◇新大陸通信・17号◇


 ケルディオン大陸の、東洋風に仕上げた一品です。


☆ケルディオン大陸の習作

 
◇概要

 “帰らずの大地”、“武勇の地”“剣と拳の国々”そして“異国”。そう呼ばれるケルディオン大陸は、アルフレイム大陸の南東にある大陸です。大まかに五角形のような形をしており、北西側がかつてはアルフレイム大陸と繋がっていました。そしてさらに南側が、未知の極地に繋がっています。そして中央やや西寄りに第二奈落(セカンド・アビス)があり、この大陸も〈奈落の魔域〉が発生しています。
 文化は全体的に、地球でいう東洋風のものに似ています。魔動機術の普及はアルフレイム大陸東方に近く、ステータスシンボルとしては真語魔法や操霊魔法に及びません。冒険者ギルドはなく、代わりに冒険者の店があります。マギテック協会もなく、魔動機師と錬金術師は政府や貴族のお抱えか、魔動機ギルドか、独立した魔動機屋の所属になります。魔術師ギルドはありますが、アルフレイム大陸とは違い秘密結社時代の名残が濃厚です。遺跡ギルドは、ただの盗賊ギルドのフロント組織から、遺跡発掘を握り盗賊ギルドと敵対している所までばらばらです。妖精使いや森羅導師は概念的な“円環”に所属していることになっています――帰属意識は人により様々です。
 また、魔法文明時代の身分制度の名残として、「魔法使い>戦士>一般人」という価値観が残っており、偉い人は魔法使いや魔法戦士が多く、戦士も初歩的な魔法をたしなむことがよくあります。冒険者の敵たちも、獣や烏合の衆の妖魔どもでもない限り、魔法への備えを欠かさないのですが、蛮族は同格や目下相手には強化魔法(およびそれに類する能力)を使うのを嫌がる傾向があります。

 
◇種族など

・人間
 バブニア、ツォンガン、ミカナギ、それぞれに独自の文化をはぐくんだ民族がいます。特にツォンガンの中心部では人口の圧倒的多数を占めますが、それ以外の地域では過半数を占めるか占めないかくらいです。
 地域によっては香辛料を豊富に使った料理を好むのですが、ライカンスロープへの恐怖心とリカントへの蔑視から来ていることもあり、いわゆる「上品な料理」には出しづらいものです。

・エルフ
 ケルディオン全土に薄く広く散在しており、人間のほぼいない地域間や蛮族領の至近にも、魔法で要塞化した居住地を構えています。いわゆるアーバン・エルフも、バブニアやミカナギには多数います。
 料理に水産物を好むのですが、好みの範囲が人間やドワーフより広いため、ナマコや蛙などをゲテモノ呼ばわりされることも多く、またそれを知っているエルフたちも、せっかくの美味を異種族に分けてやろうとは考えません。

・ドワーフ
 地下の湿度が高い地域では、仕方なく地上の住居を選びますが、やはり重厚な建物を好みがちです。独自の都市に暮らしている場合、バトルダンサー、コンジャラー、ドルイドという「典型的でない」技能のドワーフもそれなりにいます。性格についても、「レプラカーンやグラスランナーの間違いではないのか」と書き残した人間の旅行家もいました。
 なお、「地底で火を焚いても窒息しないのか」という疑問は強いでしょうが、ドワーフは一酸化炭素や二酸化炭素への抵抗力が高温になればなるほど高くなるらしく、異種族が近づけない環境でも活動可能です。

・タビット
 湿度を嫌い、バブニアにはあまりいません。ツォンガンではほぼ人間の都市に住んでいますが、ミカナギでは独自の集落で農耕に(ゴーレムや魔動機を使ったりしながら)勤しむタビットもいます。

・ルーンフォーク
 ジェネレーターは付属施設とともに生き残っている率が高く、集団ごとに現地の国家などに仕えています。冒険者となるにしても、仕えている対象から命令を受けてのことが多いでしょう。
 なぜか調理技術は「栄養摂取」の域を出ないことが多く、メシマズ種族の汚名を被っています。

・ナイトメア
 やはり忌み子である点は変わりませんが、冒険者の間でのみならず、軍隊や遺跡ギルドなどでも戦力として重宝されます。そのため、高い地位に就くナイトメアは意外と多いのですが、もちろん終身制でない場合に限られます。

