◇新大陸通信・06号◇


 アルフレイム大陸の魔動列車関係の二次創作のうち、列車そのもの以外についてです。


◇アルフレイム大陸の鉄道駅の設備

 魔動列車の駅について、ありそうな設備を列記してみます。
 テラスティア大陸に多い(というか多くなった)魔航船の空港の描写にも関係あるかもしれません。

 
・駅の立地
 鉄道駅は、魔動機文明の中期までにできた街ならその外側に沿った場所に、後期以降にできた街ならその内側にある事が多いです(魔動機文明の後期に拡張され、〈大破局〉でも被害が小さければ、旧市街と新市街の境界線辺りに立地します)。都市計画で中まで乗り入れる線を作る、地形の都合で近くに駅を作れなかったなど、例外は多々あります。大きな街なら複数の駅があり、方面別や鉄道会社別に使い分けています。
 大都市以外では、できるだけ直線を走り、複数の街や村から使いやすい場所に設置している事が多いです。
 人族の集落から隔絶している場合でも、水の補給地点や列車の行き違いを行う場所などに、駅や信号場を設ける事があります。鉄道駅から周辺の開拓が進み、新たな集落の中心になる事もあります。
  「え、えーと、駅で待つとは言ってたけど、駅のどこで待てばいいんだろ?」
  ――キングスフォールグランドターミナル駅で迷う冒険者――

・駅前
 駅の正面は広場になっており、大きな街路や街道へ接続する道につながっており、馬車(辻馬車、駅馬車)や魔動車、路面列車へ乗り換える事もできます。
 小さな駅の場合、駅前の広場も小さく、極端な場合は最寄りの集落につながる一本道しかない事もあります。列車の行き違いや水の補給のためだけにある信号所や、エルフやメリアの集落しか近場にない駅などだと、道すらない場合もあるかもしれません。
  「いやあ、村に行こうとして深夜に降りた時の絶望感」
  「真語魔法を覚えるか、魔動機師になるか、ティダンに入信しろよ」
  ――行商人と口の悪い村人――

・入口
 駅に入るとホールがあり、切符売り場、改札、その他の施設があります。
 ですが、そこまで揃っているのは大きな駅だけです。小さな駅では切符売り場と改札を兼ねた駅員用の小屋だったり、極端な場合にはただの線路沿いの空き地だったりします。
  “3775km駅”
  ――ドーデン地方を遠く離れた森の中の駅、唯一の標識――

・切符売り場
 魔動機文明時代の地下鉄では自動券売機を使っていましたが、今のキングスフォール地下鉄では貨幣状のトークンを使っています。郊外鉄道や横断鉄道では、本数も乗客もそれなりなため、切符売り場で駅員が紙の切符を売っています。路面鉄道は現金で支払いです。
  切符用の紙の供給が〈大破局〉で途絶え、マギスフィア決済もアル・メナスネットワークとともに過去のものとなった。その後数年間は、復興のために移動する乗客だけを無償で乗せる時期が続いた。
  ――「切符の歴史」(『ドーデン鉄道マニアックス』299年1月号)――

・乗客案内
 よほど小さな駅でない限り、駅の到着・発車時刻表が目立つ場所にあります。本数が少なく、なおかつ規模が大きな駅では、発車案内板を駅の中に掛けて乗客を誘導しています。案内放送はありませんが、発車に合わせてベルを鳴らしたりします。
 案内に使われる文字言語は、交易共通語のみである場合が多く、一部の地域ではその地域の主要言語(おもに人間の地方語かドワーフ語)を併記している事もあります。ピクトグラムによる案内は、魔動機文明時代の末期に現れた発想であり、現代には受け継がれていません。
  6:57キングスフォール 〈ザリガニ号〉二等・三等 停車駅は表を参照
  13:46キングスフォール 〈オオカミウオ号〉二等・三等 停車駅は表を参照
  17:22キングスフォール 〈コカトリス号〉二等・三等 停車駅は表を参照
  ――無人駅の上り列車発車時刻表――

(列車のダイヤはどこまで厳密なのか)
 列車のダイヤの厳密さは、はっきり言ってしまえば「本数による」です。国際鉄道の幹線のように本数が多ければ分刻みでもおかしくありませんし、支線のダイヤも幹線に合わせて細かく設定されているでしょう。1日1本とか1週間1本とかなら、数時間遅れでもたいした実害はありません(と言い切る)。
 なお、蛮族などのアクシデントは僻地ほど高く見込んでいるため、余裕時間も多めに取っています。

