◇新大陸通信・15号◇


 ケルディオン大陸の、またまた別の一例です。創造するの楽しい。


☆ケルディオン大陸の習作

 
◇概要

 “帰らずの大地”――あるいは“暗黒の地”“魔術と銃の国”“百万の翼”“神族の最後の足跡”――ケルディオン大陸は、アルフレイム大陸の南にあり、やや小さめの大陸です。北西から南東に伸びるような形をしており、ジャガーやトゥーカン(オオハシ)、アントイーター(アリクイ)、絡み合うゲッコー(ヤモリ)など様々な動物に例えられています。突出的に険しい山が一部にありますが、全体的になだらかな地形をしています。神紀文明時代より前には特有の生態系があったようですが、人族の開拓や動植物の持ち込みにより絶滅した生物も多かったようです。現在も大陸に独特な鳥が多く、騎乗用や食用などに飼われている種類もあります。
 北西には共和制テクニオン、南東にはソーサリア王権という大国があり、人族の領域のほぼ全土がどちらかの領土になっていますが、幻獣や蛮族が生息する領域もあちこちにあります。人族の居住地は防衛を非常に重視して作られており、街に相当する「城市(シティ)」は「坊(ブース)」という防衛単位にさらに区切られています(壁や堀で物理的に区切られていなくても、概念的に区切られます)。村に相当するのは「社区(コミュニティ)」で、第一の剣の神々を祀った集会所が中心になります。社会組織の制約が全体的に厳しめで、統制に適応できない者の居場所はほぼありません。その限られた例外の一つが冒険者です。

 
◇種族など

・人間
 比率としては、二つの国のどちらにも多数派として住んでいます。魔動機術はテクニオンに、真語魔法や操霊魔法はソーサリアに使用者が圧倒的に偏っていたのですが、現在ではお互いにある程度伝わっています。風習はテクニオンでは魔動機文明やドワーフ、レプラカーンなどの文化の影響が強く、ソーサリアでは魔法文明やエルフ、メリアなどの文化の影響が強くなっています。テクニオンでは実践主義で技術を重んじて、ソーサリアでは伝統知識を重視する点と動植物に親しむ点が同居しています。どちらにもなじめない人間は、辺境で狩猟採集生活を送ったり、“離れ島”のような国家に属さない場所に行ったりします。魔動機文明時代に人口が過剰だったせいか、テクニオンでは肉食は好まれず、乳製品や豆で蛋白質を補い香辛料を多用、また上流階層では酒も好みません。野菜は栽培されたものを好み、野草や茸は食べません。ソーサリアでは家畜の肉より家禽や養殖魚、あるいは野獣や野鳥や天然魚の肉の方が好まれ、また野草やハーブを多用します。
 地方語は、テクニオンと北西の“離れ島”ではテクニオン語、ソーサリアと飛地状の“忌み地”ではソーサリア語です。ソーサリア語は魔法文明時代の住民の言語から大きく変わらず、テクニオン語は魔動機文明時代に移民の言語の影響を大きく受けていますので、元は同じ系統と見られていますが、文法や単語に共通点はあまりありません。

・エルフ
 ケルディオンのエルフは、ほとんどがソーサリアに住んでおり、テクニオンには魔動機文明時代に海外から移住してきたごく少数の子孫と“忌み地”の住民しかいません。魔法が重視されるなか、伝統的に魔動機術は推奨されていませんが、ガンへの適性が高いため、銃使いへの道を進むエルフもたまにいます。ソーサリアのエルフは人間などの異種族とも交流を持って、魔法だけでなく水利技術を中心とした幅広い技能に興味を抱いています。テクニオンでは魔法文明時代の“高貴なエルフ”への反感が尾を引いて、イメージがほぼ「毒を好む陰謀家の怪物」です。蒸留技術によるアルコール度数の高い酒――アクアビットやリキュールなどは、ケルディオンでは「エルフの酒」として知られています。また、料理は素材の味を重視するため、焚火で時間をかけて焼いた肉や野菜――アサードに相当する調理法が盛んですが、テクニオンの人間には「味気ない」と感じられるようです。ほかの大陸のエルフと同じく魚もよく食べますし、ケルディオン独自の薬草を煮出した薬草茶もエルフ料理で重要です。

・ドワーフ
 ケルディオンのドワーフは、大半がテクニオンにいて、一部の魔法文明以来の伝統を継承するドワーフがソーサリアにいます。テクニオンでは建国初期からドワーフが政府の中枢に関与し続けて、魔動機文明時代には魔動機の製造や研究に関与するだけでなく、魔動機工場や魔動機農場などの現場にも出ていました。ドワーフ的な伝統も大事にされており、大評議会議長親衛隊であるヴァリャーギ、軍の軽装機動兵であるベルセルク、吟遊詩人と妖精使いを兼ねるスカルドなどを抱えています。ソーサリアのドワーフは伝統的な地下生活を送りつつ、武具や農具、機械などを種族社会の外へ輸出しています。防衛戦闘(待ち伏せや遮蔽やクロスボウを多用)や地底食(アナグマやマッシュルームなど)も伝統の一つです。ケルディオンのドワーフは材料の風味を活かした酒を好み、あらゆる穀物、芋、果物、糖分を酒にしています。

・タビット
 タビットはどちらの国でもあまり多くありません。テクニオンでは魔動機術が盛んで、研究にも実践にも多くのタビットが入れ込んでいます。ソーサリアでは研究はおもに真語魔法と操霊魔法で、寿命の短さのためか、短期間で結果が出やすい危険な実験に手を染めやすいです。自給自足を余儀なくされるため、農業(特に野菜の栽培)に魔法を応用しているタビットもいます。

・ルーンフォーク
 ケルディオンのほとんどのルーンフォークは、テクニオンのジェネレーターで生産されたものです。テクニオンではジェネレーターの私的所有は(私兵や奴隷の量産を防ぐために)禁止されており、中央政府や地方政府などにより製造と初期教育を管理しています。ジェネレーターを隠して違法に生産されたルーンフォークもいますが、出自は巧妙に隠されています(死亡して記憶が消し飛んだ事にするのが一般的です)。“離れ島”ではテクニオンの法律は適用されないため、私有されたジェネレーターもいくつかあります。ソーサリアではジェネレーターがほとんどないため、「そういう種族が存在する」くらいしか知られていません。

・ナイトメア
 ナイトメアには魔法への適性があるため、また帝制時代の唯一の皇帝がナイトメアであったため、テクニオンでは共和制に入った頃までは迫害を受けていましたが、魔動機術への適性でもあるので、妊娠中に“穢れ”を測定できる医療システムの導入により、迫害は次第に減っていきました。それでも医療の手が及びにくい辺境を中心に、ナイトメアへの深刻な嫌悪感は抜けていません。ソーサリアでは魔法の使い手が増えた事もあり、出産にあたって神官や操霊術師を立ち会わせて母体を保護する習慣が根付き、特に人間からの深刻な迫害は受けにくくなっています。なお、ソーサリアではほとんどの公職が任期制であるため、ナイトメアが就任するための障害が減っています。

・リカント
 二つの国のどちらでも人間に次ぐ多数派で、人間よりリカントが多い城市もあります。アルフレイム大陸より人間主流の文化に馴染んでおり、肉食を好み香辛料やハーブを好まない食生活や、組み紐文字を装飾に使った儀礼用の衣装など、独自性は限られた範囲にのみ残っています。テクニオンのリカントは人間からの偏見もあり、長年にわたって単純労働者が多く、魔動機文明の恩恵をあまり受けられない立場でしたが、上流階層や技術者にもそれなりの割合で社会に参画しています。〈大破局〉以後は夜警や斥候の需要も増えました。ソーサリアではリカントは戦士の種族として名高く、軍人や武芸者によく見掛けますが、魔法は神聖魔法や妖精魔法を除いてあまり盛んではありません。

・リルドラケン
 どちらかというとソーサリアに多いですが、テクニオンにもそれなりにいます。テクニオンでは商業にはドワーフの方が関係が深く、リルドラケンは辺境や開拓地で冒険商人になっている方が多いです。魔動機師もあまりいないため、社会の中心から外れた所で共同体を作っている事も割とあります。ソーサリアではドラゴンとの関係も深く、爬虫類や鳥の飼育にも長けています。神官や妖精使いだけでなく、戦闘の補助に操霊魔法を使う魔法戦士もちらほらいます。鳥の丸焼きやトカゲの丸焼きなど、火の具合をうまく使ってジューシーに仕上げた手ごろなサイズの姿焼きが、典型的なリルドラケン料理です。

・グラスランナー
 テクニオンでは社会の組織化とともに放浪をしにくくなり、辺境に拠点を構えつつ牧畜や季節労働などで収益を得ていますが、種族の生き方を伝えるために荒野で狩猟採集生活をするキャンプを時々行います。植物の栽培に才能を見出し、農園を営んでいるグラスランナーもいます。ソーサリアでは部族を渡り歩き、狩猟採取や野外の調査任務などを請け負って生計を立てています。動物の騎獣を使って大型獣を狩ったりもします。
 グラスランナー料理はほぼ「焼くだけ」「煮るだけ」で、味付けも薄く、短時間で食べられる状態にする事しか考えていないといわれます。食べ物の許容幅は非常に広く、「人族と蛮族以外なら何でも食べる。魔神は微妙」とも冗談で言われます。

・メリア
 かつてはケルディオン全土に大勢いましたが、テクニオンでは森林の減少とともに数が減り、特に長命種は植林地や辺境の自然林にわずかに残っています。睡眠が不要なため、タフネスを要求される仕事に就かされていることも多いのですが、おしゃべり好きな本能と対立するため、そうそう雇用者の目論見通りにはいきません。妖精使いが多いことから、宝石を扱う仕事に就くメリアが多い事でも知られています。ソーサリアでは今でもメリアは多く、エルフと一緒に住んでいる例もよくあります。ただし乾燥地帯の灌木のメリアや草原の草のメリアのように、エルフと好みの違う住処を持つメリアもいます。
 また、ケルディオンのメリアは全般的に肉食が好きです。木の実や果物を肉料理に合わせてうまく仕上げる技術も有名です。

