 この星々が無限に近いほど広がる空間には、ルナルの地上世界以外にも無数の世界が浮かんでいます。しかしそのほとんどは銀の月種族にも理解しがたいほど異質であるため、冒険と関係する事はできないでしょう。

・ルナル
 ルナルの地上世界は、板のような基盤の上に三つの大陸と三つの大洋が浮かんでいる世界です(異端の学説には球形基盤説も存在しますが、観測結果からは否定されています)。その周囲を1つの太陽と7つの月が取り巻いているのは幼児でも知っている事実ですが、異次元への次元通廊である太陽と黒の月を除き、他の6つも小さな異次元である事を知る者はほとんど存在しません(〈神秘学〉−8判定に成功すれば断片的に知っていますが、真実を知る者から直接教わらない限りそれ以上の事は知りません)。
 ルナルは地上世界の中だけでも、無数の神秘と伝説に満ちています。「ルナルの裏には独自の種族が王国を築いている」との話もありますが、裏への道を見出した者は誰一人として知られていません。

・白き輪の月
 源初の神の居住地であった白の月は、〈至高なる輝きの地〉への次元通廊である太陽を開く際に、その儀式魔法の素材とされて力をほとんど失い、輪のような形の一部を残すだけになりました。その輪の大きさは、リアド大陸が優にその中をくぐれると噂されます(あるいは、ルナルの地上世界全てより巨大だとも、そんな物理的な比較は意味を成さないとも)。
 輪の上には名もなき小さな〈天使〉から名を持つ〈天使〉達(ディエルからワーエルまで)までが無数に集い、その発光により月が白い光を放つのだと言われます。また月の内部には、道を窮めたウィザードが更なる修行を続け、そこに至らないウィザードの魂を転生させる〈神を追う者の神殿〉があると伝わります。

・万色なる彷徨いの月
 虹色に輝き、絶え間なく変転し続けるこの月は、太陽を開く儀式の魔力の余りです。遥か昔(緑の月の時代の初期と伝わります)、あるウィザードが力の秘密を求めてこの月を目指し、近付けば遠ざかり、転移すら拒んだ月の前に敗れ去ったそうです。また〈悪魔〉戦争の頃、タマットは直観でこの月を捕らえて戦いへの助力を承諾させたとも言います。
 月の内部には純粋な〈波動〉が荒れ狂っているとも、秘密の存在である何者か、源初の神の写し身である〈通廊の守衛〉が来るべき未来に備えて眠り続けているとも、この月に共感した〈源人の子ら〉を種族に定義する色を司る〈色彩の存在〉がいるとも、魔力により形成された彷徨いの月の種族の楽園が魂に安らぎを与えるとも、または…………。

・銀の月
 四大元素を司る〈異貌の神〉の一族が故郷を喪ってから仮の宿にし続けた、虚空を渡る船です。相互に対立する存在が同居しているために望ましい環境とは言えないらしく、銀の月の時代には、月を支配する最上級者を除く大半の神がルナルの地上世界や周辺の虚空に降り立っていました。
 月の内部は四大元素が荒れ狂う、いわば元素界をパッチワーク状に綴り合わせた空間が、半ば無限に広がっています。神が存在する空間(いわば客室)は1つの元素に安定しているのですが、主であった神が下船している空間は全ての元素が入り乱れており、眷族達による戦いの場所となっています。力を窮めた銀の月の種族は眷族に転じて、この戦いに加わるとされています。

・緑の月
 祖エルファの長きに渡る魔法儀式により、星の欠片から生み出された場所で、動植物の根源の力を祖霊として集束させています(ある説では、森に住まわない生物は緑の月ではなく彷徨いの月に属するとも言います)。第二の緑の月を無から作り出す儀式の失敗と黒の月の出現により受けた痛手は現在も残っており、名残である黒ずんだしみを見る度に〈導き手〉は心の奥底で涙します。
 月の内部には祖霊植物の森や海原が広がり、祖霊動物と共に円環を形作っています。ですが黒の月に傷付けられた痕跡が荒れ地として残され、その部分には貧弱な生態系しか残されていません。エルファの魂はフェルトレの祖霊の前で新たなる道を示され、そのまま月の世界の円環となるか、エルファの守護者として異種族には語られない道を歩むか、エルファとしてルナルの大地に戻るか、円環にそぐわぬ者として人間や彷徨いの月の種族になるか、鷲に魂をついばまれて生まれても親に面白半分に殺されるゲルーシャになるか、いずれかの道を歩む事になるそうです。稀にはケラーグやオレアノイ、〈遥か人〉などの複合信仰者の魂も、自らのやりようで自然と共存しています。

