悠久幻想曲・フィクションデータバージョンSS プレバージョン

 先だってから言い続けてきた「フィクションデータSS」、プレバージョンながら完成しました。お送りしますので、お使い頂ければ幸いです。
 内容がああなので、煩悩の隠し本棚でもどこでも、好きなところに入れて下さい(苦笑)。
 本文は別個にお送りします。それでは、これで。

 注意
 このSSは大橋賢一氏の「フィクションデータボックス」をベースに執筆いたしました。「フィクションデータボックス」同様、この手の冗談を笑えない方、本気で怒りだしてしまう方は、直ちにお戻り下さい。
 ちなみに、主人公の名前は「アルファ」です。


その1 
「パティ、どうしたんだ?」
「あ……アルファ……ちょっとこっち来て……」
 元気の良さが嘘のような弱々しい声を出すパティに、アルファは思わず駆け寄った。
「本当にどうしたんだ?具合でも悪いのか?」
「うん……あのね、アルファ……」
 少し潤んだ瞳とすがるような表情で、パティはアルファを見上げた。日頃の明るさとは全く異なる種類の、そして普通であればまず見れない魅力に、彼はドキリとなった。
「な、なんだよ?」
「もっと……こっち来て……」
「ああ……」
 めまいにも似た感覚を覚えながらも、言われたとおり近づくアルファ。
「どうしたんだ?」
「うん……実は……」
 カプッ(←アルファの首にかみつく音)
「へ?」
 チュウチュウ……(←何か吸っている音)
「おい……」
「ごめん!あんたの血、吸いたくなっちゃったの。ありがとね!!」
 可愛らしく舌を出し、両手を合わせて謝るパティに、アルファは思わず叫んでいた。
「あのなぁ!!」

 作者より一言 悠久大辞典最大の犠牲者、パティ嬢です。生け贄だの人身御供だの、あげくの果てに通い妻ヴァンパイア・ハーフ扱いされていますが、このSSでも例外ではありません(おい)。フィクションデータSSのパティはヴァンパイア・ハーフ。と、言っても、血を吸うのは、よっぽど疲れた時だけですけどね。


その2 
「アダルトチェ〜ンジ☆ マリアスペシャル!!」
 ちゅっど〜〜〜ん……
 見た目だけは派手な爆発と、それに伴う煙が収まった時、そこには実年齢より幼く見られがちな少女ではなく、エルと同い年くらいに成長したマリアの姿があった。
「ほらほら、マリアの魔法、すごいでしょ☆」
「まぁ……すごい事はすごいが……」
 何とも言い難い表情でアルファが呟く。たまたま食事を作りに来ていたパティも、呆れたように呟いた。
「台所もすごいことになっちゃったわね……」
「え?」
「今の爆発で、食器の類は全部ひっくり返っちまったし、あちこちホコリだらけなんだが……」
「え、え〜と……」
「後始末、よろしくな。マリア」
「え〜、1人じゃ無理だよ〜。お願い、アルファ、手伝って」
 すがるような表情で、上目遣いに見つめてくるマリア。必殺の「間違った狩猟本能誘発攻撃」だ。だが……
「あのな、マリア……『間違った狩猟本能誘発攻撃』はアダルトチェンジした後だと使えんぞ」
「ふみゃ〜」
「と、いうわけだ。がんばれマリア。これも試練だ」
「こんな試練、欲しくな〜い」

 作者より一言 二番手はマリア。「間違った狩猟本能誘発攻撃」は既におなじみとして……「アダルトチェンジ」のご説明を。「2nd」において17歳(推定)のはずなのにマリアは幼すぎる!発育不良だ!という話が悠久大辞典で出たところ、月刃歳さんが「発育不良でもアダルトチェンジで〜」なんて言い出し、見事、フィクションデータとして定着したというもの。名の通り、マリアを「大人」にしてくれます。中身は変わらんのだけどね(笑)。


その3  
「ようよう兄ちゃんよぅ。いー女連れて歩いてんじゃねーか。ちょっと俺らにも貸してくんねーかな?」
 お約束な台詞と共に、チンピラ3人が絡んできた。そして、1人が無謀にもシーラの肩に手をかける。途端に、シーラは身体を硬直させ、次の瞬間、叫んでいた。
「こっちに来ないで下さい!!」
 同時に、そのチンピラを突き飛ばした。その突き飛ばしは、見事な掌底突きとなって相手のみぞおちに炸裂。相手は吹っ飛ばされて悶絶した。予想外のシーラの実力に硬直するチンピラ2人。その隙を逃さず、アルファが足払いとそれに続くニードロップでもう1人を気絶させる。それでようやく最後の1人が我に返ったが、その時にはどんな行動を起こそうと、既に無意味になっていた。
 シーラがつやのある美しい黒髪に手を差し入れる。続いてくしを通すように腰まで届く髪の先まで手を通し、何かを引き出した。そして、目にも止まらぬ早業でそれを一振りした。
「なっ!?」
 突然絡みついてきた細い糸のようなものに、身体の自由を奪われるチンピラ。そんなチンピラに、シーラは静かに宣告した。
「これで終わり……〈ホーリー・ヒール〉!」
「ち、治療魔法で何が出来る!」
 動揺しつつも強がるチンピラ。そんな相手に向かって、シーラは高く飛び、そして叫んだ。
「必殺、ホーリー・ヒール!」
 ガッ
 宙返りしながら、彼女は自分のかかとをそろえてチンピラの後頭部に打ち込んだ。声を上げることも出来ずに、チンピラは地に沈む。
「相変わらず、見事なかかと落としだね。シーラ」
「やだ、アルファ君……恥ずかしいわ」
 顔を赤く染めながら、右手でアルファを突き飛ばすシーラ。そして、突き飛ばされたアルファは、見事に壁にめり込んだのだった……。