・ティエンス
 ケルディオンにはあまりいない種族で、動物と関わりのある牧畜や交易などで暮らしています。騎手だけでなく、テレパシー能力が斥候にも重宝されます。

・レプラカーン
 テクニオンでは魔動機師として働くレプラカーンが多く、また斥候として能力を使う者も多くいます。魔動機院には恐らくはラクシアでも最大のレプラカーンのコミュニティがあり、陰から城市の機能を支えています。非常に清潔好きで(整理上手であることを意味するわけではありません)、「表に出る必要がなければ」と汚れ仕事も平気で行うため、安全で快適な城市や社区を保つためには積極的に問題人物を「行方不明」にします。ソーサリアでは妖精使いと錬金術師が多く、魔動機文明時代にも非公式ルートから魔動機術をソーサリアに導入していました。現在も種族独自の通路をソーサリアとテクニオンの間に持っているといいます。普段は食べる量が少ないレプラカーンですが、家庭で出す小皿料理の味の繊細さは格別です。

・テラスティア大陸の種族
 フロウライトが魔術師や神殿に確保されたり、ヴァルキリーがごくまれに生まれて神殿で保護されたり、フィーが千年祭を控えていたり、大陸独自の種族以外はプレイグループでに同意を得られれば構いません。大陸独自の種族はケルディオンではほぼ知られていないため、蛮族と間違えられないように気を付けてください。

・蛮族
 扱いは厳しく、人族の領域では許容されても保証人が同伴しないと自由な外出もできないレベルで自由が制限されています(コボルドはややゆるいですが、単独では城市や社区の外へは出られません)。公職(議員や軍人など)への就任もできません。PCにするのはおすすめできません。

・ケルディオン大陸における冒険者
 地域により異なりますが、一部の地域を除き、政府が招集した民兵に近い扱いになります。詳しくは各国の説明をご覧ください。
 マギテック協会や魔術師ギルドに相当する組織はありますが、遺跡ギルドはありません。ドルイドは大陸内の緩いつながりはなく、開拓を重視するテクニオンのドルイドも、部族社会の一員としての意識の強いソーサリアのドルイドも、独自の思想色はあまりありません。召異魔法は“奈落の魔域”の駆除用と見なされて許容されていますが、習得していると社会的には「えー」扱いされます。

 
◇大まかな歴史ほか

 ケルディオン大陸は神紀文明時代までは人族の居住者が少なかったようで、神々の戦い末期に戦場になったところから記録が始まります。大地に飲み込まれたダルクレムを封印するためにグレンダールが溶岩を溢れさせ、その上にアステリアが草木を茂らせたといいます。表土の下は硬い岩盤が多く、地熱が高い場所も多いため、伝説の信憑性については議論が盛んです。

 伝説はさておき、魔法文明時代の古い時期にはアストレイドだけでなく狂った小神も跋扈する、ラクシアで最も危険な大陸でしたが、中期以降に外の大陸から魔法王が家臣を連れて入植できるようになりました。アルフレイム大陸での“奈落”の発生にはケルディオン大陸の魔法王も大勢関わっていたようで、そのために力を失った多くの魔法王が反逆の結果打ち倒されて、革命が先鋭的に進んだ北西部では魔術師たちは魔法王の力が保たれた“忌み地”に逃れるか南東部へ亡命、それまで小規模な勢力がまばらにしかなかった南東部では魔術師を中心にして統合されたソーサリア王権が成立しますが、北西部では部族国家が乱立しました。

 魔動機文明時代前期には、アルフレイム大陸から近い北西部では魔動機文明の受け入れが始まり、“高貴なエルフ”の保護を失った森林地帯を積極的に切り開いて農地に変えていきます。移民により人口も急増するなか、様々な理由で部族国家間の紛争も拡大して、繰り返し起こった人族の戦争や、残存していた蛮族勢力の駆逐により、部族国家は統一されて王制テクニオンに統合されました。何代かは安定していた王制ですが、王位継承争いと残存していた部族間対立が複合のうえ、内戦に突入します。最も有力だった勢力が魔術師狩りの末に“忌み地”に攻め込んで首脳部が謎の死を遂げて崩壊したのがきっかけになり、小勢力の軍人であったナイトメアが下克上で台頭して、皇帝を称して帝制テクニオンを名乗ります。帝制テクニオンは戦闘用に限らない魔動機術の研究とルーンフォークや魔動機兵の軍勢により国力を蓄え、北西部の統一を遂げました。その間の南東部では、魔術師狩りやエルフ狩りから逃れてきた亡命者を受け入れながら、真語魔法や操霊魔法などのより効率的な学習制度が作られていき、文字通りの魔法王国として徐々に発展していきます。

 ここで既に魔動機文明時代の中期に入っています。帝制テクニオンは部族を解体して、より効率的な社団を通じて支配力を強めながら、地峡を通じてアルフレイム大陸南東部への支配圏拡大をもくろんでいましたが、拡張期のエユトルゴに敗れて撤退し、皇帝はそれまで手を触れなかったケルディオン大陸南東部に手を伸ばそうとします。北西部と南東部の交流が断絶していたため、帝制テクニオンは南東部への調査団を送り出しましたが、領土を侵犯されたソーサリア王権は調査団を(魔法文明時代の作法により)斬首して死体を送り返しました。体面を潰された帝制テクニオンがソーサリアに攻め込みますが、遠征軍が長年の戦いの末に次々と壊滅し、最後には親征した皇帝が消息を絶ち、ソーサリアからの報復攻撃と内戦の中で帝制テクニオンは滅亡しました。

 混乱が収まったテクニオンは共和制になり、地峡と“離れ島”を緩衝地帯としてアルフレイム大陸から手を引きます。魔動機文明時代後期には大陸外との交流が盛んになり、魔動機術やそれを支える工業技術が向上しました。ソーサリアも大陸外からの接触を避けられない時勢になり、“離れ島”経由でテクニオンと非公式に接触しながらも、限定的に通商を交わすようになりますが、魔動機術を基本的に受け入れない謎の国――というか秘境――扱いされていました。一方テクニオンは、豊富な農産物と鉱業資源をもとに、最新の魔動機の研究を導入し、魔動巨兵や移動要塞の実験場ともなります。

 〈大破局〉では、天変地異と魔動機の停止現象によりテクニオンは対応が満足にできないうちに全土から蛮族が現れてから、アルフレイム大陸から転戦した蛮族が地峡を通って、または船を使ってなだれ込んできます。地峡が崩れ去り、混沌海が嵐に包まれなければ、続いてくる蛮族と魔神によりテクニオンは完全に滅亡していたでしょう。しかし蛮族の後続が壊滅したのと、まだ蛮族と交戦中だったソーサリアから援軍が来てくれたため、蛮族は多くの幹部を失い、統制能力をなくして大陸中に四散しました。その後も現在に至るまで、人族は蛮族を狩り出しながら、文明を復活させるために戦い続けています。

 ケルディオン大陸では、アルフレイム大陸と同じように古代神や大神が信仰されています。テクニオンの鉄道駅やバス駅(デポ)がある城市にはストラスフォードの神殿や祠があり、経路上では万全な力を神官に与えます。城市の区画である「坊」にはプリーストが住民への医療のために配置されており、「坊主」と呼ばれています。
 また、以下のような大神(一部は異なる)への信仰もあります。

・“天工”オゼルベスト
 荒野に水を引き灌漑するための工作技術と、利害関係者をまとめ上げるための説得に長けていた人間で、技術学校(のちの魔動機院)の教授もしていました。利害関係が絡んだ敵対部族から暗殺されましたが、ティダンにより神に引き上げられ、プロジェクトを完成させてから天に上がります。テクニオンで農業と技術の神として崇められ、特殊神聖魔法では農作物や構造物に加護を与え、水や食料ももたらす事ができます。

・“緑陰の戦士”ヴィリエニー
 ジャガーのリカントの、ダリオンの神官戦士で、ソーサリアの王権議会に仕えて数々の戦場をくぐり、自らも副王の一人となり帝制テクニオンからの侵略を退けました。率いていた戦士団が「ジャガーの戦士」の始まりです。特殊神聖魔法は自然環境を活かした戦闘用の術で、最終的にはあらゆる環境を自然環境に置き換えて敵を死に追いやります。

・“高つ鳥の災い”ガンゼケータ
 森羅魔法を極め、魔動機文明時代前期のテクニオンに害鳥の群れで飢饉を引き起こしたドレイクの森羅導師が神となった存在です。特殊神聖魔法により、害獣・害鳥・害虫の群れを使い、また絶食や渇きに耐え抜きます。

・“魔人の王”ラニアーゾ
 召異魔法を極めたディアボロの王で、魔神王の制御に失敗して自滅するまで人族にも蛮族にも魔神の軍勢の進軍を止められませんでした。特殊神聖魔法は召異魔法を補助するものや、魔神を従属させるものが中心です。

・狂う神々の信徒
 神々の戦いの果てに正気を失った狂える小神たちを崇める人族や蛮族です。社会性がないため、大規模な集団を作れないのだけが救いです。神格へのアクセスが不完全なため、特殊神聖魔法は使えないことが多く、プリースト技能のレベル制限もかかりがちですが、神聖魔法以外での特殊な加護やアイテム、狂える神族からの直接な援護などを受けることもあります。

 
◇地誌

 ルール上の「地方」は、「“離れ島”」「テクニオン」「“忌み地”」「ソーサリア」「永劫氷洋」に分かれます。小神の神聖魔法は地方が異なるとペナルティを受けます。永劫氷洋はケルディオン大陸ではないため、ケルディオン大陸の大神の神聖魔法もペナルティを受けます。

 
・“失われた地”キアルー
 混沌海を東西に分断していた平原で、神々の戦いの時代にダルクレムの軍勢が進軍するために持ち上げた陸地だと言われていました。塩分を含む大地では通常の農耕が行えず、住民は遊牧や塩の切り出し、交易などで生計を立てていました。〈大破局〉ではアルフレイム大陸から蛮族の軍勢と魔神が攻め込んできたのですが、その最中に地殻変動で海中へ崩れ去り、多くの蛮族を巻き添えにして消えました。

・混沌海
 アルフレイム大陸とケルディオン大陸の間にある海で、〈大破局〉からずっと、ケルディオン大陸を取り囲む魔法のものと思われる嵐で遮られています。嵐は激しい気流や海流だけでなく、蛮族と神族以外の生物や魔法生物、魔動機は、レベル15以下では無意識に混沌海の外へ出る進路を取ろうとします。蛮族と第二の剣の神族は行動に影響を受けませんが、レベル35以下の存在は中間地点で消息を絶ちます。魔法による干渉も、レベル35以下では効果を及ぼしません。無事に突入するには、進路を操作する機能を持たない乗り物に意識のない者を乗せるしかなく、大抵は死にます。嵐の上端は確認されておらず、下端は海底よりさらに下ではないかと考えられています。
 ……のはずですが、たまに人族がケルディオン大陸に漂着する事があり、嵐はたまに素通りさせてしまうのか、嵐に管理者がいて意図的に素通りさせているのか。