・青の月
 秩序の倫理を司る青の月の神の住まう場所です。サンダミオンの結界に阻まれて、双子の月の神々は地上へは〈波動〉を送る事くらいしかできませんが、どのみち自主的な努力を重視する双子の神々は直接地上に干渉する気もなく、青の月からは稀に使命を負った従者が降り立つ事があるくらいです。
 月の内部は純粋な、しかし穏やかな秩序と善の力が満たしており、訪問者は音も匂いもない空間の中で、どこまでも続く純粋な青の光を目にする事になります。もし必要なら床や廊下や大広間を感じ取らせる事もありますが、そのような単純な構造以外の物質を訪問者が感じる事はなく、どこにいようと神やその側仕えの明瞭な声を聞き逃す事はありません。
 伝説通り、人間の魂はより重視していた月の方へ昇り、神々の審判を受けてから様々な道を選びます。一般には知られていませんが、1つの魂がそのまま1人の子供に転生するとは限らず、分裂・融合して転生する事もしばしばあります(融合が十分でないと、「多重人格」になったりします)。ドワーフの魂も大半は青の月へ昇りますが、〈龍〉にのみ惹かれた魂は彷徨いの月へ昇ります。
 月の奥には青紫に染まる空間があり、そこは赤の月へ直行する次元通廊となっています。

・赤の月
 自由の倫理を司る赤の月の神の(以下同文)。赤の月の神は総じて好奇心旺盛で、頻繁に従者を地上へ遣わして、従者も時には自由裁量でちょっかいを掛ける事があります。
 月の内部は純粋な、しかし穏やかな混沌と善の力が満たしていますが、青の月とは違って訪問者が感じる純粋な赤の光の色調は場所によって様々で、伴う印象も心が安らいだり浮き立ったりと、快さを除いては全く整合性がありません。しばしば内部にはシャストアの力によりルナルやそれ以外の世界の様々な環境を模した空間がしつらえてあり、そこは芳香と音楽に満たされています。訪問者をもてなす――往々にして遊び相手をせがむ――人や獣の姿を取った側仕えも大勢いますが、その中には神様本人が面白半分に混ざっている事さえあるでしょう。
 月の奥には赤紫に染まる空間があり、そこは青の月へ直行する次元通廊となっています。
#シャストアの使い
 最も頻繁に目撃される双子の月の使いです。男女問わず目を引くような容姿の人間の姿が最も一般的ですが、様々な大きさの鴉や大き目の白い狐といった姿の事もあり、時には剣や仮面のような無生物や赤い光の姿を取る事もあります。〈悪魔〉が相手でない限り直接的な力を振るう事はなく、間接的なヒントやさりげない誘導で相手の手助けを行います。しかし往々にして物語的なシチュエーションを見逃すまいと趣味に走るので、結果として相手を一時的な苦境に追い込んでしまう事もあるようです。出現するのはシャストア信者の危機の際が最も多いようですが、危機の度合は出現率と何の関係もないようで、全然危機と関係ない時にも興味本位で出没します。
 大抵のシャストアの使いは、「都合のいい偶然」(「百鬼」参照)を持っているようです。

・喪われた故郷
 星々の深淵の彼方にあった、銀の月の〈異貌の神〉の故郷であった大地です(一説には、ルナルとは別の次元に存在した大地だったとも言います)。喪失の経緯は他に知る者はなく、仲間内の争いで追い出されたのか、他の何者かに追いやられたのか、何らかの決定的破滅により崩壊したのか、それは半永久的に謎のままでしょう。いずれにせよ、訪れる必要は多分ありません。