・リカント
 ケルディオン大陸では、人間に次ぐ人口を持つ人族です。その大半はバブニアとミカナギに集まっており、ツォンガンの農耕地帯ではあまり見掛けません。
 ケルディオンのリカントたちは、[獣変貌]状態を神々からの授かりものとしますが、普段に変貌する/しないで揉めることもしばしばです。

・リルドラケン
 同じ母系のグループが生んだ「同抱(どうほう)」意識が強くあり、同時に種族内の仲間意識も強いため、商取引以外ではあまり親しく異種族と付き合わない傾向があります。かつてのグランシャウ帝国の皇帝はリルドラケンであり、その皇帝氏族がケルディオン全土で貴族扱いになっています。

・グラスランナー
 第二奈落に近いほど多く、ケルディオンのグラスランナーは魔神とともに召喚されたという説を有力にしています(当のグラスランナーたちは、特に何とも思っていませんが)。窃盗に対して厳しいミカナギではあからさまに厳しい対応をされがちであり、グラスランナーたちも近寄りたがりません。

・メリア
 短命種は草原、長命種は森林を中心に暮らしています。短命種を都合の良い労働力として使おうとする悪人や蛮族はいましたが、お気楽な性格は労働力としての利用に向かず、たいていの場合、早熟な彼ら彼女らにひどい目に遭いました。
 そして肉食傾向が強く、生焼けでも平気で食べるので、食卓を共にする動物系人族は注意が必要です。

・ティエンス
 数はアルフレイムよりも少なく、それでもやはり奈落関係の敵と戦っています。

・レプラカーン
 魔動機術と同じ程度に、妖精魔法、そして魔法を使わない機械にも傾倒しています。レプラカーンの多いミカナギではレプラカーンの町や村もありますが、やはり隠れ里のように隠されていることが多いです。
 なお、普段食べる量が少ないのは、工作に没頭するためのエネルギー消費が人間などと比べて少ないというだけであり、冒険に出ると人間並みに食べます。

・テラスティア大陸の種族
 テラスティア大陸やレーゼルドーン大陸由来の種族は、基本的にいません。出自が大陸により限られない種族はいるかもしれませんが、出せる(=都合よくいるか判断する)のはGMの判断次第です。

・蛮族
 やはりGMの判断次第ですが、厳しめに扱ってください(人族の身元保証人がいないと出歩けない、など)。

・ケルディオン大陸における冒険者
 武装して公的に招集された、民兵に近いものとして扱われます。冒険者ギルドにあたるものはなく、各国の政府や領主が出資する「冒険者の店」が代わりになります。社会的に認められた冒険者ではない闇営業の冒険者を使うのは、不当な私兵として見なされるため、アルフレイムではヴァグランツであっても、ケルディオンで冒険者の店あるいはパトロンに関わらないで冒険するのは困難でしょう。
 名誉点周りのルールは、冒険者ギルドはありませんが、冒険者の店のネットワークからの大雑把な社会的評価のランクとして冒険者ランクを扱ってください。

 
◇大まかな歴史ほか

 神紀文明時代のことはほぼ分かりません。独自の文化の分化は、この時期か、あるいはもっと前に遡ります――「ケルディオンの種族は異世界から魔法の門で呼び込まれた」という妄説もあります。
 魔法文明時代、やはりこの地にも魔法王が渡来し、または原住の種族からも生まれました。そしてやりたい放題した挙句、第二の“奈落”を生み出してしまい、力を失った魔法王たちは配下の反抗により打ち倒されました。
 魔動機文明はこの地に及ぶのが遅れ、技術はともかく、文化の細かい点にはあまり影響を受けませんでした。
 そして、〈大破局〉。蛮王軍は人族の殲滅よりも南極の何らかを求めていたようでしたが、蛮族軍の後続が地峡崩壊と混沌海に飲み込まれ、第二奈落から湧き出す魔神との戦いもあり、(知りたくもない)野望は果てました。
 現在では人族は3つの地方に分かれ、蛮族国家、戦死者が生み出すアンデッド、第二奈落の魔神たちと干戈を交えています。

・ケルディオン大陸の神格
 もともとアルフレイム大陸とつながっているため、似たような神格を崇めています。小神も、バブニア地方でフルシルが、鉄道施設でストラスフォードが信仰されています。
 以下は、ケルディオン独自の神々の例です。