 
・“離れ島”ヴァリエア
 ケルディオン大陸の北西の端にある地域で、細い海峡により本土と分かたれています。名目上は国家に属していませんが、テクニオンからの流刑地や不平分子の潜伏地となっています。城市にはさまざまな種族がいますが、森林に居住しているのはおもにエルフとメリアで、魔動機術とほぼ無縁の生活を送っています。魔動機文明時代には、テクニオンと表立って交流できない国のための中継窓口になっていました。
 なお、“離れ島”の人族は、奴隷を違法としていません。そもそも取り締まる国家権力が及んでいないのと、悪質な待遇で労働者を酷使しないと魔動機による量産技術に勝てないと(市民権を持つ階層が)思っているからです。地元や国境の向こうの住民を奴隷として連れ去るのは報復が怖いのでやりませんが、テクニオンからの流刑者や落人はもちろん、アルフレイム大陸から流れ着いた冒険者も餌食にしようとします。

・寄せ鯨海岸
 “離れ島”北西の海岸で、混沌海の嵐の余波を受けて常に海が荒れています。陸地へ吹き寄せる気流と海流のため、魔船艇でないと航海できません。浜辺には難破船の骨組と鯨骨が積み重なっています。

・“宿り木の”セルケーズ
 “離れ島”で最大の城市で、2人の領主に分割支配されていて、港も別々にあります(多数の埠頭が明白に2つに分かれているのではなく、複雑な飛地や共同支配地もあります)。魔動機文明時代には海外との交易港として栄えており、今でも沿岸航路の中継点になっています。

・金象嵌の城
 ドワーフの領主の拠点で、魔動機文明時代からの技術を多用した機械仕掛けに満ちた城です。正門上の天象時計は太陽や月、その他の惑星の動きも見て取れる城市の名物です。

・螺鈿の館
 エルフの領主の拠点で、鬱蒼としたエルフの木々とせせらぎに包まれています。珊瑚や鯨骨などの海の産物で内装が満たされています。

・中立広場
 城市の片隅にある、2人の領主の支配権がどちらも及んでいない広場です。両方が主張する境界線が食い違っており、どちらも「別のより重要な区域の領有を主張して、ここは要求しない」という空白地なのです。ここからは領主の支配地としか出入りできないため、外部勢力が入り込む恐れはありませんが、城市における戦闘を厳しく制限している城壁の中では、対立した勢力同士が戦闘まがいの決闘を行う際に重宝されます。普段は近所の子供や老人が遊ぶほか、お茶の行商人がミント緑茶やジャスミン茶を売り歩いており、「営業税を納めない味」と評判です。なお大麻や阿片の売人を試みたあほがいましたが、中立広場にたどり着く前に領主の支配地で逮捕されました。

・半手街
 2人の領主がどちらも支配権を主張している区域です。現在は複雑な協議の末に、両方に租税を半額ずつ納めています。もとからの共同支配地とは違い、揉め事が双方の警邏隊の衝突から軍事衝突にエスカレートしがちなため、繁華街なのに寂れかけており、現状の解決への努力はほとんどされていません。

・冒険者組合
 “離れ島”における冒険者の店が加盟している組合です。アルフレイム大陸の“壁の守人”の系譜を汲んでおり、向こうの冒険者ギルドとは遠い兄弟関係にあたります。“奈落の魔域”対策の専門家でもあり、また領主や城市の間の取り持ちもしています。

・クレベル川
 “離れ島”とケルディオン本土の間にある海峡です。幅や深さは場所によりさまざまで、季節によっては歩いて渡れる場所もあります。橋はテクニウム鉄道橋だけです。

・テクニウム鉄道橋
 アルフレイム大陸から通じていた大陸間鉄道の橋が今も残っています。橋は人や馬車が今も使っており、本土側には現在の終点駅があります。

 
・共和制テクニオン
 魔動機術や錬金術をはじめとした様々な技術を重視する国です。領土はケルディオン大陸の北西側、おもに赤道に近い熱帯で、水が豊富な地域では稲作や養魚、乾燥地帯では小麦の生産や牧畜が行われるほか、鉱物資源も豊富です。赤道付近を中心に、大量の浮遊岩も集まっています(魔航船での飛行はおすすめできません)。
 力を失った魔法王達を打破した人々は、魔法文明時代に“高貴なエルフ”に保護されていた大森林を切り開き、魔動機文明前期には豊かな農業国家が乱立します。移民と原住民が混在した抗争を経て、植民地と部族国家は統一、王制テクニオンが誕生しましたが、数代で分裂、内戦の果てに再び帝制テクニオンとして統合されました。しかしソーサリアとの戦争の末に皇帝が消息を絶ち、混乱ののちに共和制の政府が成立します。共和制は魔晶石、マナタイト、そして穀物の大陸外への輸出と、見返りとしての魔動機の導入により栄えて、特に平坦な地形を利用した魔動車(マギモービル)や、荒野を諸国の実験場に使わせた魔動兵器が多く導入されました。〈大破局〉では魔動機の停止現象により蛮族の大群になすすべもなく蹂躙されましたが、ソーサリアからの支援により反攻に移り、蛮族の主要な軍団を崩壊させて残党を追いやるところまでは成功できました。国民のほとんどと魔動機術の奥義を失ったところから、300年かけて人々の生活が安定してきたところです。
 テクニオンの制度を語るうえで、社団を外すことはできません。社団とは政府に登録された社会的組織で、ギルド、労働組合、農場、神殿の兄弟団、大学などの社会構成単位からなります。内乱の要因となった部族制度を解体し、植民地と海外の元宗主国との関係を切り離すために組織されたのがもとで、未成年や退職者も含めて、テクニオンの国民はいずれかの社団に所属するのが基本です。選挙、土地に基づかない納税、社会福祉、基礎教育への支援など、中央政府や地方政府との関わりも、大半が社団を経由して行われます。社団間の公平のため、神殿そのものと地方政府は社団となる事ができません。自由業やマイナーな職業の場合、メジャーな職業の社団に属して信用を得るのが普通です。
 政府(王制時代から呼称は一貫して、共通善や公益を示す「コモンウェルス」)は元首である大評議会議長の下に、一院制の大評議会、行政府である宰相官房、司法裁判の終審を担当する破毀院などがあります。大評議会は社団で普通選挙なおかつ秘密投票で選出された評議員で構成されています。社団が選挙区にあたり、社団に属していないと参政権がないのですが、20世紀初期相当の制度だとそんなものでしょう(キングスレイも納税できないと参政権ありませんし)。政党は存在しており、社団の中で選挙活動しています。中央政府や地方政府の公務員は社団にあたりますが、政治的に中立であることを求められています(投票権は所縁の社団(大抵はどちらかの親が所属していた社団)で行使します)。国内は州に分けられており、州の下に城市と社区があります。これらの地方政府にも評議会があり、議長が地方政府の代表になります。先程も書いたとおり、地方政府は社団になれず、また内部に複数の社団を含むのが義務付けられています。「農場公社と農業者組合だけがある地方政府」でも構いませんが、とにかく2つ以上いります。
 国軍は〈大破局〉で壊滅したため、一部の精鋭による志願兵(公務員)と、国家が社団から招集した民兵部隊(母体となる社団に所属)で定足数を満たしている現状です。徴兵制度はありますが、社団の所属者を本人の同意なしに徴兵する事ができないため、事実上機能していません。
 アルフレイム大陸と比べて、酒(特に蒸留酒)に対する印象が悪く、人間やリカントの公的な場ではお茶やコーヒー、ハーブティー、ジュースなどが出されます。大半の州では酒の販売が厳しく制限されています。その代わりというのか、大麻に対する取り締まりが甘く、自家製の大麻飲料や吸引用大麻が出回り、盗賊や蛮族のシノギにもなっているという指摘があります。

・大評議会(コングレス)
 王制テクニオン統一時の部族会議連盟がもとになった議会で、議員の互選で選出された議長がテクニオンの元首になります。議長は国王や皇帝がかつては兼任していた職であり、実際の議事を管理するのは副議長になります。選挙の区割りは地理的な選挙区ではなく、社団ごとになり、選出する議員数は様々です。政党内閣の概念はないため、議員数に応じて宰相官房の監督員を出しています。議長の座は魔動機文明時代は激しい取り合いがされていましたが、〈大破局〉で初動態勢を取るのに失策を犯した議長が処刑されてから、選出の過熱は収まりました。
 政党は、大評議会や地方評議会の議事で協力するために、帝制時代に生まれたグループです。共和制の初期に現在の大政党の源流ができて、それ以来大きな変化はありません。政党は社団を兼ねる事が禁止されているため、私兵を持つことはできず、専属の党員を持っていません。党営企業を多数持ち、財政の自主を確立している政党がほとんどです。ほとんどの政党が社団により構成される国家方針を支持しているため、分類としては「穏健な多党制」になるでしょうか。
 地方政府の地方評議会も、似たような構造になります。

・サンディカリズム党
 テクニオンで最大の政党で、労働組合主義です(ユーゴスラビアの自主管理システムが近いです)。魔動機術を使った業界(工場や集団農場など)の支持が強く、魔動機院とも密接な関係があります。“枕木”(大評議会宮殿の議長席。共和制初期には鉄道の枕木を転用してベンチにしていた)を獲得した回数も1位です。

・コーポラティズム協会
 社団主義の政党ですが、「政論を構えて争う」という政党政治になじめない構成員が多かったため、協会を名乗っています。魔動機師以外の知識人、農民、神官などの支持が多めです。

・ルミエリズム社会党
 第一の剣の陣営の神々への信仰を中心にした宗教社会主義系の政党です。コーポラティズム協会と支持層が被るため、選挙協力や選挙妨害など、様々な関係が生じます。

・リバタリアニズム団
 自由至上主義の政党、というには集まりがやや緩い人々です。お互いの自由を尊重しながら最大限に生かす事で人族の社会を発展させるのを目標としており、現在の集団主義色の強いテクニオンでは活動が難しいため、あえて漂泊の生活を営む人々の基盤を提供したり、独自の共同体を開発したりといった活動もあります。魔動機文明時代から魔術師への規制に反対をしていたため、魔術師ギルドとも深い関係を持っています。

・復活リカント党
 リカントの民族団体ですが、リカントの大半はもっと大きな政党を個別の交流関係により支援しています。特にリカントが集中している地域に支持者が多く、リカントの文化振興におもな関心を持っています。組織は魔動機文明時代に起きたリカントの反乱に由来しており、中央政府には隔意を抱いていますが、より過激な派閥は地下組織になっているのでまだ安全です。