・新たなる大地
 アレイシアが行使した神の力により、1万年を掛けて作り出される予定の大地、仮住まいを続けていた〈異貌の神〉の新たな移住先となる世界です。恐らくはルナルの内部かやや離れた場所に誕生するのでしょうが、どの辺に生まれるのかはまだ不明です。

―元素界―

 〈星々の深淵〉に最も近しく、〈異貌の神〉と関わりの深い、地水火風の元素の世界、眷族や元素獣の故郷です(〈異貌の神〉が住んでいたわけではないようなので誤解のないように)。元素ごとに4つの次元からなる、交わる事なき平行世界の集まりで、風の元素界は上も下も何もないひたすらの風逆巻く虚空、火の元素界は永劫に燃え続ける炎の大地、水の元素界は全ての向きにどこまでも続く水の広がり、地の元素界はあらゆる土と石が無限に堆積した空のない世界となっています。次元間の接点には複合元素の小次元が存在するという説もありますが、そのような次元に対応した元素神の話はうさんくさい噂以上のものであった例がありません。
 他にもルナルから比較的階梯の近い異次元は数多く存在し、特異点であるカルシファードからは一瞬垣間見るだけなら比較的楽に行えます。しかし環境や物理法則は甚だしく異なる事が多く、倫理も掛け離れている世界がほとんどで、そのような異次元存在と契約を行った外法使いはほとんど全員がルナルの倫理を見失い、やがて精神的怪物となり果てます。

―至高なる輝きの地―

 百万の世界に善と生命をもたらす、純粋な善の力、他者を慈しむ力を持つ世界です。その果てしない力は、ルナルに開いた次元通廊である太陽を垣間見るだけで目が眩まされるほどで、神であっても遡る事は普通は不可能です。太陽の〈波動〉を直接魔法に利用しようとする無謀な者は100年に1人は出ていますが、激しい力の流出により波を成していない(地震計で例えると、常に針が振り切れっぱなしの状態)〈波動〉の制御は、神々や祖霊以外に成功した者は存在しません。

―絶対の闇なる邪悪の地―

 死と破壊、そして自らをも含んだ永劫の破滅を望む、負の力と邪悪に満たされた最低最悪の世界です。数多の邪悪な次元に巣食う肉体を持つ悪魔とは違い、邪悪の地には人に取り憑き精神から歪める精神生命体の〈悪魔〉が無数に存在し(俗説に従えば666万×8=5328万体ですが)、ルナルに開いた次元通廊である黒の月は、封印された今でも邪悪な召喚に応えて〈悪魔〉を送り出しています。一説では、〈悪魔〉は結界の網をすり抜けているのではなく、召喚者の魂の「欠けた」部分に開いた黒の月との次元通廊を通り抜けているのだともされています。
 邪悪の地の内部は黒い砂の砂漠が永劫に続いているとも、捻じくれ果てた枯れ木のような黒い森が延々と広がっているとも、魔元帥と〈悪魔〉皇帝が支配する九つの階層に分かれているとも、上も下もない精神世界に〈悪魔〉皇帝の妄念が立ち込めているとも、邪悪の地そのものが〈悪魔〉皇帝の肉体にして精神(!)だとも言われています。他の月の種族でも、邪悪な行いが改悛不可能なほど重なれば、黒の月の彼方に放り込まれて永劫の刑罰に処せられると伝えられています。既に捻じ曲げられた黒の月の種族の魂は〈悪魔〉にとっては大して美味でない事が多いのか、大半は普通に転生が行われています。もちろん、魂を失っているゲルーシャはこの例外です。
 ソーサラーの間では、この世界の遥か果てには他の次元通廊も存在し、別の世界に飛び込む事も可能であると囁かれています。