・改札
 自動改札は、「トークンを入れるとバーが回る」程度のものが存在します。駅構内に入るのに切符が必要だったり不要だったり、地方によって違いはありますが、ドーデン地方では近距離路線用の有人改札があります。乗客の少ない小さな駅では改札がなく、車掌が切符を売ったり回収したりする場合もあります。
 鉄道遺跡には、切符やマギスフィアのデータを照合してゲートを開く自動改札も時折ありますが、そもそも必要な切符やデータが入手できずに、他の道を探すか強行突破を強いられる例もしばしばです。
  「この『がちゃこん』という機械感が、地下鉄の醍醐味なんだよね」
  「よくわかんない」
  ――鉄道好きのルーンフォークと森育ちのエルフ――

・乗客用施設
  待合室(大きな駅には一等客用の特等室もあります)
  売店(携帯食、飲み物、長距離旅行用の雑貨、ガイドブックなど)
  食堂(地元の名物を取り揃えています)
  宿屋(長距離列車を乗り通すのは体力にこたえるので、身体の弱い人は途中で宿を取ります。本数が少ない路線(1日に数本とか、特定の曜日だけ運行とか)を乗り継ぐ休憩用にも使われます)
  神殿(ストラスフォードなど。診療所も兼ねたり)
  浴場(大規模な駅で使う魔動機関の冷却水でお湯を作ります)
  冒険者ギルド支部(鉄道会社が依頼を出します)
 などがあります。キングスフォール/グランドターミナル駅やゴケルブルグ/中央広場前駅のような大きな駅では一通りそろっていますが、小さな駅では待合室があれば上々です。
 地下鉄の駅に付属する乗客用施設は売店くらいですが、大きな駅は地下街(ドワーフやレプラカーンの街)につながっています。
  「キングスレイ名物ストラスフォードまんじゅう」
  「『アノス名物ファリスまんじゅう』みたいなノリで言われてもないから」
  ――列車に乗る前におみやげを買おうとするプレイヤーと、突っ込む別のプレイヤー――

・管理用施設
 信号の管理所や線路のポイントの切替所、列車との通信施設(腕木式信号や手旗信号、光信号、まれに魔動機術通信)、駅員や乗務員の休息施設、魔動機で使用する屑魔晶石の倉庫、車両への給水施設、車庫、工場などがあります。
  「一定距離を走ると機関車は交代する。給水と魔動機関の冷却が必要だからね」
  老紳士は窓の外を見やりながら、コンパートメントにいる少年に聞かせるように言った。
  ――『老紳士と少年による“奈落の壁”への旅』1巻――
    という描写があるが、現代では過熱するほどの高速運転は基本的に行わず、魔動機関に余裕のある運転をしている場合が多い。機関車の交換はほとんどの場合、給水の都合による。
    ――「文学作品における鉄道(下)」(『ドーデン鉄道マニアックス』297年7月号)――

・プラットホーム
 地下鉄では高めのプラットホームがありますが、それ以外の鉄道ではプラットホームが低く、車体に付いたステップで乗り降りします。
 通常のプラットホームは列車より長いですが、そもそもプラットホームが無かったり、車両の出入口部分だけの小さなプラットホームしかなかったりもします。
  「フラッグストップ、知ってますか? 通過予定時刻の5分前までに、ここのポールの旗を上げてください」
  ――辺境の村の少女――

・貨物施設
 一般の鉄道では駅に貨物施設もあり、旅客と同等に重要です(特に、水運に頼れない立地では)。倉庫とか厩舎とか波止場とかがあり、馬車や船との荷物の積み替えも行われます。
  「ついでに言っとくけど、『駅』っていうのは、鉄道ができる前は『伝令の馬を乗り換えできる宿場』を指していたんだよ」
  「ふーん」
  ――ゲームマスターの雑学と、適当に流すプレイヤー――