・新しい国党
 人族の領域の確保と開拓に重点を置いている大評議会の主流派に反抗して、より厳しい統制と蛮族領域への積極的な攻撃を主張しています。〈大破局〉以来ある少数派勢力ですが、ほぼ人間にしか支持を受けていません。レッサーオーガに組織内へ浸透された事件を複数起こしており、余計に支持を落としました。

・その他の政党
 個人農家から支持される農民党、王制の復帰運動をしている王党、帝制の(以下同文)皇帝党、反宇宙的二元論(グノーシス主義に相当)を信奉する清浄協会などがあります。一部は大評議会や地方評議会に議席を持っていますが、大半の泡沫政党は少数過ぎたり議会政治を否定したりで議席を持っておらず、しばしば辺境の社区を裏から支配して討伐を受けたりします。

・ヴァリャーギ
 大評議会議長親衛隊で、斧を主武器とするドワーフで構成されています。大評議会の総会の警護や、戦場での打撃部隊として運用されます。王制時代や帝制時代から近衛兵として働き、〈大破局〉でも蛮族の将軍を多数討ち取っています。

・“炉の熊”連隊
 ドワーフの軽装兵「ベルセルク」を中心として、吟遊詩人、妖精使い、森羅導師などの「スカルド」が支援する部隊です。薄い装備と騎獣で身軽に活動して、練技と錬金術で自己強化を追加してきます。

・ロケットマン連隊
 錬金術の火薬を込めて発射されるロケット(巨大なロケット花火のような兵器。コングリーヴ・ロケットなどに相当)を運用する部隊です。ロケットは大型の目標(巨獣、変身後のドレイクやバジリスク、魔航船、バリケードなど)に使われ、人間大の目標には個人装備のガンやクロスボウなどを使います。

・魔動機院(オゼルベスト記念技術学校及び魔動機院)
 テクニオン政府による魔動機術の教育、魔動機の開発、魔動機師の就職斡旋などを行う機関です。また魔動機術だけでなく、ラクシアではマナとの絡みも多い自然科学や、魔動機文明時代に発展した錬金術や呪歌も研究されています。もとは魔動機文明時代黎明期に設立され、入植者の魔動機やその他の機械も扱った「技術学校」で、テクニオン建国の基礎になりました。魔動機院は学園城市であるマキナースの地方政府でもあり、テクニオンおよび“離れ島”全土の城市とソーサリアの主要都市に支部を置いています。

・人文学院(イラニトラ記念人文学院)
 人文科学を中心に研究する大学で、法学や語学などを除くと魔動機文明時代には影の薄い学校でしたが、〈大破局〉当時には伝えてきた蛮族知識が大きく役に立ちました。魔法全般や戦闘についても研究されています。

・魔術摘発省
 魔動機文明時代に魔術師狩りを行った組織がルーツで、秘密警察的な行動を取っています。現在では真語魔法や操霊魔法の使い手も所属していますが、蛮族に対してより人族に対して警戒心が強い、どちらかというと敬遠されている組織です。執行部隊に召異術師を多数抱えて、「捕縛に抵抗して死亡」した人族の死体を供物として提供しているという話もありますが、その辺の真相は定かではありません(警戒心のないジャーナリストを処理するための罠だという説もあります)。

・開拓公社
 〈大破局〉で破壊された耕地の復活や、新たな居住地の開発などを行う組織です。蛮族の掃討や遺跡の発掘、開拓に関わる揉め事の解決などのために、戦士や魔法使いを大勢雇用しています。国家プロジェクトをまとめて背負う組織として、ありとあらゆる方面に伝手としがらみを持っていて、事件処理のために社員を差し向けるのもいつもの事です。

・前衛大隊
 魔動機文明時代後期に組織された、テクニオン軍の装備開発を目的とした民兵団です。魔動機術以外の、どちらかというと重視されていなかった技術に長けた人々を集めていたため、〈大破局〉に対しても機能を失わず、一部とはいえ国民を守り通す事ができました。現在は人族の社会の前線に立つため、蛮族討伐と遺跡の回収を中心に活動しています。合流したケルディオンの“壁の守人”メンバーからも、対魔神戦法の伝授を受けています。
 ここに所属する民兵が、テクニオンにおける冒険者に近い立場になります。大隊は各地の宿屋と契約を結んで、あるいは宿屋を直接経営して支部にしています。民兵はお互いにコードネームで呼び合う習わしになっていますが、本名そのままのコードネームでも構いませんし、親しい間柄では作戦外で本名で呼ぶ事もあります。

・機兵大隊
 テクニオン国軍の複数の魔動機兵師団は〈大破局〉で全滅しましたが、退役軍人、民間の魔動機師や騎手、騎馬警察官などにより準軍事組織として最低限の機能が復活しました。他の社団に対しても、騎獣の提供により支援を行っており、他の大陸のライダーギルドと同様に働きます。

・工兵大隊
 テクニオン国内の城市の防塁(キャノンなどの魔動機術の砲撃に弱い壁ではなく、分厚い塁壁です)、対蛮族警戒線の要塞、そして全土に張り巡らされた魔動車用舗装道路を整備する組織です。形式上は軍の一部であり、階級も軍のものと同じですが、建設工兵であるため戦闘には熟練していません。戦闘工兵は、戦闘用の組織に所属しています。

・銀鱗騎兵隊
 銀の鱗のリルドラケンが編成した部隊で、目印に金属片を身に帯びています。工兵大隊と連携した交通網の警備をおもな任務にしており、警邏のために騎獣だけでなく、魔動車や多脚式魔動機、ケルディオンでは数少ない魔航船など様々な乗り物を使っています。人族の領域の回復速度に部隊の拡充が追い付かず、前衛大隊の支援を仰いでいます。

・青図面設計局
 魔動機に限らず、様々な機械を開発する設計局です。開発だけを担当し、製造や運用はやりません。建築関係が主力で、水汲みポンプやエレベーターなど、あまり冒険者とは関係なさそうな地味な開発を手掛けています。

・エメラルド・マウンテン・レンジャーズ(EMR)
 リカントやメリア、グラスランナーやティエンスなど、野外活動に向いている種族による民兵隊です。隠密活動と騎獣を用いた強襲を得意技とします。

・クク・ライブラリー
 第三の剣の聖鳥「クク」の名を取った移動図書館で、社団や地方政府から支援を受けて運営しています。馬車、船、魔動車、鉄道などを使って、辺境へ図書や情報端末を運びます。

・テクニオンテレボイス協会(TAoT)
 魔動機無線音声放送であるテレボイス(ラジオに相当します)を放送する放送局で、大評議会チャンネルと魔動機院チャンネルの2つを持っています。ニュース、相場情報、天気予報、音楽、教育番組、ドラマ朗読、コマーシャルなどを、朝6時〜夜12時くらいまで流しています。個人用受信機がなくても、城市や社区のテレボ塔にある受信機で聴けます。全国放送はこの2つのチャンネルだけですが、正規にチャンネルを割り当てられた地域放送や、許可を得ずに周波数を使って流している海賊テレボもあります。

・リザードバック交易隊
 大型爬虫類など、乾燥地帯に適した動物を荷役に使った交易隊です。構成員の大半が爬虫類に慣れているリルドラケンとナイトメアですが、斥候として少なからぬ数のグラスランナーを入れています。グラスランナーは奥地(アウトバック)に興味を示して進んだり、飽きて帰ったりするので、メンバーとしてはあまり固定しません。

・三輪労働共益会
 ライフォス信仰の兄弟団で、わりと新興成立が新しいですが大きなグループです。調和の神の信仰と労働を取り持つことを重視しており、工場や農場付きの神官を派遣して、肉体や精神の安寧に尽力しています。戦闘できるメンバーがあまりいないため、前衛大隊に労働争議の調停や害獣の駆除などを依頼することがあります。

・藍色一揆
 アルフレイム大陸の修道騎士団に相当する「一揆」の現在までの生き残りで、ティダン信徒を中心にした水道整備団体です。草創期のメンバーにエルフがいたこともあり、エルフ由来の水利技術を基礎にしています。塩害にあった耕地を洗い流す技術や、下水を微生物で浄化する技術などがなくては、莫大な人口を支えることはできなかったでしょう。

・古き教え
 組織化された社会に適応、悪く言えば癒着している各神殿の体制への反対派で、政治と距離を置き個人的な信仰を深めることを目指しています。王制時代や帝制時代、共和制の初期には激しい弾圧を受けていましたが、現在は神殿組織外のプリーストを中心に支持を受けています。ソーサリアの同朋(どうぼう。同じ神の信者)との協力も強力に進めています。

・塩魚売り
 養殖魚や天然魚を塩漬けに加工して、内陸の城市や社区で売り歩く業者です。比較的安価で長持ちする食糧として需要が多く、また穀物や家畜とは違って小規模な業者の取り扱いが多いため、身元をごまかして潜入や脱出するために塩魚売りや「商品」に身をやつすのは伝統的な行動として演劇や詩でも親しまれています。密輸や人身売買にも悪用されており、そちら方面では魚の内臓に魔剣を仕込んで部族の長老を殺害した暗殺者の話もあります。

・“技工の城”マキナース
 現在のテクニオンの首都です。魔動機文明時代の首都の郊外にある魔動機院の学園城市だったのですが、〈大破局〉で首都が壊滅して、出城のように立てこもっていた学園城市だけが生き残りました。大評議会、宰相官房、破毀院の三権の機関は、魔動機院の校舎の一部に同居しています。元々城塞のような構造だった校地(キャンパス)には、魔動機文明時代の初期からある建物や地下構造もあり、人手が入りにくい部分にレプラカーンの都市や“魔剣の迷宮”もあるといいます。麓との間は、階段、緩くて長い坂道、ラックレール式の鉄道で結ばれています。

・大評議会宮殿
 首都から亡命した大評議会の組織は、魔動機院から校内に散らばる施設の譲与により枠組みは再生されました。議事堂は第五大教室を転用しており、1000人近い議員をぎゅうぎゅうではありますが収納する事ができます。大評議会議長とヴァリャーギのみが完全な武装権を持ち、議論を乱す行為は一切許されません。

・宰相官房
 大評議会から任命された宰相と監督官が管理する国家行政組織です。魔動機文明時代は州政府の行政組織も宰相官房が動かしていましたが、連絡手段の欠如に伴う自主運営のため、州の行政は州評議会が管理するようになっています。宰相官房の上位の官僚は宰相や監督官からの干渉に反抗的で「大評議会からの独立」を主張していましたが、首謀者が組織的スキャンダルを次々に暴かれて“離れ島”に追放されました。