“生命の灯火”フェイリリエール(第一の剣、大神)
 エルフからグレンダールの手により神になった、工芸と灯火の神です。エルフの金属器の大半は、この神の信者が作り上げています。

“王権神”シャウペロ(第一の剣、小神)
 グランシャウ帝国の初代皇帝のリルドラケンが神となった存在で、王権と官僚制度を司ります。グランシャウ帝国亡き現在も、国家秩序の神としてツォンガン地方における信仰は衰えていません。

“密林の知恵者たち”ノヴ・ナヒード(第三の剣、小神)
 密林で生きるすべを教える、野生の知識の神々の集まりです。その性質上、バブニア地方に信者が集中しています。

“神匠”アマクニ(第三の剣、小神)
 もとは魔法文明時代のレプラカーンの技術者で、無数の魔剣をはじめとする魔法の品を開発し、その果てに第三の剣の欠片に触れて神になったといいます。ミカナギ地方の天上と地下にそれぞれ遺されたという「アマクニの楽園」を求める冒険者は跡を絶ちません。

“反逆の神”シューイウ(第二の剣、小神)
 ツォンガン地方の王権――人族であれ蛮族であれ――の秩序に反旗を翻し、江湖に逃れた反体制的な人々の守護者で、“剣を持たない”ドレイクの姿で描かれます。その信徒は高名な武侠からただの匪賊までいますが、第二の剣的な思想を持ちながら身をただすのは至難の業です。

“悪しき星神”カガセオ(第二の剣、大神)
 人を惑わす夜の闇、そして空を惑い動く惑星や彗星といった不吉の兆しを司る神で、ミカナギ地方の海賊が信仰を広めました。不動の極星を象徴とするハルーラを敵視しています。

 
◇地誌

 ケルディオン大陸の人族の領域は、大まかに3つの地方に分かれています。
 

・バブニア地方
 アルフレイムから南東、ケルディオン大陸の北西部にあたり、密林と山岳地帯で他の地方と遮断されています。地方内に鉄道が網とはいえないほどですが残っており、主要都市の間は行き来が便利です。
 地勢のためか、牧畜が盛んではなく、乳製品の利用も日常では少ないです。主な蛋白源は魚、豆、あるいは狩猟の獲物です。

・“ライフォスの橋”
 かつてのアルフレイムとケルディオンを結んでいた地峡で、魔動機文明時代には運河を中心に栄えた国家がありましたが、〈大破局〉で混沌海に沈みました。海底にはいまだに遺跡が広がっており、マーマンから人族・蛮族構わずに魔動機が流出しています。

・バブニア公国
 地峡の付け根であった国ですが、当時の繁栄はもはやありません。アルフレイムやテラスティアからの漂着者の子孫が大勢定住しており、「ニューハーヴェス」や「ニュースピドゥロス」といった村もあります。

・ベリミニ
 バブニアの首都で、魔動機文明時代の市街地の北半分が海に沈み、残り南半分が機能しています。

・涸れた運河
 ベリミニのやや南にあった運河で、丘陵地帯を閘門で越えて船を東西の海に渡していましたが、〈大破局〉で機能しなくなりました。

・海蝕洞
 海からの浸蝕が〈大破局〉以来進み、海岸に半水没の洞窟網を作り出しています。中心にあるエルフの洞窟都市“新月の港”には、魔動機文明時代の遺産を持つ海賊たち(主に蛮族を襲うが、人族も気分次第で襲う)が巣食っているとのことです。

・半可動のコロッサス
 バブニアの魔動機ギルドの本部にあるコロッサスで、動きはしませんが、戦力を補助する民生品の生産能力がまだ生きています。マギスフィアを新造できる、ラクシアでも限られた施設です。

・ウダラタ修道共和国
 高原地帯にある修道院群による国で、神官戦士団により蛮族の侵略を跳ねのけ、避難民を受け入れました。

・スクンド
 ウダラタの首都修道院で、第一の剣の神々の信徒が合同で使用しています。世俗活動は隣接するニーゼルンダの街に依存しています。

・ニーゼルンダ
 スクンド修道院に隣接する街ですが、こちらはお国柄らしくない享楽的な賑やかさを振り撒いています。第三の剣の神々の修道院と、森羅導師の“円環”はこちらにあります。

・聖戦士の演習場
 ニーゼルンダの中心部、ライフォス神殿の横に、魔動機文明時代に建造された競技場です。当時に書かれた小説「勇者対聖戦士」の舞台のひとつでもあります。