―大いなる銀の河―

 プレイヤーが住んでいるのと同じ、地球や太陽系や銀河系や銀河団や…………を含む世界です。範囲こそ光が反対側に届かないほど広大ですが、星々の占める割合はルナルから望める〈星々の深淵〉に比べれば微々たる物で、人間(など)の既知範囲は更にそのごく一部にしか過ぎません。しかもこの世界は多層構造が比較的容易に発生するらしく、平行次元や並行次元が無限に近く存在します。ある平行/並行次元の学者は、「基盤世界で『想像』された全てのものが、数多の次元として『創造』されたのだ」と説いています。

・無名の世界
 他の世界から隔絶された、プレイヤーやGMが住んでいる世界(と、それに酷似した数多くの世界)です。多くの平行/並行次元よりやや戦乱が多く、神秘の力からは程遠い世界で、外部から通廊を開く事が非常に困難なため、まず外部からの訪問者はありえません。しかしそれにもかかわらず、非常に稀に、この無名の世界からも人間や物体が、他の次元へ意外と簡単に飛ばされます。先の学者はこれを『創造力の内圧差』と呼び、創造力の奔流の流出に伴う自然現象と説いていますが、賛同する者はほとんどいません。

・百鬼世界
 無名の世界にある程度似てはいますが、「想像」により「創造」されたという「妖怪」と呼ばれる超常生命体が存在し、社会の陰に同居している世界です。妖怪はルナル世界のマイナードラゴンや〈悪魔〉に匹敵する強大な生物ですが、幸いにも百鬼世界の魔法は力が弱く、この世界から他の次元へ通廊を開いた者はほとんどいません。この世界にもいくつかの平行/並行次元が存在しますが、それの他にも、想像=創造された「隠れ里」という小次元が無数に付属しています。

・その他の世界
 虚空の彼方の赤い星で強化人間が拳を交える世界、少年少女の魔法怪盗が闇夜に際立つ世界、ミステリアスな猫がご近所の平和のために努力する世界など、考えられる限りの世界が存在します。そのごく一部は〈多元世界の樹〉とも重複していますが、そちらの住人は自分の世界が〈大いなる銀の河〉の一部でもある事には全く気付いておらず、世界間の間隙が存在を拒絶する性質を持つ〈大いなる銀の河〉にはドラゴニスは全く興味を持っていません。

―多元世界の樹―

 様々な形態に枝分かれした世界である「異歴史」が存在する次元で、世界と世界の間には多次元生命体ドラゴニスが住んでいます。ベース世界を始めとする一部の世界は〈大いなる銀の河〉と重複しており、更にごく一部の世界は他の次元にも跨っているといわれます(さすがに、〈輝きの地〉や〈邪悪の地〉には繋がっていないようですが)。この次元構造に気付いたある世界(ベース世界の未来とも言われます)が他の「異歴史」を抹殺しようと刺客を大量に送り込んでおり、ドラゴニスは〈龍の傭兵〉と呼ばれる戦士を抹殺阻止(そして自分達の生活空間維持)のために送り込んでいる最中です。

―その他の次元―

 ユニオラ、虚界、ファイブリア(物質界、妖精界、精霊界)など、他にも無数の世界が存在しています。さらに遠い、手の届きにくい所には、フォーセリア、央華、混沌の海に浮かぶドラゴン大陸、オアースと大いなる転輪、ラース=フェリアやファー・ジ・アースを含む八世界など、無限に近い数の世界が存在します。


#パラレル・ルナル#(難易度:易〜至難)

*パーティ構成
*特殊ルール
 1つのルナル世界でのみの冒険なら、GMとプレイヤーが合意した「通常のルナル」で遊ぶ事になるでしょう。
 基盤となる世界から他の世界(異歴史)に移動するなら、「別次元への探索行」と同じになります。特定の月が存在しない一部の異歴史では、その月のマナは「やや疎」となり、素質があっても技能に−1の修正を受けます。