・破毀院(はきいん)
 テクニオンの最高司法裁判所です。城市の審理裁判所や州の控訴裁判所で出された判決を法律と照らし合わせて、そのまま受け入れるか破毀して差し戻すかを出します。行政裁判所や軍事裁判所は別の系統になります。

・大評議会図書館
 魔動機文明時代からマキナースにあった図書館で、“魔剣の迷宮”の技術を応用した積層空間内に莫大な量の本を分野を問わず収納しています。書庫の区画の大半(割合は分からない)は、湧き出した蛮族、暴走した魔動機、混乱した空間、接続した洞窟などのため、武装して突入しないと閲覧ができません。

・コブウシ通り
 起伏の激しい繁華街で、公式名称は複数に分かれる通りと、複雑に並行や交差している路地の総称です。陸橋や堀切やトンネルや地下街と、高層建築がぐちゃぐちゃに絡み合っている見通しの利かない場所で、全貌を把握している者はまずいません。公に取引できる物は、普通に値段が付いていればほぼ即日、ちょっと無茶でも数日以内に調達できます。

・学寮坊
 魔動機院の学生寮に丸ごと使われている坊です。ワンルームに若者がひしめき合う高層建築(魔動エレベーターはいつも混雑しています)から、隠れ家のようなコテージまで、住環境は様々です。食堂、文房具屋、魔法の素材屋、浴場、施療院、操霊術師の蘇生サービスなど、学生に必要な施設もあります。

・尽きせぬ夜の街
 城市の丘の地下にある、ドワーフやレプラカーンが住む地下街です。蛮族が侵入路にしようと狙いがちですが、ほとんどは住民にばれて始末され、残りはあえて泳がされています。交差点や店舗などにしか明かりがないほかは、地上の街並みとそれほど変わりません。たぶん。

・鉄道中央駅
 首都に入っていた魔動列車の路線が〈大破局〉で使えなくなったため、線路を付け替えてマキナースの北西の街外れに作られた新しい駅です。10年前に開業して、それまで各路線の仮駅から魔動車や馬車で積み換えて輸送していた貨物が滞留しなくなりました。巨大なデルタ線で北西・東・南の3方向(と、そこからさらに分かれる支線)に列車が直通できます。
 ちなみに輸送のほとんどは貨物で、旅客列車は主要路線でも1日1本〜数本です。速度や運賃は、アルフレイム大陸とほぼ同じです。

・サペトリウム遺跡
 マキナースがある丘の南東の、より低く広い丘にある大都市の遺跡で、魔動機文明時代の首都でした。大量の魔動機からのマナの漏出によりアンデッドの巣窟になっており、立ち入りは制限されているのですが、崩れた城壁あたりは侵入者により荒らされたり、探索用の拠点になったりしています。

・死人の市
 レブナントが商取引を繰り返している市場です――リカントの皮やボルグの肉も売買されている市場ですが。代金として命を要求するレブナントの商人は、破壊したうえで通常の代金をガメルで払うか、適当な蛮族の捕虜を引き渡すかで取引ができます(もちろん後者は邪悪な行為です)。

・ドラゴンゾンビ通り
 二つの大通りの間の街並みが魔法で破壊されて一掃された区域の俗称です。5体のドラゴンゾンビをはじめとする大型アンデッドが徘徊しており、通りの向こうへ横断するのは不可能です。

・王子たちの城
 王制時代の王室の傍系子孫が住んでいた邸宅がある坊です。一番外側の邸宅が探索の拠点になっており、高額ですが宿泊もできます。

・中央宮殿
 王制時代の二代目の王が建てた城であり、遺跡の中心です。共和制の大評議会もここを使っていました。現在は(蛮族を捕らえて尋問した供述によると)最高レベルのアンデッドの巣窟であり、正門前の広場では、侵入を試みた蛮族が不定期に公開処刑されています。

・“穀物倉の城”ロマプレート
 内陸にある穀倉地帯の穀物の集積地です。〈大破局〉での備蓄の喪失と大飢饉の教訓から、三期作〜四期作が可能な大地の中心に大量の穀物サイロが並んでいます。サイロの中身は大半が米、小麦、豆などで、1〜2年サイクルで備蓄を供出して代わりに新しい収穫物を入れています。テクニオンでは米はゆでるとパラパラして口当たりの良い古米が好まれ、ねばつく品種は好まれません。鉄道と街道も集まっているため、農業用魔動機をはじめとする魔動機の製造や整備も盛んです。

・スポーク
 トリグラフ(擬人化した〈始まりの剣〉たち)の石柱のある中央広場から、車輪のスポークのようにまっすぐ城市の外まで延びる7本の大通りです。穀物のためにある城市であるため、スポークは頻繁に馬車や魔動車が通行し、枝道からサイロに行きやすいように設計されています。城外との交通が集中しているため、みんな知っていることを「スポークでもう話した(スポーク)」と言うこともあります。

・“白い粉の”ゼーシュレコ
 東部の沿岸にある港町で、塩田から内陸へ塩を供給しています。サトウキビの栽培も盛んで、砂糖と塩、そして糖蜜を微生物で発酵させた調味料の粒を間違える事故もたまにあるとかないとか。沖のすぐ先には同名のゼーシュレコ島がありますが、中央の忌み地を挟んだ半分ほどが蛮族に占拠されており、にらみ合いを続けています。

・州営酒類販売所
 飾り気のない倉庫のような建物で、隅の入口から入った奥に薄暗いカウンターがあり、注文すると鉄格子越しに酒が渡されます。ゼーシュレコ州では酒の販売が厳しく制限されており、酒を飲むのは下層民かよそ者かエルフ(ドワーフはほとんど住んでいない)と言われるほどです。ラム酒「破城槌」、椰子酒「ホワイトアウト」、リュウゼツラン酒「フロストブレス」、蒸留酒「アルケミアラック」などが公認された代表的な酒で、州外の方がむしろ入手しやすくなっています。

・“開拓者の街”カンパニゼス
 テクニオンの南東の外れにあり、街より北西には平原の開拓農場、南東には人族の手の入らない森が広がっています。南東の森をひたすら進むとソーサリアの領内に行けますが、鉄道や整備された街道はなく、馬や魔動バイクなら通れる道があるだけです。城市の中は迷路状の道が入り組んでいて、侵入者の脱出を許しません。
 カンパニゼスにはソーサリアから来て再建に協力した魔術師が開いた魔法学校があり、真語魔法を中心にした研究や、周辺の遺跡や忌み地の調査などをしています。

・カンパニゼス魔法学校
 系統を問わず魔法の教育と研究のための学校で、発掘物の復元や鑑定を収入源にしています。魔法に興味のない学生も集めるためと、魔法以外への知識も深めるために、魔法と直接関係のない学問も導入しています。

・魔動車(マギモービル)
 平坦な地形と散在する居住地を結ぶために、鉄道と並んで開発された、魔動機関(モーター)で走る四輪車です。乗用車、オムニバス、トラック、装甲車などがあります。比較的小さなマナチャージクリスタルでマナの供給ができるため、屑魔晶石をあえて使うのは、パワーを大量に必要とする作業用車両にほぼ限られます。魔動機関の冷却には、水冷型だけでなく、魔動バイクで一般的な空冷型もあります。

・マンティコアモービル
 魔動車のメーカーで、さまざまな幻獣をイメージした独自のデザインで知られています。〈大破局〉以来は軍用車をおもに作っていましたが、100年ほど前に民用車の製造を再開しました。フロントグリルの中で魔動灯が光る「26-M7」が最新型です。

・ターボルモーターズ
 魔動車のメーカーで、おもに業務用の車両を作っています。地域により水の補給に難のあるケルディオン大陸で、空冷式魔動機関にこだわった車種を開発しています。自家用車の生産拠点を〈大破局〉で失い、今は業務用の大型車が中心です。軍用の装甲トラック「TM-T22」は、車輪ごとに独立したサスペンションで道なき道も走破します。

・チェッカー魔動機関製造
 魔動機関のメーカーですが、魔動車や魔動バイクを製造する部門もあります。オムニバス「ソングバード(鳴禽)」は、〈大破局〉後のモデルでは初めて、屑魔晶石の使用を自動化しました。
※社名イメージは、プジョー、タトラ、BMWです。社名だけで製造車種はごちゃ混ぜ。

・シルバースパロー・モーターコーチ
 オムニバス会社でも最大級の会社で、おもに長距離路線を走らせています。「銀の雀(スパロー)はいかなる悪路も走破する」といわれ、オフロード用バスや水陸両用バスまで用意しています。

・ブルーバス公司
 海外系のオムニバス会社の子会社が、〈大破局〉で資本関係が切れたところです。当時の中古車を共食い整備して路線が衰えていましたが、ここ100年ほどは新車を購入して息を吹き返してきました。城市の中や郊外の路線が多く、小型のオムニバスを積極的に使っています。

・オムニバス管理委員会
 小規模なオムニバス会社や個人運営オムニバスが多かった地域で、〈大破局〉後に限られた資源で旅客輸送を続けるためにできた公的機関です。運賃やバス停の統一、塗装の同一化、案内の共通化、運行スケジュールの調整などを担当しています。

・給水デポ
 魔動車に魔動機関の水冷用の水、屑魔晶石、チャージ加速器からのマナ、その他諸々を補給する施設です。運転手やオムニバスの乗客の休憩施設を兼ねている所もあります。

・テクニオン鉄道公社
 テクニオン国内の公有や私有の鉄道の輸送業務を、まとめて管理する機関です。大都市間を除いて旅客輸送はあまり盛んではなく、中心は貨物輸送です。本線系は複線、大半の支線は単線で、大量の貨物をさばいています。旅客は、都市近辺では動力客車、都市間や辺境は機関車と客車、小規模な輸送はレールコーチ(小型の動力客車)に分かれており、魔動機文明時代からアルフレイム大陸とは異なる車両デザインやオムニバス改造レールコーチなどで趣味人の注目を集めていました。また、鉄道オムニバスを直営で持っており、駅から最寄りの城市への連絡路線、災害で運休している路線の代替路線などを運行しています。

・アゴストロコモーティブ
 魔動機文明時代の鉄道車両工場を発掘した前衛大隊の隊員が、工場の機能を復活させて設立した会社です。機関車を中心に、レールや信号のような設備関係まで手掛けています。

・ターボルコーチビルダー
 ターボルモーターズから、〈大破局〉後に分割された鉄道車両部門です。路面列車や短距離用の動力車など、客車を主に製造しています。

・タング鉄工所
 ドワーフのタング家が、魔動機文明時代後期にキングスフォールのストラスフォード家から技術移転を受けて開業した鉄道車両メーカーです。動力を持たない客車や貨車をおもに製造するほか、回収された魔動機関に車体を付けたり、装甲列車などの特殊構造の車体を作ったりもしています。