・操車場
 専用貨物列車ではない一般の貨物は、貨車単位で送り先が指定され、大まかな行先ごとに編成されます。そうして送り出された貨車を方面ごとに組み替える拠点が操車場です。操車場は路線の分岐点や大都市の近くにあり、拠点間貨物列車やローカル貨物列車をばらしたり組んだりしています。
  「そして突き放した貨車に挟まれて」
  「そこまでリアルにやると痛々しいので置いといてね?」
  ――貨車も好きなプレイヤーと早く場面転換したいゲームマスター――

・駅の防御施設
 駅が街の中へ入る場合、街壁には門があります。列車が走る時だけ門を開けて出入りするか、昼間は常時門が開いて夜間だけ開け閉めするかは、土地により異なります。
 駅が街の外にある場合、施設部分が柵や壁で囲まれています。だいたいその地域の平均的な農村の防備と同じくらいです。
  人里を離れた地域において、駅、もしくは魔動機文明時代の駅跡が、集落の起源となる事はそれほど珍しくない。
  ――「駅の防御について」(『ドーデン鉄道マニアックス』237年4月号)――


◇出発進行!

 魔動列車の駅を離れて、線路に沿ってどこまでも。

 
・線路
 ドーデン横断鉄道をはじめとする国際鉄道の幹線や主要な支線は複線、それ以外の路線は単線です(単線では、列車は交換施設で行き違いします)。大きめの駅では、追い抜きができるように待避線が、貨物扱いや車両の留置に使うために側線があります。
 路面列車は本数が多い路線では複線、本数が少なければ単線ですが、道路の幅にも左右されます。地下鉄は複線ですが、魔動機文明時代の路線の一部は複々線だったという伝説があります。
 (路面列車以外の)線路の横断は、踏切や立体交差を使います。魔動機文明時代に設置されて自動で警報や遮断機を動かしてくれる踏切もありますが、〈大破局〉以後に設置された踏切は、有人踏切でなければ警報もない危険な物です。
  「くっ、小癪な冒険者どもよ。見ていろよ必ず」
  フアーン! フアーン!! フアアアアアーン!!!!
  ――妖精魔法【エントラップ】で拘束状態のドレイクと、背後から迫る列車――

(線路の信号保安システム)
 各地の分岐点などのポイントに、信号士がいます。信号士はキングスレイ鉄鋼共和国の鉄道管理部からまとめて派遣され、鉄道のダイヤ管理を一元的に行っています。鉄道管理部の最寄りの支部からダイヤが毎日渡されます。通信は手旗信号や光信号で行います。孤立した拠点に単独〜少人数で駐在する手旗信号士は高レベルの魔動機師+何らかの戦士系技能の持ち主です。
 以上、『呪いと祝福の大地』における設定より。
 ここから二次創作。
 一般鉄道ではダイヤを正確に測るため、現代で最高の精度を誇る機械式時計を製造、各地へ配布して、定期的に回収して鉄道管理部支部で時刻合わせを行います。駅の時刻表では各地の標準時で書いてありますが、運行上はドーデン地方が属するアルフレイム西部標準時で統一しています。
 その他の鉄道でも、通常は似たような管理をしていますが、森林鉄道や鉱山鉄道ではそれほど速度が出ないため、目視で監視をしています。生きている魔動機通信を使う路線や、魔動機術による自動信号を使う路線もあります。
 自動列車保安装置は、地下鉄でのみ見られます。現実世界では初歩的な、打子式ATSに属するタイプです。

・国境
 プレイ上はあまり意識する必要はありませんが、国境では(停車中、あるいは走行中に)検問があります。停車中に検問を行う場合、国境上に駅がない、または直接国境を接していない(地域間が離れている)なら、国境に近い駅で検問を行います。検問は同盟国同士だと緩く、疎遠な国同士だと厳重な傾向があります。ドーデン地方の鉄道では(沿線諸国が同盟関係にあるため)通常は簡単な走行中の検問のみです。冒険者の所持品については、それが個人用・パーティ用資産と認められれば、無税扱いになります。
  「鉄道の検問で困った事ねえ……魔動機文明時代のきわどい絵物語を調べられたくらいかな」
  ――冒険者(匿名希望)――

(列車内の法律)
 船や魔航船は、どこの国の領域でもない地域では、所属国の法律に従います。
 鉄道は、整備された街道のように見なして、列車は線路を敷設した保有国の法律に従います。国同士が国境を接しない地方間では、通常は中間地点辺りに線路の保有国の境界地点があります。