・ライフォスの足跡
 神々の戦いののち、ライフォスがここから天上に旅立ったと伝えられています。山頂の岩にある足跡の上では、第一の剣の神の神官は、神のランクに関係なく、1ラウンドで【コール・ゴッド】を行使できます。荒れ狂う嵐と浮遊島をかいくぐって登頂できれば、ですが。

・ジャナタプラ王国
 バブニア地方最大の国で、対蛮族同盟の盟主でもあります。地域内の鉄道網の中心にもなっています。

・ジャナタプラ市
 ジャナタプラの首都である、川を挟んだ双子都市です。北側に(現在はリカントであるが、人間の血も引く)王宮があり、南側に〈土地の主〉(原住者である長命種メリア)の宮殿があります。

・ポート・ウィルソン
 ジャナタプラの外港で、魔動機文明時代の設備が現在も稼働しています。

・ウィルソンの灯台
 魔動機文明時代に築かれた灯台で、魔法のものではない原理不明の力で光を発しています。

・無限図書館
 外見は、魔動機文明時代のものとはいえ小さなハルーラの神殿ですが、内部にある〈魔剣の迷宮〉により拡張されています。内部に生成される本を目当てに突入する冒険者は多いですが、冒険に役立つ知識があるかは運次第です。

・アマルワース連邦王国
 魔動機文明時代にはグランチーナの支配下に置かれ、〈大破局〉後の戦乱に紛れて独立を回復した国です。農業を主体とする排他的なお国柄のため、交易には不熱心です。独立後にツォンガン地方への陸路を片端から破壊したため、陸路でグランチーナと行き来するのは、はっきり言って無茶です。

・ゲティッ・ペサ
 アマルワースの首都で、独立後にできた街のため、魔動機文明時代の遺産にあまり頼れていません。辛うじて上下水道はありますが、街灯は魔術師たちの【ライト】頼りです。

・アカフ・バル
 アマルワース最大の港町で、近隣の領主たちの共同支配下にあります。沿岸のほとんどが珊瑚礁かマングローブ林のため、大型船を直接つけられる数少ない地点でもあります。

・ペルジャルハ古戦場
 〈大破局〉により発生した戦場のひとつで、死者の怨念と“穢れ”が溜まって、周囲にアンデッドを撒き散らすようになっています。遺跡ギルドの死体漁りも、蛮族の戦闘団も、等しく帰ってきませんでした。

・断たれた橋
 かつてのグランチーナ帝国による鉄道橋で、二重アーチの上部は爆砕されていますが、あまりの強固さに下部が残されています。それなりの登攀技術さえあれば、向こう岸に渡るのは不可能ではないでしょう。

・ランガニュス大森林
 バブニア地方の内陸を占める森林地帯です。魔動機文明時代、他の大陸からの勢力が黄金や森林資源目当てに荒らし回ったため、現地のエルフやメリアはよそ者を敵視しています。

・ウパス
 大森林の交易拠点で、ランガニュス川の岸にハーヴェスと見紛うばかりの都市がいきなりあるのは、初めて訪れた誰もが驚きます。

・奈落教大寺院
 ケルディオン大陸にもある奈落教で、アルフレイムの奈落教とは魔動機文明時代にお互いを破門し合っています。一般人に対してフレンドリーであり、〈奈落の魔域〉を守ろうとしたりするのは邪魔ですが、蛮族とアンデッドには敵対しており、冒険者や一般人に積極的な害意を持っているわけではありません。

・大陥没
 大森林の奥深くにある、無数の陥没した穴です。穴の底には独自の生態系が生み出されており、その生み出すであろう利益目当てに無数の遺跡漁りが消えていきました。

 
・ツォンガン地方
 大陸の中央部です。魔動機文明時代前期にあったグランシャウ帝国の崩壊後、正統な後継者の座を争って、北のグランチーナと南のグランタングが戦火を交えていましたが、今はそれどころではない有様です。グラップラーの技術の発祥の地と考えられており、またバトルダンサーも幅広く受け入れられています。
 魔法文明時代のものを受け継いで魔動機文明時代に接続と拡張された運河網は、農耕と交易のために使われてきましたが、〈大破局〉で大幅に破壊されて、その機能を大きく減じています。