・カンパニゼス鉄道工場
 カンパニゼスにある鉄道車両の工場です。最盛期にはこの地域にも多数の路線があったため、回収された廃車体や部品から車両を再生しています。ほとんどは無動力の標準客車や雑多な貨車ですが、独自の形式のレールコーチもあります。また、車両の内装の木製品などを他の工場へ供給しています。

・北平原
 ケルディオン大陸の北部にある平原で、魔法文明時代は”高貴なエルフ”が支配する森林でしたが、魔動機文明時代に切り開かれて耕地となり、〈大破局〉で人口は減りましたが周辺からの流入や再開拓で引き続き繁栄しており、森林はほとんど残っていません。豊富な降水を整備された川や用水路で導いて、稲や綿花などを栽培しています。城市も多く、人族の大拠点ではありますが、目の行き届かない放棄された遺跡や森の奥に蛮族も潜んでおり、さらに古い魔法文明の遺産も隠された脅威として残されています。

・樹神の島
 どこまでも見渡せる耕地のただなかに孤立している、樹に覆われた丘です。魔法文明時代は湖に浮かぶ島だったといいますが、今ではほとんど面影がありません。〈大破局〉では周辺の住民が逃げ込みましたが全滅してしまい、今でもアンデッドが夜に目覚めるといいます。

・浮遊岩の帯
 テクニオンの国内の上空に広がる、浮遊岩の大量浮遊地帯です。赤道直下からややずれた所に最大の帯が東西方向に伸びていて、並行して何本かの帯があります。魔航船での通行には全く適していないため、テクニオンでは魔航船技術がほとんど発達しませんでした。マナタイトの巨大な鉱脈があったのが、大量の浮遊岩の原因になったといわれています。

・中央大高原
 ケルディオン大陸の中央に広がる高原で、大半が干からびた荒野ですが、うまく水を引けば豊富な日光と作物の生育に向いた土地が大きな収穫をもたらしてくれます。テクニオンが魔動機文明時代に整備した用水路は〈大破局〉でほとんどが破壊されてしまい、現在は一部の地域で用水路の復活と再入植が試みられています。

・大競技場複合施設
 中央大高原にある巨大な競技施設で、複数の魔動車レースコース、フットボール場、競泳プール、屋内運動場、選手村などの跡があります。水道施設が生きているので、食糧と燃料を持ち込めば競技の再開も不可能ではありません。

・林住族(りんじゅうぞく)
 人族が妖魔を従えた巨大匪賊団です(単独の組織ではなく、似たような多数の組織を総称していると見られています)。あちこちの森や荒れ地に身を潜め、交易商人や開拓地などを襲っています。王制による統制を嫌い荒野へ逃亡した部族や無法者(多くは第二の剣の神の信者)が起源となり、〈大破局〉で蛮族の軍勢が崩壊した際に妖魔と手を組んだと見られていますが、林住族は記録を残さないため定かではありません。メンバーの一部は、森羅魔法や召異魔法を好んで使います。

・盗み食い団
 オーガ達による対人族用の諜報組織です。何を盗み食いするのかは言うまでもありませんが、どうやら秘法により記憶も食らえるらしく、盗み食いし過ぎて記憶が混濁したオーガや、新しい境地に目覚めたオーガなどがいるそうです。

・死の徒花
 アンドロスコルピオの群れが率いる蛮族の軍団で、大量の魔動機で武装しています。むやみに人族の奴隷狩りをせずに、コボルドに農場で働かせつつ大都市の発掘に精魂を込めているのですが、兵器開発施設を発掘する前に何とかしないと大変な事になるでしょう。

・朱色の湖
 中央大高原の南東にある湖沼地帯で、アルカリ性の環境に繁茂する藻で水が赤く染まっています。農業に適しておらず、天然ソーダの採掘者を除いて人族はほとんどいません。テクニオンとソーサリアの緩衝地帯です。

・“忌み地”
 テクニオンの領土に囲まれて点在する、魔法文明時代の魔法王や貴族が残した遺跡が様々な力で支配権を及ぼしている範囲です。開拓を免れた結果、森林が繁茂している事が多いです。内部にはソーサリア系の人間やエルフなど、場所によっては幻獣や蛮族などが/なども住んでおり、密使、地下洞窟網、森羅魔法【ピジョンメール】、夢の中での通信などでお互いに連絡を取っているようです。

・忌まれ人の城市
 テクニオンの辺境にある“忌み地”の中にあるという、魔法文明の末裔、林住族、野盗、蛮族、アンデッドなどが集まる、テクニオンだけでなく人族の視点からも蛮族の視点からも無法の城市です。盗賊市で扱われるのは、奴隷や薬物はまだ生易しい方で、魔神への違法な供物、横流しされた兵器、認識で感染する魔術式、軍事機密、重鎮ジャーナリストに死をもたらすかつての失策なども売り買いされています。

 
・ソーサリア王権
 魔法王が広めた魔術を、士族や平民が受け継いでいった国です。領土はケルディオン大陸の南東寄り、亜熱帯〜温帯の比較的気温が低い土地で、大半が森林に覆われていますが、場所によっては草原や砂漠もあります。人口は少なく、大型動物や動く植物、蛮族や幻獣なども多くいます。テクニオンの一般人は「血まみれの野蛮な国」と思っていますが、侮辱や殺人に対する私的報復が公然と認められたり、決闘が頻繁にデスマッチになったりで、その認識はまあ間違ってはいません。とはいえ倫理感覚は魔法文明時代そのままではなく、いろいろ複雑です。
 建国はいつなのか、そもそも建国というものがあったのかもわかっていません。魔法文明時代は人口も少なく、また危険な魔物も多かったため(アストレイドが最後まで確認されたのはこの地域だったといいます)、個人や小集団で海外から逃れてきた魔法王と従者が住むだけだったそうです。ばらばらだった魔法王達が、魔法文明時代末期の魔神の軍団の脅威――制御されているかいないかに関わらず――から身を守るために盟約を結んだのが、王権の発祥と考えられています。魔動機文明時代に入っても王権は存続して、反魔術師的な風潮が盛んになったテクニオンから逃げ延びた魔術師にとっても、安住の地になりました。魔動機文明時代でも魔術を社会の中心に置き、学校で学べる知識体制に整理した結果、魔動機文明の「誰でも」には及ばないながら、比較的多くの魔法使いを出しています。〈大破局〉においては王権議会の決定を待たずに人族と幻獣の義勇軍“運命の兵士”をテクニオンに送り、ぎりぎりで蛮族軍を食い止めましたが、後から議会に糾弾されて指揮官は失脚、それから蛮族軍の残党が四散して新たな脅威になってしまいます。
 王権(ソヴリン・オーソリティー)そのものは単一ですが、複数の人物が王権の特定範囲を単独あるいは共同で行使するようになっています。大規模な権限を持つのが王、小規模な権限を持つのが副王となり、王と副王が王権議会を構成しています。王権議会の構成員数は20〜30人程度の間を動いており、外交と軍事――王権が外部へ向けるアクションの最高権限は“議長たる王”が所持します。必要に応じて新たな王や副王を任命するのも王権議会の職務です(暗殺を防ぐための高い冒険者技能がほぼ必須です。血筋についてはある程度気にされますが、絶対的な条件ではありません)。政府の官僚や軍人は王権の特定の範囲に紐付けられていて、担当者が変わったら職務の引継ぎとともについてきます。
 王権の臣民は、成人したらすべての者が爵位を授かります。平民の民爵は祝祭の度に授けられる勲章やメダルのようなもので、貴族は爵位があっても領地は一部の例外を除いて認められていません。貴族は部族を支配するのであって、土地(王土、ソベラニア)への直接の支配権はありません。部族(リネージ)は本来、人間などの同族集団である氏族(クラン)の連合体なのですが、王権ではすべての臣民を種族を問わず部族に組み入れて、部族と氏族の包摂関係を解いています(同じ氏族が別々の部族に跨って所属していたりします)。部族は盟(リーグ)―旗(バナー)の階層があり、複数の貴族が集団指導体制を敷いています。城市や社区には評議会があり、議席を保有する有力者――そして大抵は高レベルの戦士や魔法使い――が人身に関わらない物事や部族間の案件を取り扱います。

・一つ者
 二つ名のうち、構成要素が1つだけのものを指します(概ね、一般名詞単独か形容詞単独です)。ソーサリアでは一般人でも二つ名を持ちますが、一つ者は二つ名の構成要素を体現した人物にしか許されないと考えられています。“一つの”から“十二の”までの数字は、ソーサリアの最上位の魔術師や操霊術師が専用で使っています(番号が空いたら別のもの(人族とは限らない)を就任させているので、何かの順番ではありません)。

・ジャガーの戦士
 リカントのみで編成された、王権軍の親衛隊のひとつです。[獣変貌]や【ナイト・ウォーカー】などで夜襲を掛けたり、隘路で狙い討ちしたり、毒で暗殺したり、場合によっては正面から対戦したり、どんな作戦でも取ってくる精鋭です。

・アルモガバルス
 高レベルのフェンサーで編成された、王権軍の親衛隊のひとつです。もとはある部族が持つ兵団で、傭兵先の部族が賃金不払いをしたうえに指揮官を謀殺した報復に相手の部族を征服した事件が原因で、王権軍に取り上げられました。軽装に軽い武器でありながら、重装備の敵を一方的に蹂躙できるというわけのわからない戦闘能力を持ちます。最近は魔動機術も導入して、機械化を進めています。特定の分野に特化した、騎獣や魔法で飛行するアルモガバルス降下兵、隠密活動で敵の戦線を破壊するアルモガバルス浸透兵などもいます。

・ブラッドウッド・ブラザーズ
 ブラッドウッド(アカミノキ)のメリアの魔術師が創設した、王権直属の魔法研究機関です。真語魔法と操霊魔法が中心ですが、魔動機術の研究(おもに対策法)も長年続いており、近年では召異魔法や森羅魔法にも着目しています。

・シー・ノー・イーヴィル(SNE、シノビ)
 シーンやミルタバルの神官、魔術師、斥候、グラスランナーやレプラカーンなど、密偵としての能力を持つ達人による集団です。王権に直結しておらず、問題を起こしても王権が責を負う事はありません。その謎めいた存在は、魔動機文明時代の創作の「ニンジャ」のもとの一つであるといわれています。