・廃駅
 〈大破局〉で廃線になった駅や、復興後に放棄された駅、需要の減少で廃止された駅などです。たいていの場合はそのまま朽ちるに任されるのですが、住居、宿屋、役所、馬車駅などに転用される場合もあります。
  「廃駅か……水場が生きていればいいんだけど」
  ――鉄道の廃線沿いを歩く探し屋――

・廃線
 新線の開通や需要の減少、災害や〈大破局〉で利用されなくなった線路の跡です。レールは余裕があれば取り除かれますが、枕木やバラストはそのまま残されます。橋やトンネルが残るため道路として再利用されたり、そのまま放置されたり、蛮族が間道として利用したりします。
  「トンネル! 入口で野営しよう!」
  「雨風をしのげるからなのか、暗いのが怖いのか、どっちかな?」
  ――魔動機文明時代の路線を再開発するために旅をする冒険者パーティ――

・幽霊駅
 駅や路線に込められた思いがマナに反応して、廃駅や廃線に幻のような列車や駅舎などが現れる現象です。幻が濃密になると物理作用を及ぼし、現実に危害を加える事もありえるため、幽霊駅の発生を止める方法を見つける必要があります。
  「幽霊駅や幽霊列車を生み出す魔動機関――やはり危険なのでは?」
  「魔動機関は危険のない安全なエネルギー。いいね?」
  「アッハイ」
  ――解決に向かった冒険者達――

・地下鉄迷宮
 アルフレイム大陸各地の都市にあった地下鉄は、〈大破局〉で蛮族の侵略や天変地異の影響を受けて、今ではキングスフォールの、それも巨大な路線網のうちのごく一部が機能しているだけです。存続している都市の地下や、廃墟の中の地下鉄網は、その後の崩落、浸水や浸食、“魔剣の迷宮”や“奈落の魔域”の融合もあり、蛮族、死んだ乗客のアンデッド、住み着いた動物や幻獣、命令を失った魔動機、地下街に取り残された人族などが住まう、巨大なダンジョンとなっています。迷宮の一部では、生き残った地下鉄の列車が、今も迷宮の住人を運んでいるといいます。
  「L線は河底トンネルが水没、M線はレブナントが出没、N線は本線が埋まってるけど、支線の乗換駅が生きていれば……」
  ――地下鉄迷宮を探索するドワーフの冒険者――

・列車の墓場
 〈大破局〉で鉄道網が破壊された際に、大規模な駅や車庫にそのまま残された大量の車両は、“列車の墓場”と呼ばれるようになりました。鉄道会社や冒険者、遺跡ギルドなどが貴重な物品を持ち去っている事が多いですが、それでもアルフレイム大陸の各地にはまだ、自然の中に埋もれる未発見の“列車の墓場”が点在しているでしょう。
  「魔動列車! 失われた魔動機術! 文明の再生!」
  「魔動機関! マナチャージクリスタル! 金目の物!」
  「「〜〜〜〜っ!」」
  「「どうどうどうどう」」
  ――未探索の“列車の墓場”を発見した二組の冒険者パーティ――

・鉄道と街道
 鉄道ができると、並行する街道は需要が減ります。宿場町や街道沿いの宿屋が廃れたり、ひどい場合は街道が放棄されてアルフレイムの大自然に飲み込まれたりします。ただし、鉄道で輸送できない大型の貨物を運ぶために生き残る場合や、鉄道駅ができなかった集落への交通路として生き残る場合もあります。
 鉄道路線から分岐する街道は、そちらに沿っても鉄道ができたりしない限り、鉄道経由で往来する交通量が増えて栄えます。鉄道駅の前へ向かうように付け替えられる事もあります。
  「お金が乏しいから街道を歩かない?」
  「食費と宿泊費で鉄道運賃を余裕で上回るから。野宿して狩りもするなら話は別だけど」
  ――田舎の村で護衛任務を終えて、これからどうするか考える冒険者達――