*シナリオ展開
 PCは何らかの……(以下略)。

*様々なルナル
 時間の流れの中で分岐した、ルナルの様々な異歴史です。

―ベーシック・ルナル―

 通常のルナルでの冒険の中心となる、リプレイや小説に準拠した(相違があるならリプレイを優先する)世界です。

―月の落ちたる世界―

 月への扉を開いた事により、七つの月が大地に激突して滅亡する寸前にまで陥った世界です。もはや手遅れとなった世界を救うために多くの人々を魔法で過去に送り込みましたが、その衝撃でルナルは2つの異歴史に分岐してしまい、自分自身を救う事はもはやかないませんでした。しかしそちらの世界、通常の冒険の舞台となるもう片方のルナルから1人の少年が到来する事により、辛うじて救われる事になる――はずですきっと。
 その過程において、ベーシック・ルナルと以下のような相違が生じています。
・未来からの帰還者が、大挙して出現する事はありませんでした。この辺り(リプレイ四姉妹編第3部冒頭)が2つの異歴史の分岐点です。
・アンディはメノア無しで〈黄金の姫〉に挑み、そして戻る事はありませんでした(きっと治癒魔法が足りなかったのでしょう)。そしてグラダスは〈悪魔〉の跳梁する魔境と化して、クロード夫妻は息子のサレイを残して街と運命を共にします。後にサレイは、メノア達と共に《長時間遡航》で過去に赴きます。
・ハンニバルとウォッカは、シュレディの銀の月の遺跡に挑んで命を失いました。
・ベーシック・ルナルと違い、多くの邪悪な秘密結社が大挙して戦を交えたそうです。恐らくベーシック・ルナルでは、大勢の帰還者により片っ端から潰されて後顧の憂いを絶たれ、その残党達が〈教主〉の下に雪崩込んだのでしょう。
・漆黒の混沌龍は完全に目覚めてしまい、その上にあったカルシファードは壊滅しています。
・サーライトは妄念に負ける事なく戦いに身を投じましたが、敗れて過去のベーシック・ルナルに飛ばされました。そこでベーシック・ルナルのメノアと結婚して、ジーゼが誕生する事になります。
・メノアは、世界の崩壊寸前に《長時間遡航》によりベーシック・ルナルとの分岐点付近に飛ばされました。
・ラズリィやアレイシア達は、最後の1人であるジーゼがいるベーシック・ルナルへの道を見出せずに世界の崩壊寸前で果てる運命でしたが、ベーシック・ルナルを救ったジーゼが時を遡って合流したために、辛うじて世界を救う事ができるようになります。

―偽りの緑の楽土―

 第二の緑の月を作り上げるのに失敗せず、中空に留まる二つの緑の月の下で、節度を見失って奢り高ぶるエルファが静寂に満ちた、活気もなく進歩もしない繁栄を謳歌している世界です(当然、黒の月や双子の月は存在しません。人間は双子の月の魔法ではなく、妖術を「百鬼」P266の「妖術のパワーグループ」の記述に従って獲得します。増強や限定は加えられず、常にパワーレベルの半分(端数切り上げ)エネルギーを消費します。ダメージ上限は4Dです)。リアド大陸のほとんどの土地は森で埋め尽くされており、人間はミュルーンやシャロッツやギャビット・ラーと共に僅かな平野に追いやられるか、フェリアやギャビット・ビーと共に森に分け入り排他的なエルファと戦うかして、辛うじて生存している状態です。エルファでも過激な派閥は、完璧な円環の障害となる異種族を絶滅させようとしており、既に爬虫人はリアドの半分以上の部族をエルファに滅ぼされ、その報復として頻繁に森を焼き払っています。
 第二の緑の月は夜空で他の月よりも強く輝き、しばしば他の月を隠して〈波動〉を遮ります。しかし近頃見掛けが次第に黒ずんできたのと共に、エルファによる異種族圧迫が一層激しくなっており、一部のウィザードは第二の緑の月がエルファの傲慢と異種族の憎悪により邪悪と化しつつあるのではないかと危惧しています。