・エリザベス・シティ
 北部海岸にある島です。名目上はグランチーナ領ですが、アルフレイム諸国の共同租借地として、事実上は独立した都市国家としてふるまっています。

・三角錐山
 エリザベス・シティの最高峰で、山腹には魔動機文明時代のキャノンが現在も装備されています。総督公邸もここにあります。

・気象観測所
 エリザベス・シティの一角にある施設で、上空に浮かぶ魔動機ネットワークにより、精度の高い天気予報を出しています。業務用の魔航船を多数所有しており、副業として旅客の乗船もさせています(貨物のみの輸送は、目当ての匪賊による襲撃を防ぐため、認めていません)。

・グランチーナ
 グランシャウの片割れの一つ、二大国の片割れ……の残骸です。魔動機文明時代には中央集権制度を敷いていたのですが、内外への高圧的な態度が年々嫌われており、アルフレイム諸国の連合軍に首都を占領された頃には「死にかけの帝国が死んだ」とまで罵倒されていました。現在は各地が復興した豪族の私領化しており、皇帝が空位のままの中央政府は近隣の豪族たちの操り人形にすぎません。

・ニス・ハニヤン
 グランチーナの首都ですが、「ツァウアン大公国の首都に過ぎない」くらいの認識を、特に遠くの郡県からは抱かれています。元は首都のハニヤンの衛星都市で、地力を消耗しきった魔動機文明時代末期にはもはや産業の中心でもなく、〈大破局〉では輸送網の断絶を理由とする飢饉により人口を大幅に失いました。皇帝は空位で、摂政団の代表が大公を名乗っています。

・ハニヤン遺跡
 〈大破局〉以前のグランチーナの首都でした。蛮族の軍勢に皇帝や官僚をはじめとする住民がほぼすべて連行されて、漁りきれない広さの廃墟を残すのみです。

・無限陵墓
 魔法文明時代の魔法王たちの墓を埋め潰し、または暴きながら、歴代皇帝や王侯たちの墓が作られていきました。通常の遺跡と魔剣の迷宮が複合した結果、かなりめちゃくちゃな状態になっています。

・ガーンフー
 運河網の終端、海岸近くにある交易都市で、〈大破局〉当時には臨時首都になった歴史もあります。ハナブサとアケトリの交易船団が抗争からの殺戮に走った事件があって以来、両国との交易は厳しく制限されています(つまり、第三国の船舶が交易するには問題がありません)。領主は自称皇帝の一人ですが、荒廃した内陸の復興よりは交易による利益を重視しており、統一に向かう動きは今のところありません。

・ゲックアン
 もとは小さな漁港でしたが、〈大破局〉以来の混乱の中、漁民や商人が海賊化して、密貿易を中心に営むようになりました。

・鬼城平原
 グランチーナとグランタング、両方の主要都市が林立していた地域でしたが、〈大破局〉で壊滅し、無人の都市遺跡(鬼城)だけを残しています。

・匪賊大市
 グランチーナのアウトローたちが不定期に集まる、場所も定かでない闇市です。魔法文明時代以来の歴史を誇り、「売れないものは空手形、買えないものは神々のみ」と謳われます。

・ジクル・バルフ
 西部にある都市です。魔動機文明時代にはリルドラケンのシェルケフ王国の首都でしたが、〈大破局〉後に疲弊したところを、援軍に来たグランタング軍が征服し、それ以来グランチーナとの取り合いが続いています。

・バク・ガプ
 第二奈落の近くにある街で、グランタングのガプの街の衛星都市です。第二奈落に備えた中央政府からの軍は年々先細るばかりで、漂流者が設立した冒険者の店が防衛を大幅に委託しています。

・グランタング
 グランチーナと対立する、もう一方の大国です。魔動機文明時代の後期には遊牧民による征服王朝が支配しており、それ以来南部の草原地帯も国土に含んでいます。帝都直轄地以外は有力部族が分割所有しており、族長会議で国家の方針を定めていましたが、〈大破局〉で農民派と遊牧民派に分裂し、お互いの飛地を没収し合ったり敵対部族を蛮族に売り払ったり、深刻な争いを続けています。

・ガプ
 第二奈落の近く、グランチーナのバク・ガプの川向かいにある街です。元はグランシャウの首都でした。第二奈落から湧き出す魔神に備えた機動部隊を配置しており、ここから先は一般人の立ち入りが禁じられています。