(何で蛮族は鉄道を破壊しないのか)
 「何で蛮族は街道を破壊しないのか」と似たようなものです。実際のところ、下位蛮族でも、人族の通り道を破壊すると人族に報復されるか来なくなって別の所へ行かれるのは分かるわけで、それくらいなら鉄道沿いで列車強盗を働く機会を狙います(通行妨害は列車が通りかかる直前に行うので、切り倒した木でふさいだりする、短時間でできる大雑把な手段が主流です。軌道を破壊したりする時間のかかる手段は、事前に発見されてしまう危険が大きいためあまり行えません)。上位蛮族なら、計画的に人族の勢力を殲滅するか、あるいは人族を利用する方を選ぶので、単純な破壊行為はそれが好きでもない限りやらないでしょう。もちろん人族側も蛮族への対抗手段を取っており、「人族の領域から離れる時は昼間に移動して夜間は動かない」「できるだけ大きな集団で移動する」「集団の前方に斥候を出す」「鉄道沿いに要塞化した駅を設ける」などしています。
 なお、そういう理屈の通じない動物や幻獣などは、高架橋、トンネル、防御壁、堀などで回避するか、軍隊や冒険者が徹底的に駆除するかしていますが、〈大破局〉以降に手に負えなくなって放棄されている路線もままあります。
  6:00 ラージャハ 〈ブルライトの車輪号〉一等・二等 月曜・木曜
  6:10 ラージャハ 〈流れる白砂号〉一等・二等・三等 毎日
  6:20 ラージャハ 〈丘を渡る月輪号〉一等・二等・三等 火曜・木曜・土曜
  6:30 ラージャハ 〈白い液体号〉貨物 毎日
  6:40 ラージャハ 〈青い山脈号〉貨物 日曜・水曜
  6:50 ラージャハ 〈枯野号〉貨物 金曜
  ☆大幅遅延時は前駅で夜間停泊します。
  ――ブルライト地方へ向かう鉄道駅の時刻表(一日の前半分)――

・鉄道と港
 鉄道と河川交通は、補完より競合する事が多いため、お互いにあまりつながりはありません。鉄道を渡せないほど大きな川や湖の場合は、鉄道連絡船が客車や貨車を運ぶ事もあります。
 鉄道と海上交通は、特に貨物ではつながりがあります。線路が埠頭まで延びて、直接積み替えられるようになっているのもよく見られます。
  「という事は、ハーヴェスの鉄道駅は港にもできるのかな?」
  「川で外航船の港につながればいいかもしれないし、この際新しい港を作るという手もある」
  ――鉄道建設予定ルートを探索する冒険者達――

・鉄道と空港
 アルフレイム大陸では魔航船の数が少なく、鉄道と空港がお互いにあまり関係のない立地をしています。空港は市街地からやや離れた所にあるのが普通で、一般人が利用するような事は滅多にありません(感覚としては、第一次大戦より前の飛行船全盛期くらいでしょうか。テラスティアだと大戦間から第二次大戦後すぐくらいの感覚)。魔航船で運ばれる物品は貴重なおかつ軽量な物が基本であり、列車に積み替えるほどの需要はないでしょう。キングスフォールでは連絡線が空港まで来ていますが、定期列車は旅客・貨物ともに1日1〜2本程度です。
  「行こう! テラスティア大陸へ!」
  ――新たな空の冒険へ旅立つ冒険者――

・オーバーリフト要塞を通過できる両数
 2つのリフトの片方だけ使うと1時間に5両、同時に上げ下げに使うと30分に5両。
 つまり、常時両方を上げ下げに使い、1日に1時間をメンテナンスにあてると、1日に230両が通過できます。
 そのため、機関車や事業用車(車掌車など)はオーバーリフト要塞を通さず、客車または貨車のみを上げ下ろしする運用が普通になります。
 この限界を超えるために、断崖トンネル計画や第二リフト計画があるといいますが、その実態は今のところ謎に包まれています。


◇鉄道保有・運営組織

 アルフレイム各地の国鉄とか私鉄とかです。キングスレイとその周辺では線路の保有と列車の運行を分離(上下分離)したうえで、路線もオープンアクセスにされて複数の会社が列車を走らせている例も多いですが、乗り換えても運賃は通算して処理されます。

 
・ドーデン東方鉄道
 キングスフォールからゴケルブルグまでを結ぶ列車をはじめとした、東方面の幹線や支線に多数の列車を走らせている会社で、鉄道ギルドとキングスレイ、マグノア、ゴケルブルグの各政府が株のほとんどを所有しています。〈大破局〉前にあった鉄道会社を混乱期に国有化したのがはじまりで、旅客や貨物のサービスは平均的なものです。車両は多いですがバリエーションは少なく、マニアの注目はあまり受けていません。列車の運行が専門の会社で、線路の方は各国の政府や現地の鉄道会社が保有しています。