―真実の緑の楽土―

 偽りの緑の楽土と似ていますが、こちらでは第二の緑の月は作られず、他者を圧迫しない程度に広がった緑の森の中で、エルファが調和と進歩のバランスを取る螺旋の哲学を奉じて繁栄しています。こちらの世界でも〈悪魔〉が襲来したようですが、次元通廊が小さいものだったせいか、急遽現れた双子の月によって即座に排除されたため、百年続いた戦争で億単位の犠牲者を出したベーシック・ルナルとは違い、戦乱による犠牲者は数万人で済みました。この世界では人間も自然と協調した〈遥か人〉に近い哲学を持っており、国家はルークスを除いて小規模に留まっています。ハーフ・エルファも大勢存在しており、双子の月と緑の月を双方信奉する事により独立した種族意識を強め、他のファンタジー世界のエルフに近い営みを持っています(通常のハーフのルールに従いますが、寿命は必ず人間の2倍で、5CPを費やします。信仰は双子の月の1柱と祖霊全体に対するもので、双子の月の位階に+5CPする事により、同じ位階の緑の月のボーナス技能と共通呪文(特殊呪文は除く)を獲得できます)。

―英雄の聖戦の地―

 〈悪魔〉戦争が未だに続いている、英雄達の世界です。決定的な決着が付かないまま千年以上続く戦争の中で、超人的な(少なくとも200〜300CP以上)戦士や魔法使いが、並大抵の〈悪魔〉やソーサラーなど雑魚扱いにして、武器と攻撃魔法を振るっています。〈栄光の担い手〉達も未だに戦線に立っており、魔元帥の1体すら傷を受けて黒の月に追い払われたそうです(もう1000CPや2000CPでは効かないでしょう)。様々な種族の非戦闘員は魔法により庇護された城塞で暮らしており、野外は断続的に血が流れる戦場となっています。

―大荒野―

 〈悪魔〉との戦いに敗れ、その後の〈源人の子ら〉十億人余りを生贄にした太陽破壊の儀式の失敗により魔元帥もろとも焼き尽くされた世界です。全土で各種族合わせて数万人の生存者は、疲弊した月の神々のか細い加護の下で、黒の月により汚された世界で生存圏を確保しながら細々と生き続けました。千年余りを経た現在も世界の大半は荒れ果てたままで、頻々と出没する黒の月種族や妖獣、はぐれ〈悪魔〉に備え、ただの村人ですら畑仕事の合間に斧や弓の腕を磨いています。人間の領域はルークスとネクロスが中心で、大陸本土やグラダスの内陸部は未だに〈悪魔〉の跳梁する暗黒地帯のままです。ミュルーンが歪んだ鳥の翼と蝙蝠の翼を1枚ずつ持つ種族や、フェリアが歪んだ頭だけ人で胴体は虫の種族、翼人が歪んだ退化した翼を持つ吸血種族などは、この世界ではオークやゴブリンと同程度に見掛けられます。

―月の戦いの地―

 この世界では黒の月は完全に消し去られ、邪悪な存在は地上に残された僅かな〈悪魔〉やその従者を除いて滅却されました。しかし結束すべき脅威の完全消滅と共に、種族間の争いは次第に激化して、今では信仰する月が異なる種族間で(もしくはその内部の派閥間で)頻々と戦いが繰り広げられています。双子の月の信徒は協調を旨とする〈紫〉、秩序による統一を是とする〈青〉、自由の謳歌を求める〈赤〉の3つに分かれ、〈紫〉はエルファの螺旋派やフェリアと、〈青〉はドワーフと、〈赤〉はミュルーンやシャロッツと手を組んで戦っています。緑の月のエルファは円環派と螺旋派、それに海エルファの球体派の三つ巴の抗争を続け、銀の月信者は四分五裂に乱れて、彷徨いの月種族は気の合う派閥に手を貸して、ウィザードは個々の判断で行動しながら全体としては中立の立場を取っています。この世界では同一派閥や友好派閥には反応に+1、敵対派閥には反応に−2されます。