・ケイフォング
 グランタングの首都で、水路と鉄道網の集中する地点にあります。旧市街地は〈大破局〉による洪水で泥土の底に消えましたが、郊外に新たな市街地を設けました。農民派の皇帝は、ここを冬営地として、夏は周辺の放牧地を移動します。

・ウェイハイ
 グランタングの港湾都市で、エリザベス・シティの租借地が面積の半分ほどを占めています。伝統的に海上貿易に興味の薄いグランタングですが、運河網がずたずたになった現在では、残された鉄道で国境越えするか、海上を渡るかしないと、グランチーナまで行くのは困難です。

・荒野の壁
 かつてのグランタングの王朝が、遊牧民を防ぐためと良好な放牧地へのアクセスを妨害するために建てた防壁の残骸です。征服王朝のもとでは意味がなく放置されており、また建築材料として日干し煉瓦が抜き取られていったため、今は防壁として役に立たず、派閥間の境界線になっているわけでもありません。

・水晶宮
 グランタング南部の遊牧民たちの、交易の中心地です。魔動機文明時代に移動式のアステリア神殿が定住したのが街の始まりでした。現在は遊牧民派の皇帝が夏営地にして、冬には北の冬営地を回ります。
 遊牧民の主流派は人間、リカント、ティエンスですが、歴史上のいきさつにより、エルフの遊牧民やグラスランナーの遊牧民のような、他の地方にはあまりいない遊牧民もいます。

・シジルホルム
 地方の最南部、森林限界の辺りにある、ドワーフの大都市です。魔法文明以来の技術を大幅に残しており、また遊牧民の鉄器の供給も営んでいます。

・第二奈落(セカンド・アビス)
 アルフレイム大陸の奈落より一回り小さな、同様の領域です。
 天地使いの手により、自然の地形を応用した封印をなされていたのですが、〈大破局〉で封印が崩れてしまい、第二奈落自体が拡張を始めています。人族のいる東側は応急処置がなされていますが、蛮族がいる西側へその分膨れ上がってしまい、このままではラクシアの外洋に魔神が垂れ流しにされてしまうでしょう。

・レ=バルク蛮王国
 第二奈落の西側にある蛮族国家で、〈大破局〉でグランチーナの辺境を占拠して成立しました。生産を人族の名誉蛮族と奴隷に依存しており、しばしば奴隷確保を目的に、グランチーナやグランタングの貧しい領地から「犯罪者」を買い取っています。

・ケゼメス
 首都だったバルクが第二奈落に沈み、新たな首都となった城塞都市です。繁殖に人族を必要とするライカンスロープやサキュバスが(傘下の名誉蛮族込みで)力を持っているため、ドレイクとその配下たちはあまり近寄ろうとはしません。

・ジャベナ
 大陸の西岸にある港町で、魔動機文明時代からノスフェラトゥが裏から支配していましたが、〈大破局〉後の混乱期にドレイクの部族連合に征服されました。現在は蛮族の海賊の拠点で、ドレイクたちの支配下にありますが、裏には今もノスフェラトゥがいるとの噂もあります。

・“自治領”
 不毛な土地に人族を押し込み、個別に囲い込む負担を避けつつ、蛮族領での労働に重税を掛けて搾取するという、まさしく蛮族の所業です。

・黄金都市
 何もかもが黄金でできている――黄金化の呪いによりゆっくりと変化してしまう都市遺跡です。なお、都市から離れれば呪いは解けますので、まあ安心してください。

・フェンヌ首長国
 第二奈落の南西にある、もともとダルクレムを崇拝していた人族の遊牧民たちの国で、グランタングとは魔動機文明時代から敵対しています。奴隷制度があり、また蛮族(ケンタウロスやライカンスロープなど)を同胞として受け入れている、一般の人族国家とは共存が難しい国です。

・リウクオルダ
 普段はただの平原ですが、ダルクレムの祝祭に様々な部族が集う、事実上の首都です。首長は挑戦者を毎年倒さないといけないのですが、現在は代理闘士やパーティー戦を挑めるため、長期政権になりがちです。

・ケインゼップ
 ミリッツァ神殿を中心とした、人族の街です。〈守りの剣〉を複数持っているため、蛮族主体の部族からの評判はよくありませんが、そんな部族でも工芸品や機械を中心とした取引をするため、強くは出にくくあります。