・マグノア直通鉄道
 キングスフォールから、横断鉄道より北側の小さな路線を走り、マグノア王都に向かう路線です。路線の規格が低いため、旅客列車は横断鉄道経由より遅く、途中の小駅の需要を拾って走っています。

・スィーク海鉄道
 キングスフォールからグランティンを経由してアルショニアに向かう路線の列車を走らせています。キングスレイ政府だけでなく、キングスフォールやグランティンの地方政府も株を持ち、北方ファング鉄道などで近郊列車を走らせています。車両の走行性能の良さが高めの速度に反映されており、急行が同じ路線を走るほかの会社の列車の急行を追い抜いたりします。

・ヒスドゥール縦貫鉄道
 キングスフォールからヒスダリアへ、スルーザファングトンネルへと向かう路線の列車を走らせています。多数伸びる支線からは、おもに鉱物などの資材を運ぶ貨物列車がヒスダリアへ、加工品を運ぶ貨物列車がキングスフォールへ向かっています。貨物列車が主体であるため、旅客列車のサービスは弱く、三等車の居心地の悪さは評判です。

・南西沿岸鉄道
 キングスフォールから南西方面に向かう路線、おもに南方国際鉄道の国内区間とその支線の運行会社です。他の地方との輸出入の大半を担う貨物列車の合間を縫うように、高速化した旅客列車を走らせています。

・キングスレイ鉄鋼共和国国防省軍用鉄道局
 キングスレイ政府の組織で、国防省に所属していますが、管理部門以外は鉄道卿の私設軍の寄り集まりです。軍用列車を走らせるほか、装甲車や魔動機で運行を妨害する蛮族や幻獣を排除しています。基地や要塞へ行く支線を独自に保有していますが、国内の移動は基本的に鉄道ギルドの路線を走っています。

・キングスフォール市鉄道公社
 環城線、首都東西線、国際鉄道(ガグホーゲン〜ホルン支線を含む)を除く、キングスフォールの地下鉄、路面列車、地方鉄道を保有・運営しています(自由に設定しましょう)。〈大破局〉前の路線網のうち生き残った部分を基礎にして、しかしまだ半分も復旧できていません。上下分離はしておらず、ダイヤの管理も含めて鉄道公社が独自に行っています。
 なお公社ではありますが、キングスフォール市政府が51%、鉄道卿が合計で49%の資本を持つ官民合同会社です。キングスレイ政府ではなくキングスフォール市が独自にやりたい鉄道研究は、鉄道公社の路線で行われます。

・モートフェント南西海岸線
 モートフェント内円部の商業地帯を起点にして、アルフェントとベラフェント双方の乗換駅の小モートフェントを経由してカイミット漁港の近くをかすめ、海沿いに南西の村々をつないで延びる地方鉄道です。スティックマンとは気風の違う田舎の鮮魚売りの女性達がキングスフォールに魚を運ぶのにも利用されており、朝の市街行きには鮮魚列車もあります。

・羊毛街道線
 トライネヤ駅からナムハラーン(マトックブッチャー)駅を経由して羊毛街道に沿って進む地方鉄道です。おもな輸送は貨物で、羊毛はトライネヤへ、羊肉はマトックブッチャーの現地消費やグランドターミナルへ回します。

・南北縦断地下鉄
 アウンガルテン〜中央平和公園〜ゾルウォンドを結ぶ、数少ない地下鉄の生き残りです。地下を走行し、複数の駅を持ちます。

・グランドターミナル駅区路面列車
 グランドターミナルと周辺施設を結ぶ路面列車です。グランドターミナルは広いので、路面列車は駅周辺に複数の停留所を持ちます。ガグホーゲン駅区やトライネヤ駅区の路面列車とも接続していますが、末端部は本数が非常に少なく、直通運転もないため、駅区の中心部同士の移動には適していません。

・北マグノア鉄道
 マグノア草原国の北部の路線を所有している会社で、私鉄ですが、マグノア政府が一部の株を持っています。自社の列車だけでなく、ドーデン横断鉄道を運行しているドーデン東方鉄道や、その他の隣接する地域の鉄道会社の列車とも、相互に乗り入れています(乗り入れさせることで線路使用料を受け取り、金額のランクによりダイヤの優先権が異なります)。フレジア森林国への延長を構想してフレジア政府と交渉していますが、いまだに計画は決まっていません。