―八つの月の世界―

 この世界では、月の激突による世界崩壊の危機を救ったのはミュルーンでした。〈結社〉の裏計画によりサンダミオンの遺伝子を人為的に植え付けられたミュルーンの血統の末裔であるトビー・ゴールドクレストは神の力を手にした〈月に至る子〉となり、黄金に輝く月を創造してその力で月と大地のバランスを取り戻します。そのままトビーは金の月の神となり、ミュルーンに魔法の力をもたらしました。現在の金の月には、いざという時の気前良い銭使いを司る神となったトビーの他に、儲け口を決して見逃さない銭儲けの神タッタ、小さな力で大きな働きを得る槍と倹約の神ニート、草原での繁殖と子育ての神バササ、話芸とボケツッコミの神ライブ、ラグアツを守護する狩猟と漁業の兄弟神ペントとパナペが存在し、顔触れを豊かにするための新たなミュルーンの神も随時募集中です。この新たな金の月の教えは、現在のルナルで最有力の組織となった伝令ギルドを通じて全土に布教されつつあります。
 金の月の信者であるミュルーンは、動物系(《変身》《他者変身》を除く)、風霊系、知識系(前提を満たせない《神託》を除く)、光/闇系(闇を操る呪文は梟族のみ)、移動系呪文を使います(この内部で満たせない前提は、他に満たせる前提が別個に存在しない限り無視して下さい)。天候操作と同じく空が頭上に見えないと使えない上に、この異歴史の外では基本的に金の月が存在しないので、〈波動〉が届かずにマナが「疎」となります。天候操作につぎ込んでいたCPを、改宗する際に「魔法の素質」に変換しても構いません。

―次元の欠片―

 失われた可能性、ありえざる存在、それら全てが寄り集まった、無数の世界のなり損ない――次元の断片です。神々の存在により多元化を起こしにくいルナルにおいて、次元分岐を生み出さない程度の些細な分岐の可能性は、全てこの断片的な異歴史になり果てます。次元の欠片の1つ1つは非常に短い時間と狭い範囲しか持たず、発生の可能性を引き起こした焦点を離れると途端に現実感が失われます。例えるならば、1回限りの単発シナリオに近い感触の世界でしょう。《霊魂召喚》で召喚される霊魂の故郷も、往々にしてこのような世界の切れ端なのかもしれません。
 その性質上この世界に神々(など)が現れる事はありませんが、シャストア神と〈悪魔〉皇帝だけは、なぜかこの世界に(気紛れな)干渉を行う事が可能です。

―その他の異歴史―

 他にも様々な歴史の分岐点から、様々な異歴史が生まれているでしょう。GMはそのような異歴史を設定して、PCを放り込んでも構いません。長期キャンペーンによりオフィシャル設定と激しいずれが生じたようなゲーム世界も、このような異歴史に含まれます。場合によっては、他の異歴史を抹殺するための刺客として無数のゴーレムを送り出している事もあるかもしれません(笑)。
 ちなみに、八大神や元素神の長クラスの上位存在は異歴史の自分自身とある程度存在が重なっており、異歴史間の“距離”に従って物事を伝え聞く事ができます。


#海の神秘#(難易度:並〜難)

*パーティ構成
 基本的に自由。水中のみで完結する冒険でない限り、ディワンを除く水中種族はPCとして使えない。

*特殊ルール
 水中行動については「ベーシック」P122〜123の「泳ぐ」を参照。ただし水中活動用の個人用魔法装置があれば、《水中呼吸》《水泳》の影響下にあるとして行動できる。
 また、以下の水中種族を(基本的にNPCとして)使用可能。

マーマン(10CP)
「水中呼吸」(空中でも呼吸可能、10CP)
「水中行動」(10CP)
「高速泳法1レベル」(移動力2倍、10CP)
「耐圧」(100気圧まで、10CP)
「暗視」(10CP)
「強靭な尾」(「叩き/振り+2」ダメージ、攻撃は敏捷力か〈格闘〉で判定、15CP)
地上ではほとんど動けない(「片脚喪失」相当、−25CP)
「依存/水」(1日以上離れると1時間に1点HPにダメージ、−15CP)
「義務感/部族」(−5CP)
「義務感/水中の自然」(−10CP)