・壁画の崖
 原始的にも思える様式の壁画が現れては消え、また現れます。

・瀝青湖
 アスファルトが溜まっている湖で、よく動物がはまって死んでいます。中央には魔動機文明の城塞の遺跡が浮かんでおり、空を飛べれば、そしてキャノンからの攻撃に耐え抜ければ、探索に向かうことができるでしょう。

 
・ミカナギ地方
 大陸の東にある諸島です。ツォンガン地方とは海賊行為や密貿易をし合う間柄で、表向きには国交を持っていません。サムライ(魔法戦士)やニンジャ(隠密系戦士)の発祥の地です。

・ハナブサ王国
 魔法文明時代からある古い国ですが、〈大破局〉で王朝の宗家を失い、分家たちが争っています。

・ツキサラ
 ハナブサの首都で、内戦で焼けた市街地の跡に、王城を中心とした東の城と、市場を中心とした西の城が分かれて存在します。現在の王は高齢で、年の離れた王女、大臣や将軍を歴任した従弟、遠縁のキルヒア大神官(前王朝の末裔のナイトメア)、王位を争ったはとこの子(元冒険者の富豪)が支持者とともににらみ合っています。

・カラノキ
 魔動機文明時代は魔動機兵や銃器の生産で知られた工業都市でした。今の主産業は工業地帯の発掘とリバースエンジニアリングですが、簡単な銃器(Bランクのガン)なら現在も生産が可能です。

・アオミハラ
 同名の原野の中心に、〈大破局〉の難民の移住先として作られた開拓地です。痩せた原野に用水路を引いているため、用水路の要所にも〈守りの剣〉を置いています。

・シメノ山
 ハナブサの最高峰ですが、禁足地とされており、おまけにドラゴンもいるため、人族や蛮族に登られた記録はありません。山腹には手つかずの魔法文明時代の遺跡があると言われていますが、確たる証拠はありません。

・キタラ湖
 ハナブサ本島にある汽水湖で、湖底から湧き出る熱泉のため冬には湯気に覆われます。

・チクトイ諸島
 ハナブサ本島とアケトリ本島の間にある島々で、魔動機文明時代後期は両国の抗争地帯でした。〈大破局〉で蛮族・魔神・アンデッドが転送されてきたため、抗争どころではなくなり駆逐のために(結局は)争っています。

・アケトリ大公国
 ハナブサの属領だった南東の諸島が、魔動機文明時代中期に、差別待遇への不満や資源目当ての列強の後押しなどで独立した島々です。〈大破局〉で中央政府が崩壊して、部族ごとに群雄割拠しています。

・ククノチ
 アケトリの首都でしたが、〈大破局〉で荒れ果てて、今は周辺の領主たちの争奪の的となっています。

・キクリツ
 大小の貴族や豪商、ギルド代表などが支配している街です。仮面をかぶった謎の人物(エルフ、ナイトメア、変身したドラゴンあたりか)が市長を務めていますが、権限への制約が強く、実際はお飾り扱いされがちです。

・コトド
 二軒の領主が分有している街で、中立地帯として商業や政治の取引の場となっています。

・移動山
 マナタイトをわずかに含む山が、一定の範囲内で移動を繰り返しています。地表すれすれにある物を押し潰していくため、範囲内には村や農地はありません。

・狂える大公の演習場
 魔法文明時代に魔法王が作った迷宮に、魔剣の迷宮が複数出現したうえに、かつての大公と対立した魔術師やダルクレム信徒やその他諸々が立てこもった場所を、体面上「演習場」と称したものです。

 
・未知の極地グウェン・ルー
 ケルディオン大陸の南部にある極地です。どこまで続いているのかは、魔動機文明時代末期の探検隊たちでも知ることができませんでした。
 大陸を囲む荒海を乗り越えて大陸を脱出する手段を求め、数多の漂流者がブリザードの彼方に消えました。

 
◇アイテム

・武器・防具の相当品
 東洋風の武具がケルディオン大陸の主流ではありますが、魔動機文明時代の交流により、武器・防具の形状に差異はあるものの、機能は大差ない物が流通しています。

 
◇イメージソース

 漠然とした東洋ですね。個別の国家をモデルにしすぎると作りこみで大変なので、あと生々しいのも何ですので、ほどほどにしましょう。
 ラクシアに東洋要素を持ち込むための言い訳に使えます。


『ソード・ワールド2.5』:(C)北沢慶/グループSNE/KADOKAWA

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