 作者より一言 3人目はシーラ。フィクションデータ通り(おい)暗殺者となっております(笑)。怪力になっているのはオチの都合。別に怪力という設定はしていません。


その4 
「さて、と……寝るか」
 そう呟いて自分のベッドに潜り込もうとしたアルファは、既に誰かが寝ていることに気付いた。
「誰だっ!?」
 既に寝ているアリサを起こさないように注意しつつも、鋭い誰何の声を発して布団を一気にはぎ取った。
「うっ……」
 そこに寝ていた人物を見て、アルファは硬直してしまった。そこに寝ていたのはメロディ。ただそれだけだったら、別にどうということはないのだが、問題はその服装であった。由羅から借りたのであろうシースルーのネグリジェ、それ一枚だけしか、彼女は身につけていなかった。胸のあたりなどはネグリジェにほどこされた刺繍のおかげで見えづらくなっているとはいえ、いささか刺激的にすぎる格好であった。
 バサッ
 慌てて布団をかけなおすアルファ。よく煩悩方向に暴走しては過激なほど積極的に迫るくせに、いざ迫られると途端に弱くなる男である。
 深呼吸して気持ちを落ち着け、アルファはメロディの肩を揺さぶった。
「メロディ、起きろ。ここはお前の家じゃないぞ!」
「ふみゃ〜?」
 間延びした声を出すと、メロディは丸めたネコの手で目をこすりつつ起きあがった。2回ほどまばたくと、アルファに気が付いたらしい。いつもの明るい声であいさつした。
「あ、アルファちゃん。おはよ〜」
「おはようって……まだ夜だよ。それより、何で俺の部屋で寝ているんだ?」
 その言葉に、メロディは泣きそうになりながら言った。
「アルファちゃん、きのうしたこと、おぼえてないの……?」
「はい?」
 アルファは目を点にして、反射的に問い返した。もしこれが、朝、目が覚めて、寝返りをうつと、そこにメロディがいた、というシチュエーションで放たれた台詞であれば、アルファは大いに慌てたところであろう。だが、これから寝ようというところで、ベッドにいるメロディを見つけた、という今の状況では、ただあっけにとられるしかない。5秒ほどして、
「あー、メロディ。誰にその言葉を教わったのかな?」
「えーっとぉ……ゆらおねーちゃんが、『アルファくんにそういったら、ぜったいけっこんしてくれる』っていって、おしえてくれましたぁ」
「ふーん……そぉ……」
 メロディを怯えさせないように、落ち着いた声を出そうとして顔を引きつらせたアルファ。続いて、別の声がした。
「全く、由羅の奴、何考えているんだ?」
「メロディ、駄目じゃない。それは立派な『抜け駆け』行為なんだから」
「そうなの?」
「そうよ、メロディちゃん。今回は見逃してあげるから、帰りましょ。」
「エル、パティ、シーラ。何で俺の部屋にいるわけ?」
 アルファのもっともな質問に、3人とも目を明後日の方向に向けた。
「そうよ、なんでエルがここにいるのよ!」
「どういうつもりなのか、じっくりと聞かせてもらうよ、パティ」
「シーラちゃん、ひどいです。『抜け駆けはやめよう』って約束したのに……」
 順に、マリア、リサ、シェリルの発言である。
「だから、何でみんな俺の部屋にいるわけ?」
 アルファのもっともな疑問に、答えるものは誰もいなかった……

 作者より一言 と、言うわけで「妻7人」モードでこの話は書かれています。彼女たちの間では「抜け駆け禁止」がルールとしてある……ということになっていますが……。


 後書き

 さて、と……上がった上がった。フィクションデータSSプレバージョン。いかがでしたか?最初は普通(?)にSSを書く予定だったのですが、見事に詰まってしまい、「とりあえず、キャラ設定だけでもはっきりさせよう」と書いてみました。

 本編ですが……いつになるやら(苦笑)。同人誌などの予定が詰まっているので、夏コミ前、ということは、まずありません(おひ)。気長にお待ちいただければ何よりです。

 しかし……各FCから刺客が送られるかもしれない、このSS……(冷汗)。

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