 比較的穏やかな海を住処とする、上半身が人間、下半身が魚の姿をした、彷徨いの月、または赤の月を信仰する種族です。空気呼吸が可能なものの、ディワンとは違って陸上ではほとんど行動できないため、陸の種族との付き合いはほとんどありません。やはりディワンとは違い、大きな集落を作る事はなく、数十人〜数百人の部族単位で岩場や海藻の塊、海底遺跡を住まいとして、農耕や漁撈で生計を立てています。精神面では比較的人間に近く、コミュニケーションで不自由する事はあまりありません。娯楽としては歌と音楽を好み、「音楽能力」「美声」の持ち主も大勢います。
 マーマンは槍や短剣、水中用の弓(水中では射程はガリキシャと同じ)を武器として、海獣の革を使ったヘビーレザーを身に帯びます(海竜から取った鱗をスケイルアーマーにする事もあります)。あまり好戦的な種族ではありませんが、その分敵と見なしたら容赦も慈悲も与えません。マーマンはしばしば、大型の海の生物を飼い馴らして移動や戦闘に用います。
 マーマンにはしばしば、彷徨いの月からの[贈り物]として[漣(さざなみ)]を行使する者が生まれます。[漣]は、音か精神に関わる妖術として扱い、精度レベルに費やすCPを「精神/難」扱いとして、パワーレベルの半分(端数切上げ)のエネルギーを消費する事にします。
 紫の群島で人間と付き合いのある者には赤の月の信者が多く、主にリャノやその協力神を信仰しています。赤の月の信者のマーマンが[漣]を持つには、「特殊な背景」に10CP以上が必要です。

・ボーナス技能
 〈楽器/種別〉〈歌唱〉に+1のボーナスを受けます。この種族ボーナスは、赤の月信仰による信仰ボーナスとは重複しません。

・独自の技能
〈暴走〉(精神/難)
 ラグアツ・ミュルーンの同名の技能と同じものです。マーマンの軍用獣が〈暴走〉している時には、それを制御しようとする動物系呪文に対して知力+5で抵抗します。

深海種(±0CP、合計10CP)
「耐圧」(影響を無視、+5CP)
「超音波聴覚」(10CP)
「ソナー」(15CP)
「瞳孔反応」(5CP)
 ウィザードの「猫の瞳」と同じ効果です。
「嫌気性」(−35CP、「水中呼吸」「依存/水」買い戻し分も含む)
 空気を呼吸できず、水中から空気中に放り出されると「溺れた」と見なします。

 深海に住むマーマンです。浅い海の同族に増して閉鎖的で、同族以外と付き合う事はほとんどなく、領域への侵入者には無警告で攻撃を仕掛けます。

海エルファ(+15CP、合計30CP)
「水中呼吸」(空中でも呼吸可能、10CP)
「水中行動」(10CP)
「耐圧」(100気圧まで、10CP)
「暗視」(10CP)
陸上の移動力−2、〈跳躍〉不可(−10CP)
「依存/水」(1日以上離れると1時間に1点HPにダメージ、−15CP)

 深海の平原に住む、〈球〉の思想を奉じるエルファ、別名〈海の同朋(ハウ・アドルラ)〉です。ディワンと同様に陸上では動きが鈍くなるため、陸の同朋との交渉もできるだけ海辺で済ませます。もちろん、最大の敵は海ゲルーシャです。
 海エルファ用の追加能力を付加する事で、外見形状をあまり変えずに水中版種族を作る事が可能です(海に沈んだ都市の海底人間とか、海を荒らし回る海ゴブリンとか)。

*シナリオ展開
 まず考えなくてはいけないのは、水中呼吸と水中移動を満たす手段(できれば長時間持続する魔法装置)を用意できる相手がなくては、そもそも水中を冒険できないという事です。ウィザード(できれば魔術師団所属)、政府関係者、金持ちの好事家、魔法装置のレンタル屋などをシナリオに絡ませる必要があるでしょう。
 シナリオの内容は、遺跡探索なり何でも屋なり逃亡者の追撃なりミュルーンの笑い話に出る伝説の海獣〈黄金の流浪者〉(笑)を捕獲するなり、想像力の及ぶ限り無数の内容がありえます。「ジェネレーション」の2巻目やリプレイ四姉妹編第3部も、あれこれと参考になるかもしれません。


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