・軍楽隊
 太鼓や銅鑼(音程のある組み合わせ式のドラムやゴング)、金管楽器(ホルン、トランペットetc.)、法螺貝などで信号を送るための軍楽兵(基本的にバード)が、平時の儀式や祭事にあわせて集まり演奏を行う一団です。勇ましい曲から哀愁漂う曲まで、呪歌ではなくても心を震わせる技を持ちます。また、ソーサリアの軍用ロケットは、信号弾から発展した歴史があるため、軍楽兵が主体となって運用しています。

・魔術師ギルド(ソーサリア魔術師操霊術師ギルド)
 ソーサリアの魔術師や操霊術師が加盟している職業組合です。ギルド自体はメンバーの技術保証や福利厚生を行う機関で、教育や研究は各地の魔法学校や“知識の剣”塔で行っています。魔動機文明時代もソーサリアでは公的に存在していたため、城市でも割と目立つ所に陣取っています。〈大破局〉以後はテクニオンや“離れ島”にも支部を設けて、魔法文明時代の遺跡の研究や魔法に興味を持つ現地の住民への魔法教育など、アルフレイムの魔術師ギルドのようなことをしています。召異魔法への傾倒が魔法文明の滅亡の主因と考えられているソーサリアでは、あまり召異魔法の研究は盛んではなく、ほとんどの召異術師は公的な組織とのつながりはなく潜んでいます。

・ジェイドセプター魔法学校
 大きな城市の中にありますが、独立した社区となっている魔法学校です。真語魔法や操霊魔法、特に戦闘に使う魔法を中心にしています。魔法学校評議会が自治を行い、独自の民兵も組織しています。

・オーバルサファイア魔法学校
 名前は魔法学校ですが、魔法以外の学問も広く学べます。とはいっても大半の賢者は魔法も学んでいます。

・ケイオスコイル魔法学校
 妖精魔法と森羅魔法を中心に学べる魔法学校で、各地に隠れるように校地を構えています。野伏や射手の技術にも長けている所です。

・錬金術組合
 錬金術師が所属して、素材やカード、あるいは生活に使える錬金術の産物を供給する組合です。ソーサリアでは魔動機文明時代中期に流入して、魔法で手の届きにくい分野を支えてきました。城市ごとに独立しており、魔動機院と提携して魔動機術を扱う錬金術組合も増えています。

・全土交易商組合
 大規模な交易商会や個人の交易商が加盟している組合で、各部族の貴族がおもに出資しています。ライダーギルドも傘下に置いて、“運命の兵士”と協力して格安で騎獣を提供しています。

・ドラコ銀行
 王権に服属しているドラゴンたちが、自分の財宝の中から「はした金」を出して投資するための銀行です。帳簿上の金額はドラゴンの評価を高めるものではありませんが、いつでも好きな財宝を買えるように、または蛮族を倒してくれる人族を雇えるようにプールしておく金銭はあるに越したことはありません。次の投資対象はあなたのPCかもしれません。

・運命の兵士
 危険が高い代わりに大きな見返りが期待できる魔物討伐、遺跡探索、“魔剣の迷宮”“奈落の魔域”攻略などを請け負う人々の集まりです。もとは〈大破局〉の際に生まれた義勇軍で、各地にある集まりやすい場所――宿屋とは限らない――を拠点として活動しています。上位のつながりがあまりない点などは、テラスティア大陸の冒険者に似ています。
 運命の兵士はお互いに二つ名で呼び合うのが普通です。というか本名は、公的な場で使われるか、身近な相手と呼び合うのが普通で、面識の薄い相手には二つ名を使う社会です。

・ドラゴン編隊
 ソーサリアの存亡の危機にのみ招集されるドラゴンの空軍で、王権議会の王の一頭である高位のドラゴンが指揮します。“奈落”発生直後、帝制テクニオンからの侵略、〈大破局〉の3回だけ編成されています。

・“冬の王都”アルジェンタミス
 王権議会のおもな所在地で、北部の温暖な森の中にある城市です。エルフが多く、自然の産物を応用した曲線の多い建物が目立ちます。魔術師ギルド本館や運命の兵士本陣など、冒険者に関わりの深い施設も集まっています。

・ジャカランダ広場
 ジャカランダの紫の花の季節(南半球の春)になると賑わう広場です。とはいっても人口が少ないソーサリアなので、賑わっても息苦しさはそれほど感じません。

・樹神の掌
 五本の世界樹を中心として複雑に組まれた、いわば生きた高層建築です。全体は世界樹自身の所有で、複数の部族が区画ごとに権利を分有しています。下層は商会の事務所や店舗など、上層は住宅や飛行する幻獣の住処として使われています。最上階には“主”の長命種メリアと騎獣のドラゴンがいます。

・“夏の王都”オーロブロード
 南半球の夏には王権議会の一部のメンバーが避暑のために移動してくる、高原の城市です。冬にはかなり寒くなるため、邸宅は管理者だけの寂しい環境になりますが、林業や鉱業の関係者の多い地域は年中賑わっています。

・空の宮殿
 魔晶石やマナタイトで強化したガラスを多用した、軽快な印象の宮殿です。所有者は近隣の部族の貴族ですが、アステリア神殿を中心とした複合施設(市民宮殿)として大半の区域を開放しています。夏季の王権議会の事務や会合にも使われています。

・隊商駅(キャラバンステーション)
 隊商の商人や動物が荷物の上げ下ろしや宿泊をする施設です。さらに南方の辺境への拠点でもあり、魔物の危険情報などが集まる場所でもあります。商人には幻獣もいるため、慣れない旅人が目撃して戸惑ったりします。

・“七つ辻の”セルベニアクロス
 ソーサリア北部の交易の中心地で、七つの方面への街道、無数の川と運河、浮遊岩の群れが途切れる空路が集まっています。往来が便利なのですがあまりにも守りにくい地形のため、帝制テクニオンの侵略と〈大破局〉の攻撃だけでなく、建国以前のアストレイドの襲撃から現在に至るまで、数えきれないほど焼かれてきました。結果として、大きな交易所があるのに定住者は非常に少なくて、粗末な建物(地震も多いので、想定して屋根も軽くしている)を申し訳程度の木の柵が囲んでいます。

・七端十字の石柱
 街道を模した枝分かれをしたシンボルの石柱です。アストレイドの襲撃を受けたのちに慰霊のためのシンボルとして作られ、それから数えきれないほどの回数を焼かれてきました。焼かれるごとに作り直され、今は何代目なのかも誰も覚えていません。

・“打ち鳴らす岩の”プエルトブルーズ
 南東の海に突き出した半島の「オオカミウオ海岸」にあります。海岸は暖流と寒流の潮目で、いい漁場になっています。寒冷地で降水量も少ないため、干し鱈(バカリャウ)や凍結乾燥馬鈴薯(チューニョ)をおもに輸出しています。荒々しい自然は妖精使いを引き付けるようで、仮庵を設けて自給自足しながら修行に励む姿が見られます。

・隕石港
 岸が険しく波が荒いため、普通の手段では港を作れないところに、【メテオ・ストライク】を大量に打ち込んでえぐった入り江を漁港にしました。温泉の水脈に突き当たったため、港の底から赤いお湯が常に湧き出して、ほんのり暖かくなっています。

・大メイガスの森林
 ソーサリア北西部に広がる大森林地帯です。やや乾燥気味で下草もまばらで、森に慣れていなくても歩きやすそうですが、危険な獣や謎の魔法生物も徘徊していますし、魔法文明時代の遺跡もあちこちにあります。住人はおもに人間とメリアです。

・世界樹の海
 ソーサリア中央部にある、一本の世界樹が湖と一体化したように生い茂っている、森であり湖です。エルフ、マーマン、リザードマンなど、水辺の人族や蛮族に限らず、妖精や幻獣、そしてアンデッドも満ちています。

・笙の孤山
 パーンパイプのように、細く尖った山が林立しています。獣をアラクルーデルが狩り、それをガルーダが狩り、それをドラゴンが狩るという、容赦ない弱肉強食の土地です。

・宵の王朝
 ノスフェラトゥの王侯とサキュバスの女王が争い続ける蛮族の勢力です。人族に目を付けられないように潜みながら、熾烈な派閥間の戦いを繰り広げているようです。

・世界蜘蛛会
 人族、蛮族、幻獣、そして魔神が集う、倫理観のない諜報団体です。最大の戦力は、どの社会にもなじみやすく、なおかつ切り捨ててもあまり惜しくないコボルドの群れです。

・魔動機軍遺跡
 魔動機文明時代に、帝制テクニオンがソーサリアに攻め込んだ時の軍事基地の遺跡群です。長い間手付かずでしたが、リバースエンジニアリングしやすい時代の遺産が集中しているため、改めて発掘の手が伸びています。

・試練の塔群
 魔術師ギルドが管理している何十本もの塔で、探検競技の開催などのために貸し出しできます。破壊されてもゆっくりと自動修復されるため、手入れの心配をあまり考えなくても安心です。

・地底楽園
 地底にある球形の空洞の中に、壁に張り付くように作られている、魔法王が創造した王国だと伝えられています。「空洞の面に重力が働いている」「底の湖の上に城が吊るされている」「球形ではなく円筒形である」「魔剣により異世界に作られている」などの伝説や報告が錯綜しています。

・古き竜の転居跡
 エンシェントドラゴンが住んでいた巣穴の跡です(家主は〈大破局〉後に、近くに蛮族が増えたのを嫌がって引っ越しています)。内部には家主が持っていくのを忘れた財宝が残されているという噂がありますが、山の中腹の絶壁まで昇るのを考えると、考え直した方が賢明です。付き合いのあったリルドラケンが使っていた通用口もあるといいますが、[風の翼]を使うのを前提にした部分があるのかもしれません。

・黒い油の穴
 内陸の荒れ地にぽっかり空いている、直径1kmほどの穴です。穴の300〜400mほど下には黒い油のような液体が溜まっており、その実態は(誰も来ないので)謎に包まれています。
(案1)穴に溜まっているのは中から湧いている鉱油で、産業用に使えるかもしれません。
(案2)穴に溜まっているのは神紀文明時代から生き続けている巨大な粘菌で、分体を出して交渉を試みてきます。
(案3)穴に溜まっているのは位相の異なるラクシアからの侵略者に対する封印で、超文明の武装で侵略する機会を向こうからうかがってきます。
(案4)穴に溜まっているのは……?