・東ヒスドゥール鉄道
 キングスレイ北東部からマグノア北西部にかけて、支線クラスの路線をいくつか保有しつつ、おもに鉱石を輸送する貨物列車を走らせています。ヒスダリアからアンダファングトンネル方面へ直通する短絡線を保有しているため、受け取る線路使用料もかなりの額に上ります。

・ノーザンファング・ホイール
 ノーザンファング連山の旅客列車を走らせている会社です。保有している路線はいくつかの旅客駅とその付近だけで、ほかの鉄道(おもに貨物専用)の路線上を走っています。かつてはそれぞれの鉄道会社が別々に旅客列車を走らせていましたが、複雑な競合を避けるのと、本業である貨物輸送に力を注ぐために、分離と統合されました。

・ゴケルブルグ国有鉄道
 ゴケルブルグ大公国鉄道部が直接保有・運営している鉄道で、国内のドーデン横断鉄道や支線に列車を走らせています。工場は車両の改造を得意としており、危険な地域を走破するための武装列車シリーズが色々な意味で有名です。

・アルショニレール
 アルショニ島にあるアルショニア女王国の国鉄で、線路の保有(今のところ、王都アースラム一帯だけですが)と列車の運営を一体で行っています。

・スルーザファングリンク
 スルーザファングトンネルを運営する会社で、過半数の株を鉄道ギルドが所有しています。トンネルを通行する列車の運行管理を行っており、線路使用料を受け取っています。

・極星急行
 キングスフォールとコルガナ地方を結ぶ北方ファング鉄道で運行している旅客列車会社です。長距離を走るための乗り心地の良い車両と乗客サービスの良さで知られていますが、コルガナ地方では貨物列車が鉄道の主体であり、また魔神の襲撃もあるため運行が遅れがちです。

・コルガナマナレール
 ノーザンファング連山のコルガナ地方側から採掘される魔晶石やマナタイトを、主にドーデン地方へ輸出する鉄道です。鉱山へ向かう支線を直接保有して、北方ファング鉄道へ自社の貨物列車を向かわせています。

・北西コルガナ鉄道
 コルガナ地方北西部の鉄道で、沿線の諸都市と鉄道ギルドが設立して、鉄道ギルドの武装保線作業員を多数抱えています。魔神が忌避する軌道の敷設方法を開発しており、運転上の危険を大幅に減らしています。貨物列車が多く、旅客列車は1日2本運転が基本です。〈奈落の大侵蝕〉にあたっては、軌道の防衛と救援物資の送り込みに専念していました。

・ラージャハ帝国鉄道
 ブルライト地方北部、ラージャハ帝国領内に開通したばかりの鉄道です。通商省が路線を保有していますが、運営は鉄道ギルドの支援を受けながらいくつかの会社が行っています。首都から北へ延びる路線1本しか今のところありませんが、ハーヴェスへ行く路線を建設中です。

・オーラントレック・トレイルズ
 キングスフォールからアルフレイム大陸の西岸を伝い、南方国際鉄道でラージャハまで列車を直通させている会社です。会社形態ですが、株のほとんどは鉄道ギルド(を通じてキングスレイ政府)とストラスフォード神殿、そして冒険者ギルドが持っています。南へ向かう鉄道の再開通を使命として300年の歴史を持ち、未開通部分をつなぐために運用していた隊商、船団、魔航船団を鉄道の補完として運用し続けています。

・ハールーン市街馬車鉄道
 ハールーンの首都の市内を走る馬車鉄道です。市政府の都市計画部が路線を整備しており、許可を受けた組合や商会が馬車鉄道を走らせています。ダイヤはあってないようなもので、郊外に多い単線で出くわすと譲るの譲らないので戦闘になる事もあります。

・セブレイ幽霊鉄道
 セブレイの森林の中に出没する幽霊列車です。幽霊列車は人族に好意的なようで、迷子になった人族の前に現れて、安全な場所まで移動させます。蛮族には事情を問わず敵対的で、問答無用で轢殺を試みます。


『ソード・ワールド2.5』:(C)北沢慶/グループSNE/KADOKAWA

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