 
・永劫氷洋
 ケルディオン大陸のはるか南にある氷の海です。南半球の夏には氷が緩み、鱈や鯨などが豊富に獲れますが、油断して南へ行き過ぎるとたとえエルフでも無事には帰れません。北端部にある島々にソーサリアの漁船団の拠点と魔法学校の観測地点があり、魔動機文明時代初期から観測が進められています。運命の兵士による遠征も、この300年の間に何度か行われ、大量の調査結果を残しています。どうやら混沌海の嵐の影響はこの方角には及んでいないらしく、暗黒と死の海を乗り越えれば反対側からアルフレイム大陸に帰れるかもしれません。

 
◇アイテム

・魔動車(マギモービル)
 魔動機関(モーター)で動く、おもに四輪の車です。乗用車サイズから大型トラックやバスに相当するサイズまで、大きさや用途は様々です。路上以外を走るのに適さないため、テラスティア大陸やアルフレイム大陸ではあまり普及しませんでしたが、テクニオンでは大規模な道路網が整備されて、現在でも使われています。

・貝葉(ばいよう)
 ヤシの葉を加工した、横長の紙です。超長期間の保存には向かないため、ケルディオン大陸では銅板、金板、石碑などによる記録が多く残されました。魔動機文明時代に木の繊維で作った紙が導入されましたが、伝統的な用途には貝葉紙が使われています。

・“笛”
 王制テクニオンの初代王が即位前に、蛮族の軍勢を率いていた巨人を射殺した初期型のガンです。王制時代や帝制時代には君主の宝器とされていましたが、ソーサリアへの遠征で皇帝が消息を絶った際にオリジナルは失われています。外見だけ模造して中身は最新の技術を導入したガンが新たな“笛”となり、大評議会議長が職位のシンボルとしています。

・マカナ
 鉄(“黒い金属”)が一般的でなかった時代のリカントの伝統的な武器で、木や石で作られたメイスや、石の細片を刃として埋め込んだ木剣です。“ジャガーの戦士”をはじめとしたリカントの戦士が、儀礼用、あるいは鉄の武器に強いモンスター用に使います。本体部分の木を“宿り木の棒杖”に加工できます。

・シヴ
 アルモガバルスは武器を選びませんが、近接戦闘用に愛用するのが、この刺突に向いた簡素な作りの小さな刃物です。

・フサリアの翼
 王制テクニオンのティエンスによる重装騎兵「フサリア」が装備していた翼で、ティエンスの騎獣に対する共感能力を強化します。

・ウォーワゴン
 戦車の一種ですが、移動して戦うのではなく、固定して陣地の守備に使います。銃眼からガンで外を撃ち、攻撃にも使えます。戦闘中は動かさないため、内側からだけ無視できる遮蔽物として扱ってください。

・コンテナ
 魔動機文明語の「収納するもの」から来た呼び名で、規格化された大きさの鉄の箱に貨物を詰めてから蓋を閉め、箱ごと運んで輸送途中での散逸を防ぎます。テクニオンでは鉄道・魔動車・船舶で共用できる規格が制定されており、〈大破局〉でコンテナを扱える施設が減っても一部の経路で使われています。古くなったコンテナが物置に使われていますが、通気性は確保していないため熱帯のテクニオンでは住居には向かず、コンテナで密航して熱中症や飢えで死体になる事故も時々あります。

・モービルチャンピオンシップ招待券
 テクニオンで5〜6年ごとに行われるモービルレース(魔動車競走)の参戦者への招待券です。チャンピオン(代理闘士)というように、招待券を譲られたり奪ったりしても参加権があります。上位蛮族のチームが参加した際には問題視されましたが、「人族のルールを守る」の一言で流されました。ごあんしんください。

・火薬
 魔動機文明時代中期に、ソーサリアで錬金術師が開発した薬品です。木炭、燐、硝石を混合したもので、火をつけて爆発させて物理ダメージを与えますが、扱いが魔法より難しいため、火のダメージを受けないドワーフが主に、鉱山の発破や軍事用の爆破など、高レベルの魔法使いを確保しにくい大型の爆発をさせたいときに使っていました。〈大破局〉の際に火薬を使ったロケット(鉄製のロケット花火のようなもの)が蛮族に対して用いられたときにテクニオンにも伝わり、戦後に魔動機術が不足する現場で使われるようになりました。「爆発力をコントロールすれば、ガンにも応用できるのではないか」という考えもありますが、爆発力に耐えられる構造や、発射する弾の構造などをクリアできず、クロスボウで火薬弾を投射するシステムが一部で使われているくらいです。
 なお、火薬は製造に錬金術を使いますが、完成した火薬はマナを帯びていないため、【センス・マジック】では感知できません。

・火薬弾投射用クロスボウ
 B〜Aランクのクロスボウを改造して、太矢ではなく火薬弾を投射するための武器にしたものです。火薬弾と投射用クロスボウは軍用兵器であり、一般には流通していません。

・キューカンバーロケット
 テクニオンで現役の軍事用ロケットです。形は「長さ2mの鉄製ロケット花火」です。命中精度が高くないため、大型の目標へ多数を一度に発射して使います(軍用魔動車や多脚式魔動機にカチューシャのように搭載します)。
※きゅうり→河童→カッパロケット。
※ちなみに第一次大戦では、このタイプのロケットが飛行機の対飛行船用ロケットに使われていたそうです。

・対魔神兵器1号
 アルフレイム大陸に配備するコロッサスに装備するのを想定して開発されていた、無気嚢式の魔航船の技術を応用した有翼飛行爆弾です。形は我々の複葉機のデザインを簡素にした感じです。数十〜数百kmを魔動機を使わない機械式の誘導システムで飛行して、“奈落の魔域”近くで想定されるマナの乱れの影響を受けないように設計されました。誘導機械の開発が難航しましたが、魔動機文明時代末期に試験用にアルフレイム大陸へいくつか輸出され、テクニオンでも配備されていたといいますが、〈大破局〉で記録が失われています。
※報復兵器ですね。2号は弾道ミサイルなので魔動機文明だと無理かなーと思うのですが、無人機による飛行爆弾は第一次大戦当時に開発だけはされてたので、1号は作れる……かな?
 あと、語感がなんか即堕ちしそうな感じ。

・トリグラフ
 〈始まりの剣〉を女性の姿で擬人化するのは、テラスティア大陸やアルフレイム大陸と同じく、ケルディオン大陸でもよく見られる習慣です。ルミエル、イグニス、カルディアの擬人化した姿を柱の三方向に刻んだトリグラフは、ケルディオン大陸の先住民族系の文化で盛んに作られました。テクニオンでは発掘されたものが広場、交差点、鉄道駅などに飾られることが多く、ソーサリアでは特定の神に捧げていない礼拝の場(特に森羅導師と関わるもの)でよく見られます。また男性版では具体的に、ライフォス、ダルクレム、キルヒアの三神の姿を用います。

・ダルクレム人形
 第一の剣の陣営の神を祀る祭りで焼くための、ダルクレムの張りぼてです。竹を組んだ骨組に使用済みの植物紙を貼り、色を塗って仕上げます。焼く前に中に油、炭、竹、火薬などを仕込み、派手に燃え広がるようにしています。大きな城市では、ガンゼケータとラニアーゾ、さらに「その年に一番迷惑だったもの」の張りぼてを作って一緒に焼きます。
※インドのラーヴァナ人形をイメージしてください。

・操霊術師の串焼き
 物騒な名前ですが、操霊術師の魔法王を反乱で打倒した城市に由来するもので、子羊や子牛、カピバラ、オオトカゲなどの四つ脚の獣を魔法王に見立てて焼いた料理です。人間風では大量の香辛料をまぶして、リカント風では軽く塩を振って素材のうまみを楽しみます。

・アサードセット
 アサード用の調理道具で、肉を焼くための鉄板、焼き網、調理用ナイフ、鉄串など、そして獣を捌いてくくり付けるためのアサードクロスで構成されます。エルフの加工技術で、驚くほど軽量になっています。

・香辛料入れ
 木材、金属、角や牙、ガラス、その他さまざまな素材で作られた、小さな携帯用香辛料入れです。テクニオンではおやつ用や身だしなみとして、様々な香辛料入れをおもに上流階層で持ち歩き、贈答品の定番としても使われます。

・鉱物手形
 テクニオンの各社団が発行する、鉄、魔晶石、マナタイト、塩、ソーダなどのような鉱物の価値に裏付けられた手形で、「現物と交換できる」という体でガメル通貨に交換できます。ただし換金率は、流通している量によって変動してしまうので、確実な取引にはガメル通貨が好まれます。開拓公社やレンジャーズのような武装職員や雇用者に対して、鉱物手形で支払いをするのは禁止されています。単位の略称は「(単位)(鉱物)幣」(「1000鉄幣」など)です。

・木の葉金
 金を交易品や現物通貨として取引するために、一定の重さで木の葉の形にしたものです。ソーサリアの金工師が加工したもので、ガメル銀貨・金貨の流通が乏しかった時代に作られていました。現在は工芸品として地金より色を付けて取引しているほか、古いエルフやメリアの部族では贈答品に使う例もあります。

・滴金・銀(しずくきん・ぎん)
 高温で溶けた金銀をドワーフが手づかみで垂らした滴を、そのまま交易品に使うものです。必要な重さにまとめて、封をした袋ごと取引に使います。ドワーフのほか、リルドラケンやレプラカーン、そしてドラゴンも珍重します。

・ピッグアイアン
 魔動機文明語で「銑鉄の塊」という意味ですが、テクニオンでは大雑把な子豚の形をした塊として取引用に作られています。だいたい1tくらいの重さで、縄をかけて運べるように体長60〜70cmくらいのずんぐりした形をしています。

・発魔機
 水力や蒸気などの力でマナタイトを取り付けた輪を回転させて、輪の外側に配置したマナタイトとの反発力でマナを生成する装置です。マナチャージクリスタルの高速充電、鉄道客車の室内照明用のマナ補充、機関車や魔動車の発魔ブレーキなどに使われます。

・ケミストリー機関
 錬金術により、精製アルコールや精製鉱油を燃料にして回転運動を作り出す動力機関です。可燃物を密閉して動作する部品の精度や良質な燃料の確保などに課題を抱えていますが、何らかの事情でマナを使った魔動機関を投入できない場所への使用が検討されています。

 
◇イメージソース

 テクニオンはイスラエルの技術を持たせたインドで、ソーサリアはアマゾンにモンゴルを混ぜました。2つ混ぜは簡単にエキゾチックな感じを出せますのでおすすめ。
 あと政治形態は、人的支配と領域支配を分割して、できるだけわけがわからないものにしました。だからそこら辺を凝っても実プレイめんどくさいだけだって。


『ソード・ワールド2.5』:(C)北沢慶/グループSNE/KADOKAWA

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